ありふれない暗殺者は世界最強と共に……   作:翁月 多々良

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※誠に申し訳ありません。
ハサンちゃんのステータスで削除したい場所があるので前の話のやつも全て消して回ります。お話に支障はありませんのでそこら辺は大丈夫です。




 翁月は死なないッ何度でも蘇るさ!!





 ハイ、というわけでやっていく訳ですけども〜

遂にお気に入り200人突破ありがとうございます!!

 これも読んでくださる皆様のおかげです。m(_ _)m

モチベちょ~上がるサイコォー!!
 
 いやぁ~気づけばいつの間にかこの小説投稿して一年と2ヶ月以上経っていたわけで。

 いやぁ~時間が経つのって早いねぇ~!

 そして本編ではもうすぐオルクス篇も終了だよ!

 これからもぼちぼち(・・・・)やっていきますので、読者の皆様!今後ともよろしくお願いしまァーす!!m(_ _)m

















 シア「ダメです」


 へ?

 
 〜あとがきへ続く


第17話:カウントダウン〜真の歴史と神代の魔法〜

 

 

 ハサンside〜

 

 

 

 あれ?……此処は一体?

 

 気づけば周りは夜……いや違う暗闇の中に松明の灯りだけが灯る空間にいた。

 

 目の前には、松明に灯された古びた……霊廟?のようなものがある。髑髏と目隠しをした天使の装飾という、随分と趣味の悪い霊廟だ。

 

 ふと自分がいつもより息苦しいことに気づく。

 

 顔に触れると固く冷たい感触、翁の仮面だ…、いつの間につけていたんだろう?

 

 服装も昔、教団にいた頃のモノだ。

 

 いた頃(・・・)

 

 そもそも私は今まで何をしていたのだろう。何か鬼気迫る状況だったような気がするのだが……

 

 そう考え事をしていると……

 

 ハサン「……これは」

 

 気づくと私の周りに十八人の人影が現れる。皆、翁の証の髑髏の面を付けている。

 

 ハサン「ひょっとして……歴代の……翁様方?……」

 

 

 その次の瞬間、ズンッ と、とてつもないプレッシャーが霊廟から発せられる。

 

 ハサン「初代………様……ッ!?」

 

 

 視線を向けると霊廟の中から初代様が現れる。それと同時、場面が切り替わる。

 

 ハサン「えっ?」

 

 気がつくと私は、他の翁と一緒に横に並ばされ、初代様の眼前に跪いていた。

 

 私が端に居るということは、これは……代順?なのだろうか。

 そして私はここであることに気づく。

 

 動けないのだ

 

 いや、こうして初代様を前にすれば動く気はなくなるのは事実だが、そういう事ではない。

 

 指先一つ、ぴくりとも体を跪いた状態から動かすことができないのだ。まるで体全体が石にでもなったみたいに。

 

 この状態に私が困惑で思考がいっぱいになっている頃。初代様の眉間にシワが寄り、蒼白の瞳が血のようなどす黒い赤に変わる。

 

 その瞬間、列から一人の翁が前へ出てくる。

 

 全身の肌が燃やした炭のように黒く、スキンヘッドで、歪に肥大化した右手を黒い布で覆い隠している。

 

 自己改造により、異形の変化をしたその体躯は、猫背の為わかりにくいが、初代様に迫る2メートルと大柄である。

 

 その翁は前へ出るとその首を放おる様に下げると

 

 

 ザシュッ

 

 

初代様の一刀により、その翁の首が地面を転がった。

 

 

 ハサン「ひっ!」

 

 その光景に遂、私の悲鳴が漏れる。

 

 それに反応するように、他の翁達、そして初代様の怒りの視線が私に注がれる。

 

 ガシャ、ガシャと音を鳴らし初代様が私に迫る。突き刺さる視線に身がすくむ。

 

 ガシャッと足音が止まり遂に私の眼の前まで来た初代様は手に持つ剣を掲げる。

 

 ハサン「い……いやぁ…」

 

 

 ”山の翁“『 “首…” 』

 

 

 ハサン「いやぁぁああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハサン「いやぁあああああああッ!!」

 

 ユエ「ハサンッ!落ち着いて!……」

 

 

 ハサン「はっ!…、ゆ、ユエ……さん?」

 

 ユエ「ん、私……大丈夫?」

 

 

 

 気がつくと私は汗だくでベット(・・・)からガバっと起き上がり、傍らにいるユエさんに手を握られていた。

 

 そうだった、私は今異世界にいて、迷宮に南雲君を助けに行って、ユエさんに出会ったんだった。

 

 

 ハサン「……夢……?」

 

 今見たものは、夢だったのだろうか?でも、あの殺気も、あの血の匂いもただの幻とは思えない。あれは一体何だったのだろうか?

