難聴系ぼっち   作:アザミマーン

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おかしい…ぼ虹が好きなのに、気がついたらぼ喜多になろうとしている…ぼ喜多の引力が強すぎる。

てか話が進まなかった。


制限を経験で塗り替えたい

 

 

 

下手だ…(流石は喜多ちゃんに教えてる腕前だね!)』

 

『虹夏、逆』

 

「ぐふぅっ!!!」

 

 クリティカルヒット!! 直撃した言葉に私は崩れ落ちた。

 こうして後藤ひとりは灰となり、バンドを組むどころか、もう二度とギターを持つことはなかったのでした…

 

 難聴系ぼっち・完

 

 ミドリムシ 後藤ひとり

 ドラマー 伊地知虹夏

 ベーシスト 山田リョウ

 

 

 

『ちょちょちょ! ちょっと待ってよ!』

 

「どうもー…プランクトン後藤でーす…」

 

『売れないお笑い芸人みたいな人出てきた!?』

 

 へへ…ギターもできない私なんて存在価値ないですから…

 ごめんね喜多さん、喜多さんの期待には応えられないや…

 

 

 

 

 数時間前

 

『後藤さん! 私と同じバンドに入らない?!』

 

「はぇ…?」

 

 お昼休み。

 私が音楽準備室でギターをチューニングしながら待っていると、扉を開けた喜多さんが開口一番に言った。

 

 え? ちょっと衝撃的すぎて聞き取れなかったんですけど…何て? 

 

「なん、何です? 何の話ですか?」

 

『だから、私と同じバンドに入らない?! 後藤さん、バンド組みたいって言ってたじゃない!』

 

「………バンド?!

 

『珍しく大きい声出たね』

 

 読み間違いではなかったようだ。

 私を、バンドに? 

 

 ほ、本当に?! いや、確かに学校にギターを持ってきてるのは誰かバンドに誘ってくれないかなと考えてたのもあるからだけど、こんなに上手くいっていいの?! 

 いや待て罠かも…でも喜多さんが私を罠にかけるメリットなんてない…? そもそも私が知ってる喜多さんは人を罠にかけるような人じゃないし、なら本当に私を誘って? 

 

 そのとき目の前で手が振られ、喜多さんを置き去りにして考え込んでいたことに気づく。

 

「ああっ、すみませんすみません! また話を聞いてなくて」

 

『ううん、大丈夫よ! 急に言われても驚いちゃうわよね』

 

 喜多さんがニコニコ笑顔で返してくれる。や、優しい…気遣いが心に刺さる。こんな陽キャに私もなりたかった。

 ん? あれ、喜多さんと同じバンド? それならギターは既に喜多さんが担当しているのでは…

 

「すみません…。あっ、で、でも、喜多さんがギターで入ってるということは、お、同じギターの私は必要ないのでは…?」

 

『そんなことないわよ! 私は所詮ギター始めて1ヶ月も経ってない初心者だし、ギターでメインを張れるほどの実力はないわ。だから、リードギターが欲しいって話になったの』

 

 な、なるほど。

 だから私の力が必要…ふへへ

 

 確かに私はネットでは上手いとか言われてるし、3万人近いチャンネル登録者数があるし…これは、いける!? 

 

 しかし、私の臆病な心がそれに待ったをかける。

 

(でも…いきなり知らない人とバンド組んでやっていけるの?)

 

 喜多さんは良い人だ。それは知ってる。私が話を聞いていなくても、嫌な顔もせず同じことを言ってくれるし、目を見て話せなくても気にしない。正直、こんなに優しい人は家族以外では見たことがない。

 

 でもそれは他のメンバーが良い人である保証はない。

 

(他の人が怖い人たちだったら…)

 

へー、お前ギターやんの? なかなか見どころあるじゃん? ]

あのいや、そのあの

洋楽聞く? 何、聞かない?! そんなやつこのバンドに要らねェ!! Fu⚪︎k you!! 

ぴぃやぁぁぁぁぁぁ!!!???

