死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第三十一話 スクランブルに叶って

 ただただ無心に大鎌を振るう。また1体。そして横に振ってさらに1体。屈んで突進を回避しながら振り向きざまに1体。さて、私はこれまで幾体の灰狼を斬り伏せてきたのだろうか。

 

 全身は返り血で染まり髪はべとべと。コートは肌に張り付いて気持ち悪い。大鎌も血で濡れていて、気を抜くと握りが甘くなり落としそうになる。その分余計に握力を使うから手への疲労の蓄積が早い。

 

 刃と柄を2つに分離して戦ったほうが気持ち少しは楽になるが、近接に持ち込まなければならない分緊張感が増す。戦闘に余計なストレスを受けたくはない。それに戦いの最中に左腕と右肩に攻撃を受けた。戦闘が長引く度に大鎌の振りが遅くなっていくのを如実に感じる。このままではいずれ戦況が大きく傾く。何か大きな一手が必要だな。

 

『ガウッ!!』

 

「く……懲りずに噛んでくるな、こいつら!!」

 

 左前方から飛び込んできた灰狼に全力のハイキックを脳天にぶち当てて、壁まで吹き飛ばす。灰狼が壁の染みになったのを確認するまでもなく、すぐさまその場から移動して次の攻撃に備える。一撃離脱、そして一撃必殺でなければどうにも戦えない。まだ数えるのも嫌になるほどいるというのに!! 

 

 ドンッ!! 

 

「ぐっ……!?」

 

 ステップで移動中、踏み込んだ足を滑らせ僅かに姿勢を崩してしまい、移動距離が伸びなかった。その隙を見逃さず灰狼は横っ腹に全力のタックルをかましてくる。

 

 ガウッ!! 

 

「あ、がぁっ……!? このっ……クソ狼が!!」

 

 姿勢制御を空中で掌握し踏み込む。そのおかげで致命傷を避け太腿に噛みつかれるだけに済む。噛み付いてきた灰狼の頭を素早く肘で粉砕する。そして、全方位から灰狼の群れが飛びかかってくる。時間加速を解禁し身体強化も併用。時間にしてコンマ5秒の大鎌による乱舞をお見舞いする。

 

「はぁ、はぁ、かっ……が、かはっ!!」

 

 流石に堪える。元々疲労や受けてきた傷も相まって耐性が弱くなっていたのか、襲いかかる反動を堪えきれずに吐血。その場で片足をついてしまう。……まずい、隙を晒した。早く……動かなきゃ! 

 

「今援護するぞッ、テレジー!!」

 

「勝手にくたばってくれんなよボマー! お前が倒れちゃ俺が死んじまうじゃねぇか!?」

 

 私の窮地に駆けつけたマイケルとガイ。私を挟むように前後に位置した2人は手際よく灰狼を捌いていき、集っていた灰狼たちが片付けられていく。

 

 マイケルはあれからエレノアの死後心理的に不安定になっていたが、あの後すぐに正気を取り戻し私達と前線を共にしている。槍の精度は未だ正確に相手を一撃で仕留めるほどで、戦闘の続行は可能だろう。流石、マッチョは鍛え方が違う。生き残ったら私ももっと鍛えることにしよう。

 

 ガイは私以上に攻撃を受け、返り血だけでなく自らの血と混じってその身を鮮血で満たしている。頭を噛まれたのか片目は閉じられ、左手は垂れ下がって腹部からは血が止まることなく流れる。以前に比べ足運びは悪く、痛みで思い通りに動いていないのが丸わかりだ。

 

「ガイ、今治療する」

 

 なけなしの魔力を使ってガイを回復させる。だが全身は無理だ。優先的に腹部の出血を止めから、足は完全回復、左手は止血。頭部の止血も行ってからアドレナリン分泌を促進させ鎮痛効果を増加。ここまでやれば何とか戦えるだろう。お陰で魔力の6割は使ってしまったが……惜しむわけにもいかないだろう。

 

「これが魔法、凄いな…………助かる」

 

「せっかく使ったんだ、それに見合う成果を出してよ?」

 

「はっ、任せとけ」

 

