ではなく、投稿が遅れました。まぁ元々遅筆だけど。
遅い時は忙しいか内容を充実させようと試行錯誤してるかどっちかなんで多めに見てくだされ…
あと新しい試みでぼっちちゃんの聞こえてない所にぼかしを入れています。
『はい、というわけで第一回結束バンドメンバーミーティングを開催します。拍手!』
虹夏ちゃんの声掛けに、私と喜多さんが拍手で返す。リョウさんはいつも通り特に何も反応を返さない。我が道を行くなぁ…
無事(?)初ライブを終えた私たちだったが、今後のバンドの方針などを何も決めていないということで話し合いをすることになった。
『ぼっちちゃんが加入してからライブまでずっと練習してたからねー。交流も兼ねて今後の活動方針を定めてしまおうと! …でもまだ全然仲深まってないから何話せばいいかわかんないや』
(身も蓋もない…)
『そんな時のためにこんなものを』
『さっすがリョウ先輩!』
すかさずリョウさんが取り出したのは、お昼の番組でよく見るようなサイコロ。…なんかバンジージャンプって書いてあるの見えるけど大丈夫かな…
サイコロを受け取った虹夏ちゃんが転がし、最初に出た目は。
『学校の話、略してガコバナ〜』
『はいどうぞっ』
「えっ」
が、学校の話?! し、しかも私にいきなり振られた?!
そんなこといきなり言われても、学校じゃ喜多さんにギター教えてる以外は基本一人な私に話題提供なんて…他の人の話を盗み聞きしようにも聞こえないから分からないし…あ、そうだ。
「そ、そういえばお二人とも同じ学校…」
『そ、下高〜』
『二人とも家が近いから選んだ』
『私も下北沢高校なら家はそんなに遠くないですし、リョウ先輩が下高だって知ってたなら頑張ってそっちを受験したのに…』
「あ、皆さん下北沢周辺にお住まいで…」
下北沢にみんな物怖じしないのは生まれた街だからなのかな…私も下北沢出身だったら今頃おしゃれな女子高生だったんだろうか。
【見て、あの子! めっちゃお洒落じゃない?】
【背中にギター背負ってるし、ギターも上手いんだろうな〜かっこいい!!】
「ちょっと、そこのお嬢さん方。私のギター、聞いてかない?」
ぎゅいいぃぃいいん!!!
【【きゃー素敵ー!! 後藤様ー!!】】
なんて展開もあったかも。う、うへ、うへへへ
『後藤さん』
「はっ!?」
『帰ってきたねー』
ま、また話を聞いてなかった。隣に座ってる喜多さんが肩を叩いてくれなかったらあと5分は帰ってこなかったかもしれない…
「す、すみません!!」
『いいよーだんだん慣れてきたから。で、ぼっちちゃんは喜多ちゃんと同じ秀華高だよね? 家ここら辺じゃないの?』
「あ、いえ、県外で家から片道二時間です…」
『二時間』
『え、なんで?!』
「高校は誰も中学の私を知らないところに行きたくて…」
『こ、この話はもうやめにしましょう?!』
『そ、そうだね! ガコバナ終ー了ー!』
とにかくできるだけ遠くの学校に行きたかった。私の中学時代の
万が一あの件について知っている人と同じところに進学してしまったら、私が難聴であることがバレ、そしてバンドなんて絶対に組めなくなってしまっただろうから。
本当はもっと遠くの高校に行きたかったんだけど、親に家から通える距離にしなさいと言われ、選んだのが秀華高だった。
秀華高は学力的にはギリギリだったけど、猛勉強して何とか滑り込めた。そのおかげなのか、秀華高に中学の同級生は一人もいなかった。
『つ、次は好きな音楽の話〜略して?』
『オトバナ〜』
『オトバナ〜!!』
再びサイコロが振られ、音楽の話になる。どんな音楽が好きか、か…
虹夏ちゃんはメロコア(メロディック・ハードコア)とかが好きらしい。虹夏ちゃんはドラマーなのに、ギターメロディに重きを置くメロコアが好きとはちょっと意外かも。
『私はドラマーだけど、おねーちゃんがギターやってたからギターの音が好きなんだー! 最近だと、みんなも知ってるかもだけど、動画投稿サイトの【guitarhero】さんとかよく見る! あたしファンでさー、新着通知もONにしてるんだ』
(【guitarhero】…私?!)
