エロゲ世界にTS転生したので好き放題に暗躍した結果   作:影薄燕

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第7話 裏パスワード

 

【side.明日奈】

 

 

 柚木家の玄関のドアから涙目の秋穂さんが飛び出してきて、アタシに抱きついてきた!?

 

「ふぇっ!? ど、どうしたんです秋穂さん!?」

 

「ユウちゃんが、ユウちゃんが~~~!」

 

「!? 友理が、どうかしたんですか?」

 

 昨日、電話をした時には何もなかったけど……

 友理の身に何かあったの?

 

「グスッ、とりあえず、2階まできてくれりゅ?」

 

「わ、分かりました」

 

 今日はご両親が揃っていないらしい若干の寂しさを感じる柚木家にお邪魔して、秋穂さんの話を聞いてみることにした。

 ちなみに、持ってきたお菓子は冷蔵庫に入れさせてもらう。

 

「実はね、ユウちゃん、小学校に入ってから何かで悩んでいたみたいなんだけど、どうしても気になって……。私にも相談してくれないし……。それで意を決して『入っちゃダメだよ』って言われた時間にユウちゃんのお部屋を覗いたら、何か……怖いことをしていたの」

 

「アイツが、怖いこと?」

 

 いつからか、自室への入出を禁止するようになって心配だったとか。悪いと思いつつそっと中を覗くと、秋穂さんには理解できないことをしていたらしい。

 

 

(友理ったらお姉さんに心配させて、部屋で何やってんの?)

 

 

「悩んでいることっていうのは……」

 

「たぶん『Heartギア』のことだと思うんだけど、よく分かんない」

 

 そういえば前回会った時、『Heartギア』についてアニメ組のアタシにいろいろ聞いてきたわねアイツ。焦っているようにも見えたけど。

 といっても、アタシは『Heartギア』について碌な情報を持っていなかった。むしろ友理がネットで調べたことに驚いたぐらいよ。

 

 そして、ついに友理の部屋の前に到着。ドアには可愛らしい文字で「ただいま使用中。入っちゃダメだよお姉ちゃん♪」と書かれた紙が貼ってある。

 微妙にうざったいと思ってしまうのは、アタシの器量が狭いからかしら?

 

「私、ユウちゃんのためにどうしたらいいのか分からなくて……」

 

「あー、とりあえず部屋の中見てみますんで待っていてください」

 

 嫌な予感がプンプンするけど、そうも言っていられない。

 アタシはドアノブに手を掛け、そっと開いた隙間から部屋を覗いて――

 

 

――パタンッ!

 

 

 すぐに扉を閉めた。

 

 ………………

 

「あー……帰りたい」

 

 ……えぇ、確かに怖かったわね。むしろドン引きだったわ。正直言って、友理と協力関係になったのを後悔するレベルで引く。

 

「ど、どうだった明日奈ちゃん?」

 

「……ここはアタシに任せてください」

 

 秋穂さんは1階で待っていて、とお願いして再びドアノブに手を掛ける。

 静かにドアを開け、中にいるバカに気付かれないよう注意しながら薄暗い部屋へと踏み込んだ。

 

 そこには、

 

 

 

「おぉ、我が願いを聞きたまえ~! 我に汝らの力を与えたまえ~!

 valkyrie@dance@number:413587290=//YZK//www.second@moon.chord21271131/YUR!

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 valkyrie@dance@number:413587290=//YZK//www.second@moon.chord21271131/YUR!!」

 

 

 

 どこで用意したのか問いだしたい祭壇と悪魔の像(?)に向かって、ブツブツと英語や数字を一心不乱に言い続ける友理の姿があった。

 客観的に見てもヤバい悪魔崇拝者にしか見えない。

 

「………………」

 

 1度天井を見上げてから、脚の調子を確かめる。

 

 そして、

 

「何をやってる大バカ」

 

「おおぉ! 我が願いを聞き(ゲッシッッッ!)だま゛ぁ゛あっ!!?

 

 

――ガダッァァァアアアアアアアアアンッッ!!

