エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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第3話 柊小夜――と……?

 

 

「オマエ、誰だよ?」「アンタ、誰なのよ?」

 

 

 今、ボクは目の前の人物と睨み合っていた。

 

 お互いに疑いの眼差し。

 双方が警戒しながら言った言葉は、奇しくも同じだった。

 

「「まさか……転生者?」」

 

 ゲームの主人公――香坂拓也(こうさかたくや)の義妹、メインヒロイン香坂明日奈(こうさかあすな)

 

 彼女とピリピリした雰囲気になるなんて、少し前まで考えもしなかった。

 

 

 

~1時間前~

 

 

 

 早いもので凛子と友人になってから1年が過ぎた。

 あれからお姉ちゃんに構いまくったり、凛子と遊んだり、ボクの『Heartギア』によって発現するだろう異能についてダメもとの賭けをしたり、暗躍計画について具体的な方針を考えたりと地味に忙しかった。

 

 お姉ちゃんも小学校に通うようになり楽しそうだった。勉強や給食の話をよくボクに話してくれるし、友達と呼べる子も何人かできたそうだ。

 お姉ちゃんのランドセル姿はキュン死ものだったな。

 

 とまあ、概ね平和な日常を過ごしつつ『ヴァルダン』の記憶を事細かに思い出していったことで、1人会えそうなヒロインがいることが判明し、今日はその子に会ってみようと遠出の準備をしているのだ。

 

「それにしても友理、どうして隣町なんかに行こうと思ったの?」

 

「アハハ、ちょっとしたプチ旅行の気分だから? 予定じゃ夕方までには帰ってくるから。友達の家に遊びに行ったお姉ちゃんにもそう言って」

 

「そう? 何だか友理って、5歳になった頃から何のことでも積極的に行動するようになったわね。この前は確か……」

 

「じゃ! 行ってきまーす!」

 

 玄関でお母さんに別れを告げて家を出る。

 

(積極的に行動しないと間に合わないんだよ!)

 

 今でも所在が掴めていないヒロインたちがいるから、行動を起こすために必要な手札がボクには何枚あっても足りない。

 その手札の1つが――お金。

 自分でも身も蓋もないって分かっているけど、現実問題としてお金がないと電車やバスで遠出できないし、交友関係も築きにくい。

 

 1年前からそれとなく毎月のお小遣いをねだり、長期休みに祖父母の家に訪れた際は媚びを売れるだけ売ってお金を貰う。クリスマスプレゼントと正月のお年玉も、現物ではなくお金にしてもらうよう両親と交渉した。

 交渉は成功したが、代わりに「この年からお金に執着するなんて……将来が不安だ」みたいな目で心配されるという精神ダメージを喰らいながらも、貯めに貯めた暗躍用の軍資金で3人目のヒロイン――柊小夜(ひいらぎさよ)の元へと向かう。

 

 駅に着き、特に迷うこともなく電車に乗って、隣町へ。

 電車に揺れながら柊小夜について整理する。

 

 

 柊小夜は簡単に言うと、マジメな委員長ポジションである。

 エロゲのヒロインでも今時珍しいメガネキャラだが、笑った時の顔が本当に可愛らしく、ギャップ萌えによって紳士たちのハートを掴んだ。ついでに“小夜ルート”に入ったゲームの主人公のハートも掴んだ。

 ――あぁ主人公め、忌々しい!

 

 そんな柊小夜は読書好きの設定があり、ゲーム内の会話で小学校入学前から近所の本屋に足を運んでいたことが分かっている。

 これだけだと、どこの本屋か分からないがヒントはあった。

 イベントで本屋に訪れた際の背景の絵だ。

 店名こそ最後まで語られることはなかったが、少し特徴のある建物だったこと、隣が和菓子屋だったことから、お父さんのノートパソコンを借りて「グ〇グルストリートビュー」で県内に存在する情報と一致する本屋を調べあげたのだ。

 

 

「すごい大変だったけど、隣町の駅から徒歩で行ける場所で良かったぁ」

 

 10分に満たない電車旅を終えて目的の本屋がある隣町に到着。

 少し乗り物酔いしたらしいので、近くのベンチで休憩することに。ついでにポーチに入れてある地図を広げて場所の確認をする。

 

「え~っと、駅からだと目的の本屋まで徒歩8分ってところか……ボクの足で計算したら12分ちょい掛かるかな?」

 

 こういう時、スマホがあれば地図アプリとか使えて便利なんだけど、残念ながら6歳になったボクが持っているのは子供用携帯だ。すっごい安いヤツ。アプリなんてない。小さな画面とダイヤルキーしか存在しない。しかも裏面には自宅の電話番号がメモられている。

 前世が大学生だったことを考えると、泣きたい気分だ。

 

 6歳児にスマホなんて渡しても扱いきれないし、ニュースでもやっていた子供による課金騒動の問題だってあることは分かるんだけど……

 中学生になったら、さすがにスマホ買ってくれるよな?

