痛苦と絶望のアングラゲーム ~凄惨たる死を想う少女の過激で危険な電脳遊戯~   作:兎乃葵

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第二話:友人、藍咲瑞葉

[チュートリアル 3/8]アイテムをショートカットに設定しよう!

[チュートリアル 3/8]達成、EXP100、[装飾]初心の指輪×1を獲得!

[チュートリアル 4/8]装備を更新しよう!

[チュートリアル 4/8]達成、EXP100、[特殊]INNチケット×7を獲得!

 

…………

 

 

    ◇◇◇

 

「やー、本当に無難なチュートリアルって感じ」

 

 報酬として獲得したアイテム群。詳細画面を開き、おおむね名前から想像できる通りの効果であることを確認する。

 

□□□□□□□□□□

初心の指輪

装備アイテム(装飾)(等級:Ⅰ)

効果:HP+50

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[初心]INNチケット

特殊アイテム(等級:Ⅱ)

効果:宿の宿泊費を支払う際、金銭の代わりに使用できる。

 

所持数:6

トレード不能

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「リスポーン地点も宿に設定できたし、チュートリアルもそういう指示を出してるし。いよいよ実戦かな」

 

 シヅキの視界に純然と輝く[チュートリアル 7/8]敵を倒そう!の文字。補足を見るに、種類を問わずいずれかの敵性エネミーを1体倒せばクリアのようだ。

 

「倒すのはなんでもいい、って言われると逆に吟味したくなるけど。まぁここで頑張ったところで何か起きるってこともないでしょ、もしなにかあったらそれはもう開発の性格が悪いよ」

 

 ちょうどチュートリアルの流れで街の入り口のファストトラベルポイントを解禁したところで、すぐそばには街の外、敵の湧く草原が広がっている。少し歩けばすぐに接敵できそうだ。

 シヅキはその場で軽く柔軟を行った後、ゆるく走って、近くの敵影へ向かった。

 

「おや、他のゲームと比べてかなり動かしやすいな。慣れるまで逆にミスしそう。おりゃっ!」

 

 粗末な革鎧をまとった腰丈ほどの『ゴブリン』に、鞭のような蹴りを見舞う。転がっていくゴブリン、ダメージ表示が飛び、敵のHPバーの1/5ほどが赤く染まる。

 

「ふぅん。武器によるものじゃなくてもちゃんと攻撃として扱われるタイプか。このゲーム非認可品な割にはけっこうしっかりしてるな……?」

 

 転倒したまま目を白黒させているゴブリンの後頭部に、シヅキは短剣を叩き込んだ。残量が無くなったHPゲージが砕け散り、経験値と素材アイテムの獲得ログが表示される。

 

「不意打ちに混乱する程度の思考力もある、と。例の第二級高度AI利用って噂もあながち間違いでは……? いやぁ、流石にないか」

 

 その後、体の調子を確かめるように数体のゴブリンを倒していったところ、デバイスがゲーム外メッセージを受信した。

 

「あん? なになに……? おっ、瑞葉のやつ、もう準備できたんだ! これは迎えに行ってあげないとな~」

 

 藍咲(あいさき) 瑞葉(みずは)、紫条皐月の現実における友人。美味しいものが大好きな女の子。

 紫条は手練手管を駆使し、彼女にこのゲームをやらせる約束を事前になんとか取りつけていた。

 彼女と会うため、メニューからファストトラベル画面を呼び出し、シヅキは初期開始地点の噴水広場まで向かった。

 

 

    ◇◇◇

 

「えー、『わたしは顔が同じだから見れば分かると思う』、と……。瑞葉はそのへんしっかりしてるし、顔は変えてきそうだなぁ」

 

 待っている間にも、ぽつぽつと新規ユーザーらしき人物がポップしてくる。プレイするまでの難易度の割には、それなりに人気が出ているようでなによりだ。ゲーム人口は多ければ多いほど良い。

 

「えーっと…………? あ、いた! ね、ね、さつ……『シヅキ』! これ始めるための作業ホントにめんどくさかったんだけど!」

 

 小柄な少女が一目散にこちらへと駆け寄ってくる。半袖短パンの初期装備を身にまとい、灰髪灰目、ポニーテールが軽やかな出で立ちだ。

 

「えーと……『イルミネ』か。やー、悪いね。それがあるからこそ本来ダメなくらい味覚とかが引き上げられている、と、そういうことで許してよ」

 

「……いやでも、ここから更に敵倒したりして素材集めないといけないんでしょ? あんなに真剣に頼まれたから始めるだけは始めたけどさ、正直続く気がしないんだけど?」

 

 シヅキにとって、これは予想できていた質問だ。瑞葉は……イルミネは、総合的に見てUGRよりももっと出来の良いオンラインゲームを現在プレイしている。両立はさぞ手間だろう。

 

「そう、それについて提案なんだけどさ。イルミネは料理好きだし、素材さえあるなら調理は苦にならないでしょ? なんなら簡易制作もあるし。だからさ、素材集めはわたしがやるから、イルミネには料理……と、そのついでの生産をやって欲しいんだよね。別に、一人でも戦闘と生産を両立できなくはないらしいけど、ぶっちゃけ面倒でさ」

 

 偽らざる本音だ。シヅキ自身も多少触れるつもりはあるが、本腰を入れて行うにはどうにも手間が勝る。

 

「ふーん……なるほど。つまり私を体よく利用しようってこと? まぁ……、別にいいけどね? 利用されるっていっても私にメリットしかないし。精々サブゲーとして楽しむこととしましょう」

 

 フレンド申請が届いたという通知が表示される。展開された"『イルミネ』さんからフレンド申請が届いています。承諾しますか?"の確認ダイアログに即座にYES。

 

「ありがと~! 助かるよ。オンラインゲームなのに一人だけっていうのも寂しいしね。……それで、この後はどうする?」

 

「うーん……チュートリアルこなして、軽く遊んだら今日は終わりかな? 今メインの方でイベントやってるから。しばらくは短時間しかログインできないかも」

 

「あー、なるほどね~。じゃあチュートリアルを一緒にやっても仕方ないし、わたしはその間に色々素材集めとくよ。現実と違って生肉だろうが野菜だろうが消費期限なんてないしね」

 

 目につく端からかき集めれば、無難な素材はおおよそコンプリートできるだろう。

 

「精々私の美食のために頑張りなさいな。作ったものはシヅキにも食べさせてあげるから」

 

「りょーかい、……それじゃあ、善は急げってことで早速行ってくるね。じゃね~」

 

「またね、シヅキ」

 

 イルミネのためにも、シヅキ自身のためにも。たくさんの素材を集めなければ。

 

――――――――――

Tips

『冒険者』

 UGR内におけるプレイヤーの肩書・役職。プレイヤーは例外なくこの役職を担うこととなる。

 過去、永きに渡る外世界からの侵略により、人類の支配領域は大きく減じた。この危機はとある人物によって解決されたが、それでも失われた支配域が自然に元に戻る訳ではない。

 冒険者達に期待されている役割……それは道を拓き、未知を啓くこと。

 ────すなわち、人類の支配が及んでいない未踏領域へ挑み、世界を広げる開拓者としてプレイヤーはこの世界へと降り立つのだ。

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