エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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SS 柚木友理・非公認ファンクラブ(前編)

 

 事は八千代さんの何気ない質問から始まった。

 

「友理ちゃんって、結構モテるタイプです?」

 

「………………はい?」

 

 モテるって……誰が?

 

 

 

 明日奈、瑠維、レイカと4人で生徒会の手伝いを始めてから3日目。

 今日は他校からのお客さんが来るとかで、朝早くから集まってセッティングをしているところだった。

 

 大事な話し合いが先生たちの間でされるということで、お姉ちゃんを含む他の生徒会メンバーも動員して不備の無いように動くことに。

 その時、生徒会のメンバーから挨拶や自己紹介をされたけど……ぶっちゃけ1度で覚えられるかって話でさ? 正直言って何度も会うような仲でもないし、無理して脳内記憶領域を使う必要もないなーと。今後関わるかどうか不明の他人の顔と名前を覚えるくらいなら、お姉ちゃんや八千代さんのちょっとした仕草を永久保存する方がずっと意味があると思うんだ。

 バカらしい理由? 何とでも言え!

 

 と、そんなことを考えていたボクに“ふと思い出したので聞いてみた”といった感じに質問をしてきた八千代さん。

 

「……念のために聞きますが、八千代さんは『モテる』という言葉の意味をご存じですか? それとも荷物を多く持てる(・・・)のか?という意味で聞いてきたのですか? 後者なら、答えはYESですけど」

 

 中学生時代、陸上部から誘いが来るぐらいには体を鍛えているから、常識の範囲内でならそれなりの量の荷物は運べるけど……

 

「異性に好意を向けられやすいか?といった意味で聞きました。この際、同性でもいいのですが」

 

「モテる? ボクが? ……あり得ませんね」

 

 八千代さん相手でなかったら、鼻で笑っているところだ。

 

 どこの世界に家事スキルは高めで顔立ちも整っているけど、目的のためなら手段を選ばず男勝りで私服数着を使い回しにしている女を――それも前世が男であるTS娘を好きになるというのか?

 友人としての関係ならOKだろう。

 しかし、恋愛対象としてはOUTである。

 

 

 まぁ、もっとも……

 

 

「そんな! まさかユウちゃんを好きな男の子が現れたの!? 認めません! お姉ちゃんはどこの馬の骨かも分からないような人に嫁がせません!!」

 

「お姉ちゃん……!」

 

 何人もいる『ヴァルダン』ヒロイン勢の中でも、今やすっかりボクにとってフェイバリットな存在となった柚木秋穂お姉ちゃんは、大事な家族であるボクに男の影がチラついていないか心配で仕方ないよう。

 

(それはボクのセリフだよ、お姉ちゃん! お姉ちゃんをどこの馬の骨とも分からない男なんぞに嫁がせるものか!! 相手の身辺調査や付き合ってからの素行調査は任せて! もしも、お姉ちゃんを悲しませるような奴なら、奴なら――社会的に殺すか)

 

 『ヴァルダン』の主人公である香坂拓也に取られるのも嫌だけど、あとで裏切るような男ならボクは修羅にならざるを得ない……

 

(なーに、ダークサイドに堕ちそうな顔してんのアンタ)

 

 ボクが本当にお姉ちゃんのお相手としてゴミクズが現れた場合について考えていれば、呆れた表情の明日奈が側に。

 

(言っておくけど下らないことじゃないぞ。万が一お姉ちゃんに――)

 

(億が一でも、今の(・・)秋穂さんが今後数年で恋人を作ることはないでしょうから落ち着きなさいバカ)

 

(何でそんなこと言い切れるんだよ!?)

 

(アンタが原作ブレイクしたせいでしょが、アホのシスコン!!)

 

 意味が分からん!!

 

「はいはい、話を振った当人としてはアレですけど、いつもの茶番劇は姉妹仲良くご自宅に帰ってから好きなだけやってください」

 

 八千代さんは、どこからか出した扇子をパタパタしていらっしゃる。

 

 ……扇子に『落ち着けシスコン共』と達筆な字で書いてあるように見えるのは気のせいか? もしや他にもバリエーションが?

 

「しかし生徒会長よ? 何故、我が親友がモテるかどうかの話が出てくるのだ? 友理はどちらかというと友人・仲間といった関係が似合うが、恋愛方面では……うむ、やはりしっくりとこないな。一部例外を除いて、そういった話は聞かん」

 

 話を聞いていた瑠維が腕を組みながら首を傾げれば、

 

「そうね。ユズキ・ユウリの人間関係はこの2、3日しか見ていないけど、浮ついた話はとんと聞かないわ。少なくとも同学年ではないんじゃない? ……一部例外を除いて」

 

 瑠維の隣にいたレイカが援護し、

 

「う~ん……ダメね。アタシも2人と同じ意見よ。そもそも友理自身がそういった恋愛関係どうこうと無縁で興味がないから、いまいち想像しづらいのよねぇ。見た目だけなら好きになる男はいるんでしょうけど、中身も合わせるとなるとどうも……。やっぱ一部例外を除いて、アタシの知る範囲ではいないわね」

 

 明日奈が結論を出す。

 

「やはり、そういった意見になりますか……。私としても知っている限りでだと、一部例外を除いて同意見なんですよね。友理ちゃんの性格の善し悪しとは別に考えて、違和感があると言いますか……」

 

 …………

 

 いや、別にいいんだけどね?