 

 

 無防備な後頭部に蹴りをおみまいしてやった。

 バカはおもしろいぐらい吹っ飛んで祭壇に激突した。

 

「ぐ ぉ お お ぅぅぅ~~~!! 一体、何が……?」

 

 バカは頭にたんこぶを作りながらノロノロ起き上がる。

 

「後ろよバカ。ツッコミたいことはいっぱいあるけど、まず正座しなさいバカ」

 

「明日奈!? なぜここに! ここは今重要な儀式を――」

 

 

 

「い い か ら 、 正 座 し ろ 。 今 す ぐ 」

 

 

「イエッサー! マム!」

 

 見事なほど綺麗に正座をするバカ。

 アタシは上からバカを見下ろす形で説明を求めることにした。

 

「単刀直入に聞くわ。何していたバカ?」

 

「あの、ボクはバカではなく、友理って名前で……」

 

「は?」

 

「何でもありません!! 簡単に言えば本格的に『ヴァルダン』のゲーム知識を使って、柚木友理の『Heartギア』による異能発現までの間に、別物の異能へと変化できないかと試せることは全部試そうとした結果であります! サッー!」

 

「別物の異能に? どういうこと?」

 

 『Heartギア』によって発現する異能は本人の性質に加え、それまでの生き方で方向性を持たせられるのでは? と考えられているだけで確証も無く、実験結果も誤差程度の違いしかないと結論づけられたって話だったんじゃ?

 

「まず大前提として、柚木友理の異能は知っている?」

 

「『ちょっとした異能をたくさん使える』でしょ。アニメでもやってたわ」

 

 アニメに登場した柚木友理の異能は『ちょっとした異能をたくさん使える』という、器用貧乏の典型的な例。

 正式名称は『極小異能乱舞』だったかしら。

 アタシが見た『ヴァルダン』のアニメで登場したのは、“静電気を起こす”“数センチ土が盛り上がる”“マッチ程度の火を灯す”“アリやダンゴムシを召喚”“家族限定で居場所が分かる”といった微妙なものばかりだったはず。

 

「そうだ。でもそれじゃ原作が開始しても、異能の分野でやれることはたかが知れている。目標は異能バトルで打倒主人公だ」

 

「はぁ? 兄貴を倒す? 難しくない? だって兄貴の異能は――」

 

 

 良くも悪くも“物語の主人公”らしい異能で……

 

 

「可能性はある。『ヴァルダン』のゲームから知ることができた可能性が」

 

「可能性? 何の?」

 

 

「……有料サービスによる、柚木友理の特別強化だ!」

 

 

 有料サービス? え? それって……

 

「『ヴァルダン』は知っての通り18禁ゲーム。ゲーム機などは使わず、パソコンでプレイする。その結果、インターネットさえ繋がれば購入した後から有料で様々なゲーム内の報酬が得られた。イベントも服装も、そして異能バトルにおける個別のキャラ強化も!」

 

 前世の友理はその有料サービスを全て購入したらしい。

 ゲームの中でキャラの服装を変えることができたり、バレンタインやクリスマスなどの特別なイベント(エロシーン含む)をプレイすることが可能になったり、戦闘パートで役立つアイテムの入手と各キャラの強化ができたりなど。

 

 『ヴァルダン』にはちょっとしたアイテムが貰えるパスワードシステムがあるそうで、有料サービスをダウンロードしたら一緒にメールで送られてくる“裏パスワード”を入力して初めて有料サービスが解放されると自信満々に友理は話した。

 

「じゃあ、さっきブツブツ言ってたのが裏パスワードってわけ?」

 

「あぁ! 比較的覚えやすいもので助かった!」

 

 

 ……アレのどこが覚えやすいというのか、ツッコんだら負けね。

 

 

「てか、そんなんで本当に異能が強化できると思ってるの?」

 

「可能性がゼロじゃないなら、やる価値はある」

 

「その、見るからに怪しい祭壇は……」

 

「最初は寝る前に裏パスワードを言うぐらいにしていたんだけど、このままじゃダメかもと思い始めて、親戚の従兄弟の妹の友達のお兄さんから学芸会で使ったのでよければと譲ってもらえたんだ。今じゃ時間を見つけては、儀式的な雰囲気で裏パスワードを言っている毎日だよ」

 

 ツッコまないわよ。途中から赤の他人になってるじゃないって!

 

「理由は分かったけど、秋穂さんが泣くほど心配してんだから、やるにしても少しは自重しなさいよ! せめてウソでもいいから、お姉さんに心配させないようにするくらいできるでしょうが!」

 

「ご、ごもっともです……」

 

 これで最低限でも自重してくれればいいんだけどねー。なんで家にお邪魔するだけでこんなに疲れるハメになったんだか。

 

 そういえば、もう1つ気になっていたことがあったわね。

 

「神頼みとかはよく聞くけど、何でよりにもよって悪魔みたいなデザインの像に祈りを捧げてんのよ?」

 

 その時の友理の答えは、余計にアタシを不安にさせるものだった。

 

「だって、柚木友理の強化された異能は……悪魔の力だからだよ」

 

 

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