エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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第4話 香坂明日奈(?)

 

 『ヴァルダン』のメインヒロイン香坂明日奈(こうさかあすな)

 彼女のキャラを一言で表すなら……ブラコンである。

 

 5歳まで母子家庭で育ち、母親の再婚が切っ掛けで名字が「香坂」になった。それより前の名字は知らない。ゲームでも触れられていない。

 そして重要なのは、再婚相手の息子が『ヴァルダン』の主人公である香坂拓也であることだ。

 そう、主人公の義妹(・・)が香坂明日奈!! 全国の紳士たちが嫉妬の炎を燃え上がらせる羨ましさの関係、血の繋がらないブラコンで美少女な妹! それが香坂明日奈なのである!!

 

 かく言うボクも羨ましかった! 血の繋がらない兄妹でありながらも仲良しで、“明日奈ルート”に入ってから砂糖を吐く甘さだった!

 えぇそりゃもう、ブラックコーヒーが甘くなる程でしたよ!

 

 そんな香坂明日奈と柊小夜は、同じ中学校だったことがゲーム内の会話で判明している。そう、中学以前は出会っていない(・・・・・・・)

 なのに、柊小夜と親しげな様子で現れたのだ。

 下の名前で呼ぶくらいの仲で。

 

 ボクは今、目が点になっていることだろう。

 内心ではどういうことなのかと思考を巡らしているが。

 

 

 だけどそれは、向こうも同じだったらしい。

 

 

「――ッッッ!!? 柚木、友理ちゃん……? 何で?」

 

 

 香坂明日奈が目を見開き絶句する。

 

 その時出たのは1度も会ったことがない今世のボクの名前。

 初対面の香坂明日奈が知るわけない個人情報。

 

 何よりも、分かってしまった。

 ボクは『ヴァルダン』のヒロイン全員が好きだ。初めて会えば、嬉しさと緊張で心臓がバクバクするぐらい大好きだ。お姉ちゃんを初めて柚木秋穂として認識した時も、初めて公園で遊ぶ小谷凛子と出会った時も、そして柊小夜を見つけ出した今も、内側から溢れ出る歓喜をボクは感じることができた。

 

 

 

 なのに、目の前の香坂明日奈からは……何も感じない。

 

 

 

 まるで姿だけが香坂明日奈の別人を見ているようだった。

 6歳児らしい幼女姿だが、香坂明日奈本人で間違いないはず。主人公の義妹とだけあって、回想で幼い頃の立ち絵なども多かったのだから、このボクが似ているだけの他人と見間違えるはずがない。絶対に、だ。

 

 

 

 じゃあ、この香坂明日奈は……いったい誰なんだ?

 

 

 

「あら明日奈。もしかして、この子と知り合いなの?」

 

 1人事情を知らない柊小夜は、不思議そうに隣のボクと階段でストップモーションになっている香坂明日奈(?)を見る。

 

(どうする?)

 

 目の前にいる香坂明日奈の正体について、仮説はある。

 だが、それを柊小夜がいる本屋で問答するわけにもいかない。

 

(相手もボクのことを知っているから驚愕している……なら!)

 

 無理矢理にでもこちらの盤上に引っ張るしか道はない。

 

「あっれー? 明日奈ちゃんじゃないか! こんな所で会うなんて奇遇だなー。いつぶりだ? 元気にしてるー?」

 

「ふぇっ!? ええっと、あの……ア、アタシ……」

 

「何よ明日奈、知り合いだったんなら私にも教えてくれればいいのに。ほら、いつまでも階段で固まっていたら迷惑でしょ? 降りてきなさいって」

 

「いや、知っている顔だから言葉の意味として顔見知りではあるけど、会うのは初めてっていうか、ホント、何なのよこの状況!?」

 

「? 何を言っているのかサッパリだわ」

 

「明日奈ちゃん、アナタ疲れてるのよ……」

 

「アンタ! ネタを言えば何でも許されるとか思ってないでしょうね!?」

 

 場を和ませようと言ったネタに反応したか。こりゃ確定かな?