 

 ユエ「良かった……目が覚めて……」

 

 私が考え込む中、そう言って心底安心したような顔でユエさんが私に抱きつく。

 

 そうか……、どうやらうまく行ったらしい。ユエさんの感触を実感し、私達は無事生き残った事を理解する。

 

 ハサン「あっそういえば南雲君は……!」

 

 

 ハジメ「ここだハサン、無事目を覚ましたみたいだな」

 

 するとガチャッと部屋の扉を開けて出てきて南雲君が現れる。そんな彼に私は思い出したように聞く。

 

 ハサン「南雲君ッ!無事だったのですね……ここは一体何処なのでしょう?迷宮なのですか?こんな生活感のある部屋に…寝具まで……」

 

 

 そう、ここは迷宮の筈だ。空気の流れや、少し気配感知の範囲を広げれば魔物の気配も感じる。

 

 なのに、まるで日の下のように明るく、洋式の屋敷のような部屋に立派なベット、おまけに二人の服装も私が最後に見たものから変わっていた。

 

 ついでに私も男物と思われる寝間着に着替えさせられていた。

 

 ハジメ「あぁ、順序立てて説明する。まずここは━━

 

 

 

 

      ━━解放者(・・・)の住処だ」

 

 

 私は南雲君達が起きてから一週間は眠っていたらしい。その間にあったあらまし、南雲君達が起きたときの状況や、今着ているこの服など他愛のない話を特にユエさんから聞きながら、私は南雲君とユエさんに案内されるままにこの施設、ここオルクス大迷宮を作った解放者(・・・)のアジトを練り歩く。

 

 因みに南雲君は恥ずかしそうに外方を向き終始無言だ……

 

 遂に裸で同衾を許してしまうとは……香織ごめんなさい、もう手遅れかもしれない…………それと

 

 ハサン「南雲君……その……()は駄目でしたか?……」

 

 ハジメ「あ?あぁそういやまだ言ってなかったな別にハサンが気に病むことじゃねぇよ。な?ユエ」

 

 ユエ「……ん、ハジメがそう言うなら……私ももう……気にしない」

 

 私は今南雲君の顔に巻かれている包帯について指摘する。あのとき、人型ヒュドラの銀閃光に焼かれた彼の右目は欠損してしまい、腕同様神水ではどうにもならなかったらしい。

 

 不甲斐ない……彼等は気にするなと言うけれど、私は己の未熟さを責めずにはいられなかった。

 

 

 

 さて話は案内に戻り、まずは外、何故先に外かというと、話を聞くに中の探索となると色々と時間がかかると思い、こちらを早めに済ませようとの魂胆だ。

 目に入ったのは太陽、もちろんここは先程も確認した通り地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いている。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず〝太陽〟と称した。

 

 

 ユエ「……夜になると月や星みたいになる」

 

 ハジメ「俺も最初は驚いたよ」

 

 ハサン「………凄いですね」

 

 

 次に、注目するのは耳に心地良い水の音。この部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるらしいのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようで、もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

 

 川から少し離れたところには大きな畑もある。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋、動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけで三人いても問題ない量の自炊ができそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

 次に案内されたのは、先程私達がいた屋敷、その風体は建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

 

 石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触り。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいた私達には少し眩しいくらいだ。

 どうやら三階建てになっているらしく、上まで吹き抜けになっている。

 

 一、二階と順に見ていく、長年使われていないというのに

、荒れることもなく管理維持だけはしているみたいだ。

 暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレ、どれも清潔な状態が保たれている。

 

 更に奥へ行くと再び外に出た。そこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。

 

 ハサン「ひょっとしてこれは……!」

 

 何となくだが察しがついた私が二人を見ると、南雲君とユエさんがニヤニヤした顔で魔法陣に魔力を注ぐ。案の定、ライオンの口から勢いよく温水が飛び出した。どこの世界でも水を吐くのはライオンというのがお約束らしい。

 

 ハサン「お風呂ですか……いいですね、確かに入る暇もありませんでしたから……」

 

 奈落突入後の連戦、そして先程の寝汗で気持ち悪い体を擦りながらその浴場に目を奪われる私。

 

 ユエ「一緒に入る?」

 

 と、そこでニコニコのユエさんが私をお風呂に誘う、だが、本当に心苦しいのだが私はそれを渋顔で返す。

 

 ハサン「すみませんユエさん、申し出は嬉しいんですが私は宗教上他人にあまり肌を見せてはいけない習わしでして、お風呂はどうか別でお願いします。」

 

 ハジメ「あ~、そういやお前、夏の制服も先生に言って長袖のインナー着てたもんなぁ」

 

 ユエ「ぶぅ〜〜ッここじゃ……そんなの関係ない……それに……」

 

 

 

 ハサン「……それに……?」

 

 

 ユエ「………やっぱり……なんでもない……ごめんなさい無理言って」

 

 

 なにか言いたげだったユエさんは、私の顔を見て急に押し黙ると、その先を言うのをやめた。

 

 ………また気をつかせてしまったな

 

 ハサン「いえ気にしないでください…仕方の無いことなので。でも誘ってくれてありがとうございます。」

 

 

 ハジメ「………。」

 

 

 

 

 

 その後も書斎、工房と続き、いよいよ三階に入る。

 

 ハサン「ここが、()の……」

 

 ハジメ「あぁ」

 

 

 三階は一部屋しかない、奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。

 

 そしてその奥には、反逆……いや、解放者オスカー・オルクスの遺体が鎮座していたという無人の玉座があった。

 

 私は前もってこの部屋の話は二人から聞いていた。なんでもこここそがオルクス大迷宮のゴールにして攻略の報酬、この世界の真の歴史と王宮の座学で習った伝説上の存在、神代魔法が修得できるらしい。

 

 

 ところで、そのオスカー某の遺体の行方はというと、南雲君達がちゃんと埋めておいたらしい。

 

 

 

 

 畑に……肥料として…………

 

 

 

 

 後で掘り起こしてちゃんと埋葬してあげようッ!可哀想すぎる!大丈夫かな?まだ土の中で分解されてないかな!?

