ラーの翼神竜に転生したけどなんか質問ある? 作:悲しいなぁ@silvie
「アポイントメントはおありですか?」
「あっす……」
グールズと名乗る不審者を倒した翌日、遊斗達は意気揚々とKCに乗り込むとラーの翼神竜の情報を求めて受付嬢にその旨を話したところ…
「デュエルディスクの情報はご利用者様方の個人情報等も含まれる為、我が社のトップシークレットとなっております。
また、デュエルディスク内部のライブラリに関しましては担当者にお聞き下さい。」
と、にこやかな営業スマイルを返された。
仕方なくその担当者に話をさせてもらおうとするも…
「アポイントメントはおありですか?」
と、にべもなく…遊斗は悲しげに口からあっすを垂れるしか無かった。
「…この子供達は何だ?」
しかし、そんな遊斗一行を天は見放さなかった。
「これは…海馬総帥!このような所に何故?」
目の前の受付嬢が背筋に鉄骨を刺したようにビッと立ち姿を整えると若干の冷や汗と共にそう問うた。
遊斗達は受付嬢のあまりの変わりように後ろを振り向く。
そこには、一人の青年が立っていた。
歳は二十代前半程、背は高く目鼻立ちはモデル級に整っておりその黒髪と長いコートが異様に様になっていた。
「海馬総帥って…もしかして海馬瀬人!?」
「テレビで見た事あったけど、本物…顔が良すぎない…?」
「す、すごい…」
と
「誰だ……?」
「遊斗……お前マジか…?」
「遊斗君…流石にソレは…」
「アンタねぇ、モノを知らなさ過ぎよ?」
三人は信じられないものを見るかのように遊斗を見る。
口々に突っ込まれた遊斗は少し居心地悪く不貞腐れてしまった。
「知らねーもんは知らねーよ!そもそも、オレは人の顔と名前覚えんのがニガテなの!」
「へッ、ドマイナーなカードの裁定覚えてる暇があるんならちっとはテレビでも見んだな」
「るせー!!」
遊斗達の茶番に取り合わず、海馬は受付嬢と少し話すと遊斗達の前に立つ。
「何か事情があるようだ…私で良ければ担当者に話を通しておこう」
「おー!マジかよ、サンキューな!」
「遊斗!お前なんつー口の利き方してんだ!?」
「ご、ごめんなさい海馬社長…コイツ世間知らずで…」
慌てて弁解する杏子に海馬は無表情のまま少しだけ瞑目すると平淡な声で話す。
「総帥、そう呼んでくれると助かる
KCは今や世界的な巨大コングロマリットだ…社長という肩書きで私を形容するのは些か難しいのでね」
その声は、平淡であったが何処となく苛立ちと不快感を感じさせる声であった。
「す、すみません!えと…海馬総帥…」
杏子は慌ててそう訂正するが…
「ところで社長さんよー、話通しておいてくれんのは助かんだけど…その間暇だし社会科見学でもさせてくれよ」
遊斗はド直球の火の玉ストレートを放っていた。
「おま…!馬鹿か!?馬鹿か!馬鹿かぁ…!」
本田が遊斗の肩を掴んで馬鹿の三段活用をしながら項垂れるも海馬はポケットから手帳を取り出して腕時計と見比べると直ぐに口を開く。
「構わないよ、だが…私も忙しい身でね
1時間程度で終わらせるが構わないかな?」
「おー、言ってみるもんだな!」
「「「あ、ありがとうございます!」」」
三人は遊斗の頭を掴んで無理矢理さげさせると深々と礼をした後海馬の後に着いていくのだった。
「最後に…此処がデュエルディスクと通信を行うライブラリだ
計6台のスーパーコンピューターを24時間フルで稼働させているから滅多な事ではデュエルディスクはエラーを起こさない」
「スゲー!こんなデカいのでやってたのかよ!!」
巨大な機械類が所狭しと敷き詰められたとある一室にて、遊斗達は海馬の説明を受けながらキャッキャとはしゃいでいた。
きっかり1時間後、総帥である海馬自らの案内で始まったKC社会科見学ツアーは豊富な知識と的確な解説を行う海馬のお陰もあってか少年達を元の目的を忘れる程に魅了していた。
「ふむ、担当者が来てくれたようだ
では私はここで失礼する…今日は楽しんでもらえたかな?」
「おー!ホントにサンキューな社長さん!!」
「………喜んで貰えたようで何より」
海馬が四人に背を向けて歩いて行くとすれ違いに一人の男が歩いて来る。
道化師の仮面を被った男が。
「昨日ぶりですね、少年?」
「お前は…!」
仮面の男は不敵な笑みを遊斗に向ける。
遊斗はそれに焦ったような声音で息を呑み……
「誰でしたっけ……」
申し訳なさそうに下を向いた。
「…………………なるほど
敗者たる私の事など覚えておく価値も無い…そう言いたいのですね?
