エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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2章のエピローグです。
三人称→友理視点。


第39話 何て酷いオチだっ!!

 

「あー、ちっくしょう。好き放題やりやがって……」

 

 住宅地から少し逸れた道。そこにロシア系マフィアの幹部、マクシムの力無い声が空しく響く。

 

 幹部として冷徹に任務を遂行してきた彼を知る者たちが見れば、己の目を疑っただろう。夢でも見ているのかと頬を抓っただろう。

 

 何せ今のマクシムは素っ裸に服を剥かれ、マンガのようにボロボロの状態で、強力な拘束用の縄を使用した亀甲縛り(モドキ)で電柱に逆さまで吊され、さらには油性ペンで落書きを全身に書かれていた。

 特に股間辺りのものが酷すぎて涙が出る思いだ。

 謎の脱毛剤を掛けられただけに留まらず、ペンで「子象」やら「ぱお~ん」やら矢印付きで書かれている。プライドなど木っ端微塵で、泣きたい気分なのに出てくるのは乾いた笑いだけ。

 

「それに、左に関しては容赦がねぇ」

 

 最早感覚が無くなってしまった自身の左腕に意識を向けるマクシム。

 その左腕は……グシャグシャに潰されていた。それこそ、手で握り潰したトマトのように。数十年身に付けていた『Heartギア』も無い。

 

 『Heartギア』は、専門の機関に掛け合って貰わなければ外れない仕組みとなっている。

 これは無理矢理奪われないための保険であり、『Heartギア』を持つ犯罪者は無力化されてすぐ、この機関によって『Heartギア』を永久剥奪される。

 だが、手段を選ばなければ外せないこともない。例えば、物理的な意味で装着していた物体(・・)の体積が小さくなったりなど……

 

(そんなことしなくたって、もう指一本動かせねえっての! 異能を扱う余裕もこれっぽっちもないんだよ!)

 

 マクシムは対峙した少女に左腕を潰されたあと、これまた謎の刀によって信じられない回数滅多打ちにされた。何で自分がアレ(・・)で死んでいないのか不思議で仕方がない。冗談抜きで暴力の嵐だったのだ。しかも加害者(?)の少女はニッコニコで刀を鈍器代わりに振るうものだから、軽くトラウマである。

 最後は気絶したマクシムを起こして、この状態で放置する始末。

 

 ジャパニーズJK恐い!

 

「本当に、何者なんだよあの嬢ちゃん……?」

 

 マクシムの疑問に答える者は、ここにいなかった。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

【side.友理】

 

 無事にマクシムをボコグチャにしたボクは、アーティファクトによる通信でみんなの無事を確認後、集合場所である瑠維のいる場所――何やら大変なことになってしまったらしい公園へと足早に向かっていた。

 

 敵の1人、キリルの異能の効果が切れているのは確認した。

 皮肉にも奴によって外界から分離されることとなったボクらの戦いは、この街の住人にまだ知られていない。その知られていない僅かな時間が勝負だ。

 時刻は夜だが、まだ後始末が残っている。徹夜決定。

 

 と、そんなことを考えてる内に集合場所に到着したけど……

 

「うわぁ。こりゃ酷ぇ……」

 

 みんなが集合する予定の公園が、公園として機能しなくなっている。

 ぶっちゃけると、遊具が全部壊れていた。ついでに植物の姿……無し!

 

(これの修繕費払うのボクなのに~~~!)

 

 今回の作戦はボクのワガママもあるから、被害金額はボクが10年間で貯めた軍資金から寄付という形で支払うつもりでいた。

 責任は取るけどさぁ、一体どんだけ偉人の紙が飛んでいくのやら。

 

「あ! ユウちゃんこっち~!」

 

「アンタが1番遅れるなんて……何してたの?」

 

「! お姉ちゃんに明日奈! みんなも!」

 

 遠い目になり掛けていたところへ響くお姉ちゃんの声。

 公園の惨状に目が行ってしまっていたが、普通にボク以外全員が揃っていた。……レイカ=氷道との激戦を勝ち抜いた瑠維も――って!