 

「あーヤメヤメ。そんなの考えたって仕方ない。さっさと行こ」

 

 そうして地図とにらめっこしながら歩くことしばし。

 ようやく目的地の本屋まで辿り着いた。

 

「柊小夜いるかなー? いるとしたら今日だと思うけどなー?」

 

 この日に本屋へ来たのは考えあってのことだ。

 

 “小夜ルート”にて、近所の本屋に行くイベントで柊小夜は「子供とはいえ、立ち読みばかりするのは良くないからって、母さんから雑誌の発売日に購入とか頼まれたの」と主人公に言っていた。

 ゲーム内で1度しか雑誌名は出なかったが問題ない。ボクは『ヴァルダン』の記憶力テストがあったら100点を出す自信がある。当然のことながら柊小夜が買っていたという週刊雑誌の名前も覚えていた。あとはネットでいつ発売なのかを調べればいいだけだ。

 

(ひ・い・ら・ぎ・さ・よ、は…………いたっーーー!!)

 

 水色の髪にメガネ、そして腕に付けた『Heartギア』! 顔にも面影があるし、柊小夜で間違いない! 何かの本を見ている!

 本屋に来るまで不審者扱いになるのも覚悟で見張るつもりだったけど、初っぱなで出会えるなんて運がいいぞ。

 

 早速、本屋に入って如何にも初めて来ましたという体で辺りを見渡しながら、徐々に柊小夜の元へ近づいていく。

 と、ここで問題発生。

 

(……どうやって仲良くなろう?)

 

 まさかいきなり出会えるとは思わなかったから、深く考えていなかった。

 凛子の時は向こうから話しかけてきてくれたけど、柊小夜は初対面の人に理由なく話すタイプではなかったはずだし……困った。

 

(何かこっちから話しかけても不自然に思われない話題は……。そういえば柊小夜って、この頃は何読んでいたんだろ?)

 

 1度考えたら気になってきた。

 ゲームでは難しい本や小説を読んでいたって設定だったけど……

 バレないよう、周りから不自然に思われないよう、そ~っと後ろから柊小夜が読んでいる本を覗き込む。

 ちょうど開いているページには、章タイトルがあって――

 

 

『言い訳大全集 ~第5章 これでキミも職務質問を華麗に回避!~』

 

 

 ――さすがに予想外過ぎた。

 

 

「どんなマニアック本だよっ!!?」

 

 ウッソだろ!? 柊小夜ってボクと同い年でこんな本読んでいるのか!?

 てか、章タイトル! 人生で職務質問される機会なんて滅多なことじゃないって! それに職務質問を華麗に回避したら後々怪しまれるだろうが!

 

「――ッ!? だ、誰?」

 

「あ」

 

 ヤバッ!? 予想外過ぎる本につい大声で叫んでしまった。

 えぇい! こうなったらピンチをチャンスに変えろ柚木友理(ボク)! この展開を逆手にとって、柊小夜との会話にもっていけ!!

 

「あー、ごめん。本屋に入ったら同い年ぐらいの女の子が本を読んでいたから、どんな本を読んでいるんだろうって後ろから覗いちゃって……あまりにも予想外過ぎる内容だったんで、つい。驚かせてごめんね」

 

「そうなの」

 

「えっと……いつもそんな本を見ているの?」

 

「いつもってわけじゃないわ。今日はたまたま目に付いたから読んでみただけ。……意外と中身はおもしろかったわよ? 1章では学校で遅刻した時の言い訳の仕方なんかが書いてあったし」

 

「マジで? それは普通に気になる。どこどこ?」

 

 柊小夜とは関係なく内容が気になった。

 結果として、見せてもらった本は全体を通しておもしろい……職務質問の流れだけは理解できなかったけど。

 

「はー、こんな本って売っているものなんだなー」

 

「だから楽しいの。今はまだあまりお金が無いから無闇に買えないけど、大きくなったら本専用部屋の本棚をいっぱいにするのが夢なの」

 

「……きっと叶うよ。すぐに本で埋まるさ」

 

 ゲームでも主人公が柊小夜の家を訪れた際に、本だらけの部屋を見て驚く場面があったし、高校生になるまでには埋まるだろう。

 

 ただ、何気なく言ったボクの言葉は予想以上に柊小夜を驚かせたらしい。

 

「驚いた。あの子(・・・)と同じことをいうのね」

 

「? あの子って?」

 

 “すぐに本で埋まる”って言った友達がいるのかな?

 

「少し前にできた友達なんだけど、実は一緒に来ていて――」

 

 

 

「小夜ー? おもしろい本は見つかったー?」

 

 

 

 その声は本屋の二階から聞えてきた。

 階段を降りてきたのはすごく見覚えのある人物であり、今後会おうと考えてた人物であり、今の(・・)柊小夜とは知り合ってもいないはずの人物だった。

 

 香坂明日奈。

 『ヴァルダン』のヒロインが階段から降りてきた。

 

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