ふ、ふふふ……良いでしょう…確かに昨日のデュエルの勝者は貴方だったのですから……ええ!それも良いでしょうとも!」
「ゆ、遊斗君…すっごく怒ってるけど本当に心当たりとか無いの…?」
「……昨日の……あーっ!!お前、昨日の不審者か!?」
「不審っ…!?……まぁ、良いでしょう…不審者扱いも甘んじて受けましょうとも…」
仮面の男は言葉に詰まりながらもゆっくりと、怒りを飲み込むようにゆっくりと話す。
「私はパンドラ、畏れ多くも総帥よりKC
「オカルト課…?んだソレ?」
「一言で言うならば…科学では説明が出来ない事をどうにかする部署、と言ったところですかね
超科学、文字通り科学技術を超えた存在の相手をするトラブルバスターズ……勿論、君の持つ神のカードもソレに該当します」
パンドラは遊斗の腰のデッキケースを指差しながらそう言うとツカツカと4人の元へ歩み寄る。
「神のカード…!そういやお前、ラーの事にえらく詳しそうだったよなぁ!丁度いい、説明してくれよ!」
遊斗はニヤリと笑うとデュエルディスクを構えながらそう言う。
しかし…
「構いませんよ、ですのでそのディスクは下ろして下さい
私は君に敗れた身…再戦には些か早過ぎます」
「あらぁ…?……ま、教えてくれんならいーか」
遊斗は肩透かしを食らいつつも言われた通りにディスクを下ろした。
「君の持つラーの翼神竜…ソレは三枚の神のカードの内の一つ
かつて、伝説の
「武藤……?」
遊斗は半笑いで首を傾げる。
その顔は誰ですかソレ…?と如実に物語っていた。
「ウッソだろお前……」
「遊斗君…日本史で習う筈だよ…?」
「アンタ……昔から歴史ダメだったわね…」
と、三人からドン引きされる遊斗を見ながらパンドラは続ける。
「三枚の神のカードは人知を超えた力を秘める…そのルーツは古代エジプトにまで遡り、
尤も、その王の名は歴史から抹消されている上にあまりにも昔の事…もはや真実そうであったかなどはわかりかねますがね」
パンドラはそう言いながら手に持っていたアタッシュケースを遊斗の目の前で開き、その中身を見せつける。
「一億…一先ず即金で用意致しました
足りぬと言うならば、ベタですが積みましょうとも…肘の高さまで
元は道端で拾ったカード、それが思うがままの大金へと化ける…少年、君にとっても中々悪い話ではない筈ですよ?」
中学生が目にする事すら無いその額に後ろの三人が固まる中、遊斗は興味無さげにパンドラを見る。
「……で?勝てねーから金積んで解決ってか?
良いねー、分かり易い……でもよ、こんなはした金じゃあラーは渡せねー
ほら、よく言うだろ?友情ってのは…値千金なんだっつーの!」
啖呵をきりながらアタッシュケースを無理矢理に閉じる。
……実際はパンドラの規格外の腕力によりピクリとも動かなかったが……とにかく!無理矢理閉じる。
「あくまでも……お譲り戴けない、と?」
「ったりめーだ!カードはデュエリストの親友で命だぜ?んなもん金で売るよーな馬鹿がいるか!!」
アタッシュケースを持つパンドラの指を引き剥がそうと両手で握り締めながら遊斗は叫ぶ。
それはつい先日、再録やオリパで被りに被った汎用カード達をカードショップに売りに行った男の言葉とは思えない程に熱のこもった言葉だった。
「ならば……此処から帰す訳には行かなくなりました」
パンドラはスッと笑みを消すと自身の指を握り締める遊斗を振り払い機械が溢れる一室を出て出入り口の端末を操作する。
ガコン、という音と共に一つしか無い出入り口が閉ざされる。
「緊急用の隔壁です
ライブラリはKCにとってのアキレス腱…防御に関しては様々な対策がなされているのですよ」
扉越しに聞こえるその声にようやく気を取り直した三人は再び固まってしまう。
「少年…貴方がラーの翼神竜を渡すというまで、その隔壁が開かれる事はありません
良い返事を期待しますよ」
遊斗は忌々しげに閉じた隔壁を睨むと舌打ちをしながら後ろに居る三人の方へ向き直る。
「………閉じ込められちゃった」
テヘ、とぶりっ子のように舌を出して言う遊斗の頬に本田と杏子の右ストレートが突き刺さった。
「「さっさと渡してこい!」きなさい!」
「痛っっっってぇ!!お前らなぁ!?デュエリストが自分のカードをそう簡単に渡せるかってーの!!」
あまりの威力に吹っ飛んだ遊斗は尻もちをつきながら二人に吠える。
「うるせぇ!お前こないだうららが死ぬ程ダブってるから売ってくるって言ってたじゃねぇかよ!!」
「アンタこないだカードショップで余ってたカードが高く売れたってはしゃいでたじゃない!!」
「ぬぅ………」
しかし、二人からの怒涛の剣幕にすぐに俯きながら唸る事しか出来なくなった。
「………でも、ラーの翼神竜が…そんな凄いカードが遊斗君の元に来たのは……きっと、何か意味があるんじゃないかな…?」
悲しげにぬぅ…と呟く遊斗を見かねて、城内は二人から庇うように遊斗の前に立つ。
「意味ぃ…?」
「遊斗君は…きっと、カードに選ばれたんだと思う