『え、それって…』
『私もおすすめに出てくるから見たことあるけど、凄い上手かった』
『でしょー! ぼっちちゃんも喜多ちゃんも聞いたことなかったら、後でURL送るから聞いてみてよ、もう最高だから!!』
『…後藤さん、顔…』
ウェヘヘへへ…
そ、そっかー…ファン、私の、ファン!に、虹夏ちゃんは私のファンなのか〜。さ、サインとか求められたらどうしよう。ま、まだ決まってないんだよねサイン!
…い、いや待て後藤ひとり。今のところ虹夏ちゃんの前では無様な演奏しか出来てないし、言っても信じてもらえないんじゃないか。信じてもらったとしても、それこそ幻滅されてしまう…こんなコミュ障陰キャが憧れの人なんて知ったら、いくら天使の虹夏ちゃんでも激怒して魔王になってしまうかも…?!
…正体を明かすのは、コミュ障を治してからにしよう、うん。特に、ファンだと言ってくれた虹夏ちゃんには絶対にバレないように…
『私はテクノ歌謡とか、最近はサウジアラビアのヒットチャートを『そこ嘘つかないー』…ほんとだもん』
『私はブギウギとか結構好きです!』
な、なんかみんな結構意外というか…いやロックバンドらしくはあるの、かな?
『ぼっちちゃんは?』
「あっ、…青春コンプレックスを刺激しない曲なら…何でも…」
『ん? 青春コンプレックス?』
『あっ青春コンプレックスっていうのは…』
う゛っ…陽キャで青春の塊みたいな喜多さんに改めて説明されるとダメージが半端じゃない…メンタル死にそう。
『禁句があるってそういうことねー。…あ、いいこと思いついた!』
好きなバンドが学生時代から人気者だったなんて知ったら急に遠い存在に思えてくる…いやそもそもロックは負け犬が歌うから心に響くのであって成功者が歌ったらそれはもうロックとは
肩を揺すられる。
「はっ?!」
『後藤さん大丈夫?』
『ぼっちちゃん聞いてなかったでしょ』
「すすすすみません!!な、なんでしょうか?!」
『要約すると、バンドは売れるまでライブの度に毎回お金かかるからみんなでバイトするって話』
リョウさんが短くまとめてくれた。…って
「バイト?!」
『おおう今日一声出たね』
『大丈夫よ後藤さん! 皆でここSTARRYでバイトするんですって! 私も一緒よ!』
絶対嫌だ…! 働きたくない怖い、社会が怖い!
私耳聞こえないから仕事にも支障出るだろうし、それに喜多さんと一緒にバイトなんてしたら…
「あ、あああああのあのええとその」
【いらっしゃいませ! 本日はどのバンドを見に来られましたか? 良ければフライヤーもどうぞ!】
【あの新人使えるな。それに比べてあのコミュ障は…おい、こっちこい!】
「ななななんでしょうか?!?!」
【お前を[お客様に不快感を与えたで賞]で警察に突き出す!!】
「ひいいいいいいいい」
(こうなるに決まってる〜!!)
『おーいぼっちちゃーん』
『後藤さん!』
「はっ…む、むむ無理ですバイトなんて…」
そ、そうだ、お母さんから預かってる病院への通院費を使えば…いやだめだ、月に一回くらいしか行かないから足りないし、そもそもこれ以上病状を悪化させられないしお金の出どころを聞かれたら難聴がバレる…詰んだ…
『ぼっち、私もできるだけフォローする』
『リョウがそんなこと言うなんて珍しいね? でもそうだよ、私たちが一緒だから大丈夫だって!』
『後藤さん、一緒にがんばりましょう!!』
キターン!!
「う゛う゛…頑張りましゅ…」
バンドメンバー全員からの善意の圧力…こ、断れない…
こうして私がバイトをすることは確定してしまったのだった。
『バイトは来週からね! あ、この後時間あるなら皆で遊びに行かない? ぼっちちゃんも加入してメンバーが揃ったってことで、歓迎会も兼ねて!』
『いいですねそれ! カラオケとかどうですか?』
「え」
どうしよう、歓迎会とかされたことないし行ってみたい気持ちはあるけど、今日は色々ありすぎて正直帰りたい…
それにカラオケなんて行っても私歌上手くないと思うし、そもそも何も聞こえないから自分の歌声の音程が取れているかどうかすら分からないし、人前で歌うの怖いし…
『か、カラオケかぁ…あたし歌下手なんだよね。いやでも、ボーカルの喜多ちゃんの実力を見るにはいい機会かも?』
『行きましょうよ! ね、リョウ先輩も!』
『眠いしパス。…ぼっちも、今日は疲れたんじゃない?』
り、リョウさん…! ナイスフォロー! よ、よし、この流れに乗って私も参加しない方向で…
『後藤さんは来るわよね?!』
キタキターン!!!
