エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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第29話 絶対に言ってはいけない言葉

 

 それは、高校生になって1週間目で起これば不安しかない出来事。

 

 

 

「「「「「怪しげな男たちに言い寄られた!?」」」」」

 

「あぁ。大事には至らなかったがな」

 

 

 

 朝の教室にボク以外のクラスメイトたちの驚いた声が響く。

 

 ボク以外で落ち着いているのは事の中心人物であるはずの瑠維と、「ついに何かしやがったわね……」とボクに言いたげな明日奈だけだった。

 いや、実際その通りなんですがね。

 

 そもそも始まりは、瑠維が遅刻ギリギリで教室に入ったところから。

 

 瑠維は見た目や言動こそアレだが実は結構時間に気を遣うタイプで、クラスの中でも教室に早めに来る方である。

 ボクや他の友人ズが教室へ入ると必ず瑠維が先にいて、「おはよう」と普通に挨拶もしてくるのだ。

 私生活の話になるけど、瑠維は“早寝早起”を実行し、朝昼晩で食事もバランス良く取っており、歯だって毎日綺麗に磨いている。掃除や洗濯を手伝うし、近所であれば買い物だって代わりに行ったりする。

 

 文字にすればこんな良い子なのに――中二病。内面は昔から大きく変わってないはずなのに――自称、地獄の猟犬《ヘル・ハウンド》さん。

 ホント……何でこうなったんだろ?(涙)

 

 話が脱線したけど、そんな瑠維が今日に限って遅刻時間ギリギリで教室に入ってきたものだから、友人ズがどうかしたのかと聞いたんだ。

 それに対して瑠維は、特に問題はないといった気軽さで、

 

 

 ――昨日の不審者について、職員室で話があったから遅れただけだ。

 

 

 そんなプチ爆弾発言をしたんで、クラス中が「どゆこと!?」となったわけである。そこからは質問タイムだ。少し遅れて野々上先生も来たけど、事が事なんでしばらくは静観することにしているみたいだった。

 

 で、瑠維の話をまとめると――

 昨日のボクの家で開催した“学園専用掲示板書き込みごっこ(アルカ参戦。忍とマルコが途中退場)”をし終えた帰りのこと。最寄り駅近くのスーパーで夕飯の買い物を済ませ、暗くなってきた道を歩いていた時、適当に雇われたっぽいチンピラを従えた胡散臭い男が現れたそう。

 

「あら? そんな人たちがいたら誰か通報しません? それとも瑠維さんの住んでいる地域って、人通りが極端に少ないとか?」

 

「いや、我が住んでいるのは〇〇市でな、都会ではないが田舎風でもないぞ? 明らかに通常と比べて人通りが無かったからな……異能が使われた可能性が高いと、警察の関係者も言っていた」

 

「え!? それ本当!?」

 

 マヤの疑問に答えた瑠維の発言に、凛子が仰天する。

 

 

 ……いや、それよりもだ。昨日の瑠維の格好は、いつも以上に気合いの入った中二スタイルだった。何の意味もない鎖とか付けていたし、お気にのマントも装備していた。テンションが上がっていたのか、いつも以上にキレキレだった。

 ……その状態で夕飯の買い物していたことに、誰かツッコめよ。

 

 

「奴は黒のコートに黒の帽子といった出で立ちでな……」

 

「うん?」

 

「一目で分かった! この者は闇の力《パワー・オブ・ダーク》を秘めし、我と雌雄を決するため訪れた同類であると!!」

 

「たぶん違うと思うよ」

 

 端から見れば、不審者vs不審者の図という……

 何か思っていたよりも深刻な雰囲気じゃないことを察したのか、教室内の空気が軽くなってきた。

 

 そこからの瑠維の話は……まあ、不審者たちが不憫に思えてくるような内容に変わっていく。

 興が乗ってきたらしい瑠維のテンションが高いせいもあり、時々中二ワードが出てくるんで理解するのが困るものだったけど――要約すれば、瑠維に何らかの穏便な取引(後ろにチンピラ控えあり)で望んだものの会話が成立せず、強硬手段に入ろうとしたところで数羽のカラスに襲われ撤退したとのこと。