 元ネタの作品って、この世界では制作されていなかったんだし……

 それ以前に性格も喋り方も全然違う。

 

「まあまあ、落ち着いて。せっかくだし、あれからどうなったのか教えてよ。隣の和菓子屋でお茶でもしてさぁ」

 

「!? アンタもしかして……はぁ、分かったわよ」

 

 お、向こうもコチラの意図を理解してくれたか。

 

「小夜、ちょっと家庭のことでこの子と話したいことがあるから少し待っていてくれない? 隣の和菓子屋にいるから」

 

「いいわよ。ただし、ちゃんと後で紹介してね」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 そうして時間は元に戻る。

 

「「まさか……転生者?」」

 

 お互い口にした言葉で、図らずも正体が確定した。

 面倒な事態になったと天を仰ぎたくなる。

 

 場所は本屋の隣にあった和菓子屋の飲食スペース。

 幼女2人だけが店に訪れるのはさすがに珍しいのか店員が目をパチクリさせたが、愛想良く振る舞って偉人の描かれた紙を見せれば問題なかった。

 とりあえず安めの和菓子を相手の分含め何個か買い、話し合いができる空気を作ることに。もちろん支払いはボクですよ? こういう時のための軍資金だし、ここに連れてきたのもボクなんだから。

 

 ちなみに、飲み物も売っていないか店員さんに聞いたら、店長っぽいおばさんがお茶をサービスしてくれた。

 やっぱ和菓子にはお茶だね。心が落ち着くわー。

 

「ズズズッ。っはぁあああ……茶ぁうめぇぇぇ」

 

「何を現実逃避してんのよ。年寄り臭い」

 

「現実逃避もしたくなるだろうが、香坂明日奈が中身別人なんてさ……」

 

「そう、それよ! そこのところハッキリさせたいのよ!」

 

 目の前の香坂明日奈(?)はビシッとボクに指をさす。

 

「アンタ……転生者でいいのよね?」

 

「おう。前世は大学生の青年だったけど、事故で死んで気付いたら」

 

「……ふぇ!? 青年って、アンタ、男だったの!?」

 

「声がデカいって。店員さんに聞かれるとマズいだろが。というより、今の話からしてそっちは前世も女だった感じか?」

 

「えぇ。アタシも事故に遭って気付いたら……」

 

 これで転生者はボクも含めて2人目か。

 可能性は考えたこともあったけど、いざ現れると思うことが多いな。主に本物の香坂明日奈には2度と会えないってことに対して。

 まあそれは向こうも柚木友理(ボク)に対して思ってるだろうけど。

 

「『ヴァルキリー・ダンス』ってタイトルの作品は知ってる……?」

 

「知ってる知ってる。大学に入る前から何度もプレイしてたんだから。大好きなゲームのことは生まれ変わっても忘れやしない」

 

「ゲーム、か。アンタはそっちの方(・・・・・)なのね」

 

「そっちの方? なんの話だよ?」

 

 目の前の香坂明日奈(仮)が心底疲れたような表情になる。

 

 

「アタシは……アニメの方が先なの」

 

 

「………………what? アニメって、何の?」

 

「だ・か・ら! 『ヴァルダン』のアニメよ。当然、全年齢版の。アタシは後になってエロゲが原作だって知って、ショックで事故に遭って……」

 

 

 

 な、な、な、

 

 

 

「何だとおおおおおおおおおおおおおおっっっ!! 『ヴァルダン』がアニメ化ぁあああああああああああああっ!? っはあああああああああああ!?」

 

 

 

「ちょ、うるさいわよ!? アンタが静かにしなさいっての!」

 

 これが落ち着いていられるかってんだ!?

 ボクは『ヴァルダン』の情報に対してすぐ情報取得できるようアンテナを常に張っていたけど、そんな話は初耳だぞ!!

 




 冷静に考えると、義理とは言え兄妹が恋人になるって、再婚した両親はどう思うのだろうか?
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