エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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第19話 模擬戦直前

 

【side.明日奈】

 

「友理対兄貴かぁ……どっちが勝つのかしら?」

 

「う~……! ユウちゃんケガしなきゃいいけど~」

 

 アタシを含めたヒロインたちと大勢の新入生は、第1グラウンドの観客席で各クラス1試合行われる異能を使った模擬戦の開始を待っていた。

 

 

 

 教室から移動したアタシたちの目に飛び込んで来たのは、あまりにも広すぎる『アマテラス特殊総合学園』が誇る第1グラウンド。

 学園案内のパンフレットで広さを知ってはいたけど、実際に見ると端から端まで移動するだけで時間が掛かりそうだと思ってしまう。

 これが基本、異能を十全に扱ってもらうためだけにあると言うんだから驚きだわ。他は文化祭の出し物のために使うぐらいだって話だし。

 

 第1グラウンドの端にはスタジアムにあるような観客席が半円状に広がっていて、全校生徒を集めてもまだ余裕がある程の広さを誇っていた。

 違いがあるとすれば正面に強化ガラスが張られていることと、観客席自体が地中に埋まっている基礎も含めて最新の技術を使って丈夫に設計されていることね。パンフレットの説明書きでも『戦闘機による爆撃程度なら余裕で耐えられます』って書いてあった。

 

 観客席には新入生だけでなく、2年、3年の先輩たちも「今年の後輩はどんなのかな」と見に来ているし、教員や一部のお偉いさんっぽい人たちまでアタシたち生徒が座る席とは別の席で談笑しながら待っていた。

 

 ほぼ全ての学園関係者がいるだけあって、まだ模擬戦が始まっていないのにスポーツの公式試合前のような静かな興奮が辺りを包んでいる。

 というか、本当に野球かサッカーの観戦でもしに来た気分だわ。

 購買部の人が「今だけの特別価格だよ!」って言いながら観客席を回って、ポップコーンや炭酸水を売っているし。よく見れば先輩の学生たちは食券を賭け金代わりにトトカルチョ(勝敗を予想するギャンブルの一種)をしているようだった。

 

 さっき見かけた野々上先生に「アレって学園的にいいの?」と聞いたら、

 

「学園が創設した頃からあるものだし、あくまで賭ける対象も食券限定だから許されているらしいのよ。生徒会の人がやり過ぎていないか見張っているから、常識の範囲でならアナタたちもやったら?」

 

 そんな風に軽く返されてしまったわ。

 学園公認のギャンブルって……それでいいのかしら『ヴァルダン』の世界?

 

 ちなみに、アタシは見逃さなかった。

 野々上先生の手に食券が何枚か握られているのを。先生方も参加するのね、と呆れてしまう。

 

 

 で、本来そのトトカルチョを見張る役目の1人が、新入生用の席でさっきからソワソワしていて落ち着かない。

 

 

「秋穂さん、友理なら多分大丈夫ですって」

 

「学園のシステムは信用しているけど、それでも心配なものは心配なんだよ明日奈ちゃぁあああああああああああん!!」

 

 涙目で肩を揺すってくる秋穂さんが少しだけ鬱陶しい。

 重度のシスコンなのは分かっていたけど、時と場合を考えて欲しいわ。

 

(そんなんだから体よく追い出されたんですよ……)

 

 最初は生徒会の人たちと見張っていたらしいんだけど、あんまりにも友理を心配しすぎて邪魔になっていたようで、生徒会長であるサブヒロインの八千代さんから「新入生の観客席で見張っていなさい」と追い出されていた。

 

 

 八千代さん、いつも笑顔だからこそ怒ると恐いキャラなのを再認識したわ。アニメでは背後に刀を担いだ鬼のスタ〇ドが控えていたし。

 

 

 秋穂さんが泣き顔だからか、他のヒロインたちも心配している。

 

「友理、大丈夫かなぁ?」

 