 

 閑話休題

 

 私は魔法陣に足を踏み入れる。そして私が魔法陣の中央まで来た瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

 眩しさに目を手で覆った直後、奈落に突入してから今に至るまでの出来事が走馬灯のように脳内に駆け巡る。

 

 やがて光が収まり、目を開けた私の目の前には、黒衣の青年が立っていた。

 

 その青年は語りだす。

 

 オスカー『「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?

 ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」』

 

 ここも知っている。これはあくまでも記録、彼が今日まで生き長らえたわけではない。

 

 私達の世界で言うところの何百、何千年か越しのビデオレターのようなものだ。

 そうして始まったオスカーの話は、やはりと言っていいか、聖教教会で教わった歴史やユエさんに聞かされた反逆者の話とは大きく異なったものだった。

 

 

  それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

 

 

 神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は〝神敵〟だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

 だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、〝解放者〟と呼ばれた集団だという。

 

 彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか〝解放者〟のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。〝解放者〟のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

 

 ここまでは私の中でもある程度予想できていた話だった、あまり当たってほしくなかった予想だが、そのため驚きはさほど大きくはなかった。しかし、ここから驚愕の情報がもたらされる。

 

 解放者達が結束しだしたと同時、なんとここトータスとは違う異世界(・・・)の管理者から三名の使者が送られた。

 

 その三名はそれぞれ、”セイバー“、“ライダー”、”キャスター“を名乗り、解放者達に協力を申し出たらしい。

 

 なんでも、トータスの神が近い将来、その異世界も標的にする可能性を演算した管理者が、神の抹殺をその三人に命じたそうだ。

 その三名は、彼らの世界でも選りすぐりの英傑らしく異界であるトータスでは幾分か力は劣るが、神の子孫たる解放者の中心の七名と同等の力を持っていた。

 

 

 異世界からの使者……これは偶然か?その使者達が何処か、わたしたちの状況と似ている気がする。

 

 いや彼らは私達と違い、自分達の世界から後押しされトータスに降り立っている。だがしかし、私の戦闘感がこの状況をただの偶然と断じるには早計ではないかと告げていた。

 

 

 オスカーの話は続く

 

 解放者達は、彼ら使者三人を快く受け入れ、共に協力していく中で確かな絆が生まれていった。

 

 そして遂に彼等は、〝神域〟と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。解放者のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人と異世界の使者三人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

 しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、〝解放者〟達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした〝反逆者〟のレッテルを貼られ〝解放者〟達は討たれていった。

 

 異世界の管理者はそんなものお構いなしに神を討てと使者達に命令する。だが使者達は、人々を傷つけたくない解放者達の意思を汲みそれを拒否する。

 命令拒否により補助を奪われた使者達は弱体化、“セイバー”は神に捕まり、彼女(・・)の特性を利用され一振りの剣に姿を変えられ、”ライダー“は解放者達の逃亡のため殿を務めるも致命傷を負い、その隙をつかれ記憶と力を封じられてしまう。

 結果は逃げ延びたは良いものの、すべてを奪われた()は虚無を生きる亡者のような抜け殻状態となり、何処かへと姿を消した。

 

 最後まで残ったのは中心の七人と弱体化した“キャスター”だけだった。

 世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、託すため。

 

 いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

 

 

 

 長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

 

 オスカー『「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが|()()()()()()()()()()()()()()」』

 

 

 ハサン「…………。」

 

 そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、私の脳裏に何かが侵入してくる。

 

 これも南雲君から聞いている。これが神代魔法”生成魔法“を刷り込む工程だ。しかし……

 

 ズキズキと頭が痛む、これは適正がある証拠だそうだが、魔物肉を食べる前は魔力のステータスが南雲君以下だった私に、そもそも魔法という分野自体の適性は低いと思うのだが……?

 

 やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。すると南雲君とユエさんが私に歩み寄る。

 

 ハジメ「ハサンも修得できたか?」

 

 ハサン「えぇ修得できました。そして適性もあるみたいです」

 

 ハジメ「えっ何故に?」

 

 ユエ「……あんまり痛そうじゃなかった……」

 

 ハサン「さぁ、何故なのか私が聞きたいですよ。それにあの程度の痛みは表情に出すほどのものではないのでって……あ」

 

 そう言いながら、私は自分のステータスプレートを確認してその合点がいく。

 

 ハサン「どうやら“薬品調合”に適正があるみたいです。向こうでも石から薬を作る技術は聞いたことがありましたがこっちでも可能なんですね」

 

 ”生成魔法“魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法だ。

 

 私の場合、この魔法を極めれば“薬品調合”から[+薬石鑑定]なんてものが派生すれば、鉱石に含まれる医薬的効能を発見、抽出し、様々な薬を調合することができるようになるかもしれない。

 

 直近で言えば神結晶、あれから得られるものは多いだろう。

神結晶をベースに色んな鉱石と薬草をかけ合わせれば、様々な効能の薬を作ることができる。

 

 神水を使えばすべて解決すると思うかもしれないが、ただでさえ神水は貴重だ。ここは異世界、未知の病原菌なんかもあるかも知れない。病にかかる度に神水一本使うのはとても勿体ない。ならば神水一本から様々な薬をできるだけ多く生み出すほうが効率がいいと私は考える。

 

 ハサン「南雲君、ユエさん……しばらくここで滞在いたしませんか?」

 

 二人から神代魔法の話を聞いたときから私の頭の中では既に香織達との合流よりも神代魔法収集に考えをシフトさせていた。

 

 二人がここの書斎で調べ物をしたとき見つけた情報によると、他の七大迷宮にも神代魔法が眠っているらしい。

 

