海都近海の洋上に浮かぶ一隻の大型船。武装が施されたその船の対空火器が届かないギリギリの距離を、S.B.C.T.所有の大型輸送ヘリが周回していた。隆司により齎された傘木社残党の動きに対応して出動したδチームだったが、彼らが到着する前の海都の港湾管理局とテレビ局のヘリが撃墜されたのを見て、迂闊な接近は出来ないとこうして対策を練る意味でも周回するしかなかった。
そのヘリの中で、同行した隆司は苛立たし気に床を踏み鳴らしていた。
「~~~~ッ、おい! 何時までこうしてる気だよ?」
辛抱堪らず声を荒げる彼の肩にヘルメット以外の装備一式を身に着けた椿が手を置いた。彼の気持ちは分かる。こうして何もせず無為に燃料を消費するのは歯痒い事この上ない。だが対空火器への対策が無い現状、迂闊な動きは部隊の全滅や被害の拡大を招きかねなかった。
「落ち着くでござるよ。あの対空火器を何とかせぬ限りは拙者らもあれに近付けぬ。今本部から海から接近する為の装備が送られている最中との事。それが来れば対空火器を避けて船に取りつく事も出来るでござる」
「連中がそれまで黙っててくれればな」
向こうもこちらが何らかの対策を練ろうとしている事は分かっている筈だ。にも拘らずああしてどっしり構えていると言う事は、それまでには海都に対するアクションの為の準備が終わる見込みである事の証左であった。
もうこの際自分1人でもヘリから船に飛び乗り、ヘリの接近を妨げる要因となっている対空火器を片っ端から破壊してやろうか? そんな事を考えていると船の方で変化が起こった。
停止していた機関が唸りを上げ始め、巨大な船体が海都に向け動き出したのである。
「隊長、敵の船が海都に向け動き出しましたッ!?」
「ぬぅ……」
船の方に起こった変化に、しかし剛田は決断を下す事が出来ずにいた。本部からの海戦用装備はまだ届かない。降下用の装備はあるにはあるが、あれは目標地点にゆっくりと降りる為の物。あの対空防御を前にそんなちんたらしていたらまず間違いなく撃ち落とされる。かと言ってこのまま指を咥えて見ているのも…………
「おい、ハッチ開けろッ!」
「何?」
「隆司、何をするつもりでござるかッ!」
「あ? んなもん決まってんだろ、こっから飛び降りてお前らが降りるのに邪魔になるもん片っ端からぶっ壊すんだよッ!」
「馬鹿な事を言うなッ! 敵だってこっちが空から乗り込んでくる事を想定してるに決まってるッ! 罠に自分から飛び込む様なもんだぞッ!」
隆司の暴挙とも言える決断にδ5が引き留めようとするが、彼はもう止まる気は無いのか周囲の制止を振り払って機体後部へ向かうとハッチの開閉装置に手を掛け開いてしまった。ハッチが開いた事で外気が一気に機内に入り込み、激しい風に椿は思わず怯んだ。
「くっ!」
「ちょっと待ってな。さっさと邪魔なもんぶっ壊してやるからよ」
「だから、落ち着けってのッ!」
「だぁぁっ!? クソ、離せッ!」
尚もδ5が引き留め、隆司がそれを振り払おうと暴れる。このままでは2人共落ちてしまうと、他の隊員も吹き込む風に煽られながら2人を宥めようとしていると、突然1人座席に座りノートパソコンを見ていたオペレーターの女性が機内に響くほどの声を上げた。
「ちょっと待って皆ッ!」
「どうした?」
「何かが海上から船に近付いてますッ!」
「何だと?」
オペレーターの言葉に剛田は双眼鏡を手に窓から船の周囲を見た。すると彼の目に、海上を疾走する人影が映る。最初それが何なのか分からなかったが、双眼鏡をズームさせ目を凝らしてそれが何なのかを理解した彼は息を飲んだ。
「あれは、仮面ライダーコガラシッ!」
「えっ!」
「南城殿ッ!」
「本当ですかッ!」
「間違いありません。こちらでも確認しました、確かに仮面ライダーコガラシが海上から船に接近していますッ!」
