死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第十四話ッ 俺の顔に免じて許してくれッ!!※自惚れるな

 

「ト○・クルーズだろうがマツタケだろうが知らねぇが、俺はこの女を仲間として認める訳にはいかねぇぞ」

 

 嵐のように場を荒らしまくったマイケル。しかし、依然として現状は変わらず空気は冷え切っていた。まぁ、私が悪いんだが。いや、違う。私だけじゃない。マイケルも……悪いんだから。

 

 周りの人間は、突如として現れたマイケルに戸惑っているようで唖然としたままだ。だが、いずれは私の排斥にやっ気になることは変わらない。この状況を打破するには……気は進まないがマイケルを頼りたい。だって、もう元の『当たって砕けろっ、人間関係っ!』プランも使えないし……。

 

「おいマイケル。お前が変なこと言うから名前覚えてもらってないじゃんか」

 

ガリッパがマイケルを肘で小突きながら、先程のことを咎める。

 

「そ、そんなこと言われても俺悪くないもんッ」

 

「いい年した大人がいじけんな。……ていうかお前、何でここにいるって分かった?」

 

「テレジーの匂いを嗅いできた」

 

「キモッ!?」

 

 マイケルはこんな調子だし、ホント何しに来たんだこいつ。ていうか匂いだけで分かるもんか、犬かよ。

 

 すんすん……そんな臭くないよね? 

 

「姉貴……ただの冗談っすよ。マジにしないでください」

 

「し、してないわ。ただ気になっただけ。でも、もしあれだったら……ほら、あれでしょ?だから、それだけよ。……本当よ?」

 

「はい、分かりましたから……」

 

「…………面白い」

 

やばい、さっきから墓穴しか掘ってない気がする。

 

「テレジーさん……」

 

 ラルクは不安そうな表情でこちらの様子を窺う。ラルクとしてはこの状況を好転させて、どうにか仲間になってもらいたいのだろう。……しかし、さっきも言ったが私を下に見てくるやつに協力するつもりはない。ラルクには申し訳ないが断るつもりだ。

 

「――で、こういうことになってて」

 

「ふむ、なるほど。分からん!」

 

「だいぶ分かりやすく言ったけどな!?」

 

 私が思索に耽っている間ガリッパはこれまでの経緯をマイケルに説明してくれていた。マイケルは俯きながら小難しい顔をしていると、合点がいったのか表を上げる。

 

「分からんのはテレジー、君のことだ」

 

「……は?」

 

「……姉貴が?」

 

 思わぬ矛先の変換に私は怪訝な視線を向ける。マイケルのその含めたような言い方に、少し疎ましさを覚えた。

 

「言い方が悪かった。そうだな、『伝えたいことはシンプルに言っておいた方がいい』……ということだ」

 

 それではまるで私が悪者だと言っているようだ。私は不機嫌さを顕にマイケルを睨みつける。しかしそんな事を意に介さずマイケルは私の頭に手を乗せると、やんわりと撫でてくる。

 

「まぁ、俺に任せておけ!!」

 

「……子供扱いすんなッ!」

 

 気恥ずかしさでいっぱいになり、マイケルの手をはたき落とす。しかし彼は気にした様子を見せず『がははっ』と笑いながらガイの下へ歩いていく。

 

少し乱れた髪を直しながら、マイケルが触れた場所に手を当てる。自分の体だというのに、掌から自分以外の温もりを感じるようで気味が悪い。……調子が狂う。

 

「過去、テレジーは君たちの仲間を傷つけてしまった。それは間違いないし、彼女にも非はあるのだろう」

 

「分かってんなら話は早ぇ。殺されたくなきゃとっとと失せやがれ」

 

「誰しもが間違い、時に涙し、笑う……そんな経験を積みながら、人間は生きていくんだ……」

 

「あ?何言ってんだおっさん」

 

 マイケルはふっふっふっ、と不敵に笑うと、シュパッとガイに向かって指をさした。

 

「つまり、過去のことは水に流そう、と言ったのだッ!!」

 

「いや言ってないだろ」

 

ガイは思わずツッコむ。ペースを崩されたと思ったのか、ハッとすると鋭くマイケルを睨みつける。分かるぅ……あいつと喋ってると、頭をおかしくなるから……まともに相手しちゃだめよ。

 

「テレジーはガイ殿が思っているような、俺が想像する貴族とは違う。……ガイ殿は、あの城にいる貴族と会ったことはあるのか?」

 

「……それは、ねぇけど……だからといって、アスキア民が必死こいて生活する中、のうのうと過ごしてきた数年間は変わらねぇだろ。それが気に食わねぇ」

 

「それが、この国を救う為のものだとして――」

 

「――はっ、世間知らずもいいところだぜ。絶賛隠居中の、カビで芳しいお貴族殿は豊かに暮らすことに必死で、この国を救おうなんて、余裕、は……」

 

「……会ったことは、あるのか?そう言った貴族に」

 

思ったよりも的をついた指摘に、私も狼狽する。マイケルが理責めをしてるのが奇妙だ。

 

「…………ねぇ、けど」

 

「ならば――」

 

「――ああ、さっきからゴタゴタうっせぇんだよ!おっさん!!」

 

だが正論を言うのが正しい場面は限られる。ことガイのような感情の起伏が激しい相手には尚更。むしろマイケルが刺激したことによって、私へのヘイトが高まったような気がした。……どうすんだよ、この状況でどう任せれば?

