死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第十話ッ 全速前進だッ!!※勢いだけはある

 

「マイケル、準備は──って、何でまだ寝てんのよ」

 

「うぅ……あと5時間だけ……」

 

「たっぷり寝ようとするなッ。2度寝の域を超えてるんだよ!」

 

「うーん……テレジー……添い寝してほしい……」

 

「……は、はぁっ!? 誰があんたなんかと……」

 

「ずるいぞマイケル。オレも姉貴に添い寝してほしいのに」

 

「誰にも添い寝しないわよッ!」

 

 カチコミに行くことが決まってから数日後。なんやかんやあって魔力が問題なく回復したため、私達は予定通り革命派へとカチコミに行くことが決まった。

 

「で、コイツらどうします? 持ってくんすか?」

 

「捕虜として……という意味? 別に要らないんじゃない? どうせ気づいてるでしょ」

 

「ん゛んっー!! ん゛ん゛ー!!!」

 

「なんか言ってますよ」

 

「無視で」

 

 私の隠れ家の横にある廃墟。そこにはこの数日間で訪れた革命派のメンバーが捕らえられていた。彼らはいつも通り食糧と爆薬を片手に、私に夜伽を強要してきた。

 

『テレジーの代わりに、今日は俺が相手だッ!!』

 

『誤解を生みそうな発言ッ!?』

 

『てめぇ、ふざけたことを──ぐわああああ!!!』

 

 といった感じで、次々と現れる革命派達をなぎ倒していった。やったのはほぼマイケル一人だが。

 

「ほんと、すごい数っすね……」

 

「そうね」

 

「…………」

 

 数えたところ、3日間で26人。1日に平均8人前後の男が訪れたということになる。とはいえ、いつも通りといえばいつも通りだ。お楽しみ頂けなくて残念だったな。お前達は帰ってきてから解放してやる。それまで我慢してな……飲まず食わずでなっ!!

 

「まさに外道……って奴っすね」

 

 卑怯とは言うまいな。

 

 廃墟を出ると、いつもより曇天がマシになっているような気がする。今日は太陽光が輝いて見えるぜ。

 

「む、機嫌が良さそうだな、テレジー」

 

「仕返しをしたからかな、気分が良いわ」

 

「オレにもお願いしますッ!!」

 

「さ、行くわよ」

 

 馬鹿は無視が一番だ。

 

 ☆ ☆ ☆

 

 私の隠れ家がある西城門から南城門付近に移動をする。そこは数少ない城下町から外に出られる場所だ。外には食糧生産のための畑が広がっている。

 

「よく考えたら、砂漠の国なのに畑があるっておかしな話ですよね」

 

「それはこの国の魔術師達がこの国周囲一体の環境を魔術で変えているからよ」

 

 子供の頃聞いた話だが、灰の嵐が発生して一年も経っていなかった頃。砂漠地帯であった事と、灰の嵐の発生地帯がアスキア帝国城の周囲と極一体であったことで、大飢饉に窮していた。そこで高名な魔術師が気候変動の魔法陣を書きそれを展開した。あとは貧民や魔法師による細かい土壌の開拓が進められたことによって、今の食糧生産体制が敷かれたという。

 

「そんなこと出来るんですか! 魔術? って凄いっすね、よく分かんないけど」

 

「む? 魔法じゃなくて、魔術なのか? 違いが分からん」

 

「一般的に使われているのが『魔法』で、学者だとか職人さんだとかが使う専門性の高いのが『魔術』……って感じ?」

 

「ふむ、『文系』と『理系』みたいな感じか」

 

「……よく分からないけど、解釈は人それぞれよ。曖昧な部分もあるから、一概に区切れないのよ」

 

「ほう、未だに謎の多い分野なんだな……その魔術師達は今もあの城に居るのだろう? 今頃画期的な魔術を──」

 

「──いえ、彼らはもう居ないわ。魔術を展開させる段階で力尽きて死んだって聞いたわ」

 

「そっすか……生きてくれればこの国ももっとマシだったんすかねぇ……」

 

「……それはないわよ」

 

「それもそっすね……」

 

 たとえ生きていたとして、この地獄より質が悪い牢獄の国をどうにか出来るなど。烏滸がましいにも程がある。

 

 暫く世間話をしたあと、私達は黙々とアジトへ裏道を通って人目を避けて行く。

 

「──痛っ!」

 

 突如こめかみに鈍い衝撃が走る。立ち眩みが起き、頭を抑えてその場にしゃがみ込む。

 

「テレジー! 大丈夫か!?」

 

「おいてめえ!! 姉貴に何しやがるッこのガキ!!」

 

 恐らく石でも逃げられたのだろう、ぶつかった箇所に触れてみると僅かに血が付着していた。

 

「よっしゃ頭だ、100点ゲット!!」

 

「すげぇ! 今度はおれも──」

 

「──てめえ聞いてんのかゴラッ!!」

 

「汚い貴族とつるんでるクズは5点だ!!」

 

「鎧野郎はマイナス50点!!」

 