 その全てを探し出せばいずれ元の世界に帰る方法を見つけることができるかも知れないという話だ。

 

 帰る宛のないままただ合流よりも、確実な逃げ道を確保したうえで彼女たちに会いに行けば、戦争なんかそっちのけで元の世界に連れ戻すことが可能だ。

 

 香織、雫、コウちゃんみんなに危険を強いる必要はない。故に私達だけで行動するのが効率的だ。

 

 勿論、先を急ぎたい気持ちもあるが、七大迷宮すべてがここオルクスと同じレベルの難易度なら……私にはまだ力が足りない

 

 急がば回れ、せいてはことを仕損じる等の言葉があるように急ぐのなら寧ろ、万全の準備をしたほうが良い。

 

 私の提案に南雲君が返す。

 

 ハジメ「ハサンも同じ考えか……実は俺達がここに留まってたのも、ハサンが目を覚ますのを待つっていうのと、ここでやれる限り可能なことをやってしまおうってのが理由だ。」

 

 ハサン「そうだったんですね。ですが……ユエさんはよろしいのですか?」

 

 ユエ「ハジメとハサン……二人と一緒ならどこでもいい」

 

 三百年も地下深くに封印されていたのだから一秒でも早く外に出たいだろうと思ったのですが、どうやらそういうことらしいです。

 

 南雲君はまだ分かるのですが私もとは……なんだか照れくさいですね。

 

 私が照れ隠しに顔を背けていると、ふと徐ろに南雲君が口を開く。……、

 

 

 ハジメ「さて、話はまとまったって事で、俺達も色々聞きたくてなぁ、なぁ?ハサン」

 

 ユエ「んっ!」

 

 

 ハサン「な、何で……しょう?」

 

 二人からいい知れぬ圧が発せられる。それはあのとき、再開したときの尋問に何処か雰囲気が似ている。なんだか嫌な予感がする。

 

 ハジメ「ハサン、アレは何だ?」

 

 ハサン「あ……アレ……とは?」

 

 

 あぁ、やっぱり来たか。まぁ当然の疑問だろうな、いきなり目から血を流すわ、急に変身するわで、初代様の事は私も意識がなかったからどうなったかは詳しくは分からないが、しっかりと現れてくれたのは何となくだが分かる。

 

 苦し紛れに誤魔化してはみたが……どうやら逆効果だったらしい。南雲君は続ける。

 

 ハジメ「あぁ、ただ一口にアレって言っても分かんねぇよなッすまんすまん、じゃあ順を追って聞いてくわ

 

 まず、あの出血はなんだ?」

 

 ハサン「え、えっとぉ~……ヒ、ヒュドラにやられてぇ~」

 

 ユエ「ん、嘘」

 

 ハジメ「今のは俺でもわかる」

 

 くぅ……ッこの一年で私が特に訛ったのはこの腹芸だ。大切な友達ができた。すっかりほだされ、情が湧き、そんな彼らに嘘をつきたくないという私の浅ましい心が、完全に露呈してしまっている。

 

 そんな私にユエさんが近づき私の手を握る。私はすぐにその手を解こうとするが、その予感を感じたのかユエさんの手の力がいっそう強くなる。

 

 私のステータスなら魔法にステータスを振っているユエさんの力なんてあっという間に振り解けるのだが、ユエさんから感じる必死の圧に気圧されただ大人しく手を握られる。

 

 ユエ「ハサン……私達は仲間……でしょ?全部話して欲しいのは……高望みなんだろうけど……出来るだけ隠し事は……してほしくはない。」

 

 ハサン「あ…、ん…………」

 

 ユエさんの必死の願いに答えてやりたい気持ちになる。だけどこれから彼らに余計な心配はかけたくない。

 

 結局言い淀む私に南雲君が再び口を挟む

 

 ハジメ「別に、ユエみたいな優しい理由じゃないんだが、これからあんなことが度々あったら普通に困る。原因は把握しておきたい。うじうじ言ってないでさっさと話せ。」

 

 ユエ「ハジメ……め!」

 

 横柄な南雲君の言い方にユエさんが注意する。確かに言い方は悪いが、それなら言わないといけない理由ができて、大義名分になる。

 

 私は恐る恐る口を開く。

 

 ハサン「アレは、魔眼の暴走によるものです……」

 

 ユエ「……暴走?」

 

 ハサン「私の魔眼が初代様の手助けによって、ようやく機能しているのは前に話しましたよね?」

 

 ハサン「あぁ、そうだな」

 

 ユエ「…………まさか」

 

 私の言葉にユエさんが合点がいったように目を見開く……だけどその表情は怒気に歪む……あの〜なにを怒っていらしゃるんです!?

 

 取りあえず話を続ける

 

 ハサン「え、えぇ、あのとき初代様から一方的に接続を絶たれた事により魔眼本来の性質、魔眼が映す刺激が私に返ってきていたんです。私の脳と眼球はその”死“の刺激に耐えられず、あのようなこと……に……?」

 

 ユエ「あのクソジジィッ……今度会ったら……顔面に上級魔法ぶち込むッ

 

 ハサン「クソジジィッ!?」

 

 何故か私の話を聞いていたユエさんが怒髪衝天状態になって背後に雷を纏った龍の幻覚が見える気がする。

 

 しかも初代様をクソジジィ呼ばわりッ!?私が初代様と変わっている間に一体何が!?

