星が降るころに、、、   作:七海-nanami-

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一話「座学に体術」

あれから一か月後。七海は五条に呪術や術式などの参考書をもらい、予習を励んでいた。今年度の一年生は一人だけならしく、その生徒は五条が小さいころから呪術や呪霊などとの闘い方を学んでいたため、ほぼ呪術師である七海は想像していた。七海は中学校に通ってはいたが、あまり人間関係ではうまくいっていなかった。人見知りということもあり、友達は一人もいいなかった。今も昔も友達は灰原だけ。そして今日、その生徒と一緒に授業を受けることになったのだが、、、

「あの、そんなに見ないでください。」

クラスメイトはとてもじゃないが、あまりかかわってくるような見た目はしていない。黒髪に少し癖のある髪、つり目よりの目。だがなぜかずっとこちらを見ている。七海が申し訳なさそうに言うと、静かに口を開く。

「いや、五条さんが言っていたより、真面目なんだと、、、」

彼の名前は伏黒恵。入学早々二級呪術師であり、単独での任務が許可されている。呪術界御三家の禪院家の血を引いており、本家本流の真希と真依には発現していない禪院家相伝の術式を受け継いでいることから、非常に才能のある呪術師として将来を見込まれている。しかしそんなことを七海は知らない。そして伏黒自身も七海の術式や、取りついている特級過呪怨霊の事情は全く知らない。

「七海は特級なんだろ?」

先ほど、五条による七海の紹介は終わり、一時限が始まるまで10分ほど時間はある。伏黒は立ち上がり、七海の机の前に立って話が聞きやすい態勢になる。

「まぁ、五条先生にそう、説明はされていますが、、、これは過呪怨霊によるものなので、私は四級がいいところですよ。」

実際問題、知識だけでなんの訓練もない人間はそれくらいだ。勿論術式を使うこともできない。だが、七海の術式は五条の六眼によって解析されている。

「そういえば、二年の乙骨先輩も最初はそうだったな。特級過呪怨霊に取りつかれて、入学初日で特級になってたと言ってたよ。まぁ、そのあとはそのあとは無事に解呪して、四級まで落ちたらしい。でも一年もたたずに特級。すごいよな。」

七海は先輩のことなんか何も知らなかった。伏黒が入学初日なのに知っているのは毎日のように呪術高専に連れられてたからだ。五条に勉強は大事と三年間、中学校に通いながら放課後は呪術高専に行って任務を行っていた。だから、一つ上の先輩たちのことはよく知っている。

「ちょうど二時限が二年生と合同の体術なのであいさつしないといけませんね。」

七海はにこりと笑ってそう答える。これは灰原から教えてもらった笑顔だった。中学生の頃、クラスメイトと仲良くできなかったのは灰原も知っていた。だから灰原はここ一か月、七海に笑顔の作り方を教えていた。始めの方はぎこちない笑顔だったが、今では何ら違和感なく笑顔をつくることができる。心の底から笑えないわけではないが、どうしても人の前で笑おうとするとひきつってしまっていた七海。それがもう意識しなくてもすることができる。後ろの方で見守っている灰原も同じように笑顔を浮かべている。

「ひとつ気になってるんだけど、、、質問していいか?」

「ん?、、、いいですよ。」

「後ろにいる、呪霊って話せないのか?」

「あぁ、これですか。何故か話すことはできないんです。五条さんにも話せないみたいで、」

そう言って七海は後ろで首をかしげている灰原のことを指さす。

「へー、そうなのか。」

それで二人の会話は終わった。伏黒がちょうど椅子に座ったとき、チャイムが教室に響き、五条が入室する。

「みんな、おっはよー――!!恵は昔からいるからわかると思うけど、七海は初めてだからいろいろ説明するねー。」

そう言って五条はチョークを取り出して、呪いについて説明していく。

「人類創生と共に生まれ、現世において尚澱重なり、蔓延る、それが呪い。日本国内での怪死者、行方不明者は年間10000人を超える。そのほとんどが人の肉体から抜け出した負の感情。呪いは言い換えればストレス。それにより人類創生と共に、生まれた。」

始めの方は基礎的な言葉から。教科書を開き、重要そうなキーワードにはマーカで印をつけ、板書をするときは五条が口でしか言っていないこともメモする。それが七海のやり方だった。七海は学校に行くのは嫌だったが、勉強をしたり、ノートを取ったりするのは好きだ。