「……2人共、俺に提案があるんだ、聞いてくれるか?」

 

 ガイの治療を完了させると、周囲を牽制しつつマイケルの話を聞き入れる。

 

「ワンコロ共をどうにかしてくれんなら、俺は歓迎するぜ」

 

「私も構わないわ。一体何をするの?」

 

「陽気パワーを使う……テレジーの敵は、俺が倒す」

 

「陽気パワー? 何だか分かんねぇが、そんなのがあるなら最初っから使ってくれ!!」

 

 マイケルはそう言うと、私達の前に躍り出て灰狼たちと相対する。これまで陽気パワーを使わなかったのは、使えない理由があったと考える他ない。ますます彼の『陽気パワー』の正体が気になる。以前は陽気パワーの温存を選んで槍という武器を得た。ここまでの戦いで使用条件が揃ったのか、それとも陽気パワーが溜まったのか。

 

「広範囲で、一気に殲滅できる魔法といえば……あれだ!」

 

 マイケルは足を肩幅に、両手を左右に開いて立つ。そしてなにやらぶつぶつと詠唱? みたいなものを唱えだした。

 

「天光満つる処に我は在り……黄泉の門開く処に汝在り──」

 

 詠唱を開始すると、狼の群れが騒然とし落ち着きがなくなっていく。

 

「な、何だこれ……地面が……」

 

 通常では考えられない量の魔力が灰狼たちの周囲に渦巻く。魔力が感知できるものなら恐怖を覚えずにはいられない。地面には幾何学模様の術式が展開され、中心に向かって雷光のような魔力が集って大きな柱を象っていく。それが大きく大きくなっていくたびに光量が増し、大気は振動し、地面に放射状に罅が走る。

 

 なんだ……この魔法は。高威力の雷魔法か、いや荒れ狂うように大気を揺らす風魔法か? こんな魔法見たことない。これが陽気パワーの力か……! 

 

「出でよ、神の雷──」

 

 マイケルは両手を目一杯天へと掲げる。束ねていた柱が閃光のように瞬くとその姿を消した。その瞬間世界が反転したかのような衝撃が襲い掛かる。離れているのに、ここまで伝わってくる魔力の波動。耳をつんざく甲高い金切り音。この魔法なら、一気に灰狼を殲滅できる……! 

 

 ──その時、灰狼たちの群れのそのさらにもっと奥。この場には相応しくないと思ったが、人影のような、それでいて人にしては異形とも言える体躯をした何者かが視界に映り込む。

 

「これで、終わりだッ! イン○ィグネイ○ョンッ!!」

 

 掲げていた両手を一気に振り下ろす。地面の術式が紫の光を宿して激しく瞬きながら融解。そして天井から、圧倒的な質量を伴った紫雷による高威力の魔法が、大きな落雷音とともに炸裂した。

 

「す、すげぇや……」

 

 ほんと、馬鹿げた威力だ。何処でこんなものを覚えてきたのだろう。私が知らない魔法もこの世には色々あるのだな。眼の前にいた灰狼は跡形もなく消え去り、焼き焦げた死体のみが転がっている中、そんな呑気なことを考えていた。

 

 ──ただ、一体。異形のものだけが死体の山で生き延びていたというのに。

 

 ズドン、ズドン、ズドン──。

 

 硬い地面を大きく揺らす足音が響いてくる。先程は魔法のせいで足音が聞こえていなかったのだろう。

 

「おい、あれって……」

 

 その姿は人間の形をしてはいるがそれだけで異形そのもの。頭部には機械的な流線型なヘルメットを装着し、加えて装着しているゴーグルによって視覚を強化していると見られる。体は灰色っぽいスーツに見を包み、黒鉄のプロテクターに守られている。全身はゆうに2メートルを超えて3メートルにも届きうる程の高さ。左腕は肥大化してその手首に当たる場所には砲身が除く。それだけだなく夥しい程の量の魔術式が施されている。左腕に刻印することで魔術道具に仕立てたのか。対する右腕は逞しくはあるが普通の腕。だがその手には私の身長ほどある特大剣が握られ、その刃は出血を強いるようにギザギザと波打って鈍く輝いている。