 

「カラスに関しては近くにゴミ捨て場もあったし、エサを取る敵だと思われたのかもな。そんなわけで雌雄を決する戦いができなかったことは残念であったが、 不審な人物たちであったのは間違いないということで地域の守護者《エリア・ガーディアン》に連絡を入れた」

 

「え~っと、警察に通報したって解釈でいい?」

 

「うむ。しかし、そのあとの方が大変だったぞ? やって来た其奴らは、あろうことか我を捕まえようとしてきたのだ。話し合いだけで随分と時間を浪費した。……大変だったよ。弟は『姉ちゃん学習しろよ』って呆れた目で見てくるしぃ」

 

「ま、まさかだと思いますが、警察に『この辺りに不審な人物が出た』と言って、そのまま待っていたわけでは……」

 

「その通りだが? 今思い出しても腹が立つ。我は善良な一市民として地域の守護者《エリア・ガーディアン》に事情を説明しようと立っていただけだというのに、奴らは私を見た途端『通報通りだ! 確保―!』と襲ってきた」

 

 なぜ通報した我が捕まらなければならん!と怒りを露わにする瑠維に対し、教室内全員の心が1つになったのをボクは感じた。

 

 

 

 ――いやそれ……自業自得だろ、と。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「よし、全部吐きなさい」

 

「初っ端の言葉が有無を言わせない命令な件」

 

 昼休み。明日奈に引っ張られ、連れてこられた屋上での最初のやり取りがコレ。

 わざわざ「清掃中」と書かれた人払いの効果がある看板型アーティファクトを創り出したこともあり、現在屋上にいるのはボクと明日奈の2人だけだった。

 

「瑠維ちゃんに怪しげな輩が近づいたって聞いた時点で、アンタがこの事態を把握してるのは見え見えなのよ。事前に“瑠維ルート”を早期に終わらせるつもりだとも聞いてたことだし? クラスの中でもアンタが1番冷静だったし? とどめにカラスのくだりで確信したわよ。そのカラス、アンタの異能でしょ」

 

「大正解。ご褒美にとっておきの栄養ドリンクを――」

 

「いらんボケ。詳細な説明を寄越しなさい」

 

「ちぇー」

 

 まあ明日奈の言う通り、全部知っていたからこんなに落ち着いているんだけどさ。ついに“瑠維ルート”が本格的に動き出したんだ。

 

 ちなみに、不審者を撃退したのは『第40柱ラウム』による力だ。

 カラスの召喚が可能な異能だから、昨日の帰りから瑠維のことを見守っていた。『第9柱パイモン』と違って召喚可能なのはカラス限定だけど、下級使い魔と違い複数体召喚できるうえに、攻撃能力もそこそこ高いから使い分けをしている。

 

「ふーん、つまりアンタは不審者の行動もある程度把握してたのね?」

 

「入国した時から、監視しています」

 

「……中二病を発症した瑠維ちゃんと会った日に、“瑠維ルート”の大まかな内容は聞いたんだけど、結局そいつら何者よ?」

 

「……海外で活動する『ヤ』のつく人たち?」

 

「それマフィアじゃん! 『マ』のつく人じゃん!!」

 

 麻薬の密売もしている、正真正銘のガチマフィアだからな。

 ロシアに拠点を構えて、ヨーロッパ・アジア方面で違法な取引をしている結構古い組織だ。

 

「え? 何でそんなのが、この時期に日本へ来てるの? アンタから聞いた話からすると、本格的に関わってくるのはもっとあとのはずじゃ……?」

 

「この時期に日本へ来るよう誘導しました」

 

「何てことしてくれてんのよぉおおおおおおおおおおっ!!?」

 

 明日奈が鬼の形相で胸ぐらを掴んできた。苦しいって。

 

「落ち着け。ちゃんとした理由があるから」

 

「腑に落ちない理由だったら、生徒会に突き出すわ」

 