ラーの翼神竜自身が、遊斗君を選んだ……其処にはきっと何か意味がある筈なんだ」
おどおどとしながらも強くそう言う城内に本田と杏子は構えていた拳を下ろす。
「チッ…城内がそこまで言うなら仕方ねぇか……」
「そうね、城内君が言うなら……」
「なんかオレの時と対応が違わねーか!?」
驚く程にあっさりと鉾を収めた二人に遊斗は声を荒げるも二人から一睨みされるとすぐに黙った。
「でもよぉ、どうやって出るよ…?流石に此処でずっと過ごす訳にゃあいかねぇぜ?」
「へっ…そこんとこなら問題ねー!」
不安気な三人を見て、遊斗はニヤリと笑いながら隔壁の側にある制御用の端末を操作し始めた。
「アンタ…そういうのってパスワードとか掛かってるんじゃないの?」
「バーカ!パスワードなんざ無いのと一緒だぜ…オレ達の後ろ、何があると思ってんだよ」
「「「あっ…!」」」
三人は同時に振り返る。
其処に在るのは、KCが誇るスーパーコンピューター達。
「後ちょっとだな…」
遊斗はスーパーコンピューターと制御端末を自身のデュエルディスクを経由することで繋いでいた。
凄まじい速度の力技でパスワードが無理矢理に解析されていく。
「……ん?」
しかし、最後の最後…あと少しで解析が終わる所で止まってしまった。
「……これは……詰めデュエルか…?」
機密情報の保護として難解なパスワードや優秀なファイアウォールを設けるというのは世の常だが、昨今のコンピューターの目覚ましい発展には追いつけていないというのが実情だ。
それも、KCが誇るスーパーコンピューターともなればパスワード等無いも同然…丸裸に等しいだろう。
だからこそ、近頃では機密情報はスタンドアローンとするのが定石だ。
しかし、スタンドアローンとする事が不可能な情報達…今回のケースのような場合はどうするのか?
その答えが詰めデュエルである。
高々8種の駒しか無い将棋や6種のチェスと違い、遊戯王には1万種類を超えるカードがありそれらの動きは他のカードと密接に関わり合い変化する。
今やハッカー達はハッキングの腕と並行してデュエルの腕を磨くと言われる程に詰めデュエルは機密保護として広く認められているのだ。
「KCの詰めデュエル…僕らに解けるのかな…?」
「解くっきゃねぇぜ、それとも此処で暮らすか?」
「…駄目ね、アタシパス。見てたら目が痛くなってきた…」
遊斗のデュエルディスクに表示された問題を食い入るように見る二人と目頭を押さえながら手を振る杏子。
相手 LP7000
フィールド魔法 Sin World
マジック・ランプ ATK900 DEF1400 裏側守備表示
Sin トゥルース・ドラゴン ATK5000 DEF5000 守備表示
伏せカード・手札 無し
自分 LP100
ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン ATK4000 DEF0 攻撃表示
光天のマハー・ヴァイロ ATK1550 DEF1400 攻撃表示
伏せカード 無し
手札 ビッグバン・シュート 磁力の指輪
相手は発動可能な場合、必ず効果を発動するものとする。
自分フィールドのモンスターは全て1ターン以上前に召喚したものとする。
遊斗達は穴が開く程に問題を見る。
「マジック・ランプってどんな効果だっけか……」
「確か…裏側表示で攻撃されると攻撃対象を相手モンスターに移し替える効果だった筈だよ」
「おー!なら簡単だ!バトルフェイズに発動する効果ならマハー・ヴァイロに手札の装備カードを2枚とも装備すりゃあ相手はバトルフェイズ中に効果を発動出来ないぜ!」
「でも……それだと7000のライフを削りきれないような…」
「ありゃ…?あっ!ならマハー・ヴァイロから攻撃すんだよ!じゃあカオスMAXは対象に取れないから…」
「それでも削りきれねーだろアホ
……そもそも攻撃力5000のトゥルースが居る以上、ダイレクトも決まんねーよ」
遊斗は手を口元に当てながらブツブツと呟き始める。
「うーん…ビッグバン・シュートを破壊出来れば間接的に除去も出来るんだけど……」
「……無理だな、エクストラにデスフェニやらでも入ってればだがこの盤面と手札じゃ装備カードは割れねー」
その後も城内と本田はあれやこれやと話すも一向に答えに辿り着けなかった。
「ど、どうしよう……遊斗君も全然喋らないし…」
「やべぇな、ホントに出られねぇかも…」
二人は疲労から顔を上げその場に座り込む。
その顔は焦燥と、不安が隠し切れていなかった。
「遊斗ー、まだ開かないのー?」
だからこそ、杏子のそんな間延びした声が余計に場違いに聴こえて──
「あー?もう開いてるぜ」
「え?」
「あ゛?」
その声に軽く返す遊斗が信じられないもののように二人には見えたのだった。
「流っ石遊斗!デュエル馬鹿は伊達じゃないわね」
「馬鹿はよけーだっての」
「いやいやいや!!お前…いつ解けたんだ?さっきまで悩んでたよな!?」
「あんなもんパッと見で解んだろ?