 

 ハジメ「落ち着けユエ、それをやったらハサンの顔面にも上級魔法打ち込む事と同じだろうが」

 

 ユエ「むぅ~ッ人質を取るとは………どこまでも悪辣なジジィ」

 

 

 そんなユエさんを宥めるように南雲君が言い放つ。奈落で再会してから彼をマトモな人だと思ったのは初めてかもしれない。

 

 それにしても、ユエさん!それ以上はやめてぇええ!!その程度で初代様が目くじら立てるとも思いませんが、なんか怖いぃ〜!!

 

 ハジメ「なるほど、あの出血についてはわかった。だから鼻血も出てたわけか……。よし、次はその老害についてだ。どういった原理であの屍野郎は現れた?」

 

 アンタもかーい!!何ならユエさんよりも口が汚いッ

ほんとに何があったの!?何で二人共そんなに初代様に敵意ましましなの!?

 

 私は質問に答える前に二人に聞いた。

 

 ハサン「えっと……お二人共、私が眠っている間に初代様と何が?」

 

 私の問いに南雲君とユエさんは目を合わせて一つうなずくと

 

 ハジメ「獲物(人型ヒュドラ)を横取りされた」

 

 ユエ「獲物(ハジメの看病)を横取りされた」

 

 と同時に言った。アレぇ〜?おかしいな同じこと言っているはずなのにニュアンスが噛み合っていないような気がする。息が合っているのか合ってないのか分からない二人の言葉に、苦笑する私をおいて二人は続けた。

 

 ハジメ「人型野郎は俺達でも十分ヤレた。それをあいつは横から掠め取りやがった。」

 

 ユエ「あいつは……3時間経ったてから……炎に包まれたと思ったらてハサンに戻った。……そしてその3時間……ずっとハジメの看病横取りされた……ぶぅぅ……。」

 

 そうして二人は口々に愚痴を言い合っていく。よくわからんが二人のプライドと煩悩による逆恨みってことでいいのだろうか?仮にも、原初の暗殺者相手にすごいなこの二人は……。私は一周回って尊敬の眼差しを向ける。

 しかし、お陰でいい感じに話が逸れてきた。

 

 できればこのまま……

 

 ユエ「それで……ハサン……」

 

 ハジメ「話の続き何だが……」

 

 駄目だったみたいです。

 

 ユエさん達の圧に耐えかねた私は、仕方なく技能“天使降臨”について説明した。

 

 ハサン「……初代様は私の”天使降臨“という技能で、私の体を依り代にこちらに現界されたのです。」

 

 ユエ「ん……あのクソジジィもそんなこと言ってた。」

 

 ハジメ「俗に言う口寄せ、いや憑依ってやつか」

 

 ハサン「まぁ…、そんなところです。ですが前も話した通り、初代様は今も尚ご健在です。今いる場所から自身の魂の一端を切り分け、縁のある私に飛ばしているのです。」

 

 ユエ「高みの見物……」

 

 ハジメ「言ってやるなユエ、暗殺なんて根暗なこと思いつくやつだ。正面切って戦うのが怖いんだろうぜ」

 

 この二人は初代様の揚げ足を取らないと気がすまないのか、クソジジィ呼びを止めないし、私の説明の合間に、ちょっと小馬鹿にしたように合いの手を入れてくる。

 だいたい、暗殺者は元来臆病なのが普通だ。あと現役時代はどうかは知らないが武器に大剣を選ぶ以上、初代様は暗殺者でありながら白兵戦を戦う度胸があり寧ろ勇敢な方だと私は思うのだが……

 

 ハジメ「しかし、魂の一端であの強さってやばすぎんだろ」

 

 ユエ「ん……反則レベル」

 

 そんな二人へと苦笑していると南雲君が更に聞いてくる。

 

 ハジメ「その力、代償(・・)はあるのか?」

 

 ユエ「代償……?」

 

 南雲君の問にユエさんが訝しむ。それに対して南雲君が説明する。

 

 ハジメ「だってそうだろう。ハサンのその“天使降臨”は明らかに異質だ。この世界の魔法形態とは明らかに乖離した原理で動いてる。」

 

 ユエ「確かに………あのときのハサンからは、魔力を一切感じなかった。」

 

 南雲君の説明にユエさんが得心がいったというように目を見開く。その二人の様子を私はただ黙って見据える。

 

 ハジメ「そうだ。俺達は魔力って代償を支払って魔法やそれから派生した技能を行使する。対してお前のそれは魔力が使われた形跡は一切ない。

 

 あれだけの化け物喚び出すんだ。ノーリスクってな訳はないはずだ。

 ハサン、お前はアレの代償に何を支払った。」

 

 淡々と語る南雲君の言葉にユエさんが心配するような表情で私を見る。一瞬の沈黙の後……

 

 

 

 

 

 ハサン「特に何もありませんよ?強いて言うなら魔力を使わないから詠唱は必須ってところですかね。前のときのように隙がある時ならいざ知らず、緊迫した状況だと使えませんね。」

 

 と平然と答えた。

 

 ハジメ「……ステータスプレートを見せろ」

 

 私の言葉に納得がいかない南雲君が右手を出してきたので、私も淀みなくステータスプレートを差し出す。

 

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遠藤 霞 

 

 

(ハサン サッバーハ)17歳 女 レベル:79

 

天職:暗殺者          職業∶教祖 

 

筋力:1940

 

体力:3000

 

耐性:2250

 

敏捷:5110

 

魔力:700

 

魔耐:1640

 

 

 

技能:・山翁寵愛(ザバーニーヤ)[+並列思考]

 

 ・天使降臨〘18/18〙

 