ヘリの機外カメラの映像をノートパソコンで見ていたオペレーターの言葉に、彼らはコガラシが船に向かっている事を知った。彼らはコガラシが海都に居る事を知らなかった。だからここで彼が出てくる事に驚いたが、理解が及ぶと今度は希望を手にしたように笑みを浮かべる。
「南城殿も拙者達が立ち往生している事は既に理解している筈。きっとあの船の対空火器を止めてくれるでござる」
「そうすりゃ、俺達もあれに取り付けるって訳だなッ!」
「隊長ッ!」
「分かっている。全員、何時でも突入できるよう備えろッ!」
一度ハッチを閉め、落ち着いた機内で隆司を含んだ全員が座席に座り来たるべき時を待った。
その彼らの期待を一身に受けたコガラシは、忍法 ミズグモの術で水上を走って船へと近付いていた。特に身を隠す事もなく疾走していたので当然船の方でも彼の姿は捉えられているが、空中からならともかく海上から、それもその身一つで接近してくる事は流石に予想外だったのかこれと言った妨害も無くコガラシは船へと取りつく事が出来た。大型船には砲塔もあるので敵が船で近付いてきた時にはこれで迎え撃つつもりだったのかもしれないが、流石に人間がその身一つで海上を走って近付いて来る事までは想定していなかったらしい。
お陰でコガラシはこれと言った妨害に遭う事もなく船に取りつく事が出来た。
「よし。さて、と……」
海都に向けて進む船の真横を並走しながら、コガラシは鉤縄を取り出しそれを甲板に引っ掛けた。遠心力を利用して投げた鉤爪がしっかり甲板の縁に引っ掛かったのを確認すると、コガラシは
その後に続いて海中から姿を現したデイナにテテュス、オケアノスの3人が同じように縄を伝って船へと乗り込んだ。彼らが登ってくる間、コガラシは船から襲撃が来ることを予想し轟雷を抜いて警戒していた。が、予想に反して迎撃の様なものはなく、甲板には不気味な沈黙が漂っていた。
(変だな? 俺達が船に乗り込んだ事はもうとっくに気付かれてる筈だけど……?)
「よっ、と……さ、瑠璃さん」
「あ、ありがと」
「よし、ネイト」
「どっこらせっ!……っと」
コガラシが警戒している間に、デイナ達も甲板上に降り立った。全員が甲板の上に立つと、デイナは周囲を見渡しそして上空を見上げてS.B.C.T.のヘリを見やると他の仮面ライダー達に指示を出した。
「さて、悠長にしてる暇はない。まずは彼らが降りられるように対空火器を無力化しよう」
「どうするの? 片っ端からぶっ壊す?」
まず真っ先にテテュスが提案したのが物理的な対空砲の破壊である。が、これは即座に却下された。表に見える物だけが全ての対空砲とは限らない。もしかすると装甲などの下にも隠されたものがあり、上空のヘリが油断して降りてきたところでそれが動き出すかもしれなかった。それに何より仮面ライダーが4人居るとは言え、全ての対空砲を潰して回るのは時間が掛かる。この船は刻一刻と海都へと近付いているのだ。船がこれ以上海都に近付けば、またディーパーやファッジを待ちに解き放たれて街の住民に被害が出る。
「いや、火器管制システムを無力化しよう。システムを無力化すれば対空火器だけでなくミサイル発射管や甲板上に存在する砲塔も纏めて無力化できる」
「誰がやる?」
「俺がやるよ。言い出しっぺだし、この手の事が出来るのはこの面子じゃ俺くらいだろうし」
それもそうだ。この場でコンピューターに強いのは彼しかいない。もしこの場にイカズチが居れば電撃で内部システムを焼きコンピューターで制御されている設備は全て無力化できると言うのに……と、コガラシはこの場に居ない友の存在を束の間思い浮かべる。
ない物ねだりをしても仕方がない。コガラシは頭に思い浮かべた友の姿を振り払い、デイナと共に艦内に乗り込もうと身構える。