「何とも言えないな。私は友理の異能を全く知らないんだ」

 

「私も複合系の異能と言うことぐらいしか友理から聞かされていないの。どうも自分の異能をギリギリまで隠しておきたいらしくて……」

 

 美江ちゃん、めぐみちゃん、小夜といった面々は秋穂さん程ではないけど友理を心配している。

 

 逆にそれ以外の子は全く心配している様子がなかった。

 

「友理は強いよ! 負ける姿が想像できないぐらい」

 

「我が友には常に約束されし勝利の力《エクスカリバー》が備わっている。その悪魔のごとき力《ディアボロス》を只人がどうにかできると思えん」

 

「友理さんは“やる”と言ったら必ずやる人です! ……そして信じて待つわたくしは、まるで家庭で夫を待つ妻のような……うへへへ」

 

 凛子はともかく、瑠維ちゃんとマヤちゃんはもう少しどうにかならないかしら?

 瑠維ちゃんは当て字に《エクスカリバー》とか《ディアボロス》やらをいっぺんに使っているせいで、聞いても意味分からない中二言語になってる。

 マヤちゃんは……もう手遅れね。妄想でもしてるのかイヤンイヤンやって、背後に百合の花が咲き乱れてる幻が見えるわ。

 

 

 で、変に関係が変わっている2人がいるんで……帰りたい。

 

 

「……マヤちゃんはユウちゃんのことが心配じゃないの?」

 

「あら秋穂お姉様。心配するのは当然の気持ちですが、信じて待つのも当然の気持ちですよ? むしろ心配のしすぎで友理さんに迷惑が掛かるのでは?」

 

「妹を心配するのは姉として当たり前の事なんだよ?」

 

「なら信じて待つのは友人として当たり前のことですね秋穂お姉様?」

 

「もう~普通に“秋穂さん”か“先輩”でいいって言ってるよね?」

 

「いえいえ将来的にどうなるか分かりませんから、ね?」

 

「うふふ~相変わらずおもしろいこと言うね~マヤちゃんは~」

 

「おほほ、そちらもそろそろ妹離れが必要ではありませんか?」

 

 

 うふふ、おほほ、と笑い合っている秋穂さんとマヤちゃんの周囲は――ブリザードみたいに気温が下がって感じられた。私たち以外の周囲にいる生徒が、突然気温が下がりだしたかのような肌寒さに不思議そうな顔をしている。

 ついでに、背後で龍と虎が睨み合っているのが目の錯覚だと信じたい。

 

(何でヒロイン2人が友理を巡って争ってるのよ……!)

 

 原因が当の本人にあるのが分かっているだけに頭が痛くなる。

 18禁ゲーム『ヴァルダン』ではどうなのか知らないけど、アニメの『ヴァルダン』では特別仲が良いわけでも悪いわけでもなかった柚木秋穂と聖華院マヤ。

 それが友理のやらかしによって、重度のシスコンvsガチの百合という対決に発展しそうなおかしな展開になっていた。

 

(こんなんだから、アタシも素直に褒められないのよ!)

 

 この10年間でアタシがやったことなんてたかが知れてる。その間に友理はどんどん行動して、最善と言えるかは――まあ置いといて、結果を残した。

 これはすごいことだって思う。

 だけど、暗躍した当人がアレ(・・)なんで……

 

「難儀よね。アタシも、あのバカも……」

 

「明日奈ちゃん? どうかしたの?」

 

「何でも――あ、模擬戦始まるみたいですよ秋穂さん」

 

「!? ユウちゃんはどこ!」

 

 観客席の上側にはいくつものモニターがあり、まだ誰もいないグラウンド中央や観客席などを映していた。その内1つのモニターの画面が切り替わって、『放送席』と書かれたプレートのある場所を映し出す。

 

 

『さあ皆さん! お待たせしました! これより学園の恒例行事、新入生同士により異能ありの模擬戦を開催しまーす! 司会は放送部の沖野栄華(おきのえいか)と――!』

 