「うっ」
『あたし、ぼっちちゃんともっと仲良くなりたいな〜?』
「ううっ!」
光の波状攻撃?! これは…断れない…
「分かりました…」
下北沢に生まれてたら、コミュ障にもならなかったんだろうか…ああ、NOと言えない日本人とは私のことです…
で、でも仲良くしたいとは私も思ってるし、自分から誘うなんてできないからいい機会ではある、かも?
『…やっぱり私も行く』
『ホントですか? やったー!!』
『郁代がボーカルにしても、コーラスやるの私だし。一度合わせておくのも悪くない』
結局全員で行くことになってしまったけど、人数が多い方が私に歌う順番が回ってこなくていいかも…
そんな私の心配は無用なものとなった。
カラオケでは虹夏ちゃんが実力を見たいと言ったように喜多さんが主に歌うことになったからだ。
それに、たまに私に順番が回ってきそうになったときにはリョウさんが割り込んで歌ってくれた。
(リョウさん…変な人かと思ってたけど、もしかして凄く気遣いできる人なのかも…)
『〜♪』
『リョウ…誰も知らない曲流して場を盛り下げるのやめて』
(やっぱり気のせいかも…)
『さっすがリョウ先輩! そんなところも素敵! 歌もとっても上手〜』
『それは同意だけど…』
(そうなんだ。みんなの歌声もいつか聞いてみたいな…)
『あ、各員の役割なんだけど、リョウは作曲として、ぼっちちゃんに作詞やってもらおうと思ってるんだ。いいかな?』
「…はぁ………私?!」
『歌詞に禁句が多いなら、ぼっちちゃんが書けば大丈夫でしょ? さっきのミーティング中に思いついたんだけど、いやー我ながら名案だと思ったよ。よし、任せたぞ作詞大臣!』
(小中9年間休み時間を図書室で過ごし続けたのはこのための布石…?)
『あ、それなら私宣伝係やります! よくイソスタに写真あげてますし!』
『じゃー喜多ちゃんはSNS大臣に任命します!』
『虹夏は何するの?』
『…あ、次あたしが入れた曲だー』
『流された』
耳が聞こえないのにカラオケなんて、って思ってたけど、なんだかんだ楽しめたと思う。
ただ、一度だけ歌ったときは皆の顔がものすごく微妙なものになっていたのでやっぱりもう二度とカラオケには行かないと決めた。
そうしてやってきたバイト初日。
…ついに来てしまった。先週のミーティングから昨日までずっと現実逃避し続けていたけど、時間の流れを止めることはできない。
現実逃避のために動画編集したり歌詞考えたりしてたせいで、今週はもう2本も動画上げたし、歌詞も一応いくつか出来た。
しかしなんの解決にもなっていない。逃避したところでバイトがなくなる訳ではないのだ。
今日はいつも一緒に来る喜多さんがいない。用事があるそうで、少し遅れてくるらしい。…あれ、もしかして私STARRYに一人で入るの初めて…?
どうしよう、私みたいな芋娘が入ったら「なんだコイツ?」的な目で見られるだろうし、誰かと一緒に入りたい…誰か来ないかな。
そう思うも誰も来ずにはや5分経過した。ど、どうしようあと10分くらい待っちゃダメかな…い、いやそんなに待ってたらバイトに遅刻してしまう…!
や、やるしかない、私が自分で、あああ開けるしかないんだ…
扉に手を掛ける。あとはこの扉を開けるだけ…!
ぼっち頑張れぼっち頑張れぼっち頑張れぼっち頑張れぼっち頑張れぼっち頑張れぼっ
ガシ
「ヒィぃぃぃぃ」
『何度呼びかけても反応しないからだろ…チケットの販売は5時からですよ。まだ準備中なんで』
す、スタッフさん?! ヤバい、周り見てなくて反応できなかった…あ、怪しまれてるよね? こ、っここはどどどうにか誤解を解いて…
「お、おおおお落ち着いてっててて」
『お前が落ち着け』
『新しいバイトの子か。なら最初からそう言いなよ。アタシ、ここの店長だからよろしく』
「よ、よろしくお願いしますぅ…」
なんとか怪しまれずに? 中に入ることができた。というか店長さんだったんだ…ちょっと雰囲気が怖いな、苦手なタイプかも…
『ていうか、この前段ボールに入ってライブしたギターの子じゃん。名前は確か…【ウーロン・マスク】?』
「! うううう【ウーロンマスク】です!」
新しいあだ名…店長さん好き!