その時、あちらこちらからファッジやディーパー、更にはクセジまでが現れ彼らを取り囲んだ。
「おっとっと、漸くお出ましか」
「ねぇ、あれ何? 見た事ないのが居るんだけど?」
「あれはクセジ。気を付けてください、見た目に反して変な能力持ってる場合もあるから」
「何だって構わねえ。蹴散らせば皆同じだッ!」
オケアノスが敵を威嚇する様に手にした鞭を甲板に叩き付ける。
それを合図にしたかのように敵が一斉に彼らに襲い掛かった。四方八方から襲い掛かって来る異形の怪人。だがここに居るのは百戦錬磨の仮面ライダー、この程度の有象無象を相手に苦戦する道理はない。
「よっ、はっ、ほっと」
デイナはここに来るまで使っていたケートスライフのまま戦った。単純な格闘能力は勿論、インパクトウェーブを用いた音波攻撃で強固な防御力を持つ相手も内部から粉砕し、道を切り開いて艦内へと突入する。
「やッ! セイッ! ハァァッ!」
一方テテュスはその美しい肢体を惜しみなく陽光の下に晒し、スカートを翻しながら舞うような動きで敵を翻弄した。流れるような動きで敵の攻撃を躱し、お返しの回し蹴りで叩き伏せる。
その彼女に1体のクセジが襲い掛かる。両手に鎌を持つカマキリの姿を模したクセジ、トウロウクセジである。以前コガラシが戦った個体とは体表の色が異なるが、それ以外は全く同じであった。
「ととっ! ふ~ん、これがクセジか……」
海都にはクセジが出なかったので、彼女がクセジと対峙するのはこれが初となる。初見の敵を前に慎重に立ち回ろうと身構えながらもつぶさに観察する。
じっくり観察するテテュスであったが、クセジの方は彼女に悠長な時間を与えてはくれなかった。なかなか攻撃してこない彼女に焦れた様にトウロウクセジが襲い掛かる。
「かぁぁッ!」
「おっと! フンッ!」
振り下ろされる鎌を紙一重で回避し、反撃の蹴りを叩きつける。絶妙なタイミングで放たれた蹴りは、普段なら確実に直撃し相手をひっくり返す事も出来た筈の一撃であった。
だが奇妙な事に、絶対当たったと思った一撃はギリギリのところで外れたのか虚しく空を切った。その手応えにテテュスが仮面の奥で目を見開いた。
「なっ!?
「シャァッ!」
「あぁっ!?」
当たる筈の攻撃が空を切った事に隙を晒してしまった彼女をトウロウクセジは容赦なく切り裂く。咄嗟に腕を上げて防御するも、トウロウクセジの鋭い鎌は彼女の腕を切り裂き鮮血を散らせた。
「くっ!? 何今の? 確かに当たった筈……」
困惑するテテュスに、ファッジの相手をしていたコガラシが轟雷で相手を切り裂きながらアドバイスを飛ばした。
「そいつはトウロウクセジ! 能力は、俺達がよく使う空蝉の術みたいな奴だ!」
「つまりどういう事?」
「相手に見られてる攻撃は当たらねえ!」
「オーケー、それだけ分かれば十分!」
トウロウクセジの攻撃を避けながら、テテュスはチップを1枚取り出しベルトに投入しレバーを下ろす。出現したルーレットはトウロウクセジの攻撃を受け止め弾き返し、相手の体勢が崩れている内に彼女は能力を発動させた。
「赤の23!」
〈BINGO! Ability activation! Deep diving.〉
「ぜぁぁっ!」
テテュスがお得意のディープダイビングを発動させる。その瞬間ルーレットが消え、好機と見たトウロウクセジが襲い掛かった。だが彼女はそれを紙一重で回避すると、そのままの勢いで甲板の床に文字通り飛び込んで潜ってしまう。その光景にトウロウクセジが動きを止めていると、彼女はクセジの足元から飛び出し無防備な背中を思いっ切り蹴り飛ばした。
「ハッ!」
「ぐぉぉっ!?」
確かな手応えに、確かにこれなら攻撃がちゃんと当たる事を確認するとそのまま潜水と奇襲を繰り返す事で相手を追い詰めていった。