あっという間に50分が経過し、五条の挨拶により授業は終了する。

「じゃあ、次は2年生と合同体術だから、校庭に集合ねー。」

そういうと五条は瞬間移動を使って、二人の前から姿を消す。七海は伏黒と一緒に校庭へと出る。校庭にはすでに、二年生全員が集まっていた。二年生は一時限目も体術だったため、二人よりも早く校庭にいた。一年生の頃は座学が多いが、二年生になるにつれて任務に行く時間の方が多くなる。そのため、座学の八割は一年生のうちに習っておく。

「おー、新しい一年かー。」

そう言ったのは緑色の髪をポニーテールに結んでいて、スクエアフレームのアンダーリムを着用している女生徒。四級術師。彼女の名前は禪院真希。呪術界御三家の一つである、禪院家26代目当主・禪院直毘人の姪。呪術高専京都校に通う全員真依は双子の妹。名門の出ではあるが、生まれつきに呪力はほぼ持たず、術式が扱えない上に呪霊を見ることすらできなそれ故、幼少期は禪院家のなかでも落ちこぼれ扱いされており、母親からも産まなければよかったなどと罵倒されながらも雑用をさせられるなど徹底的に虐げられてきた。しかし、あえて呪術師となって名を上げることで禪院家を見返そうと家を出て呪術高専東京校に入学した。

「しゃけ。」

「わー、綺麗な金髪。」

彼の名前は乙骨憂太。日本に五人しかいない特級呪術師の一人。しかし七海自身の能力は特級に値しないため、実質四人になる。七海と同じように特級過呪怨霊・折本里香に呪われており、その危険さから秘匿死刑が決定しかけたところを五条の提案で呪術高専東京校に途中転入した。また、現在は特級過呪怨霊ではなく術式として折本里香を取得している。基本的には温厚。しかし友人を傷つけるものには容赦なく、普段の穏やかさが嘘のように気迫や敵愾心を見せつけるなど、呪術師としての適性の高さがうかがえる。

「しゃけ、ツナマヨ。」

「おおー、金髪。」

そして先ほどからお握りの具材名しか語彙を発しないのは狗巻棘。マッシュルームカットで、銀色がかった白髪と紫色の目をしている。戦闘時以外は襟の長い服やマスクなどで口元を隠している。口元には蛇の目、舌には牙の狗巻家の呪印がある。準一級呪術師で、言葉に呪力を込めて放つ「呪言師」の末裔。他者や自分への影響の大きい術式のため、安全を考慮して語彙を絞っている。結果普段口に出す言葉はおにぎりの具材名だけにしている。「しゃけ」は肯定、「おかか」は否定。言霊を扱う術式のため、反動軽減のためにのど薬を常備している。

「え、と、、、、」

七海は困っていた。真依、狗巻、乙骨とは良好な関係が取れそうだったが、一人、、、いや、一匹とはとてもじゃないが仲良くなれそうではなかった。それは、見た目がパンダだから。パンダのはずなのに、二足歩行で先ほどから何度も会話に入っている。人語を話すパンダ。その正体は傀儡呪術学の第一人者である夜蛾正道の最高傑作である感情をもって生まれた“突然変異呪骸”。準二級術師。呪骸ではある感情豊かで性格は陽気。また食事も可能で食べたものは自身の呪力に変換される。人ではないため、腕などが欠損しても復活が可能。

「おい、恵。どういうことか説明しろ。」

真依が伏黒に説明を求めているのは七海のことだった。乙骨と同じように過呪怨霊に呪われているのは真依には理解できたが、なぜその怨霊がこちらに手を振るのか。本来過呪怨霊は特定の人間一人の危険に迫ったときのみ発現する。今のこの状況を危険だと判断するならば、こちらに手を振る必要性はないだろう。それどころか襲おうとするのが一般的だ。