・天性の肉体・直死の魔眼・遠視・縮地[+爆縮地]・隠形・気配遮断EX[+気配操作][+デコイ]・気配感知・先読み・状態異常無効・精神干渉無効・偽装・薬品調合[+薬草鑑定]・人体改造[+自己解析]・限界突破・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・天歩[+空力]・夜目・熱源感知・魔力感知・念話・言語理解

 

 

状態異常)) 薬物中毒X ※この症状は状態異常無効がつく前に発生したもの

 

====================================

 

 

 ハジメ「………………ヒュドラとの戦闘で少々ステータスが上がってるくらいで特に変わった感じは無いな……。」

 

 ユエ「……んっ」

 

 そう言って南雲君とユエさんは私のステータスプレートを覗き込む。しばらくして納得したのか南雲君はすんなりとステータスプレートを返してくれた。

 

 ハサン「えぇ、お二人が心配することはありませんよ」

 

 ハジメ「あぁ、俺達の考えすぎだったみたいだな……。だが、やっぱり不確定な力は信用できない……。今後、その技能は使用禁止だ」

 

 ユエ「魔眼も……!」

 

 ハサン「あはは〜……」

 

 二人に、”天使降臨“と“直視の魔眼”の使用を禁止されてしまった。特に直視の魔眼はユエさんには、私の血涙がかなりのトラウマになってしまったらしく、念を押されてしまった。今は特に痛くもないし、初代様の接続も健在な為大丈夫なのだが、まぁそれで二人が納得するなら、ここは頷いておこう。わざわざ過ぎ去った(・・・・・)藪を突く必要はない。

 

 そして思い出したように南雲君が言う。

 

 ハジメ「そういえばハサン、解放者の話、お前はどうするつもりだ?」

 

 ハサン「この世界の神についてですか?」

 

 ユエ「ん……ハサンは……どうしたい……?」

 

 二人は私が、オスカー・オルクス達、解放者の意志を継ぐか否かの事を聞いて来る。

 

 ハジメ「無論、俺は関わるつもりは断じて無い、この世界がどうなろうと知ったことじゃないからな、さっさと帰る方法探して、ユエと一緒に故郷に帰る。」

 

 ユエ「んっ!」

 

 口々に二人は自分の考えを口にする。それはまるで私も同じ道へと誘おうとしているように感じる……。

 

 だが、そんな気遣いをされなくても私の答えは決まっている。

 

 ハサン「えぇ、私もこの世界(・・・・)がどうなろうと、関係ありませんので……」

 

 ただ、この場では言わないだけだ……。

 

 ユエ「んっ!これからも一緒!!」

 

 ハサン「えぇ、これからも宜しくお願いします。」

 

 ユエさんの嬉しそうな笑顔に私も笑顔で返した。そう、とても自然な笑顔を……。

 

 ハジメ「………………。」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 騙すと、気持ちさえ切り替えてしまえば私の演技は完璧だ。

 

 

 

 

 

 あのあと、魔法陣の部屋を後にした私達はそれぞれの行動に分かれた。 

 南雲君はアーティファクト制作の作業へ、ユエさんは南雲君に付いていく、そして私は

 

 ハサン「ふ〜ッ まだ分解されてなくて良かったです。」

 

 畑にてオスカー・オルクスの遺体を掘り出していた。

 

 私は南雲くんに頼んで、棺桶に見立てた小舟を作って貰うと、そこに身綺麗にして、きれいな包帯で顔以外全てを覆い隠したオスカーを寝かせて、そのまま小川に流す。流れて行くオスカーへ手を合わせて黙祷を捧げた後、私は自分のステータスプレートを見る。

 

====================================

 

 

 

遠藤 霞

 

 

(ハサン サッバーハ)17歳 女 レベル:79

 

 

 

天職:暗殺者          職業∶教祖 

 

筋力:1940

 

体力:3000

 

耐性:2250

 

敏捷:5110

 

魔力:700

 

魔耐:1640

 

 

技能:・山翁寵愛ザバーニーヤ[+並列思考]

 

 ・天使降臨〘17/18〙

 

・天性の肉体・直死の魔眼・遠視・縮地[+爆縮地]・隠形・気配遮断EX[+気配操作][+デコイ]・気配感知・先読み・状態異常無効・精神干渉無効・偽装・薬品調合[+薬草鑑定]・人体改造[+自己解析]・限界突破・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・天歩[+空力]・夜目・熱源感知・魔力感知・念話・生成魔法・言語理解

 

状態異常)) 薬物中毒X ※この症状は状態異常無効がつく前に発生したもの

 

====================================

 

 

 そして、右手に意識を集中させる

 

 ハサン「妄想心音(ザバーニーヤ)………」

 

 

 やはり何も起こらない……私はここで目覚めてから自分の中にある何かが欠ける感覚を覚えていた。

 

 ”山翁寵愛(ザバーニーヤ)“に意識を集中させると、御業が一つ消えていることがわかった。

 

 恐らく、これが南雲君が言っていた“天使降臨”の代償だろう。生成魔法を修得した時、ステータスプレートの確認時に天使降臨の隣の謎のカウントが、一つ減っていたから気づくことができた。

 咄嗟に”偽装“を施しておいて正解だった。二人には違和感なく写ったことだろう。

 

 ハサン「あと……17回……」

 

 そう呟いて私は最初の夢について思い出していた。

 

 初代様の前に跪いて並ぶ私を除いた18人その中から初代様に首を切られた1人……。きっとアレが妄想心音の本来の使い手、呪腕のハサン様だろう。

 