オケアノスも同様に鞭と能力を活かしてクセジやファッジ相手に優位に戦いを進めている。その様子に流石と頼もしさを感じつつ、自分もうかうかしていられないと忍筆を取り出し轟雷に筆を走らせた。
「執筆忍法、火遁 劫火斬の術ッ!」
【忍法、火遁 劫火斬の術ッ! 達筆ッ!】
燃え盛る刃が周囲に蔓延る怪人を次々と燃やしながら切り裂いていく。
仮面ライダー達の奮闘により、当初甲板を埋め尽くさんばかりに姿を現していた怪人は瞬く間に姿を消していく。
その乱戦の最中、隙を見てデイナが艦内へと突入していく。コガラシがそれに続き、表はテテュスとオケアノスに任せて2人は艦内を進んだ。
「所で、火器管制の場所は分かるんですか?」
「この手の船の構造は似たり寄ったりだ、大体の予想はつく」
その言葉通り、デイナは真っ直ぐ火器管制が行われている部屋へと突入する。途中クセジやファッジなどの怪人の妨害を受けながらも扉をブチ破って入った火器管制室には、制服姿の管制官の姿があった。彼らはデイナとコガラシが怪人を蹴散らしながら乗り込んできたのを見ると、一部は拳銃を抜き抵抗する姿勢を見せるが殆どは勝ち目がないと即座に両手を上げその場に膝をついた。
「クソッ!」
数少ない抵抗の意思を見せた管制官が引き金を引くが、その者が持っていた拳銃は対人用の変哲もない普通の銃。その程度の銃撃で仮面ライダー相手に痛痒を与えられる筈もなく、素早く背後に回ったコガラシにより当身を喰らわされ意識を刈り取られた。
「お勤めご苦労さん。ま、非合法のお勤めだろうけど」
こんな組織に所属していなければ、職務に忠実な人間として評価されただろうにと溜め息を吐くコガラシの横で、デイナは火器管制システムを弄り対空火器を始めとした全ての火器を無力化した。これでヘリを始めとした外部からの干渉が出来るようになる。
火器を無力化したデイナは、傍にいた管制官に外部への通信手段を求めた。
「ここ、外に通信できる何かある?」
「この部屋には……ただ隣に通信室があるので……」
「ん、ありがと」
教えてくれたからにはちゃんと礼を言う。そしてデイナはそのまま、自分が離れた後に再び火器を動かされる事が無いように室内の設備をハイブリッドアームズで片っ端から破壊してから隣の通信室へと入り、通信士を退かして上空のS.B.C.T.のヘリに通信を繋げた。
「あ~、もしもし? こちら門守 仁。S.B.C.T.のヘリ、聞こえる?」
『あっ! ジンさんッ! 隊長、ジンさんから通信が入りましたッ!』
デイナからの通信に答えたのはオペレーターの女性だった。彼女は彼の声に喜色を浮かべると、即座に責任者である剛田に声を掛けた。彼女の喜びように苦笑しながら、デイナは簡潔に状況を説明した。
「今、この船の火器管制を無力化した。もう対空火器は何一つ動かない。乗り込むなら今だよ」
『分かりました、ありがとうございます!』
デイナによる火器管制の無力化は即座にヘリへと伝えられ、それを受けたδチームは輸送ヘリを降下させ開いたハッチから次々とライトスコープと機内で変身したゲッコウが船に乗り込む。甲板はテテュスとオケアノスにより殆ど制圧されていたので、彼らは苦も無く甲板上へと降り立つ事が出来た。
「あ、来た来た」
「遅いぞ。もうやる事残ってないんじゃないか?」
軽口を叩きながらも、ヘリから降りてくる彼らの安全を確保する2人の仮面ライダー。その2人に剛田が変身したスコープが近付いた。
「協力、感謝する」
「気にしないで。海都は私の故郷だから」
テテュスの言葉にスコープが頷く。その間に雪崩れ込んだライトスコープが連携して残りの怪人を次々と撃破していき、船の制圧は加速度的に進んでいった。
