ラーの翼神竜に転生したけどなんか質問ある?   作:悲しいなぁ@silvie

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第四十話『羊のドリー』

『ハァッ…ハァッ…!クソっ…あのバケモンめ…!!』

 

褐色の肌に白髪の男──かつて古代エジプトにて生をうけ、盗賊王とまで呼ばれた男…バクラは息を荒らげながら自身の精霊獣(カー)ディアバウンドの背に乗り脇目も振らずある場所を目指していた。

ディアバウンドの右手には気を失った黒い体躯を持つ男…ドン・サウザンドが滑り落ちぬように乱雑に握り締められている。

 

『ディアバウンドの螺旋波動がこれっぽっちも効いちゃいなかった……何者だあのバケモン女!』

 

バクラは忌々し気に歯噛みすると目的のビルを睨みつける。

 

『チッ、このオレ様があんなイカレ女の手をまた借りなくちゃならねぇとはな…』

 

見上げる程に高いビル…其処はデュエルモンスターズのカードをデザインするいわば遊戯王の根幹とも呼べる場所。

インダストリアルイリュージョン社、通称I₂社の本社ビルである。

かつてはアメリカにあった拠点を現在の会長が日本に移したソレはKCにも勝るとも劣らない規模である。

バクラはそんなビルの最上階へ迷い無く向かうと、ディアバウンドの力で窓を潜り抜け中へ侵入する。

 

「そろそろ来るんじゃないかと思ってたよ…

首尾はどうだい?バクラ君」

 

恐ろしく広い最上階の一室には異様な光景が広がっていた。

最上階のフロアを全て使ったその一室には足の踏み場も無い程に機械類が所狭しと並べられ、種々様々な医療用の機械と計器が一人の女性に繋がれていた。

点滴に酸素マスク、複数のカテーテルにバクラには何をしているか見当すらつかない機械を取り付けられベッドに横たわる女性は起き上がりもせずにそう声を掛けてきた。

 

『ケッ!わかってて訊いてんだろうがよ』

 

不機嫌さを隠しもせずにそう吐き捨てるとバクラは手近な機械の上に乱雑に座る。

 

()()()()、事情が変わった…今すぐ新しいカードを寄越しな!』

 

バクラの横柄で高圧的な態度にも女性──I₂社の会長、ペガサス・J・クロフォードは意にも介さず続ける。

 

「くっくっくっ、(なっさ)けねぇなぁ…盗賊王バクラともあろうお方がカードのおねだりとはね

そんなに欲しいならママにでも強請(ねだ)れよ…泣いて駄々こねれば買ってくれんじゃねぇの?」

 

瞬間、バクラを中心とした暴風が吹き荒れ硝子や壁に罅が入る。

 

『フザケてんじゃねぇぞ…テメェ、自分の立場がわかってねぇのか?

オレ様の機嫌一つでテメェの首なんぞ簡単に圧し折れるんだぜ』

 

「立場?あぁ、勿論わかってるぜ

僕が死ねば、弱りに弱って自分達じゃカード1枚作れなくなってる君達も仲良く共倒れ…」

 

ペガサスは気怠げに身体を起こすとバクラの方を向いて酸素マスク越しのくぐもった声で続ける。

 

「そうなれば世界の破滅を企む君達の野望(ユメ)は達成出来ない…素晴らしい、世界を救った救世主として君の事が語り継がれるだろうぜ!」

 

大仰に手を広げながら言うペガサスの額に不可視の殺意…精霊獣ディアバウンドの指先が迫る。

その手は、かつて数多の精霊(カー)を屠り古代エジプトの神官達を壊滅させた文字通りの兵器。

例え指先1つだろうと人間の頭など容易く弾けさせる…しかし、ペガサスは余裕を崩さない。

 

「なんのつもりだよバクラ君…真剣(マジ)に英雄思想なのか?」

 

『確かに…もう冥界の扉を開ける程の魔力(ヘカ)も究極の闇のゲームを再現する為の千年アイテム(準備)もねぇオレ様がそれでも勝ちの目を出すにはテメェに縋るしかないかもな…

だがな…オレ様にも気に入る勝ち方と気に入らねえ勝ち方があんだよ!』

 

憤怒に顔を歪めるバクラはなんの躊躇もなくディアバウンドに指示を出す。

ディアバウンドはその指先でペガサスの頭を吹き飛ばそうとし──

その鋒を一人の女性にとめられた。

 

「………一体どういう状況でしょうか、ペガサス様」

 

不眠症による深い隈が刻まれた不健康そうな女性は億劫そうにそう言うと掴んでいたディアバウンドの手をバクラに向けて投げ返す。

 

『誰かと思えば…英雄サマの腰巾着じゃねぇか

アッチがくたばっちまった次はすぐさまペガサスの腰巾着に鞍替えとはな、恐れ入るぜ』

 

バクラは飛んできた己の精霊獣を避ける事もせずに透過させると女に嘲りの笑みを向ける。

 

