エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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 新章突入!
 今回は明日奈視点から。


第2章 氷の姫と地獄の猟犬
第22話 苦労する転生者たち


 

【side.明日奈】

 

 

「おはよ~母さ~ん」

 

「あら明日奈、今日は随分眠そうね?」

 

「うん。異能について本格的に試してる最中だから、1度集中すると時間が経ってて……」

 

「明日奈の異能はやれる幅が広いからね」

 

 

 

 あの入学式から3日が経った。

 

 例の模擬戦は反響が大きく、下手に学園で1人になると友理や兄貴について聞いてくる奴が多いから、何の行動でも友理を含めたヒロインの誰かと一緒にいることが多くなった。

 

 

 ……まさか、トイレまで一緒じゃないと質問攻めに遭うなんて。

 

 

 最初の1週間が過ぎていないからまだ何とも言えないけど、今のところ学園生活は順調。

 フラグ潰し・イベント潰しに忙しそうな友理は、毎日疲れた表情で帰っている。初期が1番大変なんですって。

 

 アニメでもそれなりに好きであった柚木友理(ただし、中身は男)が、昼食の飲み物に毎回のごとく栄養剤を飲んでいる光景は涙が出そうになるほど酷かった。クラス連中も、残念なものを見たような空気になるし。

 

 

 ――こんぐらい飲まないと、身体が持たないんだよ!

 

 

 アタシが「休みな」って言った時の、友理の答えがこれ。

 

 体はスポーツ系の部活連中に引けを取らないぐらい鍛えているし、持久走でも上位に食い込む体力を持っている友理だけど、兄貴がヒロインと起こすだろうイベントを事前に潰すため常に気を張っているせいで、精神的な負担が大きいみたい。

 

 (アタシにも兄貴の行動を逐一報告してくれって言うし……)

 

 兄貴――『ヴァルダン』の主人公である香坂拓也は、普通に学園生活を満喫している。それこそアタシの頑張りの成果として、原作よりも多い男友達との行動があることで偶然潰れたイベントがあるぐらい。

 

 

 でも、さすがは主人公ってところかしら?

 予想外のところでも原作イベントってのを引き起そうとしてるみたい。

 

 

 何せヒロインの数が多い。

 秋穂さんや八千代さんは学年が違うから楽だけど、同じクラスのヒロインたちへの対処で友理の疲れが溜まってる。

 四六時中アタシたちと行動しているわけじゃないから、どうしても目を離してしまう時がある。そんな時に限ってイベントが発生したりするらしい。

 

 昨日は確か、美江のイベントがそうだったわね。

 園芸部に見学しにいった主人公が早速仮入部していた美江と会い、「植物に興味あるんですか?」って聞かれる好感度アップイベント(友理の情報)。

 

 友理が部活連中に根回ししたうえで、美江と一緒に部活に必要な道具を取りに行って、兄貴と会わせないようにした――はずだったのに……兄貴の奴、学園の敷地内にある園芸部が管理する別の場所に迷い込んで、たまたま部活動中だった美江と2人っきりで鉢合わせそうになったそう。

 間一髪、友理が強制的に兄貴を排除(高速移動状態でラリアット&フェードアウト)させたから、どうにかなったと聞いた。

 

 (それに、瑠維ちゃんのルートを攻略って……)

 

 とても不安だ。

 なんせ、本来なら“瑠維ルート”に入ってからおおよそ半年掛かる一連のイベントを、今月中に終わらせると言っていた。

 

 今月は残りおおよそ3週間。

 そんな短期間で1人の人生におけるターニングポイントイベント、それを終わらせると宣言した友理は頭がおかしい。

 

 (なーんか、隠してるのよねぇアイツ……)

 

 友理は1日でも早く“瑠維ルート”を攻略したいらしく、焦りの感情が見え隠れしていた。

 理由を聞いても「どうせイベントが起こる可能性があるなら、早期に解決させたい」の一点張り。怪しい。絶対に何かを隠してる。

 

 (アイツ、その内に過労死しないわよね?)

 

 最近の忙しさを見ていると、笑い話で済まないところが恐ろしい。

 

 

「おはよーっす」

 

 

 考えごとをしていたら兄貴がやって来た。

 相変わらず寝癖が酷い。

 アニメでは本来の香坂明日奈(アタシ)が寝癖を直していたし、友理からの情報でゲームでは朝チュンしたヒロインが直したり、からかったりしたみたい。

 

 友理じゃないけど、怒りがフツフツと……!