 ヤダ、何ソレ恐い。

 

「そもそもの話、だ。“瑠維ルート”なんて言っている通り、『ヴァルダン』はマルチエンディングの作品だぞ? プレイヤー……この場合、主人公である香坂拓也の行動次第でゲームの内容も変わってくるわけだけど、メタ的な発言をすれば、香坂拓也の行動に関係なくそれぞれのルートの可能性が同時に存在しているんだ」

 

「あ。確かに、言われてみれば」

 

 ゲームの内容と結末をそれぞれのルート事に知っているからこその、“神様の視点”での物事の考え方がボクはできる。そこまで万能ではないけど。

 明日奈はアニメ組だから、その辺りの発想に行き着かない。

 

「そして何度も言うようだけど、この世界はどれだけ『ヴァルダン』と似てようが現実であることに変わりはない。ゲームと違って……エンディングは、たった1つしか(・・・・・・・)成り立たないんだ。それこそ、バッドエンドだってあり得る」

 

 ゴクリと、明日奈がのどを鳴らす音が聞こえた。

 

 分かっていたつもりだろうけど、どこか遠い国の話をテレビで聞くような心境も少なからずあったのかもしれない。1度目の人生で死んで、2度目の人生を現在進行形で歩んでいるボクら転生者って、無意識にその辺を軽視する傾向があるんだと思う。

 

 前世でボクらは、どちらも交通事故で死んだとはいえ不幸な人生を送ってきたわけじゃない。平凡だけど、幸せだったと断言できる。

 そんな中で知っている作品の中へ転生を果たしたからか、自分ならどうにかなるかも?という考えが根底にある。振り返ってみれば、ボクだって記憶が戻ったばかりの数年間は調子に乗っていた。異能に目覚めてからは特に。

 でも、アルカと出会ってイレギュラーな事態は簡単に起こるものだと知り、マヤ・瑠維・忍とボクに関わったことで変わっていく彼女たちを側で見た。ここは現実なんだって認識が強まっていった。

 

「当初の目的は今も変わらないし、これからも変わることはない。でも、新しく加わった目的には『みんなの幸せのため、努力を惜しまない』っていうのもある。そのためには、あのゲスマフィア共(・・・・・・・)はこの時期に徹底的に潰す必要があるんだ。だからアルカのハッキング能力をフルに使って奴らの勢力を減らしつつ、この時期に瑠維に絡んでくるよう間接的な誘導をした」

 

「そういえば初期に友理がアルカを叱ってたことがあったわね。その時確か、『無闇矢鱈にハッキングしかけるな』って言っていたような……あれ、マジだったのね。日本にいながら海外のマフィアにケンカ売れるアルカって一体……」

 

 アルカのハッキング能力は変態の領域だぞ? 何せ一切の痕跡を残さないからな。電子データに弱みが残っている奴の天敵だ。データ上から一方的にデータを弄れて、逆探知も不可能って頼もしすぎる味方だわ。おかげで万一の時用に、たくさんの切り札が手に入った。今なら政治家にだってケンカを売れる。

 

「でも、何でわざわざ日本へ来るように誘導する必要があるのよ? それも入学したてのこの時期に」

 

「この時期だからこそ、だよ。さっき言った通り、この世界は現実でルートは1つだけ。全部が全部、予定通り進むわけがないのに、こっちが忙しい時に出しゃばってくるのが1番困る。元々アイツらが瑠維を狙ってくる可能性自体は高いんだから、遅いか早いかの違いだ。入学式からのフラグ祭りだワッショイな1週間が過ぎた今日からの1ヶ月は、ゲームでは自由になれる時間が多い共通ルートばかり。この最も面倒事が少ない時期に、最大の問題を片付けておきたいってわけ」

 

「すごい。友理がちゃんと考えてる……!」

 

「明日奈が地味に酷い件」

 