 

ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 

『〜? ──、──?』

 

「はっ?!」

 

『あ、大丈夫? 後藤さん。そんなに顔青褪めさせて』

 

「す、すみません何度も…やっぱり、やめたほうが。あの、わ、私なんかが入ったら、ほ、他のメンバーの方がなんて言うか…」

 

 やっぱり駄目だ。もし私が入って雰囲気悪くなっちゃったら私を紹介した喜多さんに迷惑かけちゃうし…

また(・・)中学のときのようになったら。そう考えるだけで体が動かなくなる)

 

 でも、喜多さんはそんな怯える私に笑顔で言った。

 

『大丈夫よ!』

 

「え…?」

 

『他のメンバー、みんな優しい人だから! 私がギター弾けないのを正直に告白したときも、笑って許してくれたもの! だから、きっと大丈夫よ! 私も一緒にいるし!』

 

「喜多さん…ど、どうしてそこまで、私に優しくしてくれるんですか…?」

 

 こんなことを聞くのは失礼だと分かっている。でも、ただちょっとギターを教えているだけの私になんでこんなに良くしてくれているのか、不思議で仕方なかった。

 

 そんな私に、喜多さんはそれこそ不思議そうな表情で言う。

 

 

 

 

『そんなの、後藤さんが友達だからに決まってるじゃない!』

 

「え…」

 

 

 

 とも、だち? 

 

 私と喜多さんが、友達?! 

 

 

私…初めて友達できたんだ…!!!

[おめでとう!]

[おめでとう!]

 

 イマジナリーフレンドたちもリアルフレンドが出来たことを喜んでくれてる。

 そうか、私たちはもう友達だったんだ…! 

 ネットにも書いてあった、友達は「なってください」と言ってなるものじゃないんだって! こういうことだったのか! 

 苦節15年、私にも遂に友達が…

 

『それに後藤さん、ギターとっても上手じゃない! きっと喜んで入れてくれるわ!!』

 

え、えへへぇそんな〜褒めてもらうほどのものじゃ…」

 

 あぁ満たされる…承認欲求が…

 

『とりあえず、後藤さんが乗り気なら、今日メンバーと顔合わせしない?』

 

ヴェエ、今日!?」

 

『そう! 後藤さんもどんな人たちなのか早く知りたいでしょ?』

 

 そ、そんないきなり?! 衝撃の発言が多すぎて展開に着いていけない!! せめてこ、心の準備をさせて!! ちょちょちょ、ちょっと待って…あああ明日とか、いや来週とかになりませんかね…? 

 

『よし、そうと決まったら放課後、裏門前集合ね!!』

 

(まだ何も言ってないのに! でもこんな善意の提案、断れない…。それに、これを断ったらもう高校でバンド組むチャンスなんてないかもしれない。今だけでいい、勇気を出すんだ後藤ひとり! 初めての友達の頼みだろ?!)

 

『じゃあよろしくね!!』

 

わ、分かりましたぁ…

 

 そんな訳で喜多さんのバンドメンバーに会いに行くことになってしまった。

 だ、大丈夫だ私。今日の私は一味違う、なんせ友達ができたんだから! 顔合わせ、やってやる!! 

 

 

 

『あ、バンドなんだけど、下北沢で活動しててね?』

 

あ、バンドメンバーの皆さんいい人達でしたねありがとうございました今日はこれで失礼します…

 

『まだ駅にすら着いてないわよ?!』

 

 心折れそう…

 

 

 

 程なくして下北沢駅に到着。

 喜多さんの話では駅前で待ち合わせという話だ。

 

『まだ来てないみたいね…』

 

「そそ、そうですか、なら今日は辞めにしませんか…?」

 

『ここで帰ったら失礼でしょ! …ん? ごめんなさい、ちょっと電話』

 

 喜多さんがスマホを取り出して電話に出る。バンドメンバーの人からなのかな。まだ待ち合わせ時刻にはなってないけど、もし遅刻しそうとかなら今日は無しってことにならないかな…

 

 あれ、喜多さん電話先の相手に怒ってるみたいだけど、どうしたんだろう。こんなに優しい喜多さんを怒らせるなんて、電話先の相手は一体なにをやらかしたんだ…

 

 喜多さんが電話を切り、スマホを操作する。そしてこちらを向き、顔の前で手を合わせる例のポーズで頭を下げてきた。

 

『〜ー! 〜〜!!』

 

「え、え?」

 

 こういうとき聞こえないのは本当に不便だ。どうやら謝ってるみたいだけど、理由が全く分からない。な、なんて返せば…

 オロオロしているうちに喜多さんが顔を上げる。よ、良かったこれで聞き直せば…

 

『本当にごめんなさい! バンドメンバーには言っておいたから!! じゃあ私、急がなきゃだからこれで!!!』

 

「へ?」

 

 そう言い残し、喜多さんはダッシュで駅の方へ走って行き、電車に飛び乗って行ってしまった。

 

え?

 

 い、一体何が? 

 も、もしかして私、喜多さんに置き去りにされた…? 下北沢なんてお洒落タウンで1人…? 

 しかもバンドメンバーには言っておいたって、私だけで知らない人に会いに行けと?! 

 

む、無理無理無理無理!!