『OBの富田尚文(とみたなおふみ)です』

 

『――の2人が、お送りしまーす!!』

 

 

 モニターには元気一杯といった様子のメガネの女子がマイクを握りしめ、疲れ切ったサラリーマンみたいな男性が隣に座っていた。

 

 

『富田さん! 昨年に続いてOBとして司会のご協力ありがとうございます! 実況は1人だとつまらないですからね!』

 

『そのために親戚筋だからという理由で、2年連続母さんを言いくるめられて連れてこられたオレの気持ちを考えたことある? 社会人なんだよ?』

 

『では、気になる1年A組の試合から始めようと思います!!』

 

『無視かよ。……その前に簡単なルール説明です』

 

 

 ず、随分と自由な実況ね。

 これも学園ならでは、ってやつなのかしら……

 

 

『では新入生のために説明しましょう! 模擬戦は1対1で、1試合最大15分の時間制限があります! 制限時間内に勝負がつかなければ引き分け。勝敗は相手が降参と言うか、ノックダウンしたら。または審判員の判断となります!』

 

『戦闘系異能で戦う大会のルールを少し簡単にした感じですね。公式大会だと細かい追加ルールがあったりしますので』

 

 

 この世界にはオリンピックと並んで人気がある、公式の異能力バトル。

 個人戦だけでなくチーム戦や特殊ルールの試合が行われ、テレビでもトップクラスの視聴率を誇っている。

 アタシは特殊ルールの中で『ポイント争奪』が好きね。決められた範囲に隠されたポイントメダルを時間内に1番多く取った方の勝ちってルール。

 友理は個人戦を見て、兄貴を倒すための糧にしてやるって食い入るように見ていて怖かった記憶がある。

 

 

『しかし富田さん? 戦闘にも使用できるような異能を使って安全性などは大丈夫でしょうか? 大ケガでもしたら学園の責任問題になるのでは!?』

 

『去年も同じ振りをしたよね? 異能を使った試合では“プロテクトフィールド”が周囲に張られているので、殺す気で戦っても死人は出ません』

 

 

 プロテクトフィールドは『Heartギア』を作った技術者たちが後に開発したとされる『保護領域発生装置』のことね。

 戦いで負うキズが、ゲームでいうHP(体力)を削るだけにする効果があるらしいわ。随分と都合のいい装置だけど、どうやって作ったんだか……

 

 

『そうこうしている内に選手の入場です! 第1試合、1年A組から柚木友理さん! 同じく1年A組から香坂拓也さん!』

 

 

 モニターの画面が変わって、グラウンドの中央に向かって歩く友理と兄貴の姿が映し出された。兄貴も教室の時と違って落ち着いているわね。

 2人とも戦いやすいようにジャージ姿だった。

 

 

『さて、我々は解説のために出場選手の異能に関する資料を貰っていますが、富田さんはどちらが勝つと思われますか! 私としても両選手の異能が特殊とのことで、予想がつきにくいというのが本音なのですが!』

 

『……難しいですね。両名とも複合系異能ですが、香坂さんは試合前にどれ程の準備をしていたかが勝敗を分けると思います。対して柚木さんですけど……解説が難しいですね。1つ言えるのは、この異能をどれだけ把握して使いこなせるかが鍵となるでしょう』

 

『資料だけだと全く分からねえよ、ってことですね! では実際に戦ってもらって学園の皆さんを驚かしてもらいますか!!』

 

『そうですね。今回ばかりは見てみないことには始まりません』

 

『では始めましょう! 模擬戦第1試合! 香坂拓也vs柚木友理!』

 

 

 グラウンドの中央で距離を取った2人が身構えた。

 そして――

 

 

『レディイイイイイイイイイッ……ファイト!!』

 

 

 戦いのゴングが鳴り響いた。

 

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