 

「ふっふっふっ……俺の顔を見た後でも同じことが言えるかな?」

 

 そう言ってマイケルはカチャカチャと鉄兜を固定している首元の金具を外していく。

 

「……ん?」

 

「――は? 何言ってんだ……頭湧いてんのか」

 

 話噛み合ってなくない……外してどうなるっていうの? お前の顔見せても問題解決しないよ、失礼だけどこの場では価値ないよ? 

 

 『スポンッ』

 

 鉄兜を脱いだ時の小気味よい音が静寂を生む。マイケルはおもむろに鉄兜を外してその顔を周囲に見せつけた。

 

「おっさんじゃねぇか」

 

浅黒い顔と短いパンチパーマ。まんまるな目と柔和な表情と綺麗な髭が披露されるも、周囲の反応はイマイチ。

 

 正面で見ていたガイの呟きに、穏健派の皆も同調するように頷いていた。マイケルは不服そうにガイを見る。

 

「む、失礼なッ。26歳だぞッ!」

 

「若ッ!?」

 

「……嘘でしょ」

 

「……ええ……」

 

 マイケルの25歳発言に驚いた者たちは各々反応を漏らした。まあ、確かに声も低めだし、なんとなく年取ってそうに見えるけど……そこがいいんだよなぁ……。

 

「あの、姉貴。そろそろ……ツッコミを……」

 

 ああツッコミね、ツッコミ。しないとね。

 

「……うぅ」

 

「姉貴?」

 

「や、やっぱりかっこいい……すきぃ……」 

 

「「…………」」

 

 なんだか、周囲の私に対する目が暖かいものになっている気がする。私そんなに変なことしたかしら……。

 

「……きもっ」

 

「あ?誰だ今『きもっ』て言った奴。出てこいよ、おらッ!!」

 

急に聞こえてきたマイケルのへの罵倒だろう言葉に、私の堪忍袋の尾ははち切れた。ふざけんじゃねぇ、マイケルのどこがキモいっつんだよ!!

 

「――え、怖っ。何?」

 

「お前かっ!?」

 

「え?……え、まあ……あたいよ」

 

「許さない……マイケルに、謝れ……!!」

 

「……エレノア。言っていい事と、悪い事、ある」

 

「黙りなさいオーフィア。えっと……マイケルに言ったんじゃないわ、あんたに言ったのよ。デレデレしちゃって気持ち悪いって」

「……エレノア、それ逆効果じゃ」

 

「あ、何だそういう事か……もう、何よっ!先に言ってよもう!!」

「「…………」」

 

私の勘違いで、マイケルが罵倒されたわけでは無かったのか。ふぅ良かった……マイケルのかっこよさは人類の共通認識だよね!解決解決〜。

 

――違うッ!!結局何も解決してない!!

 

「これで問題解決だなっ!!」

 

「そんな訳無いでしょ!?」

 

「え、ああ、まぁ……もう、なんでもいいか……好きにしろよ」

 

「ま、そうね……」

 

「あれぇ、何とかなった!?」

 

 私の参加を反対していたガイとエレノアは呆れたような、諦めたようなニュアンスで納得した。その様子にガリッパは驚きが隠せないようだった。

 

「えーっと、マイケルさん……でいいのかな。是非マイケルさんも僕たちに協力してくれないか」

 

「もちろんだ。テレジーが行くところに我有りだッ!!」

 

 ほんわかした空気を感じ取ったラルクはすかさずマイケルの勧誘を行った。そしてなんかよくわからないが、私が知らないところでわだかまりは解決した。

 

 豪快に笑って、ラルクとの固い握手をする、そんなマイケルも……あー、かっこいい。ずっと見てたい……。

 

「えいっ」

 

「痛ッ、何すんのよ!」

 

 突然私の肩甲骨の間に激痛が走った。慌てて振り返ると、ガリッパが仏頂面で私を睨んでいた。

 

「すんません、でもずっと呆ける姉貴が悪いっす。……自分の役目、忘れないで下さい」

 

 ガリッパは謝る姿勢を見せつつも引くことはせず、むしろ咎めるように言ってきた。私の一連の有様に腹を立てているのだろう。

 

……そういや、マイケルが来てから、私への視線が軟化したと言うか、温かい視線になったような…………あ。

 

 ごめん、ガリッパ。その通りだ……。

 

――私は深々と頭を下げて素直に謝った。

 

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