 文献で見聞きした通りのお姿だった。

 

 きっとこのカウントは“天使降臨”を使える回数だ。

回数制限があって当然だろう。

 元来、当代の翁が初代様に救いを求めたならば、己に翁の資格ナシとし、首を断たれていたのだ……。それを私は、己の首の代わりに御業を一つ犠牲にすることで生き長らえているということだ。

 

 詠唱の通り、私は悪人だ。

 

本来なら私が受けなければならない罰を他の翁様に擦り付けていたのだから。あの怒りの視線も最もだ……。

 

 ハサン「もし……0になったら……ッ」

 

 

 私は己の肩を抱く。その言葉の先を想像するだけでも恐怖で震えが止まらない。

 

 それでも……私はユエさんたちを無視してでも”天使降臨“も“直視の魔眼”も使う事はやめないだろう。

 

 なんせ私は……神を殺さなければならないッ!

 

 この世界がどうなろうと関係ない、この言葉に嘘はない…、だがわたしたちの世界に危険が及ぶのなら話は別だ。

 

 オスカーの話で出た異世界、

 

これがもし私達の世界だったら……?

そこの世界の管理者、そいつが演算したエヒトの侵攻が本当に起こるとしたら……?

 

 考え過ぎ……かもしれないが、ありえない話ではない、最悪は想定すべきだ。なんせ私達をこの世界に誘拐してきている時点で、異世界への干渉は既に可能なわけだ。

 それに、南雲君達が神代魔法を手に入れて元の世界に帰れるようになったとて、それをエヒトがみすみす見逃すはずが無い。

 

 ならばどのみち、後顧の憂いは絶たなければならない。

 

 なに、私のやることは変わらない……暗殺だ。

 

 解放者達が倒そうとしていた以上、奴は殺せる存在だ。

 

 生きているのなら、たとえ、どんな強大な存在でも殺してみせる。

 

 しかし、仮にも奴は神を名乗っている。神代魔法の収集は必須。南雲君達との同行は避けられないだろう。

 

 故に、悟られてはならない。

 

 ここ、トータスという檻から逃げ出したい彼等を、これ以上巻き込めない。

 

 二人は十ニ分に虐げられた。

ならばもう自由(・・)になっても良いはずだッ!

 

 

 

 

 ……自由……か……

 

 

 ふとそこで、私の脳裏にオスカーの言葉が過る。

 

 『君のこれからが、自由な意志の下にあらん事を━━ッ』

 

 

 

 自由……それは…私には絶対に手に入らないものだ……、

 

 多くの命を摘み取ってきた……

 

 多くの意志を踏み躙ってきた……

 

 多くの自由を……奪ってきた……

 

 

 私に……自由を得る権利はない……資格がない……

 

 

 

 オスカーを埋葬した方法だって、私の宗教のやり方だ。畑に埋められる。そんな埋葬はあんまりだと思い、自己満足でやったことだが……

 

 

 自由のために戦った彼等解放者にとっては、こんな型にハマった埋葬方法よりかは、南雲君達のような型破りで自由な埋葬方法の方が良かったりするのだろうか………

 

 

 

 ハサン「イヤ、無いなッ流石に!」

 

 

 私がそう結論付けた時、流される振動かオスカーの首が、カクンッと動いた気がした。

 

 まるで激しく同意と頷くように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、私は南雲君とユエさんの後、1人お風呂場にて久しぶりの湯浴みをした。

 

 そして”薬品調合“にて生み出した色落としを使って髪を洗う。 

 

 

 バシャッと頭からお湯をかぶると黒い水が一気に私の肢体を伝う。

 現れたのは今までの紫紺の髪ではなく南雲君同様、痛みへのストレスにより色の抜け落ちた白髪が交じるも、紫のライラックのような明るい紫の髪だった。

 

 私は前髪をかき上げ視界をクリアにし、風呂場に備え付けられた鏡に映る己を見据える。

 

 

 ハサン「お前は何者だ」

 

 紅い虹彩が交じる蒼眼を睨みつけ、私は私に問いを投げかける

 

 ハサン「決まっている……第二十代目山の翁、ハサン・サッバーハ━━━暗殺者だ━━。」

 

 あのとき、初代様から接続を断たれたのは、私が不甲斐なかったから。

 

 心を乱し、目を曇らせ、挙句の果てには南雲君とユエさんに迷惑をかけた。

 

 次はない……その為の警告

 

 我等山の翁、その行いは人道から外れるもの、だからこそ、畜生に堕ちんがために、冷徹に冷酷にあれど、人としての道理は通し切る。

 

 二人への義理立てのため、最期の暗殺まで魔眼も天使降臨も使うわけにはいかない。

 

 だが、たった2つ手札を封じられただけ、他にやり方はいくらでもある。

 ここからは今度こそ、怠惰も堕落も、腑抜けた態度も許されない。

 

 これからの旅、困難になることは必至。

 

 騙すと決めた、嫌われると決めた……。非情に徹しろ。旅の空気を壊さないために、表面では笑顔に徹し、常に心は冷たく、冷静であれ。

 

 この身、毛の一本、血の一滴に至るまで、目的完遂のための道具であれ。

 

 

 ハサン「覚悟を……決めろ……。」

 

 

 染髪料と共に、一切の堕落を洗い流した私は改めて鏡を見据える。

 

 そこに映っていたのは、かつて聖母などと呼ばれていた可憐な少女の面影はそこにはなく。

 