…あれ? そういえば店長さんの匂い、虹夏ちゃんと一緒? 見た目もちょっと似てるしもしかして…
「あ、あの。もしかして店長さんて虹夏ちゃんのお姉さまですか?」
『様って。そうだよ。アタシ、伊地知星歌。虹夏から聞いてた?』
「あ、お姉さんがいることは…あ、あとは、虹夏ちゃんと似てたので…匂いも…」
『…ふーん。まぁ、ここでは店長って呼んで。困ったことがあったら言いな。ただ、仕事に関しての細かいことは虹夏から聞いてね、ちょうど来たみたいだし』
店長さんの言葉に後ろを振り向くと、確かに虹夏ちゃんとリョウさんが扉を開けたところだった。で、できればもう少し早く来てほしかった…
『あれ、ぼっちちゃんもうおねーちゃんと仲良くなったの?』
『ぼっちちゃん? ウーロンマスクじゃなかったか』
『そんなあだ名じゃないでしょ。おねーちゃんも適当なこと言わないで』
『ここでは店長と呼べ、仕事に私情を挟むな』
続く話を見るに、どうやら虹夏ちゃんは私に既に説明していたらしい。STARRYに初めて来るときに。あの時は虹夏ちゃんが先導してたからあんまり話が見えてなかったんだよね…
『とりあえず、早速仕事しよっか! まずは掃除から…あれ?』
『すみませーん、遅れました!』
『おー喜多ちゃん! 思ったより早かったね、これからぼっちちゃんに教えるところだったしちょうどいいや。一緒に教えるからすぐ準備して!』
『はーい!』
虹夏ちゃんの目線の先に喜多さんがいた。遅れて来るという話だったけど、どうやら用事が早く終わったみたい。
喜多さんもバイトは初めてだって言ってたし、一緒に頑張ろう…!
まず掃除からか、でも掃除道具の場所わからないな…
『虹夏ーメモする時間ぐらい待ってやりなー。ぼっちちゃーん、掃除道具そこだから』
「あ、はいっ」
『えーなにー?遠くて聞こえないー!』
『だからメモする時間くらい取れよって』
様子を察したのか店長さんが場所を教えてくれた。道具一式を持ってくると、リョウさんが同じようにモップを持ってやってくる。
『ぼっち、まず机を片付けて掃き掃除。郁代は準備できたら道具持ってきて』
「は、はいっ!」
『わかりました!』
よ、よーし、どんどん覚えて目指せ即戦力…!
しかし厳しい現実が私を襲う!
『ふんふーん♪』
『喜多ちゃん要領いいねー。受付も覚えちゃう?』
『やります! 私人と関わるの大好きなんですよ!』
『ぼっち、大丈夫?』
「あ、あは、あははは…」
ドリンクを覚えるのも一苦労の私に対し、喜多さんは次々と新しいことを覚え、任されていく…
頑張ってメモしたドリンクの位置も、喜多さんは聞いただけで把握してしまったようだ。私の存在意義って…?