「………」

 

バクラの言葉に女は…九重夜行(ここのえやぎょう)は瞬時に全身の血管が破れるかと思う程の怒りを堪える為に強く奥歯を噛み締める。

もし、もしこの場にペガサスが居なければすぐさまバクラを撲殺しようと殴りかかっていただろう。

 

「おいおい…病人の前で暴れてんじゃねぇぜ」

 

「ペガサス様、コレは如何がなさいますか」

 

服の内側に忍ばせていたメスを取り出しながら夜行は一応の確認をとる。

しかし、ペガサスからの返答は予想通り…

 

「こんなんでも僕の計画(ユメ)の為の駒だ…潰されちゃ困るな

わかるよな夜行…計画の成功は君の望みへの唯一の道、それとも今更怖じ気づいたかい?」

 

「いえ…失礼しました」

 

夜行はそう言うと階段を下りてフロアから出ていった。

 

「そういえば…バクラ君、1つ気になってた事があるんだ

ソレに答えてくれさえすれば新しいカードを用意するぜ」

 

つい今しがた自身を殺そうとした相手に対してまるで変わらず話すペガサスに虫でも見たかのような嫌そうな顔のバクラはしかし、話が進まないと断じてか再びペガサスの近くに腰を降ろす。

 

『チッ…なにが聞きたい?』

 

「怒るなよ、最近の若者ってワケじゃねぇだろ?

いやさ…僕は知っての通り一日の大半が寝たきりでね、要するに死ぬ程暇なんだよ

だから、寝たきりで出来る暇つぶしにはあらかた手を出してる訳だが…今じゃ人間観察なんてのもやっててね

聞こえを良くするならプロファイリングと言ってもいい」

 

『ほぉー、そりゃ高尚なご趣味だこって』

 

ペガサスの迂遠で要領を得ない話にバクラはいつもの事かと頬杖をついてつまらなそうに相槌をうつ。

 

「で、だ…本題はその高尚なご趣味が──バクラ、君ではどうも難しくてね

いっそのこと本人に直接聞いてみようと思ったワケだよ」

 

バクラはその言葉に億劫そうに眉をひそめる。

 

『………なにか?要はオレ様の考えがわからねぇから教えて下さいってか?』

 

「くっくっくっ、恥も外聞もなく言えばそうだね」

 

『くっだらねえ…』

 

バクラはガシガシと頭を掻くとため息までついてペガサスを睨みながら先を促す。

言外に、答えてやるから早くしろ…と語りながら。

 

「悪いね…いやなに、君ってヤツはクズながら独自の矜持…美学と言い換えてもいい

そんなのを持ってると僕は思ってる

勝ち方に拘るのもそうだし…本当ならダーツやドン・サウザンドの奴らと組むのだって本意じゃないだろ?

勝つなら自分の手、自分の力で…ってとこか

なに、別にそれぐらい全人類が多かれ少なかれ思うことだが…君のソレは少し異常だよ

盗賊村のリーダーらしい無頼ぶりとでもいうのかな?極度に人に頼るという行為への嫌悪と自身の納得いく勝利を求め、時に敗北すら厭わないその姿勢…盗賊王の美学ってヤツを僕は目の当たりにしたね」

 

『べらべらと…オレ様はテメェと駄弁る程暇じゃねぇんだ

聞きたいことがあんならさっさとしな!』

 

バクラはのべつ幕なしに話すペガサスにがなるとその胸ぐらをつかむ。

入院着のような薄い服から死人のような白い肌と浮き上がった肋骨が見えるがバクラは気にせずペガサスを睨みつける。

 

「君さ、なんで不動遊斗(ふどうゆうと)を殺したんだい?

何度考えてもそれだけがどうにも納得いかなくてね…」

 

『………あ゛?』

 

ズルリ、と力が抜けたバクラの手からペガサスは滑り落ちベッドに倒れ込む。

 

「確かに彼は強かった…千年(ミレニアム)アイテムに適合し、正しき闇の力を以てネオスペーシアン達と手を取り合い、赤き竜に選ばれたシグナーでありながらアストラル世界の守護神の加護を受け、多次元世界と触れ合う事で自身のルーツを見定め揺るがぬ絆でもってして君達を退けた

正直言って、僕は運命論だのは全く信じないタチだけど…そんな僕でも認めざるを得ない

不動遊斗は時を同じくして復活した君達三人に対抗すべく世界が選んだ抑止力と言って過言じゃない」

 

ペガサスの言葉が耳に入っていないかのようにバクラはその双眸を強く見開きながら硬直している。

 

「他の二人なら…目的の為に手段を選ばないダーツやソレも含めての強さだと嘯くドン・サウザンドが彼を殺したんなら僕も納得できる

だが…よりにもよって、勝ちにではなく勝ち方に拘る君が半ば自身の負けを認めるような形で、だ

これには僕もびっくり仰天だよ…一体、どういう心境の変化だったのかな?」

 