 

 それは最強そのもの。正体は私の師、ローレンス先生が『道楽』で造ったとされる、稼働している中で最高戦力のゴーレム。あの高威力の魔法に当たりながらも生き延びることができる生命力。あらゆるレンジに対応し、どの局面に置いてもどの敵を相手にしても確実に葬り去る、圧倒的な暴力の化身。

 

「攻撃タイプ……ゴーレム」

 

 先生が付けたゴーレムの名前は……何だったか、忘れてしまった。いや、今は名前なんてそんなことはとうでもいい。恐らく灰狼が起こした騒ぎによって触発されたのだろう、それで防衛タイプがここまで攻撃タイプをおびき寄せたのだ。

 

 その異形のものがかなりゴツい左腕らしきものを水平に掲げると、その腕を中心に魔力による術式が形成されて……まずい、まずい!! あの魔術は危険だ。そう本能が叫んでいる。そして妙に見慣れた魔術式のような気もする不思議な感覚。とりあえず、マイケルが放った魔法よりもさらに強力であることは間違いない! 

 

「下がって!!」

 

 咄嗟に私は記憶の片隅にあった防御魔法を思い出し、即座に展開。これからおとずれるであろう攻撃に備えるため、少しだけでも強度の向上を図る。

 

 遠くに見える異形は左腕に右腕を添えると、満を持してその魔術を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界は圧倒的な碧光の暴力に包まれる。灰狼の死体を巻き込んで、天井や壁などの構造物をものともせず無に帰しながら、防御魔法を激しく揺らした。

 

「っ、重いっ!?」

 

 パリンッ!! 

 

 展開させた魔力に罅が入る。その影響で防御魔法に隙間が生じ、迫りくる魔力による重みが増していく。

 

 ──魔力の本質。それはこの世の全ての物質に含まれるエネルギー体そのもの。生物であれば『細胞』。さらにそれよりも小さい粒が集って物体……『元素』によって構成されている。しかし、本当はそれよりもさらに小さい……いや、小さいなんて言葉じゃ形容できないほどの粒子が存在している。それが『魔力』。魔力は常に何らかの形で私達の周囲、また自分自身を作っている。

 

 何らかの形を象っている魔力であれば、その変わり果てた物質に依存する性質へと変化する。それが魔力の流動性、不変なエネルギーである魔力の本質。しかし、何物にも変化可能なその性質を魔力単体でみた場合、一体どのような性質へと変わるだろうか。

 

 それは『魔力の分解性』と呼ばれる性質だ。人間にとって、物質にとって『負の性質』そのものであり、『触れた対象を魔力へと分解』して元のあるべき姿──魔力へと戻してしまうのだ。

 

「ぐっ……!? ふざけろ、何だこの威力っ!!」

 

 ゴーレムはそれを魔法として昇華させ、魔力の分解性はそのままに、そこに衝撃属性を比率半々になるよう付与させ、奔流として放ってきたのだ。今展開している防御魔法には、魔力の分解性への耐性に絞って付与している。だから、必然としてその他属性の攻撃には弱くなってしまう。

 

 パリッ、パリパリンッ!! 

 

 まずい、破壊される。未だ奔流は収まる気配はない。魔力を放つってことは、それだけ無駄が多い攻撃になりがちなんだ。効率悪い攻撃だって言うのに、何でこんな長く放ってられんだよ!! 

 

「エレノア殿、その力借りるぞ!!」

 

 バンッ!! 

 

 後ろから銃声が聞こえる。恐らくマイケルがエレノアの遺品だろう小銃を持っていたのか、それを異形目掛け引き金を引いた。

 

 一瞬奔流の力が緩まる。ヒットして怯んだのだ。この光量の中、そして距離もあるというのに命中させれるのか。

 

 当てられはしたがしかし、エレノアが持っている小銃では威力が足りず、食い止めるには力不足だろう。

 

「マイケル、私の手榴弾を使って!」

 

「よしきた、任せておけッ!!」

 

