エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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第16話 顔合わせ(前編)

 

【side.明日奈】

 

 

 アタシは今、これでもかってぐらいの頭痛の種に悩まされている。

 

 

「フシャアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「え、あの……」

 

「フゥーーー!!」

 

 

 主に友理(バカ)のせいで。

 

 

「うおっ!? あの子、メッチャ威嚇してるぞ」

 

「あの男子、何かやったのかなぁ?」

 

「オレには毛が逆立ってる猫の幻影が見える」

 

 

 野次馬(モブキャラ)も騒いでいるし、

 

 

「友理さんの敵はわたくしの敵です……!」

 

「何と、この場で神々の黄昏《ラグナロク》でも起こそうと言うのか永遠たる同胞《エターナルシスター》よ!! ……まあ、一旦落ち着こう友理?」

 

「ユユっち、明日奈の兄貴さんと確執あったっけ?」

 

 

 ヒロインたちも困惑している。

 

 

 1年A組の教室内は混沌としていた。

 それもこれも兄貴と友理、初の対面が切っ掛け。

 

「何でこうなるんだか……」

 

 つい少し前まで騒がしくも和やかな雰囲気だったのに。

 

 

 

~数十分前~

 

 

 

【side.友理】

 

 西園寺八千代の挨拶から始まった入学式も無事に終わり、ボクと明日奈……そして、この10年で出会ったヒロインたちと教室に向かっていた。

 

「おー! みんなユユっちと友達なんだ!?」

 

「知らない間に何人も……友理って顔が広いのね」

 

 いわゆる幼なじみ枠に入った凛子と小夜は純粋に驚いている。

 まあ彼女たちは住んでいる場所が遠いから、紹介したとしても滅多に会えないし……変わりすぎた人もいるからね!

 

 

「しかし、友理の友人たちが皆全て同じクラスとは……何という運命《デスティニー》! 神は我らに何かを求めてるのではないだろうか!?」

 

 

 ちょっとドッキリするぐらい的を得たことを言う瑠維。

 制服は普通なんだけど、眼帯・カラコン・包帯という三種の神器はきっちり装備している。ついでにキレッキレの意味の無いターンもしている。

 

 そして、そんな瑠維を見た明日奈はまた泣きそうになる!

 

 

「す、すごい個性的な友達もいるのねー。さすが友理、私なんかじゃ想像の斜め上の行動をする友理を予測できそうにないや」

 

 

 アハハハ、と乾いた笑いをして場を和まそうとする美江。

 

 高森美江は『ヴァルダン』のヒロインたちの中でたまたま主人公と隣の席同士だったことで仲良くなった少女だが、その自然体な言動で癒やされるファンも大勢いた。尖った部分の無い、正統派ヒロインのポジションなのだ。

 若草色の髪を首の辺りで結んでいる姿が最高です。

 

 

「ふふ、でもいいじゃないか。私はそんな友理とだから友人になったんだ」

 

 

 美江とは違って、瑠維の性格を純粋に楽しんでいるめぐみ。

 

 鬼島めぐみは高校生とは思えないぐらい凜々しく整った顔立ちの少女であり、『ヴァルダン』の戦闘パートで活躍数が1番多いヒロインでもある。

 燃えるような赤髪が凜々しさを際立たせる。

 原作だとクラスの副委員長になったはずだけど、今回はどうだろう?

 

 と、ここまでは割と原作とも大きな違いはなく普通だ。

 瑠維が窓からさした光に「くっ、浄化の光《カタルシス・ライト》が!?」と楽しそうに中二ってるのが気になるが、普通と言ったら普通なのだ。

 

 

 ――問題は、瑠維並みに原作とキャラが違うヒロインが1人いること。

 

 

 

「さすが友理さんです! ご友人の皆様方は性格も違い、個性的な人もいるというのに友理さんを中心に纏まっています!」

 

 

 このやけにボクを持ち上げる金髪の育ちがよさそうなハーフのお嬢様こそが、瑠維と同じく原作乖離が激しいヒロインであるマヤだ。

 

 『ヴァルダン』のヒロインの中で、傲慢なお嬢様キャラである聖華院マヤ。

 その他のヒロインと比べても初期の好感度がブッチギリで低いので、メインヒロインの中では1番攻略が難しいヒロインだったはず、なのだが……

 

「同じクラスになれたのも何かの縁――いえ、そちらの黒羽さんが言うように運命というものなのでしょう。ワタクシと友理さんを結ぶ、ね」

 

 そんな後半のセリフが幸せいっぱいの表情と共に、歩きながら器用にボクへしなだれ掛かるマヤ。

 やめて、周囲の視線が痛いです。

 特に明日奈からの「どぉいうことか説明しろぉおおおおおおおお!!」的な鬼の形相と視線が怖くて堪らない。

 

 

 ボクがやったのは、マヤに訪れる予定だった残酷な出来事を未然に防いだだけなんだ! そこから至って普通の友人関係に落ち着いたはずなんだ! 何で百合な香りがする美人になったのか、瑠維と同じく意味不明なんだよ!!