 夏休み終了までの時期なら共通ルートや個別イベントばかりで対策もしやすいけど、それから先になると予測が難しい。大抵の場合はそれぞれの個別ルートに入るから。

 イレギュラーの塊であるボクと明日奈の影響も大きく出てくるだろうし、2学期になったら当たって砕けろ精神でぶっつけ本番勝負ばかりになる。

 下手すると複数のイベントが重なる時期。そんな時にガチのマフィアなんて現れた日には、収集がつかなくなる未来しか見えん。

 

「でも、マフィアから瑠維ちゃんを守り切れるかしら……」

 

「ボク1人じゃ手が足りない。だから――」

 

 

 ――明日奈の力を貸してくれ。

 

 

 そう言えば、一瞬キョトンとした表情になった明日奈は、

 

「フフ、フフフ、アハハハハハ!」

 

 心底嬉しそうに笑い出した。

 

「何を笑っているの?」

 

「いやぁだって、こんな真正面からアンタに頼まれたのなんて初めてなもんだから、おかしくておかしくて。今まで口裏合わせだったり、兄貴のスパイだったり、協力関係になってからそんなんばかりだったんで、アタシほとんど役に立ってなかったなーってさ」

 

 気が済むまで笑った明日奈は、スッキリした顔を上げる。

 

「アタシだって瑠維ちゃんに仇なす奴なんて許せないし、アンタだけに良いところ持ってかれるのも癪よ。何だってしてやろうじゃない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? 今、何でもする(・・・・・)って言ったよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ちょっと待ちなさい。嫌な予感がする」

 

「大丈夫。気のせいだ」

 

 ちょっと栄養ドリンクを飲む機会が増えるだけだから。

 

「イヤァアアアアアアアアアアアアアアッッッ!! 絶対に気のせいじゃないいいいいいいいいいっ!! さっきの無し! 本当に無し!」

 

「自分の言葉に責任は持とうって」

 

「アタシに何させる気なのよぉおおおおおおおおおおお!?」

 

「題して『転生者:明日奈、超強化計画』をここに発表します。数日前に思いついたばかりの計画だけど、上手くいけば2週間くらいで明日奈もみんなもハッピーになれるはず。大丈夫。死ぬ気になれば何だってできるから♪」

 

 

 

「こんの、悪魔かぁああああああああああああああああっ!!」

 

 

 

 マジメな話、どこまで敵を分散できるかが勝負の分かれ目なんだし、最後まで協力してよ。個人的な理由であるとはいえ、正反対の意味(・・・・・・)でターゲットが2人もいるんだから。

 




~おまけ1~

不審者(´∀`)「やあ、黒羽瑠維さんでいいかな? なーに怪しい者ではありません。アナタの持っているモノを買い取らせていただきたく――」

瑠維(; ・`д・´)「誰だ……!? この気配は! ……フハハハ! ついに来たか我が物語《ストーリー》! 非日常との邂逅から始まる、永遠に語り継がれるであろう我の武勇伝、その幕開けが!!」

不審者(;´∀`)「え? いや、そういうんではなくて……取引をし――」

瑠維( ・`ω・´)「暗黒の取引! 何と甘美な響きか!? 何をくれる? 何を捧げて欲しい? 力か、地位か、名誉か!? 我の期待は鰻登りだぞ!」

不審者(#゜Д゜)「おい! ふざけるなよ! 後ろの男たちが見えてないのか!? こっちの話を聞かないなら力尽くだって構わないんd――」

瑠維(屮゜Д゜)屮「何と!? バトルものであったか! 初戦から多対一とは、逆に腕が鳴るではないか!! ならば解放しよう我が邪眼! 呪われし左腕! 封印の鎖《グレイプニル》を解き放ったが最後、闇の力《パワー・オブ・ダーク》を持つ者同士による暗黒世界の戦いが幕を開けるのだ!!」

不審者ヽ(#`Д´)ノ「話を聞けぇええええええええええええええっっっ!!」



~おまけ2~

・封印の鎖《グレイプニル》:特に意味のないカッコイイだけのデザイン重視な鎖。瑠維が行きつけの店で見つけて、ノリノリで買った。お値段1980円(税抜き)。
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