「聞いてください、【同じ日に仕事を始めた同期の半分以下の仕事しかできないダメバイトのエレジー】…」
『ちょおおどっから出した?!』
あははは、もうだめだ…おしまいだ…
『ぼっちちゃん、見て見て?』
「あ、はい…」
『大丈夫、ライブ始まったら暇になるから!』
接客が始まってからしばらく。虹夏ちゃんの示す先にはステージの上のバンドと集まったお客さんの姿があった。
結局、ここまで一度もまともな仕事なんてできてない。ドリンクを出すことはできるけど、注文を受けるときは口元を注視してるから目を見れないし、そうでなくとも怖くて目を見ることなんてできない。
『お疲れ』
『お疲れ様です!』
リョウさんと喜多さんが合流する。喜多さんとリョウさんは二人で受付をやっていたけど、どうやら問題はなかったみたいだ。…虹夏ちゃんに任せきりだった私とは大違いだ。
『お疲れー。あれ、受付は?』
『店長さんが代わってくれました! 今日のバンドはどれも人気があるし、勉強になるから見たほうがいいって!』
『郁代が有能だったからサボる余裕までできてしまった…』
『おねーちゃんに言っとくから』
リョウさんがサボれるくらいには、喜多さんは活躍していたらしい。喜多さんはいつでも明るいしかわいいし、きっと来た人が笑顔になるような接客ができていたに違いない。同じ立場のはずなのに…私、使えないな…
「す、すみません、戦力にならないどころか、お客さんと目も合わせられなくて…」
『これ使う? 烏龍茶じゃないけど』
『使わない使わない』
『だ、大丈夫よ後藤さん! 私たち、まだバイト初日なんだし、これから慣れていくわよ!』
そうなのかな…でも、即戦力になっている喜多さんに言われても説得力が…
だめだ、少しでも前に進まないと。一対一の接客でこの調子じゃ、沢山のお客さんの前でライブなんて成功するはずもない。
『オレンジジュースで』
「は、はいっ!」
ライブが始まったとはいえ、お客さんの注文が0になる訳じゃない。
喜多さんを見習い、目を見て笑顔で接客することを意識する。少なくとも、このままの私じゃいつまで経っても成長なんてできない。
うう…でも目を見て話すのは…おっかなびっくりになって下から見上げるようになってしまう。
頑張れ私。
お客さんの目を見て…
笑顔で、接客!
「ど、どうぞ…」
『! あ、ありがとう!』
なんかお客さんの顔が赤かったような…気のせいか。
そ、それよりへ、変な接客になってなかったかな…? で、でもこれで私も千歩くらい成長できて
『カシオレ1つ』
『はい! 少々お待ちください!』
できて…
『お待たせしました! 今日はどのバンドを観に来られましたか? アレキサンディズム、いいですよね! 私も好きなんです〜!』
できて、ない…
私、いつになったら成長できるのかな…
『…』
『お疲れ、今日は帰っていいよ。気をつけてね』
「あ、お疲れ様です…」
『お疲れ様です!』
店長さん達に挨拶し、帰路に着く。その前に、肩を叩かれて振り返る。
なんだろう、あまりに使えなかったから次から来なくていいよとか…?
『ぼっちちゃん』
「な、なんでしょうか…やっぱりクビですか…?」
『いや違うから。…成長速度は人それぞれだしさ。そんなに心配しなくていいよ』
「えっ…」
店長さん、優しい…
私みたいなミジンコ以下の使えないバイトにこんな優しい言葉を…
『そうそう! まだ初日だし、これから慣れていこう!』
『次は私もフォローする』
『明日も一緒に頑張ろう、後藤さん!』
虹夏ちゃん、リョウさん、喜多さん…
「あ、ありがとう、ございます…!」
やっぱり、結束バンドのみんなは優しい。フォローの言葉に胸が温かくなる。
「それじゃ、ま、また明日!」
もっと頑張らないと。
店長さんはああ言ってくれたけど、私の成長が遅いことに変わりはない訳だし、それなら人一倍努力するしかない。
それに…気を使われすぎて、
ううん、ネガティブなことは考えないようにしよう。
今日はただ、初めてのバイトを乗り切ったことを喜ぼう!
今度こそ私は、このバンドで成功するんだ。
足手まといのままじゃ、終われない。
「リョウ、ちょっといい?」
「店長?」
「ぼっちちゃんについてなんだけど」
「…もしかして、店長も気づいた?」
「確信はないけどね。その感じだと、やっぱりお前も察してたか。お前なんだかんだ勘はいいしな」
「虹夏はまだ気付いてないよ。郁代も」
「まぁ…あの子らはそういうところあるから。ただ、あんだけ呼びかけてんのに気づかなかったり、逆に虹夏が聞こえてないのに同じ距離にいるぼっちちゃんと会話が成立したり…怪しさの塊だろ」
「…一回ちゃんと聞いたほうがいいかな」
「確かに、難しい話ではある。…ただ、いきなりリーダーの虹夏にバレるってのも相当な圧力になりそうなんだよね。ぼっちちゃんは隠してるみたいだし。一旦リョウを挟んでおくってのも悪くないんじゃない?」
「うん、そうだね。…近いうちに聞いてみる」
「そうしな。なんかあったらアタシもフォローするからさ」
「お願いします」
関係ないけど某笑顔動画のコメントってたまに天才がいるよね。
あ、この話は思いつきの突発ネタなのでそろそろ話が終わります。
あと二、三話だと思います。
そのあとはウマ娘に戻るか、ぼざろ熱が引いてなかったらもう一本短編書くかも。