その様子をブリッジで寅泰とシラヌイの2人が見ていた。最初コガラシ達に乗り込まれた時は焦っていた寅泰は、折角組織した怪人軍団があっという間に4人の仮面ライダーにより蹴散らされ、更にはS.B.C.T.の侵入までをも許してしまった事で今は怒りに身を震わせていた。
一方シラヌイは、感情を感じさせずただ体をゆらゆらと揺らすだけで何を考えているのか分からない。
「くぅ……! こうなったら、
「ハッ!」
寅泰の指示に研究員が急いでその場を離れる。シラヌイは去っていく研究員の背中を見送ると、自身も寅泰に背を向けて歩き出した。
「ん? 何処へ行く?」
咄嗟に引き留めようとする寅泰だったが、シラヌイは足を止めずに首だけを後ろに向け答える。
「敵には忍びも居る。俺が向かった方が良いだろう」
「大丈夫なんだろうな?」
「まぁ見ていろ」
言いながらシラヌイは昂る心に身を震わせていた。これから彼が相手にしようとしているのは、噂に聞く万閃衆でも注目の若手。卍妖衆を打倒し、あのオボロを倒した若き精鋭。相手にとって不足無し。
「見せてもらうぞ、オボロを破ったその実力……」
その頃S.B.C.T.のδチームは船の内部を次々と制圧。徐々にだがブリッジへと近付いていた。
コガラシもそれに同行し、ブリッジに居る今回の騒動の主要人物確保の為尽力する。S.B.C.T.の装備でも木っ端な怪人程度なら何とかなるが、中には厄介な強さを持つ怪人も居る。それらを相手にし、露払いするのがコガラシの役目だ。
仮面ライダーの助力を受けながら船の制圧を進めていくδチーム。その彼らに、見知らぬ怪人が襲い掛かった。
「グルァァァァッ!」
「うぉっ!?」
最初に襲われたのは最後尾についていた隊員だ。出し抜けに壁を突き破って襲い掛かって来た異形に押し倒され、食らい付かれそうになるのを咄嗟に銃を噛ませる事で防ぐ。
「な、何だコイツッ!?」
「あれは……!」
「チッ!」
ヌーベルファッジとも違う、初めて見る怪人の姿に浮足立つ隊員達の中で、δ5を始めとした数人が即座に反撃の為銃口を向ける。
だが彼らが引き金を引くよりも先にコガラシが動いた。轟雷を鞘から抜き、逆手に持って見知らぬ怪人に接近しすれ違いざまに切り裂く。
「ギャァッ!?」
「退けッ!」
「ギャウッ!?」
切り裂かれた事で怯んだ怪人を、コガラシは更に蹴り飛ばして押し倒されていた隊員から引き剥がす。怪人が離れた隙に倒れた隊員に手を貸して立たせながらコガラシは襲い掛かってきた怪人を改めて見やり、そしてその姿に思わず仮面の奥で目を見開いた。
「あれは、オボロ・龍王ッ!?」
その怪人の姿は一瞬、嘗て戦ったオボロ・龍王の姿と被った。だがよく見るとそれは明らかにオボロとは違う。オボロ・龍王はコガラシらと同じ忍び装束の上から龍を模した鎧を纏ったような姿をしているが、あの怪人は明らかに口があり所謂龍人間と言う様な姿の怪人であった。
まさかと思っていると、さらに驚くべき事に同じ姿の別の怪人が現れた。それも1体だけでなく複数体。この事態に、コガラシはコイツ等が何なのかに漸く気付いた。
「コイツ等、まさかあの時真が使ったカートリッジを……!」
「その通り。コイツ等はオボロがブローカーに作らせたドラゴンベクターカートリッジを使って生み出された、ドラゴンファッジとも言うべき存在だ」
突如掛けられた声にコガラシはそちらを見ながら轟雷を構えると、そこに居たのはシラヌイであった。オボロと見紛う様な鎧を忍び装束の上から纏った姿に、コガラシは警戒心を強める。
「お前、卍妖衆か?」
「そうとも、違うとも言える。オボロから参加の打診は受けていたが、俺は奴に合流しなかった。あの頃は特に興味が無かったからな。だが、今となってはその事を後悔しているよ」