 4人の子どもたちはすっかり興奮した様子。ガリッパの恫喝にも応じず、その手には大小様々な石が握られている。

 

「死ね! 貴族!!」

 

 思いっきり振りかぶられた石が、次々と飛んでくる。

 

「っ、テレジー!!」

 

「っ……! ちょっ、何して……!!」

 

 正面から抱きつくように子どもたちの間に入るマイケル。コツンコツンと石が当たる音が、鎧から肌を通して直接響く。

 

「クソ、何だよアイツ気持ち悪ぃ!!」

 

「よくそんなのに抱きつけんな、どうかしてるぜ」

 

「もう飽きた、行こうぜ!」

 

「──く、痛ってぇ……お、おい待てやクソガキッ!! クソガキィイイ!!」

 

 多重に響く足音が遠ざかっていく。暫くして私は解放され、視界が広がる。

 

「テレジー、怪我はないか?」

 

「だ、だいひょうぶ……」

 

「……テレジー? どうかしたか?」

 

「にゃ、にゃんでもにゃい……」

 

 何だよ……! 呂律が回らない。顔も熱い。なんなのよ、これ……! 

 

「それにしても酷い奴らだ。親の顔が見てみたい」

 

 マイケルは子供たちが去っていった方を見ながら、語気を強めて呟く。私は真っ赤になっているだろう顔をブンブンと振り、よく冷ましてから返事をした。

 

「……見なくても分かるわ。貴族の印象って最悪だから、それが子供にも伝わってるだけよ」

 

「だが、結局それでは──いや、先にテレジーの治療だな」

 

 何かを言いかけた様子のマイケルだったが、話題を私の怪我にすり替えた。

 

「本当だ。姉貴、怪我してるじゃないですか」

 

 子どもたちを追って叫び散らかしていたガリッパが、頭から血を流している私を見てそう言った。……いやお前の方が血だらけじゃん。よく平気な顔できるな。ゾンビかと思ったわ。

 

「大丈夫よ、こんなの放っておけば治るわ」

 

「それはいかんな。どれ見せてみろ。俺が治してやるッ」

 

 マイケルに力強く、だが痛みは感じない程の加減で抑えられる。片方の手で前髪を上げ、患部に顔を近づけて──。

 

「ま、待って! 顔、顔近いぃ!?」

 

「ほい、ファーストエイド〜」

 

「〜〜っ!!」

 

「姉貴? 大丈夫っすか? めっちゃ顔赤いっすけど」

 

 あ〜……大丈夫じゃない……。心臓破裂する……。でも、お前の方が顔赤いぞ……血で。

 

「治ったぞ」

 

「ぁ……ぁりがと……ぉ……」

 

「うむ! ……今度は、ちゃんとテレジーを守るから」

 

「ぇ……う、ん……?」

 

 ☆ ☆ ☆

 

 南の城門から少し離れたところにある、かつては酒場だったろう空き家。現在は革命派のアジトとなった施設。その眼の前にたどり着いていた。

 

 外観は、元々酒場だったとは思えない程の改造が施され、上に横にと大きく増設していた。およそ一年前に訪れたときはこんなに巨大な施設ではなかった気がする。精々2階があったくらいで……今は5階くらいだろうか。

 

 昔は2階にクロードの執務室があった。だがアジトの改築によって場所も変わっていることが予想される。横にいるガリッパは宛にならない。……中にいる奴らが、素直に教えてくれることを祈っておこう。

 

「なぁ、テレジー……」

 

「…………ガリッパ」

 

「は、はい。なんすか、姉貴」

 

「私達と一緒に居ると、貴方の立場が悪くなるわ。それでもいいの?」

 

 私の問いかけに、ガリッパは俯いて一瞬何かを考える。

 

 これは脅しではなく、ただの確認だ。下っ端とは言え、その名前と顔を覚えられていないとは言え、元貴族の私と一緒に行動するということ。それ自体がリスキーである。そのことでさっきの……さっき、の……。

 

「おーい、テレジー……」

 

「……」

 

 先程のように、私への攻撃に巻き込んでしまう。そうなれば直接的な被害だけでなく、今後の生活にも支障をきたす恐れがある。その覚悟が、お前にはあるのかという……脅しか、これでは。

 

「はい。問題ないっす」

 

「……そう」

 

「あの、テレジー?」

 

「…………」

 

「さっきから、何で無視するんだ?」

 

「……よし、準備はいいわね。そろそろ──」

 

「テレジーッ!!」

 

「きゃあああ!?!?」

 

 肩を捕まれ、正面にでかでかとバケツヘルムが視界を埋め尽くす。

 

「お、おう……そんなに驚かれるとは」

 

「や、やめぇ……今顔見れないからぁ……」

 

「む? どうしてだ? というか顔を見せてないのだが……」

 

「そ、そんなの……分かんないぃ……。もう近づかないでえ……!!」

 

「What!? You gotta be kidding me!?」

 

「マイケル。それ以上はやめとけ。姉貴が可哀想だ」

 

「可哀想って何よッ!! こっちは必死なの!!」

 

 ──私は激怒した。

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