 

「……おい、明日奈」

 

「――っは!? な、何かしら?」

 

「何で柚木さんみたいな目でオレを睨んでるんだよ?」

 

 どうやら、あの友理(バカ)と同じ雰囲気になってたみたい。

 反省反省。

 

「……友理の気持ちが良く分かったわ」

 

「朝から酷いな!? 何で急に柚木さんの気持ちが分かっちゃうんだよ!? 分かったんなら教えろよ。オレ、何であの子にあんな毛嫌いされてるの!? オレが何したってんだ!」

 

「兄貴が“香坂拓也”だからよ」

 

「答えになってねぇ! 昨日も一昨日も、そんで入学式の日も酷い目にあったのに、オレは対策の1つもできないのか!」

 

「諦めが肝心よ。強く生きて兄貴」

 

「悟った仙人みたいな表情やめてぇっ!」

 

 うがーっ!と声を荒げる、この世界の主人公。

 本当だったらこんなに思い悩む必要は無いんでしょうけど、ヒロインたちとは(アタシも含めて)必要以上に仲良くなって欲しくないし、そんなこと友理が絶対に許すはずがないのよねぇ……

 

 

 ……ちょうど良い機会だし、少し踏み込んでみようかしら?

 

 

「ねぇ、兄貴」

 

「ったく、学園生活ってもう少し……どうした?」

 

「兄貴さ、毛嫌いされてるのを抜いて、客観的に友理のことどう思ってる?」

 

「柚木さんのこと?」

 

 うーん……と、しばらく悩む兄貴。

 

「すごく、友達や家族を大事にしている人なんだと思う。たぶんだけど、何かあったら自分の全力を掛けて助けようとする。こっちが心配になるくらい……」

 

「うわっ……的を射すぎて逆に引く」

 

「それ褒めてんの? 貶してんの? どっちだよ?」

 

「強いて言うなら両方ね」

 

「我が義妹ながら酷え!?」

 

 実際、そうとしか言えないんだからしょうがない。

 

 そう、これこそが物語の中心である主人公の資質。

 異性の持つ、性質・悩み・本質・態度に対して変に敏感なところ。

 

 普通の女子には効果が薄いけど、ヒロインと呼ばれるような娘たちには効果が高い。悩みを持つ子なら特に絶大な威力を見せる。

 だからこそ、警戒対象となる。

 

 アタシはアタシのやり方で、“同い年の義理の妹”という立場を使って暗躍――とまではいかないけど、影で努力してきた。

 

 1つ目の目標は、兄貴に男友達を増やすこと。

 これは成功したと言って良いわね。

 仲の良い同性の友人を持たせることで、原作がスタートした後でヒロインたちに関わる時間を減らす目論見があった。兄貴は1度友人関係になれば、まず離れても疎遠になったりしない。今でも連絡を取り合ったりして、遊びの誘いを受けることもある。

 友理も「布石としては十分だ」って褒めてきた。

 

 

 問題は2つ目の目的ね。こっちは大失敗。

 それは小学校・中学校で兄貴に彼女、もしくは彼女候補を作らせる計画。アタシなりに努力したけど全部無駄に終わったわ。

 何せ兄貴、中学卒業まで全く!そっち方面に興味がなかったのよ。どんなにこっちが脈ありそうな子を仕向けても良い人・友達止まり。

 

 だっていうのに、学園に入学するまでの1ヶ月の間に言ったのが「オレも青春送って彼女とかできるのかな~?」ってセリフ。

 蹴ったわ。割と本気で兄貴のスネを。骨が軋む音がする程。

 悶絶していたけど、アタシは無視した。

 

 (あれは100%兄貴が悪い)

 

 ちなみに、そのことを知った友理は危機感を強めてたわね。

 「やっぱり奴は敵だ!」って。

 

 ――っと、さっさと朝食を済ませましょ。

 

「そんじゃ兄貴、先に行くわよ」

 

「あ、おい! また1人で行くのかよ!?」

 

「車には気をつけるのよー」

 

 兄貴と母さんに見送られながら学園を目指す。

 お義父さんは朝早くから仕事に行くんで、見送りは大抵お母さんだ。兄貴と一緒に登校することは滅多に無い。

 

 1人最寄り駅まで行き、電車に揺られて学園近くの駅に着けば……

 

 

「来たか」

 

 

 まるで戦場に向かうような雰囲気の友理がいた。

 本人は本気でそのつもりでしょうけど……

 ここんとこ毎日こんな感じだわ。

 

「香坂拓也は撒いたか?」

 

「えぇ、あとから来るはずよ」

 

「今日はマヤに関するイベントが多い。原作のマヤから性格が外れすぎているから心配ないと思いたいが、油断は禁物だ」

 

「どっちかって言うと、アンタの貞操の方を狙ってそうだもんね」

 

「……考えないようにしてんだから、言わないでくれ」

 

 

 今日も転生者仲間である友理との暗躍――という名の、個人的な兄貴への邪魔が始まろうとしていた。

 

 

 今更だけど、何やってんのかしらアタシは?

 

 

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