そこまで述べた所でシラヌイから感じる気迫が明らかに変わった。オーラが見えるのではと言う程の重苦しいプレッシャーに、コガラシは汗が浮かぶのを感じつつ油断なく身構える。
コガラシが身構えたのを見てか、シラヌイもまた両手に鉤手甲を付け獣のような構えをとった。
「後悔? 何で?」
「それはな…………お前のような者と戦えなかったからだッ!」
「ッ!」
次の瞬間、コガラシの前にシラヌイが接近し鉤手甲を突き刺そうとしていた。コガラシは咄嗟に轟雷を構えて防御の体勢を取り、鉤爪の間に轟雷を挟ませるようにその一撃をギリギリのところで防いだ。
「くっ!?」
「この一撃を止めるかッ! 流石、あのオボロを打ち破った忍びだッ!」
高らかに声を張り上げながら、シラヌイは鉤手甲でコガラシに斬りかかる。彼はそれを轟雷で弾き、距離が離れると素早く手裏剣を投げつけた。放たれた無数の手裏剣を、シラヌイは素早く左右に動いて躱しながら接近していく。
手裏剣程度では足止めにもならない。それを察したコガラシが轟雷を構えて迎え撃とうとしたその時、傍にいたδ5を始めとしたライトスコープがシラヌイに向け一斉に銃撃を開始した。
「奴を近付けるなッ!」
「チッ!」
一斉に放たれる銃弾は流石に防ぎきるのは難しいのか、シラヌイは大きな動きで弾幕から逃れつつ爆弾付き苦無をコガラシに投げつける。これを下手に受け止めたりすれば逆に至近距離での爆発で大ダメージを負う。それは不味いとコガラシは咄嗟に風遁の術を筆を使わず使用し苦無を吹き飛ばす。
今となっては存在も怪しまれている筆を使わない忍法を前に、シラヌイは嬉しそうに声を弾ませながら舌を巻いた。
「フフッ、流石……!」
明後日の方に吹き飛ばされた苦無に取り付けられた爆弾が爆発し、あまり広くない通路を炎で彩る。その炎に照らされながら、コガラシとS.B.C.T.がシラヌイと対峙していた。
一方、甲板の方でもテテュスとオケアノスの前に強敵が出現していた。
「ネイト、コイツ等……」
「あぁ、一筋縄じゃいかなそうだ」
甲板に出現していた怪人を一掃した2人の仮面ライダーの前に現れたのは4体のファッジ。2人にとっては初めて出会うファッジだったが、デイナがこの場に居ればその姿に場違いな懐かしさを覚えていただろう。
そのファッジの名は、スパイダーファッジ、スクイッドファッジ、シーアーチンファッジ、そしてフロッグファッジ。嘗ての傘木社の幹部怪人が4体勢揃いしていたのだ。
明らかに先程の敵とは違う佇まいのファッジを前に、2人は気合を入れ直して構え直すのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
再生怪人は仮面ライダーのお約束。やっぱり大きな組織の残党何かだと過去の作品の怪人何かを出しやすいです。
加えて今回は本編のラスボスの劣化コピー的怪人のドラゴンファッジが登場しました。劣化コピーとは言え物はドラゴン。しかも当然残党の間で情報のやり取りも行われているでしょうから、今後何かある度に便利なお手軽強敵再生怪人として立ち塞がる事になると思います。
あ、それと先週宣伝しそびれていたのですが、大ちゃんネオさんの方で行われたハージェネ企画の私へのインタビューその2(https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=313049&uid=270502)が先週大ちゃんネオさんの活動報告で投稿されました。こちらでは主に私の創作論に関する話が見れますので、もし興味のある方は是非ご覧になってみてください。
執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!
次回の更新もお楽しみに!それでは。