 TS転生で男から女になった時点で、恋愛どうこうのことは綺麗さっぱり捨ててますし?

 でもさぁ? ここまで周りの親しい間柄の人たちの意見が一緒だと不安になると言いますか……ぶっちゃけ、ボクの評価って第3者視点だとどうなってるのかな?とブルーな気持ちになってくる。

 

(にしても、『一部例外』ね……)

 

 たぶん、というか間違いなく、全員同じ人物を思い浮かべたんだろうなぁ。

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

 

【同時刻】

 

 

「――ハッ!? この感じは、友理さんがワタクシの噂をしている!? もしやこれが愛のレーダー!? ついに友理さんへの愛が天元突破した証拠なのですね!! 待ってて下さい! アナタのマヤがすぐに学園へ向かいますぅ♡」

 

「……ねえ、サヨっち? あそこでマヤっちが……」

 

「視線を向けてはダメよ凛子。私たちは通学路の途中で突然電波を受信してスキップをしだす女子生徒とは無関係。分かった?」

 

「ア、ハイ」

 

 

 

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

 

 

 

 ……深く考えるのはやめとこう。

 

「話が脱線したんで戻りますけど、瑠維の言う通り何でボクがモテるかどうかといった話がでるんですか?」

 

 3年生で告白の準備をしている場面を見ちゃったとか?

 本当にそうだった場合はどうやって断ればいいのだろうか? まさか、こんなことで悩む日が来ようとは……

 

「あー、友理ちゃんが想像しているようなそういった訳でではないんですよ。……友理ちゃんはクラブ活動のことはご存じで?」

 

「? まぁ、学園のパンフレットに書かれていた程度の情報なら」

 

 

 クラブ活動。または研究会。

 部活動とは違って、あくまでも同じ趣味を持った人同士が交流を持つために作られたもの。

 

 部活動のように大会に出るわけでも学園から活動資金が出るわけでもないが、学園側へ申請し、それが通って学園公認クラブになると、パンフレットでの紹介・空き部屋の確保・物品をしまう専用ロッカー入手などが可能となる。

 

 ボクが目を通して知っているのだと、『カードゲームクラブ』に『ビーズクラブ』、さらに『特撮研究会』に『歴史研究会』なんてのもあった。

 前者は本当にただ集まって遊ぶだけだが、後者は研究会とだけあって学園祭で新たに分かったことを発表したりもするんだとか。過去にはテレビ出演もした黄金世代がいた時期もあるそう。

 

 

 閑話休題。

 

 

「そのクラブ活動が何か?」

 

「実はこの学園には、申請が通らなかった、または最初から申請する気が無かったなどの理由で『非公認クラブ』というのが存在するのです。そして、隠れて活動をし続けているのです」

 

「非公認クラブ?」

 

 ゲームの『ヴァルダン』でも出なかったぞ、そんな設定。

 クラブ活動にしても、ゲームじゃ凛子が王芽依と一緒に『武術同好会』を作ろうとするエピソードや、原作の(・・)柚木友理が『ファッションクラブ』の設立を目指すといったエピソードが、プレイヤーの行動次第で発生するぐらいだった。

 

「あるんですねー、そんなクラブって現実に」

 

「あるのですよ、困ったことに」

 

「そうなのよ明日奈ちゃん。基本的にクラブ申請は生徒会を通して問題なしと判断されたものを、先生方に渡して最終的な活動許可を取るんだけど、たま~に変な――生徒会としてとてもじゃないけど許可できないクラブを申請してくる人たちがいるの~」

 

「……寛容さのある八千代さんやお姉ちゃんがストップさせる程の?」

 

「さすがに私としても、自分の代で『擬人化動物愛好会』を先生方へ通す勇気はありません。アレを学園公認にするのは少々……」

 

「「良くやってくれました!」」

 

 明日奈とハモった。

 

 どこのバカ共だ。それを学園公認クラブにしようとしたの。

 個人の性癖にどうこう言うつもりはないけど、何故それが通ると思ったし? てか、話の流れ的にそいつら今でも非公認で集まっているってことだろ?

 下手なホラー映画よりホラーだわ。

 

「また話が脱線してしまいましたが、実は最近になってある情報が生徒会の調査で分かったのですよ」

 

「ちょっとタンマ」

 

 ウソでしょ?

 え? 話の流れ的に、そういうことなの?

 

 八千代さんはボクの制止の声を無視して現実を突きつける。

 

 

 

「どうも、友理ちゃんの非公認ファンクラブが存在するらしいのです」

 

 

 

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