トゥルースを除去出来ねーんだからカオスマックスの貫通倍ダメージ一回で7000削るしかないんだから…
マハー・ヴァイロを守備表示にしてから磁力の指輪装備して守備力500下げて、カオスマックスにビッグバン装備したら丁度(1400−500)−4400で3500ダメージの倍点で7000だろ?
要はマジック・ランプの効果でカオスマックスがマハー・ヴァイロを攻撃出来れば良いんだよ」
一息にそう語るとコンピューターに繋いでいたケーブル類を片付け始める。
「へー…聞いても解んないわね」
「なんで自分のモンスター同士が戦闘して相手にダメージが入るんだよ……」
「あぁ…ビッグバン・シュートなのもヒントだったんだね…
ビッグバン・シュートのテキストにはダメージは相手が受けるって書いてあるし…貫通ダメージ全体がそういう効果なんだね…」
がっくりと肩を落とす二人はふと思い出したように訊ねる。
「あれ……?でも、遊斗君はすぐに解けてたのに何を悩んでたの…?」
「ん?あぁ…それは……」
遊斗はパネルを操作して隔壁を上げると出口の前に立つ男を…海馬瀬人を見てニヤリと笑った。
「丁度、アンタのスケジュールも見れたからよ…折角だし相手して貰おうと思って待ってたんだ」
「………中々、優秀じゃないか九重君」
海馬は無表情のままにそう言うと前に出ようとするパンドラを手で制した。
「…っ!何故です、総帥!私は──」
「パンドラ、一度負けたお前が再び戦うよりも…
私がここで確実に勝利する方が効率的だ」
氷のように冷たい声音にパンドラは不甲斐無さ気に俯く。
海馬はデュエルディスクを構える遊斗を見て溜め息をつきながらゆっくりとその前にまで歩み寄る。
「なんでもデュエルデュエルと…理解に苦しむな
たかが玩具で機密情報の保護など、おかしいと思わないか?
経営者達のデュエルの勝敗が経済誌の一面を飾り、敗者の会社の株価が下落する…こんな世界に違和感を覚えないのか?」
常の無表情から微かに怒りを滲ませる海馬。
しかし、その怒りは恐らく遊斗達に向けられてはいない。
もっと別の…大きな何かに向けられている。
「……さーな、オレは単純にできてっからさ
今は──アンタとデュエルすること以外、考えてねーよ」
海馬はパンドラからデュエルディスクを受け取ると自身の腕に装着しながら、ゆっくりと微笑む。
「そうか…君はそれで良い
子供達が笑って遊ぶ事の出来る世界、それこそがKCの理念だ
今や巨大コングロマリットとなった我が社だが…元はエンターテインメント企業、そのトップである私が子供からの誘いをどうして断れようか」
腰に着けたデッキケースからデッキを抜き取ると顔から笑みを消し、鋭い眼光が遊斗を射抜く。
「だからこそ…その神のカードを君に持たせておく訳にはいかない
KCの総帥として、何より一人の大人として…子供を危険から護るのは当然の事だ」
海馬は一枚のカードを取り出すと自身のデッキの上に重ねる。
遊斗は、不思議な事にそのカードが何かを直感的に理解した。
「神の……カード…」
「私が持つのは【オベリスクの巨神兵】
当然だが君に危害を加えるつもりはないがね」
かくして、神のカードを持つ二人のデュエルが幕を開ける。
「「デュエル!」」
敵キャラのデュエル描写はどれぐらいが良いでしょうか?
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ほぼ全て描写
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最終盤面だけ
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ざっくりダイジェスト