薄く嘲笑うペガサスは自身の手を突き破り血を流す程に両手を握りしめるバクラを見る。

 

『………別に、オレ様の目的にアイツが邪魔だっただけだ』

 

「………ふぅん?」

 

絞り出すようなその返答にペガサスは笑みを深めると1枚のカードをバクラに投げつけた。

 

「ソレはKCのライブラリにデータも残ってたから再現(つくり)やすかったよ

じゃあ頑張っておくれ…今度は色よい返事を期待してるぜ、バクラ君」

 

バクラは受け取ったカードを一瞥するとすぐさまディアバウンドの背に飛び乗り、逃げるようにI₂社を後にした。

 

「くっくっくっ、因果ってのは廻るもんだね

地縛神 Wiraqocha Rasca、かつては冥界の王の下僕だった邪神が今度は冥界を統べる大邪神の手先とはね…」

 

ペガサスはひとしきり嘲笑うと突如として大きく咳き込む。

周りの計器類がけたたましい警告音を発する中、ペガサスは血に塗れた口元を歪め誰に語るでもなく呟く。

 

「アトランティスの神だろうが、バリアン世界の神だろうが、冥界の大邪神だろうが…なんだっていい

こんな玩具(カード)なんかで廻ってるクソみてぇな世界をブッ壊してくれるんなら…なんだっていいんだよ

くっくっくっ…あっはっはっは!!」

 

 

 

 

 


 

ペガサスの狂笑と警告音が木霊する最上階の1つ下

九重夜行は其処で首にかけているロケットを開き、1枚の写真を眺めていた。

紫色の髪の青年と夜行が肩を組んで笑い合っている写真。

それは夜行の大切な宝物で、何物にも代えがたい思い出。

 

「遊斗…もしお前が私のやってる事を知ったらなんて言うだろうな」

 

夜行はボロボロのデッキケースを手に持つと覚悟のこもった眼で語り掛ける。

 

「許しはしないだろうな…もしかしたら私はお前に殺したいぐらいに恨まれるかもしれない

でもな……それでも、私は……お前に生きていて欲しい

この世界には──私には、お前が必要なんだよ……相棒」

 

ぽつりぽつりと涙をこぼしながら、うわ言のように繰り返し言い続けていた。

 

 

 


 

九重夜行(27)

 

不動遊斗の元相棒にして共に世界を救った英傑。

遊斗とは同い年だが血縁上は叔母と甥である。

とある目的の為にペガサスのもとで活動している。

 

ペガサス・J・クロフォード(21)

 

I₂社の現会長にしてカードデザイナー。

その正体はかつてデュエルモンスターズを創り出したペガサスの遺体から採取したDNAから造られた体細胞クローン。

老衰で死んだペガサスの細胞から造られた為に産まれた頃から重度の臓器不全を起こし、生命維持の大部分を機械に肩代わりさせる事でなんとか延命している。

ダーツ、ドン・サウザンド、バクラの三人にカードを提供する事で世界の崩壊を望んでいる。

KCの総帥である海馬とは幼い頃からの親友である。

 

不動遊斗(享年22)

 

世界に選ばれた抑止力。

その実力は伝説の決闘者達と比べても遜色なく、世界の危機を幾度となく救ってきた。

 

 

 

 

今日の最強カードはコレ!

 

地縛神 Wiraqocha Rasca

星10/闇属性/鳥獣族/攻1/守1

このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分は「地縛神」と名のつくカードを召喚・反転召喚・特殊召喚する事はできない。

①︰フィールド魔法が表側表示で存在しない場合、このカードの以下の効果は無効となり、このカードはエンドフェイズ時に破壊される。

●このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。

●相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。

●このカードは相手の魔法・罠カードの効果を受けない。

②︰1ターンに1度、フィールド魔法が表側表示で存在する場合に自分バトルフェイズをスキップする事で発動できる。

相手LPを1にする。

 

………うん、まぁ言いたいことはわかるぜ?

まぁ……………キラトマから出ていい性能じゃないわな

あと、効果ダメージを発生させる訳じゃなくて1にする効果だからバーン対策が刺さりにくいのも厄介だな

対策?………まぁコイツ一体なら一応2ターン無いとトドメを刺せねぇ訳だからそこを上手く突きたいな

あとはフィールド魔法を破壊すりゃ良いんだから除去を多めに積むとかか?

あと、スキップするのは次の自分のバトルフェイズじゃないから先行では撃たれる心配が無いってのは覚えときたいな

鳥獣だからふわんが地獄?

……………オレに言うなよ!!




本作のメインヒロインペガサスちゃんの登場です

この小説にこれ以上シリアス(及び曇らせ)は…

  • 要る(鉄の意志)
  • 要らない(鋼の強さ)
  • やめろー!こんなのギャグ小説じゃない!!
  • それがお前の心の闇か…
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