 

 ダメだ、喜多さんがいるならって思ってたけど一人で行くなんて絶対無理だ!? 

 に、逃げなきゃ。待ち合わせ時間までもうすぐだし、ここに止まってたら喜多さんのバンドメンバーの人が迎えに来てしまう…! 

 おおお落ち着け私、し、下北沢ならギターを背負ってる人なんてそう珍しくないし、めめメンバーの人だって、探し人が私だなんて分からないはず! 

 幸い駅はすぐそこ、静かに、そして速やかに、いつものように存在感を消してここを立ち去るんだ…! 

 

 しかしその瞬間、肩を叩かれた。

 

びゃっ?!

 

『おーい、さっきから声かけてたのに全然反応しないからさ。あなたが喜多ちゃんの言ってた子?』

 

ひひひひひ人違いでは?!?!

 

『いやー上下ピンクのジャージでギターケース背負ってるなんてそうそうないし、間違いってことは無いでしょ!』

 

 きき、喜多さんんんんん! なんでそんな間違えようのない特徴を教えてちゃったんですか?! 

 どうしようどうしよう、もはや誤魔化すのは無理か…?! 

 

『あなたが後藤ひとりちゃん?』

 

「(なな名前まで抑えられてるぅぅぅ)あ、そ、そうでスゥ…

 

『やっぱそうなんじゃん! あたし、伊地知虹夏! 下北沢高校2年! バンドではリーダー兼ドラム担当でーす!』

 

あ、後藤ひとり秀華高校1年…です…

 

 無理だー! そこまで特定されてたら弁解の余地もない! あれ、自己紹介返したけどこんな簡潔で良かったのかな…もっと何か面白いことしたほうが

 

『うん、よろしくね! じゃあとりあえず、私たちが活動してるライブハウスまで行こっか! STARRYって言うんだけど…』

 

 あっ置いていかないで! お洒落死する!? 

 それにしてもライブハウスか…行くの初めてだ。あれ、なんか心臓ヤバい? 

 

『ひとりちゃんはさ』

 

「(いきなり名前呼び?! 陽キャの喜多さんですら苗字で呼ぶのに!)な、なんでしょうか…」

 

『喜多ちゃんにギター教えてるんだよね? やっぱギター結構弾けるんだよね!』

 

「ア、ソコソコカトォ…」

 

『そうなんだ! あとさー…』

 

 そうして話しているうちにライブハウスに着いた。ただ、会話内容に関しては虹夏ちゃんが私を先導する形で前を歩いていることが多かったので大半は分からなかった。でもそこで横に並ぼうとする程のコミュ力は無い…

 

(魔境…?)

 

 建物の地下に構えられたドアを意気揚々と開けた虹夏ちゃんに続き中に入る。外観は恐ろしげだったけど、中は薄暗く圧迫感がある。押入れの中みたいで安心する…

 

「わ、私の家!」

 

『〜?!』

 

 虹夏ちゃんが何事か言っていたようだが咄嗟の発言までは見えない。

 ただ、所詮バンドマンなんて陰キャの集まり…という思い込みは虹夏ちゃんに紹介されたPAさんのイケイケ具合に抹消されてしまった。イキってすみません…

 

『あ、帰ってきた』

 

(怖い! え、睨まれてる…?)

 

『ひとりちゃん、これがウチのバンドのベース、山田リョウだよ! リョウ、この子が後藤ひとりちゃん。喜多ちゃんが言ってたギタリスト!』

 

『よろしく』

 

よよよよろしくお願いします大変申し訳ありません!!!

 

『どうした急に?!』

 

 続く紹介を聞くに、別に怒っている訳ではないらしい。よ、良かった…。変人と言われたリョウさんは嬉しそうにしてた。そ、それでいいの? 

 

 どうやらバンドメンバーはここに喜多さんを含めた3人で全員らしい。喜多さんのことを話す様子を見るに、とても仲の良さそうなバンドだ。私の入る隙ないんじゃないかな…

 

『よし、今は練習スペース空いてるし、次回のライブでやる予定の曲をみんなで合わせてみようか! 元々喜多ちゃんと一緒に練習するつもりだったし』

 

「え?」

 

『喜多ちゃんに教えてるなら、曲も知ってるかな? これスコアね。大丈夫?』

 

(いきなり合わせるの?! …あれ?)

 

 渡されたスコアは喜多さんの持っているものと同じだった。でもこれは喜多さんが弾くパートの筈。喜多さんがリードギターをやるなら少なくとも今回私のパートはリズムギターになるのでは? 