 

「うぉおおおおおい! 瑠維どうしたそれぇ!?」

 

「いやー、ちょっと、ね?」

 

 再会した瑠維が煤だらけになっていた。瑠維が膝枕している(何それ羨ましい)レイカ=氷道の方も同じく煤まみれだ。こっちは気絶しているけど。

 

「え? マジで何があったの? 勝ったんだよね?」

 

「黒羽さんは勝ちましたよ? 勝ったのは……良かったのですが……」

 

「瑠維ちゃんとこの子の大技がぶつかり合って大爆発?」

 

「あはは、もうすっごい衝撃だったよ」

 

 瑠維の戦いを最も間近で見ていた人物――万一の時のため近くで控えさせていたお姉ちゃん、美江、マヤによれば、大技を出してきたレイカ=氷道に対抗するため瑠維も明日奈作のアーティファクトを使った大技を使用したそう。

 

 結果は瑠維の勝ち。

 

 だけど、超低温の『氷結』攻撃と超高温の『黒炎』攻撃が大差の無い状態でぶつかり合った結果、空気の膨張だか何だかの現象によって大爆発。瑠維の方は意識があったものの、レイカ=氷道の方は大技が破られた時点で気を失ってしまったため、下手するとそのまま吹っ飛んでしまう可能性もあって咄嗟に瑠維が庇い……

 

「2人仲良く爆発の余波を受けたとのことです」

 

「たまたま遊具が盾の代わりして被害が軽微?」

 

「ワン!」

 

「笑えねえよ」

 

 レイカ=氷道には思い切って自分の心の中に押し込んでいるものを吐き出して欲しいと思っていたけど、予想よりも効果がありすぎたか。

 やっぱ他のヒロインたちのように上手くいかないな。

 

「何だか想定より危険な目に会わせたみたいでゴメン」

 

「気にしないで友理。これ、いつものアレでしょ?」

 

 ボクが瑠維に謝ると、気にしたそぶりを見せずに瑠維は微笑んだ。それは……『ヴァルダン』の1枚絵でも見せた心からの笑みだった。

 

 

 

「友理はレイカちゃんの心が手遅れになる前に、どうしても助けたかったんだよね。それで、私に頼ってくれた。それが何よりも嬉しいの。私、友理と出会えて良かったよ。誰かを助けることができる人にしてくれて、本当にありがとう」

 

 

 

「お、おう。てか、いつぶりかの口調だな」

 

「あはは。さすがに疲れちゃったから、見なかったことにして♪」

 

 ぐおおお~! 尊い! 良い子すぎるぞ瑠維ぃ! ある意味ボクが望んでいた瑠維の姿が目の前にぃ! こちらこそありがとうございまーす!!

 

「る、瑠維ちゃんが……普通に喋って……!」

 

「あ、明日奈? 確かに珍しいけど、泣くほどか……?」

 

 うん。こっちは無視しよう。気持ちが分かり過ぎるから。

 

「う……ここ、は……?」

 

 丁度その時、気絶していたレイカ=氷道が目を覚ます。

 

「あ、レイカちゃん起きた!」

 

「安静にしなきゃダメよ?」

 

「どこか、痛むとこはあるか?」

 

 起きたことに気付いた凛子、小夜、めぐみが声を掛ける。

 

「………………!? アナタたちは! 私は確か、クロバ・ルイと戦って、それで、それから……」

 

 目覚めたばかりで混乱した様子のレイカ=氷道は、ほとんど動けない体を動かし周りの惨状やボクらを見て、急に頭の中でピースがはまったらしい。

 

「アナタたちが、クロバ・ルイの仲間?」

 

「イエス! マブダチってやつだな! ちなみに気になっているだろうし先に言っておくけど、マフィア側の人間は全員捕らえたよ」

 

「ジャパンの学生にマフィアが負けたなんて、とんだブラックジョークね――と言いたいところだけど……どうやら本当みたいね」

 

 驚きつつも納得しているレイカ=氷道は、今までずっと溜めていたものを瑠維との戦いで吐き出したからか晴れやかな表情だった。たぶん自分が本当に忌避することをせずに済んだと、ようやくマフィアとして活動してきた罪を償えると、そう思っているんだろうな。

 実際、このまま逮捕されることになったとしても、情状酌量の余地があるからそこまで重い刑にはならないだろう。その間に気持ちの整理を付けて、未成年なのもあって数年で出所して、その後第二の人生を送るというのも1つの答えだ。

 

 でも、それで良いのか?