 いるのはただ、肩や腹、胸にかけて古傷が目立つ中、鍛え抜かれ、筋肉が隆起する肢体に、視線だけで敵を殺せそうな鋭い眼差しを待つ、血の凍った戦闘者の女だった……。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 sideout〜

 

 時は少し遡り、風呂場にて、ハジメは七晩目の風呂に浸かる。

 

 やはり日本人の性なのか、何回味わってもこの時間は至福だった。体の力を抜きだら~んとしながら天井の月を見つめる。

 

 だが、今日だけはその表情は晴れない。

 頭にあるのは元クラスメイト、今は大切な仲間のハサンについてだ。

 

 こればっかりは比べるものではないのは分っているが、あえて言わせてもらうと、奈落に落ちた自分と同じくらい、いや、それ以上に過酷な人生を歩んだ少女。

 そのくせ、素面じゃ一切弱音を吐かず、取ってつけたような笑顔を向ける。

 

 そんな彼女があの魔法陣の間にて最後に見せたあの笑顔……。

 

 とても自然なものに見えた、だがしかし、なぜだかハジメはそんな彼女に違和感を拭えずにいた。

 

 そうやって考え込んでしまっていたから気付けなかったのだろう。

 

 自分に忍び寄る存在に……

 

 

 ユエ「ハジメ……考え事?」

 

 ハジメ「あぁ、ハサンのことでちょっとな、あいつ……絶対なにか隠していやがる。」

 

 ユエ「ん……それは私も同意……だけど、またハサンのこと考えてる……むぅ~ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメ「………………………………なっ!?ユエ!?

 

 ハジメは完全に油断していた。なんせこの一週間、ユエからのアクションがめっきり鳴りを潜めていたからだ。初日の風呂も最大限の警戒をしていたのにも関わらず、結局ユエからのハプニングはなく、ちょっとだけ残念に思ったのはここだけの秘密だったりする。

 

 ユエ「むぅ~ッ……今気づいたぁ……?」

 

 ハジメ「す、すまん……じゃねぇッ!ユ…ユエさんや、俺は一人で入るって言ったよな?」

 

 少しご機嫌ななめなユエにとっさに謝るハジメだが、彼女が一糸まとわぬ姿であることを思い出し、油の切れた人形のようにギギギッと視線を逸らす。

 

 ユエ「……今まではハサンが眠っていたから……自重してた」

 

 ハジメ「そ……そうなのかぁ~ひぃぃいッ!

 

 ユエ「でも……今日からは……我慢しなくて良い」

 

 そう言ってユエはハジメの腕に自分の体を押し付けるようにして抱きつく。

 

 自分の腕に感じる柔らかい感触にハジメはつい悲鳴を漏らす。いくら変心しようとも、己の奥底に宿るチェリー根性は健在のハジメ。

 

 ハジメ「なぁ?……ユエさん……あ、当たってるんだが…?」

 

 怖ず怖ずと声をこぼすハジメ、その視線は逸らしきれず気がつけばユエのあられもない肢体に吸い寄せられてしまう。

 

 悲しいかなこれが男の性だろう。それが気のある女性のものとなるとなおさらだ。

 

 ユエ「フフ……当ててる」

 

 ハジメ「なぁッ!?お、おまっお前〜ッ///」

 

 そんなハジメに妖艶な笑みで返すユエ。そんなユエに完全にタジタジなハジメである。

 

 だが、ハジメも伊達に拗らせてはいない。既に賽が投げられているこの状況でも紳士を演じようとする。

 

 ハジメ「せ、せめて前を隠してくれ!タオルは沢山あっただろ!」

 

 それでもユエの追撃は終わらない。

 

 ユエ「むしろ見て……」

 

 ハジメ「はぁ!?

 

 そしてユエは、立ち上がりハジメの正面へと回り込む。

そして……

 

 ユエ「全部……ハジメのだから…………見てッ」

 

 両手を広げ己の体を晒すユエ

 

 ハジメ「なぁああああッ!?あ…、ああぁぁ……ッ!」

 

 ハジメは鼻の下を伸ばし、血走った目でユエを凝視する。それでも踏ん切りがつききれないハジメは未だヘタれる。

 

 ハジメ「え、……えぇえい!!俺は上がるからな!!」

 

 だが、いくらハジメがヘタレようと……

 

 ユエ「逃さないッ!」

 

 ユエはもう止まれない。弾けるような満面な笑みでハジメに飛びついた。

 

 ハジメ「ちょ、まて、あっ、アッーーーーー!!!

 

 

 

 その日、ハジメ(・・・) の断末魔が仮りそめの夜闇に木霊した………。

  

 

 

 

 

 

 

 






 ちょっとちょっと〜!困るよ〜君ぃ
 まだ本編にも登場してない人が出てこないでくれるかなぁ~

 シア「だぁ~れのせいだと思っているんですか誰のッ!!
    もう1年と2ヶ月なんですよ!?いつになったら私は登場するんですか!?」

 まぁまぁ待って頂戴な、あと……多分、2話くらいだから、ほら〜そう遠くないでしょ?

 シア「……」ガシャンッ

 あ、あの~どうしたんですか急にそんなどデカいハンマー持ち出したりして……

 シア「私の登場まで連投しなさぁぁああいッ!でぇぇえりゃぁあああああああッ!!

 いやいや、流石にそれは無━━━
━━━あびゃあああああああああッ!!


 ハジメ「翁月が死んだッ!!」

 ハサン、ユエ「「この人でなしぃー!!」」

 ハジメ「ユエ、お前は言ちゃ駄目だろぉ……」

 
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