 マイケルが私のコートを弄って手榴弾を手に取る。続けざまにマイケルが小銃を放ちながら、片手で手榴弾のピンを抜いて振りかぶる。そうして耐え続けて数秒後、無事爆発したのか突然奔流が途絶えて視界が一気にクリアになる。よし、防御魔法は最後まで保ってくれた。……守れた。

 

「なんだよ……これ。はは……ふざけてやがる」

 

 防御魔法を消失させる。もちろん灰狼は消え去っていたが、そんなことを気に留める余地はない。眼前に広がる光景は数秒前とは似ても似つかない。縦横に四角く広がっていた通路が魔力の奔流が通ったあとに沿って綺麗な筒状になり、さらに広い空間へと変貌していた。唯一私達が居る足場だけがその影響を免れていて、まるで丘のような高低差ができていた。それが逆に先程の魔法の恐ろしさを物語っていた。

 

「ボ、ボマー。お前……やれるか?」

 

「…………無理だ」

 

 実際目にするのは初めてだが、その強さは貴族街にいるときに噂で耳にしていたからだ。けれど、私は今少しだけ嘘を吐いた。

 

 コートに仕舞ってある護身用の短剣に触れる。こいつを『ここ』に使えば、この窮地を脱することはできる。

 

 だが、これは今使うべきなのか? 自分に問いかける。

 

 ──本当ならば来る貴族街に侵入後に備えたい。だがこうなった以上作戦は続行できるとも思えない。ならもう『これ』の使い道はない。しかし、今から逃げるにしてもゴーレムに退路を塞がれているため、どのみち貴族街方面に行くしかない。

 

 私の残存魔力は残り3割を切った。逃げるにしても私だけなら可能だ。それ故そんな真似をすることはできない。この作戦の片棒を担っているのは私だ。なら最後までやり遂げる責任がある。義務がある。

 

 それに今ここから逃げたら、過去に『もう逃げない』と選択した自分を裏切ることになる。そして、それ以上のなにかを失うことになる。

 

 なら、否定する……使用を拒む材料はない。今、これを使うとき──。

 

「テレジー、待ってくれ」

 

 短剣に手を掛け、切り札の準備をしようとしたところでマイケルに肩を掴まれ、動いていた手を止めて彼の方を見る。

 

「それはテレジーの最後の手段なんだろ? ならまだ使うときじゃない」

 

「そんなわけにいかない。今使わなきゃ、ここで死ぬだけよ」

 

「大丈夫だ……ここは俺に任せて先に行けッ!!」

 

 そう言うや否やマイケルはゴーレムへと猛然と走っていく。

 

「っ、マイケル!? ちょっと!!」

 

「ボマー!」

 

 既に数歩先を進んでいたマイケルを止めようと足を踏み出すも、ガイに腕を掴まれでそれを阻まれる。

 

「離してっ!!」

 

「分かってんだろ、今の状況!?」

 

「でも、行かなきゃマイケルが!」

 

「さっき言ったろ!? 『私より強い』って!」

 

 ああ、確かに言った。だから、この場で私が彼の下に駆け出すことは、彼に対する信頼の無さを表すことになる。でも、違う。そうじゃない。マイケルは強いし、陽気パワーを使えば例え攻撃タイプのゴーレムであっても倒すことはできるだろう。でももし陽気パワーがなくなったら? 今まで温存していたのは、枯渇寸前だったからじゃないのか? でも、さっきの高威力の魔法を放てるならそうじゃない可能性もあるのか? マイケルは戦闘経験もありそうで陽気パワーがなくとも強いだろうが、それだけで倒せる相手でもない。だから、だから……! 

 

 違う、違う! そうじゃない。結局それはただの粗探し。私は彼のもとへ駆けつけたい理由を探しているだけ。理屈ではなく感情論だ。そんなくだらない論争でどうにかなる話じゃないことに気がついた。違う。いい加減不毛な考察はよそう。私は……私は、ただ心配なだけだ。この戦いで彼がどうにかなってしまう可能性が少しでもあるのが、どうしょうもなく怖い……のかもしれない。

 

 僅かに震える体を抑えるようにして腕を組む。ほんと、弱い。私は自分のことでなく、他人の死を想像して震えるか弱い少女だったか。

 

 恐る恐る前を向くと、マイケルが攻撃タイプへと近づいていくのが見えた。そして立ち止まって深呼吸を挟んだかと思うと──マイケルが捉えるのもやっとの速さでゴーレムに対して拳を振るった。

 

 音を──置き去りにしながら。

 

 スパァァァンッ!!!! 