 

 失われた青春時代を謳歌する資格は本当に彼女にないのか?

 

 そんなことはないはずだ。

 

 

 

 

 なので、

 

 

 

「これでようやく罪を償える。酷いことをしたけど、アナタたちにお礼を――」

 

「先生! もとい、生徒会長! よろしくお願い致します!!」

 

「任されました!!」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 待ってましたとばかりに、スタンバってた八千代さんが前に出る。

 

「こんばんは。とある学園で生徒会長などをしている西園寺八千代です。よろしくねレイカ=氷道さん♪」

 

「え、えぇ、こんばんは。それで、一体何を――」

 

「私の異能は『契約』! お互いが了承した内容の契約を魂に刻み、不備の無い限り必ず契約を守るよう行動させるものです!」

 

「はぁ……?」

 

「ただし、この『契約』は“罪を犯している人”で“捕縛・無力化されている”時に限って、制限こそありますが私の方から一方的に契約を結ぶことが出来るんですよ~♪」

 

「ま、まさか……」

 

「うふふのふ♪ 根回しはしたのでご安心を」

 

「待って、ホント待って! 何だかとても嫌な予感がするわ! ダメ、来ないで……い、いやああああああああああああああああああああ!!」

 

 夜の街に、少女の何とも言えない叫びが響いた。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 翌日。

 ボクは、待ち望んでいたイベントに涙を流していた。

 

「というわけで、本日からA組に入ることになりました――」

 

「ひ、氷道……レイカ……で、す///

 

 野々上先生の隣で留学生として紹介されたのは、アマテラス特殊総合学園の制服に身を包んだレイカ=氷道改め、氷道レイカであった。

 羞恥だか何だかで顔を赤くしている姿が最高に萌えます!

 

 1時間目は自習だったので、そのままの勢いでハーフの留学生(という設定)であるレイカとの交流会――という名の質問攻めタイムに突入した。

 

 みんなに囲まれてオロオロするレイカを微笑ましく見ながら、ボクと明日奈は敢えてその場から離れ、秘密の会話をしている。

 レイカから「助けてよ」と目で訴えられたが……すまん。

 

 

 

「ふぇ? 番外編の攻略キャラ?」

 

「ストーリーとかほとんど無視した、本当におまけのエピソードだったけどさ、前世で死ぬ少し前に配信されたんだ」

 

 有料の追加コンテンツってやつだな。

 

 それまでは各ヒロインの追加ストーリー&にゃんにゃんシーンを配信していたんだけど、前世でボクが死ぬ1ヶ月ぐらい前だったか、特別エピソードとして“何やかんやで主人公と出会ったレイカ=氷道は組織から逃げながら淡い恋心を抱き~”という、「その何やかんやってなんじゃい!?」と言いたくなるショートストーリーをプレイした。

 当然と言うか、主人公と良い雰囲気になって、暗い部屋で「寒いの。暖めて」みたいな展開になって……おのれ香坂拓也ぁ!!

 

「ちょっと、兄貴が唐突に感じた殺気に戸惑ってるわよ?」

 

「おっと、失礼」

 

 今回の一連の作戦の目的は3つあった。

 

 

 1つ目、瑠維のイベントを早期に消化すること。

 2つ目、レイカ=氷道を助け、学園生活を送ってもらうこと。

 3つ目、マクシムをボコって組織を壊滅させること。

 

 

「2つ目の理由は、アンタの私情も入ってるでしょ?」

 

「あ、バレた?」

 

 美少女留学生・転校生イベントは全男子の憧れなんだよ!

 

 八千代さんと一緒に関係各所に根回し&脅しをして、氷道レイカの保護責任をボクらが受け持つ代わりに、彼女に学園生活を送らせることに成功したんだ。ちなみにレイカの契約内容は“みんなと3年間学園生活を送るという役目をもって罪を償うこと”である。

 

 

 卒業まで逃がさねえぜぇ、絶対に青春を謳歌させてやるからな!!