 

 この際なので、肩にスリスリするマヤへ問いかける。

 

「なあ、マヤ? ボクたち……友達だよね?」

 

「はい! 今は(・・)お友達の関係ですね! でも、ゆくゆくは……」

 

 ゆくゆくは……何!? どうなるの!? ボクってマヤにどうされちゃうの!? 「一緒に堕ちましょう」とか迫られないよね? ね!? 気付いたらあられもない姿でベッドに潜り込んでいる展開とか未来永劫来ないよね!?

 前世は男だから、本当にそんなことになったらボク自身どうなっちゃうか想像つかないんだよ!

 

「えっと……聖華院さんだっけ?」

 

「あら? どうかなさいました?」

 

 と、ここで明日奈がマヤに話かける。

 どこか探るような、慎重な言い方で。

 

「アタシも友理からは名前ぐらいしか聞いたことなかったんだけど、もしかして、いいところのお嬢様なの?」

 

「えぇ。聖華院家は由緒正しい家柄で、兄が後継者となります。……そのおかげで、わたくしは存分に友理さんと添い遂げ――」

 

「ゲフンゲフン! そ、そんな家なら習い事とかもやってるのかしら!? こう、如何にもなのを!?」

 

「もちろんです! 幼い頃からずっと(・・・)ピアノを習っておりまして、コンクールで優勝したことも何度だってあるのですから!」

 

「――っ!?」

 

 明日奈は驚愕で表情が固まった。

 

 

 気持ちは分かるけどね。原作を知っていれば、聖華院マヤがピアノを今も続けているというのが、どれ程の衝撃か。

 

 

「思い出したわ。確か何かの雑誌でも出ていたわよね? コンクールに優勝した時の写真で、将来を期待されたピアニストって……」

 

「おー! 有名人だったんだ!」

 

「何と! 鎮魂歌《レクイエム》もピアノでできるか!?」

 

「そんな人と同じクラスだなんて、家族に自慢できちゃうなー」

 

「聖華院さんがピアノを弾くとなると、絵になるだろうね……」

 

「……実際、マヤの演奏はプロと遜色ないよ」

 

「やだ! 友理さんったら、もうもうもう~!」

 

 みんなからの興味よりもボクからの褒め言葉の方が嬉しいのか、頬に両手を当てて“イヤンイヤン”と恥ずかしがるマヤ。

 

 その隙を見逃さず、明日奈がコッソリと近づいてきた。

 

「マヤちゃん、現役のピアニストなんだ……」

 

「毎年コンクールで1番ばかり取る腕前だ。天才の類いだな」

 

「ピアノが、弾けるのね……」

 

「……うん、弾けるよ。とっても綺麗な指をしている」

 

「………………ありがと。アンタ、すごいよ」

 

「……ヒロインが悲しむことなんか、神が許してもボクが許さん」

 

 いつもボクの暗躍に対してブツブツ文句ばかり言う明日奈は、この時ばかりはしんみりとしながらも嬉しそうな顔をしていた。

 他人がボクらの会話を聞いても何のことかサッパリだろう。

 でも原作で聖華院マヤに起こった悲劇を知る者からすれば、どんなに性格や趣向が変わろうとも、今のマヤを見て嬉しく思うはずだ。

 

「はぁ、これで瑠維ちゃんが中二病を患っていなければ、暗躍も悪くないわねって素直に友理を褒められるんだけど……」

 

「上げてから落とすなよ」

 

 いい話で終わろうとしてたのに、なぜそこで瑠維の話題を出す?

 

 

「フフフ! 我の登場シーンで壮大な曲を聖華院殿が漆黒の鍵盤箱《グランド・ピアノ》で演奏すれば、さぞオーディエンスも盛り上がるだろう!」

 

「あの、わたくしの楽器を変な呼び方しないでくれません?」

 

 

 ………………

 

 

(話題に出されても文句言えねぇ……)

 

 

 やっぱこの2人に関しては、責任の取り方考えないといけないかも。

 

 瑠維はまだしも、マヤはどうするべきか……と悩んでいたら、これから1年間みんなと一緒に勉学をする教室に着いた。

 

 事前に明日奈から聞いた。

 兄貴――香坂拓也なら先に教室へ向かったと。

 

 つまり、この扉の向こうに『ヴァルダン』の主人公がいるのだ!

 今日からの3年間ボクの前に立ち塞がる因縁の相手が!

 

「ふぅ、この扉を開ければ――」

 

「ユユっち何してるのさ? 早く入ろうよ!」

 

 扉を前にして決意を新たにしようとしたら、空気を読めない凛子が教室の扉を力強く開けてしまった。

 早いよ凛子!

 そんなんだから、小学生の頃に一時期”KY”って言われたんだぞ!

 

 

 そして、扉の先には――

 

 

「……香坂……拓也……!」

 

「ゲッ!? 兄貴……!」

 

「よう明日奈、遅かったな。あれ? 隣の子ってもしかして……」

 

 

 ――憎き『ヴァルダン』の主人公、香坂拓也が立っていた!

 

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