 

「ふんっ!!」

 

 マイケルの音速の正拳突きを受けたゴーレム。だがゴーレムは装着しているゴーグルのお陰か、左腕で咄嗟にガードを仕込んでいた。その代償は大きく左腕は肩まで大きく損傷し、ひと目で使い物にならないことがわかるほど醜く破壊されていた。

 

「テレジーの敵は俺が倒す。だから、俺に背中を預けてくれ」

 

「マイ、ケル……」

 

 ゴーレムの左腕は再生しようとしているのか、内側から蠢いてもとの造形へと変貌していく。しかし、あまりにも原型をとどめていなかったせいか、先程とは違う形になっている気が──。

 

 ──再びマイケルは姿を消す。さっきまでは追えていた動きが、今度は姿が見えなくなる程の速さで、音を置き去りに拳を振り抜いた。

 

 バァァアアンッ!!!! 

 

「おらッ!!」

 

 今度ばかりはさしものゴーレムもガードが間に合わない。マイケルが狙った通り左腕へと拳が吸い込まれ、完全に破壊し尽くした。

 

「はっ、何だよ……俺の周り、化け物しかいねぇじゃねぇか」

 

 ああ、やっぱり強いな……マイケルは。出会ったときからそう。彼の戦い。そして彼のそばにいることそれ自体。その全てが私を受け止めてくれるような、そんな安心感を、与えてくれる。

 

 だからこそ、今は……いやこれからも。マイケルに頼り切りにならないように、進む。誰かに頼ることは、自分を弱くするということ。弱い自分を肯定しないために、私は私の戦いに赴く。……そのことが分かっただけで、十分な収穫だ。

 

「行くぞ、ボマー」

 

 ガイの言葉に首肯で応じる。治癒魔法で止血を行って、だが足だけは完治させておく。ふわっと温かな翠光が足を包み込んで、鈍痛が消えていくのを感じる。ついでに全身の返り血もある程度落としておく。気持ち悪さを抱えたままなのは耐えられない。

 

 これで残りの魔力は1割程度となった。戦う手段が狭まっていく。たがそれがどうした。体が動くなら戦い用はある。私お得意の節約魔法術を舐めるなよ? 

 

 ふと今までの流れへの疑問に焦点が向く。ここまでやられれば流石に気付く。狙いすましたかのような灰狼による襲撃。そして攻撃タイプゴーレムの到来。間違いなく私達を殺しに来ている。この襲撃計画を企てた人物の意図は相変わらず不明だが、明確な殺意をもって張られた罠が何よりの証明だ。

 

 黒幕の正体。心当たりは……無いわけではない。だが誰であってもやることは同じであるだけ。確定させる必要はあまりない。

 

 ……他の仲間を巻き添えにしてでも、成し遂げたい何かがあるのか。それは私の殺害か、それとも他の事か。

 

 だが流石に奴単体でここまでできるとも思えない。だとすれば、穏健派への被害を1番に喜びそうな連中と手を組めばいい。ただ連中も善意で手伝うことはないだろう。そんなときは例えばそう、穏健派の備蓄食料や、武器の入手経路を提供すれば、喜んで協力してくれることだろう。だから……今回の作戦の内容について、事前に話を通しておけば、ある程度の融通をしてくれるだろう。

 

 1つ分からないことがあるとすれば、どのようにして灰狼をこの場におびき寄せたのか……という点のみだ。これ以上は後にしておく。……直接聞けば済む話だ。

 

 私達はその場を後にした。背中越しに伝わる、頼もしくもある、拳がぶつかる音とその衝撃をひしひしと感じながら。そして、前方からやってくる濃密な殺気を浴びながら。

 




最近、タグ詐欺してるんじゃないかと怯えてます。ギャグシーンゼロはまずくない?
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