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「
重位の友人である秋丸は、暗い顔で、そう言い出した。
東郷重位は、元々は、当時の薩摩で広く使用されていた魔法流派・タイ捨流の門人であったが、京勤めの際に、主家である島津家と
なお、後の世で禁断の魔法書である「葉隠」を記した肥前・鍋島家中の山本常朝にも言える事だが、九州男児の魔法使いが京勤めをすると、何故か、更に九州男児度が増して戻って来るだの、九州男児の魔法使いはインテリほど命知らずであり1人の人間の中で教養と蛮人性が何の矛盾も無く共存しているなどという奇怪な現象は古来より度々起きており、今日においても日本魔法界最大の謎の1つとされている。
だが、島津家中の盛風力の輩の中には上方で魔法術を学んだ東郷重位が家中有数の魔法使いとなった事を快く思わぬ者も少なくなかった……。
「
「そうか……。じゃから、秋丸
「そいでな……家中の盛風力の輩の総帥の宮原兵衛
その時、門の辺りで人の声がした。
重位が住んでいる兄の家の門番が誰かを制止しようとしているらしかった。
「
重位は床の間に置いてある薩摩の原野に生えるユスの木で作った魔法の杖を取った。
ユスの木の丸太は
そのユスの木で作られた重位愛用の魔法の杖は
「使うたからには、
「東郷重位、出て来いッ‼」
その時、重位が居た兄の屋敷の離れの入口から大声がした。
「お静かに願おうか……」
重位は、外に出ると声の主に、そう告げた。
そこに居たのは……十数人の盛風力の輩。
その中でも、ひときわ体が大きく顔に傷が有る者が居た。
「
幾多の戦場を経験した事が明らかな顔付きの、その魔法使いは、そう告げた。
「左様でごわすか。
「くく……
「左様でごわすか……。御相手いたし申そう」
「おい、戸板
秋丸は、重位の兄の家の下人達に、そう言った。
「は……はぁ?」
「怪我人か死人が出る。
「
「あと、盛り砂も用意しやんせ。間違いのう血が流れるでな……
やがて、重位と宮原は魔法の杖を抜き……。
重位の口から恐るべき気合を含んだ絶叫が放たれた。
「エクスペリアームス‼」
……重位は、そう唱えていた。
しかし、重位は一呼吸の内に、三〇発の魔法を放つ事が可能だった。
これこそが、自顕流の秘技である「雲耀」である。
雲耀とは稲妻の意であり、自顕流では、稲妻の速度の如く瞬時に魔法を発動する事が出来る。
その高速詠唱は他流の者には、意味不明な絶叫の如く聞こえる。
宮原の魔法の杖は……振り降す間もなく……宮原の手を離れ吹き飛んでいた。
そして……吹き飛んでいたのは……魔法の杖だけではなかった。
盛風力の輩は……しばらくの間、何が起きたか理解出来なかった……。
しかし……宮原の杖を握っていた手からは……。
「お……おどれ、重位‼ よくもッ‼ よくもッ‼ 家中名誉の魔法使い
宮原の……その手は……二度と魔法の杖を握る事はかなうまい。
親指を除く指は四散し……親指も根本を砕かれ、皮一枚で手の甲とつながっている有様だった。
「今度は
「よかでごわす。お相手いたし申そう」
一宇田はアバダケダブラを放った。
ただのアバダケダブラではない。戦場覚えの
しかし、重位は容易くそれを回避し……。
「ぐえっ⁉」
重位の攻撃が命中した途端、一宇田は目を回した。
「おい……こりゃ、いかんぞ‼……股の骨が砕けとる」
「早よ、医者に連れてけ‼」
一宇田にとって、運が良い事と悪い事が有った。
運が良い事とは……戸板が用意されていた事。
運が悪い事は……医者に着く前に死んだ事であった。