 

「あ、あの。こ、これは喜多さんのパートでは…?」

 

『あーうん、そうなんだけど、喜多ちゃんも昨日の今日で連れてくると思わなかったからリズムギター用のスコア用意してないんだよねぇ』

 

「あ、なるほど…」

 

 こ、これはラッキーだったかも? いきなり知らないスコアを見て弾くのはちょっと難しいし。これなら弾ける! 

 

『初心者をたった三週間であそこまで育て上げたギターの腕前、楽しみ』

 

『喜多ちゃんも上手いって言ってたからね〜期待しちゃっていいのかな〜?』

 

あっあっそんなことはあの…

 

 喜多さん?! 何でそんなにハードル上げてるの…そんな期待の目で見られたら緊張する〜!!! 

 

『準備できたかな? じゃあ始めようか! 行くよ?』

 

(え、待って待って心の準備が)

 

 

 

 

 

 そして今に至る。

 

『〜〜? ──!!』

 

もうダメだ…お終いだ…

 

 初めての音合わせは散々な結果に終わった。喜多さんとの練習で他の人と合わせるのが難しいことは知ってるけど、合わせる人数が1人増えただけで難易度が数倍に跳ね上がってる…

 

 というか集中出来なくてそもそも何も聞こえない。なんとかドラムとベースの動きを見て合わせたけど、二つの楽器を見ながらリズムを合わせるなんて無理だ…。

 いつもは喜多さん1人に合わせれば良かったからまだマシだったんだなぁ…というか、そもそも虹夏ちゃんもリョウさんも楽器がギターじゃないから動きが全然違う。

 

『──!!』

 

「は、はいぃ…」

 

 ゴミ箱に入って落ち込んでいると、虹夏ちゃんが私の肩を叩いてくる。あ、近いといい匂いが流れ込んでくる。防虫剤の匂いがする私とは大違いだ…

 なんだろ、ダメダメな私を吊るし上げようとしてるのかな…

 顔を上げると、想像とは反対に笑顔の虹夏ちゃんが立っていた。

 

「え…」

 

『しょうがないよ、今日は初めて合わせたんだし! それに、最初はみんな下手なところから始まるんだしさ?』

 

『私は最初から上手かった』

 

『あーソウデスカー』

 

「あ、あの…」

 

『?』

 

「げ、幻滅しないんですか…? 喜多さんが言ってたみたいな上手いギタリストじゃなくて…こんなド下手が喜多さんに偉そうに指導してたなんて…」

 

 いつもの実力全然出せなくて、しかもゴミ箱に引きこもるようなダメ人間なのに。そんなのが虹夏ちゃんの大事なバンドメンバーであろう喜多さんの指導してたなんて、私が虹夏ちゃんだったら怒って追い返してもおかしくない。

 いや私がその立場でも追い返すほどの勇気は出ないか…

 

『まーそりゃ、少しはガッカリしたけど…』

 

「や、やっぱり」

 

『でも幻滅なんてする訳ないよ! 喜多ちゃんがあそこまで弾けるようになるには、本人の素質もあるかもだけど指導者が良くないと絶対無理だって!』

 

「!」

 

 げ、幻滅するどころか褒めてくれてる! 虹夏ちゃん…好き…

 

『うん。本人の腕前と指導力が合ってないのはよくあることだし』

 

『それはフォローになってなくない…? っ、それに、人に教えるっていうのは、自分も同じところで躓いてないと上手く教えられないもんだよ。だから、ひとりちゃんがこれまでギター頑張って努力して弾いてきたってことはよく分かるよ! でないと喜多ちゃんに教えられないもんね! そんなに躓いてもバンド組むために1人で努力するのを辞めなかったんだから、やっぱりひとりちゃんは凄い子だよ!』

 

「虹夏ちゃん、リョウさん…」

 

『え、リョウの言葉に感じ入るところあった?』

 

『バンドマンの鑑たる私の言うことに心を打たれるのは当然』

 

『…まぁライブまで一週間あるしさ、これからまた一緒に頑張っていこうよ。今日がダメでも、練習する機会はまだあるんだから!』

 

 また…一緒に。

 私、このバンドに居ていいんだ…

 ギターしか取り柄がなくて、そのギターすらもこんな有様な私に、現実での居場所なんてないと思ってた。

 でも、この人たちはそんな私に、一緒にやろうなんて優しい言葉をかけてくれた。

 

 喜多さんがきっかけをくれて、虹夏ちゃんたちがそれを繋いでくれて…こんな奇跡、絶対、私には今後一生訪れない! 

 

 ライブ、絶対成功させたい!! 

 

あ、あの!!!