「俺にも七海の過呪怨霊は理解できていません。七海本人もよくわかっていないみたいですし、、、」

「とりあえず、自己紹介しよう?」

「ツナマヨ!」

そう切り出したのは乙骨。皆が七海に注目しているが、七海は伏黒以外のことは知らないし、伏黒以外は七海のことを知らない。

「僕は乙骨憂太。よろしくね。」

「こんぶ、ツナツナ」

七海は狗巻の語彙に疑問を持ちながらもよろしくお願いしますと笑いかける。

「私は禪院真希。」

真希は少し、不服そうに言う。

「俺はパンダ!!!!」

そしてパンダの自己紹介で七海は「やはり絡みずらい」そう思った。

「私は、七海建人です。こっちの過呪怨霊は五条先生曰く特級らしくて、、、」

「「「特級!?」」」

「すじこ!?」

パンダ、狗巻、真依、乙骨の四人は驚いたように言う。

「いや、戦っているのは見たことないんで、本当に特級かどうかはわかりません。」

それから10分の休みの間七海は灰原という名前は伏せて、過呪怨霊と話せないこと死刑になったことを五人に話した。

「大変なんだな、七海も。」

伏黒は七海にそういう。そんなことをしているといつの間にか10分が立っており、五条と、黒髪の長髪に特徴的な前髪で大きめの耳に大きなピアスをつけている男がやってくる。その男の名前は夏油傑。髪型はお団子状に一つにまとめ、上着は五条と同じようなタイプの制服をしていて、下はサルエルパンツにカスタムしている。夏油も五条も学生時代に私用していた制服を着用している。五条とは同級生で、現東京学長の夜蛾正道は元担任だった。五条とは実力は肩を並べるほどで互いに、「俺たちは最強」「私たちは最強なんだ」と言い合っている。そして夏油も乙骨と五条と同じように特級呪術師である。

「おー、早々に仲良くなってんだねー。」

五条は先ほどまでしていたアイマスクはしておらず、サングラスをしていた。

「先生!今日は何するんですか?」

そう声を発したのは乙骨。特級まで階級を上り詰めたものの、自身の成長のために日々努力している。

「今日は一対一で戦ってもらうよ。」

五条は一年一組の担任。夏油は二年一組の担任。狗巻対真依。パンダ対伏黒。乙骨対夏油。そして七海は五条に戦い方などを教えてもらう。

「じゃあ、20分戦って、勝った同士負けた同士で戦う。まぁ、憂太とすぐっ、夏油先生はずっとやってていいよ。じゃあよーい、どん。」

五条が両手をたたき、スタートをきる。そうすると全員、戦いが始まる。二年生と合同の体術は一週間に一回しかない。理由は簡単だ。練習とはいえ、術式を使うため、必ずしもけが人が出る。それを治療できるのは家入硝子しかいない。家入硝子というのは、五条と東京都立呪術高専での同期であり、母校である高専で医療従事者として勤めている。反転術式を他人に使い傷をいやすことができる数少ない人物。酒好きで酒豪。現在は禁煙中だが、昔は学生んの頃から煙草を頻繁にすうほどの愛煙家であった。反転術式を他者に使えるものは少なく。派手なけが人はほぼ家入のもとに運び込まれる。そのため、常に多忙であり、目の下のクマはいつまでたっても消えない。

「じゃあ、七海は呪具を選びに行こうか。」

戦っている六人の邪魔にならないように五条の背を追う七海。五条が七海に案内したのは、呪具が保管されている倉庫。厳重に鍵がかかっており、入れるのは高専関係者の中でもごく一部の者のみ。そして七海は五条が中に入っていくのをみて、入り口で待つ。約五分。五条は大量の呪具を持って出てくる。薙刀や刀などの古風なものから、ナックルや呪布のようなものまで持っている。

「一応、四級が使えるのはこれだけ。七海は特級だけど、七海自身はまだまだだからね。」

「ここから一つ好きなのを選んでいいんですか?」

「使いからなんかは後からたくさん教えるから、好きなの選んでいいよ。」

五条がそう言うと七海の目は途端に輝き始める。そして七海は薙刀を選んだ。

「これがいいです。」

「へー、薙刀か。珍しいね。」

五条は珍しそうにそう言うと、他の呪具を倉庫に仕舞って、鍵をかける。

七海は中学二年生まで薙刀を習っていた。しかし中学三年生では受験生ということもあり、やめていた。一年ぶりの薙刀は自身の気持ちを上げるためには十分だった。

「昔習ってたんですよ。だから教えてもらわなくても基本的な所作は出来ますよ。」

そう言って七海は薙刀を構える。久しぶりの感覚、でも昨日まで握っていた感覚もある。よくわからないものだ。しかしこれだけは言える。薙刀は自身に一番しっくりくるものだということを。七海はあんまり筋肉はついておらず、筋トレなどをしてもあまりつかない。薄い体からきっと殴り合いなどは不可能と自身が勝手に判断したのかもしれない。

