少年には幼いころから黒髪の、犬みたいな青年が憑いている。それには攻撃されたことはない。それどころか時々守ってくれるような動作をする。少年の中では勝手に守護霊という存在にしている。しかしそれは認められない存在ならしい。
今少年は、お札のような紙が貼られた部屋の閉じ込められている。目の前には水色がかった白髪に2メートル近い身長、目元はアイマスクで隠されているが男性であることは確実である。少年がその人のことを眺めていると、その人は静かに口を開く。
「君は今、秘匿死刑を待つ死刑囚だ。」
男が言ったことは理解できなかった。なぜ、少年がここにとらわれた理由をもわからないし、いきなり知らない人に死刑と言われればもっとわからない。
「どういうことですか?説明してください。」
少年は目を細め、精一杯ににらむ。
「君の後ろに憑いているそれなんだけど、それは特級過呪怨霊。」
『特級過呪怨霊』聞いたことすらない単語だった。首をかしげていると、男が再び口を開く。
「特定の人間一人に憑りつき、その人の危険に迫ったときに発現してくる呪霊を過呪怨霊という。そしてその中で最も危ない過呪怨霊を特級過呪怨霊という。、、、理解したかな?」
男はアイマスクを首までずらし、少年を眺める。男の瞳はきれいなものだった。水色がかった白髪とバランスを取るように青色と水色で輝いている。
「彼はずっと私のそばにいます。幼少期の頃からずっといます。あなたの言っている『その人の危険に迫ったときに発現する』という条件には一致しないと思います。」
率直に思ったことを言う。そんな少年を見て高らかに笑い出す。
「ははっ、感の良いガキは嫌いじゃねぇよ!」
恐らくではあるが、20代後半あたり、そんな大人がこんな子供みたいになるのか。そう少年は思った。
「なんですか、、、」
「いやぁ、いい考察だなと思って。」
いまだに半笑いで話す男。さすがに嫌気がさした少年は、殺さないのか?問う。
「いや、殺す気はないよ。君には生きる必要がある。」
「必要?」
「さっきも説明させてもらった特級過呪怨霊が憑いている君には素質がある。見た感じ、術式を二つ、持っているみたいだし。それに呪術師は常に必要となる。」
男はさっきのように笑うことはなく、難しい何かを説明し始める。術式というのもしらないし、呪術師も聞いたことはない。もしこれから男についていくなら、知っていく必要がある。そう思った少年は質問をし始める。
「私はその呪術師になるためにはどうするんですか?」
「いい目だねぇ。君にはこれから学校に通ってもらう。呪術師を育てるための学校、呪術高専にね。」
「呪術高専?」
「君は、中学三年生。ちょうど一か月後には高校生だ。そしてこれはスカウトだ。君に意欲がなければここで殺すことになる。さぁ、君の決断を聞かせてくれ。」
「私は呪術高専に通いたいです。もともと死ぬ予定でしたし、誰かのためにこの命捧げます。」
少年は迷わず答えた。
「いいねぇ、、、」
少年の名前は七海建人。七海は水色がかった白髪の男、五条悟に保護され。五条に連れられて、高専へと向かう。七海が高専に通うことは決まったようで、寮へと案内される。
「ここが七海の部屋で、必要なものは言って。僕が用意するから。」
七海の部屋は広いものだった。自身が住んでいる家よりも何倍も広い。
「いいんですか?こんなところ、、、」
七海は申すわけなさそうに顔を下に向ける。そんな七海をみて特級過呪怨霊は慌てたように動く。
「君の過呪怨霊は慌てているみたいだ。」
「見えるんですか?」
七海はこれに気付いた人はいなかったため、意外だった。しかし五条の職業は呪術高専の一年一組担任、それと特級呪術師。特級呪術師は日本で、四人しかいない。その中の四人に五条は入っている。
「ここにいる人間はみんな見えるよ。七海はそいつと話せないのか?」
「見えることは見えるんですが、生まれてこの方一度も会話したことがないです。五条さんは話せないんですか?」
「僕は話せないね。こっちに手を振ったりはしているみたいだけど、」
五条も七海も怨霊と話すことはできないらしい。
「まぁ、これがまだ本来の姿ではない可能性も十分にあるし。とりあえず、日用品はそろえてあるから、今日からここで寝てね。」
「わかりました。」
七海は五条の部屋を出たのを確認すると、怨霊へと話しかける。
「まだ私たちの関係はバレていませんね、灰原。」
もともとあった勉強机に腰かける七海。七海についている怨霊は『灰原』という名前。五条に言った生まれてから一度も会話したことがないというのは噓だった。
『あの、五条先生って人?いい人そうだね。でもさすがにしゃべれないのは疲れるよね。』
灰原は勉強机の上に載って足を組む。
「灰原には申し訳ありませんけど、さすがにこれを誰かに話すことはできないですよ。」
そう言って七海は眠る。七海はこうやって突然眠りにつくことがある。それは灰原と喋るときに自身の呪力を消費しているから。七海自身はまだ、呪力のことも術式もことも全然知らない。だが、先天的に呪力がある。ひょっとすれば最強と謳われている五条よりも呪力量はある。そして灰原と会話をするときはとてつもない量の呪力を消費することになる。約三十秒で自身の元の呪力の半分。だいたいの人間は呪力が半分に近くなると意識とは関係なく眠たくなっていく。そして三分の一になると強制的に入眠される。七海の体には今、呪力は三分の一しかない。だから眠りについた。