 

『うぉうビックリした』

 

「あ、すみません声の大きさ間違えました…。あの、も、もう一度! もう一度セッションしてくれませんか!!」

 

『いいよ』

 

『…おー良いね良いね! ひとりちゃんも乗り気になってきたじゃん! 今日はまだ時間あるし、ギリギリまでやってこー!!』

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 このままじゃグダグダなライブで終わる。ここに喜多さんも合わさるんだし、少しでも練習して合わせられるようにならなきゃ! 

 でも耳が聞こえない今の私じゃ、虹夏ちゃんとリョウさん、それに喜多さんと同時に合わせるなんてできない。

 

 それなら────!! 

 

『!!』

 

『…おお』

 

「っ!」

 

 虹夏ちゃんのドラムに視線を固定する。

 目を見て演奏なんて陰キャコミュ障の私には出来ないし、でもリズム隊を両方同時に見ながら合わせるなんて器用なこともできない。なら虹夏ちゃんのドラムにだけでも、今は合わせるんだ…! 

 

 以前バンドを組むのに他の楽器の知識も必要だと思って勉強したことがある。…ベースはギターと似ていて両方弾けるかと思ったけど、勉強してみたら全然違う楽器で諦めたのは黒歴史だ。

 いやそんなことはどうでもいい。

 さっき合わせて、見た感じ失礼だけど虹夏ちゃんよりリョウさんのほうが上手かった。なら、虹夏ちゃんに合わせればリョウさんはそれに合わせてくれるはず! 

 これでどうにか…!! 

 

 

 

『…おぉ〜、最初より全然良くなってるよひとりちゃん!』

 

『良くやった、ひとり』

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 一曲弾いただけで疲労が半端ない。ギター弾くだけじゃなくて他のことに気を遣い続けるってこんなに疲れるの…?

 でも、バンド組んで一緒に合わせるの、凄く楽しい! 

 

(今はドラムを目で追って音を想像するだけだけど、いつかは本当の音を聴きたいな…)

 

 とりあえず、他の楽器のスコアも貰って想像の音を補強しよう。

 

 そのまま何回かセッションして、今日の練習は終わった。虹夏ちゃんたちとLOINEも交換して、ドラムとベースのスコアも貰って解散した。

 いや本当は虹夏ちゃんに歓迎会に誘われたけど、今日は複数人と話しすぎて疲れたので終わりにして貰った。

 

 よし、明日は私がライブで実際に演奏するリズムギターのスコアも用意してくれるって言ってたし、また明日から頑張るぞー!!! 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃった。喜多ちゃんが言うような実力はちょっと分からなかったけど、まぁ今日初めて合わせたし仕方ないか!」

 

「そうだね」

 

「私たちの分のスコアも欲しいなんて、勉強熱心な子だなー。…まぁ、人の話を聞かなすぎるきらいはあるけど。今日何回『聞いてる?』て言ったか分かんないや」

 

「…」

 

「…? どしたの、リョウ。なんかあった? もしかして、ひとりちゃん入れるの、反対?」

 

「そういうわけじゃない。確かに下手だったけど、こっちに合わせようとする努力は見られたし、何より面白いし」

 

「だよねー! ちょっと、いやだいぶ独特だけど、面白い子だったね! 声かけた時も全然気づかなくて、肩叩くまで一人でブツブツ言ってたし」

 

「そう…」

 

「…リョウ? 本当に大丈夫?」

 

「いや、何でもない。気のせいかもだし」

 

「なんだよー! そこまで引っ張ったなら言ってよ!」

 

(虹夏は気付いてないけど、ひとりは虹夏のドラムを見て(・・)ギターを合わせてた。私が虹夏のドラムとわざとズラして弾いたときも、虹夏にだけ合わせてた。あんなあからさまなズラし方したら、普通はギターも乱れる筈なのに。…もしかして、ひとりは…)

 

「明日からは喜多ちゃんとも一緒にできるし、ここからが本格始動だね!!」

 

(流石に考え過ぎかな。それに、虹夏に言ってないなら私からとやかく言うこともないか。多分、最初の合わせで私たちの実力を大体把握して、私の方が上手いと思ったから虹夏に合わせてるんだ。私ならそれに合わせられると信じて。それなら、私が虹夏にしっかり合わせればいいか。虹夏に合わせてるひとりも合うだろうし)

 

「がんばるぞー!!」

 

(今はただ、ひとりの信頼に応えよう。虹夏が気付いたら…そのとき考えるか)

 

 

 




次はもっと遅くなるかと。喜多いしないで待っててね。

あ、返信してないけど感想は見てるよ。ありがとうございます!
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