 

 

「3つ目も無事に果たすことができたな」

 

「朝のニュースで日本・ロシア警察大手柄!ってやってたものねー」

 

 あの日の夜。

 事前に準備してもらった八千代さんの『契約』の力で、気絶したマフィア連中に“瑠維とその仲間に関する情報の完全黙秘”と“それ以外の聞かれたことには全て正直に答えること”の2点を契約させた。これでボクらに繋がることはないだろう。

 

 そしてアルカにも協力してもらい、『Heartギア』をハッキングして取り上げたりもした。連絡した警察が来るまでに目を覚まされると厄介だしね。すぐしかるべき場所へ幹部共の『Heartギア』を届け、ついでにロシア系マフィアの情報を公的機関へ流した。

 

 それが、今朝の新聞やニュースを騒がせた『ロシア系マフィア一斉摘発』というニュースだ。

 ボスだかファザーだか呼ばれてる奴も全員捕まった。日本へ来ていた奴らも。これでレイカの幸せを脅かすものは何も残らない。

 すごい疲れたけど――アイツら心の底からザマぁ!!

 

「そういえば今更過ぎることなんだけど……瑠維ちゃんの持っているロザリオのアーティファクトって、結局どんな異能なわけ? ゲームの“瑠維ルート”で明かされなかったの?」

 

「明かされてたよ。あのロザリオが持つ異能は『所有者が人生の道に迷った時、その答えとなる道しるべを複数提示する』って力だ」

 

 例えば将来なる職業に悩んでいる人なら、サラリーマンとなって働く自分・ボランティアに生を出す自分・プロのスポーツ選手になっている自分などを具体的に思い浮かべることができるといった具合だ。

 これのメリットは、例えばプロスポーツ選手になる将来を提示された時、メタ的な思考からそのスポーツに限って自分に才能があることが分かる。

 

 アーティファクトを作った研究者たちが能力に気付けなかったのは、試した全員が自分の人生に満足しているか、迷うことが特になかったからだろう。あくまで異能の力は“所有者が人生の道に迷った時”に発動するものなんだし。

 

 その辺の事情も明日奈に説明したら……急に黙った。

 

「どうした明日奈?」

 

「ねえ、瑠維ちゃんは中学に上がる前に、件のロザリオをお婆さんからもらったのよね? アンタも瑠維ちゃんも忙しくて会えなかった時期に」

 

「そうだよ」

 

「そして、中学に入学して再会したら、瑠維ちゃんは中二病になってた」

 

「あの時の衝撃は今でも忘れないよ。で、それがどしたの?」

 

 

 次に明日奈が告げた推測を、何で見落としていたのだろうか……

 

 

 

 

 

「それ、自分の将来に悩み始めた瑠維ちゃんに、進むべき道の一つとして、中二病への道をロザリオが提示しちゃったんじゃ……」

 

 

 

 

 

 世界から時が消えた。

 

 

 

「あ、あ、アレが原因かああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!?」

 

 

 

 3年越しに明かされた真実はいろんな意味で酷すぎた。

 

 




~おまけ~
【瑠維VSレイカ、決戦の裏で(IN茂み)】

美江(><;)「うえ~ん! 熱と冷気を同時に感じるー!」

マヤ(;´・ω・)「ちょっと、落ち着いてくださいませ。異能の応用で音のバリアを張っていますから、攻撃がこちらに届くことは――」

秋穂(;><)「いや~! ユウちゃ~~~ん!!」

マヤ(;´・ω・)「ですから、お二人とも落ち着いて――」

美江&秋穂(;><)(><;)「「キャー! キャーーー!!」」

マヤ(#゜Д゜)「 話 を 聞 き な さ い ! 」



 というわけで、『エロゲ世界』の第2章はこれで終わりです。あとはSSを少し投稿するくらいですね。
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 Twitterもやってるので、更新の報告やつぶやきはそこでしてます。
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 ではまた次章、
   『第3章 共同戦線の夜想曲(仮)』
      でお会いしましょう。
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