「まずは呪力を流す練習からだね。さっきの授業でも説明したように。呪力は『電力』術式は『家電』というイメージを持つこと。プラグをコンセントに挿せば家電はずっと動くよね。それは電気がいつでも一定に流れているから。そして、ここで重要なのはいつでも家電を安定して動かせるように一定量の電気を長時間持続して流し続ける必要があるってこと。」

五条は身振り手振りをしながら説明をしていく。そしてそれはさらに続く。

「幸運なことに七海は呪力は僕よりも多い。そして術式は生まれながらに体に刻み付けられたもの。実力というよりかは遺伝でほぼ決まる。七海には二つの術式が刻み込まれているよ。だけど、、、もう一つの方は少し時間がかかりそうだから簡単な方に行こうか。」

そう言うと五条は七海の前に立って、少し腰を下げる。

「七海に今から僕の呪力を流すから、何か感じ取ったら教えて。」

五条は七海の頭に手を置き、一呼吸すると呪力を少量流し始める。それを感じ取るために七海はいつになく集中していた。多分、今話しかけられても答えることはおろか、気付くこともできないだろう。約三十秒後、七海は体に走る何かに気付いた。

「五条先生、わかりました。」

七海がそう言うと五条は七海の頭から手を離す。

「どんな感じだった?」

「そうですね、五条先生の言う通り電気みたいなものでした。」

七海は体に走る何かは電気みたいなものだった。痛みや痺れなどはしないものの、電機以外に表しようのないものだった。

「じゃあ次は呪力を放出する方法。、、、なんだけど。多分今日中にはできないけど、一応説明をするね。」

呪力を放出することができるのはせいぜい半月程はかかる。現代最強の五条でも一週間はかかった。

「呪力は人間の負の感情から生まれたものだと、さっき説明したよね。」

「はい。」

「わずかな負の感情から呪力を放出する練習をするんだ。始めの方はそこから始める。段々慣れてきたら負の感情が無くても術式に流すことができる。」

呪力は「へそ」を起点にして胸、肩、腕、こぶしへと基本流していく。この流れをコントロールするのが呪術師の初めの第一歩だ。この呪力操作が出来るようになれば実戦でも大いに役立つ。勿論、ほぼ全員の呪術師がそれを可能としている。

「じゃあまずは何かイライラしたことを思い出して。」

七海は五条にそう言われて静かに目を瞑る。しかしストレスになったような出来事は特に思い出すことができなかった。しかし七海はなんとなくだが、呪力を体に流す方法は見つけ出していた。言葉に表すのは難しい、感覚のようなものだが、それでもちゃんと自身の体に呪力が流れるのを確認することができた。それを六眼で感知した五条は驚いたように声を上げる。

「えっ?!お前すげぇ―な!!」

七海は状況がうまくつかめず、首を横にかしげる。

「本来これを習得するには一か月程の時間が必要なんだよ。それを七海は一発で成功させた。すごいことだけ!」

(まぁ、あのクズなら楽勝だったろうが、、、いや、今あいつは関係ない。)

「傑に自慢しようぜ!」

そう言って五条は七海の腕をつかむと、乙骨と戦い終わって休憩している夏油のもとへ走る。夏油と乙骨は水飲み場に腰を掛け、ポカリスエットを飲んでいる。その横ではパンダと伏黒、狗巻と真依が互いに戦っている。

「すーぐるっ、」

「ん?どうしたのかい、五条先生。」

夏油はポカリスエットを水飲み場に置くと、五条の方を振り向く。

「七海って、きっと僕の親族だよ!!!!!」

「、、、は?」

急に変なことを言い出した五条に夏油は顔をゆがめる。隣にいた乙骨も同じ顔をしている。

「いつも言っているだろう、悟。きちんと主語を使ってと。」

「、、、わーった、わーった」

五条は七海が呪力操作を一瞬で習得できたことを話す。

「ほー、、、君の名前は?」

夏油が持っている学年は二年生であるため、一年生との関わりはないため初対面だ。

「七海建人です。」

七海がそう言った瞬間夏油は、一瞬眉間に皺を寄せるがすぐに笑顔に戻り、自身の自己紹介を始める。

「私は特級呪術師兼、二年一組担任の夏油傑だよ。」

「よろしくおねがいします。」

そう言った瞬間、授業の終了を知らせるチャイムが鳴り、二人の会話は終了した。伏黒と七海は再び座学のために教室に向かい、二年生は任務のために高専外へと向かう。

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