死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第三十二話 約束したはずの二人さえ

 

「……すまない、ちょっと休憩させてくれ」

 

 ガイは大きく息を吐いて壁にもたれ掛かり、倒れるように座り込む。顔色は見るからに悪く、呼吸も荒い。さっきから足に力が入っていないのかふらふらとしていて、歩みも遅かった。慣れない激戦に続いて攻撃タイプゴーレムの襲来だ。気負いしないほうが無理というものだ。私が少し異常なのかもな。

 

「構わない。だがあまり時間は取れないぞ」

 

「分かってる……少しだけだ」

 

 ガイが大きくため息を吐く。私は彼に背を向けて水路に移動し、背中から大鎌を抜いてその刀身を見つめる。

 

「ボマー……祝勝会のとき、エレノアと話してたよな。なんの話、してたんだ?」

 

 片膝を立てて楽な姿勢をとったガイは、気を紛らわせるためか雑談を持ちかけてくる。

 

「大したことじゃないぞ」

 

「いいんだそれでも……話してくれないか」

 

「……リンウェルの悪口と、あと私の過去について会話した」

 

「リンウェルか……あいつは一癖あるからな」

 

 そう言うと、ガイは口元に柔らかな笑みを浮かべた。

 

「身綺麗な女は目をつけられるし、下手にあいつと言葉を交わしたらグチグチ言われて面倒だしな……。まぁでもエレノアはそんなこと気して無さそうだったな……」

 

 水路に映り込む自分の顔を見つめる。血塗れで小汚い顔だ。両手で掬って顔にばしゃばしゃと水をつけ、血を洗い流す。これを誰かが口にすることがあるのだろうか。そう思うとなんだか申し訳ないな……。

 

「あいつはさ、いつも傍若無人な態度を取ってたけど……本当は気遣い上手のいい女なんだよ。多分男嫌いなのか、俺には冷たかったけどな……」

 

「昔になにかあったのか?」

 

「俺が魔獣に殺されそうになったとき、あいつはすぐに駆けつけて助けてもらったこともある。……出会って間もない頃だぜ? それにあのときはあいつと仲悪かったってのに。お人好し、としか考えられないだろ」

 

「そんなことが……」

 

「それだけじゃねえぜ。お前がここに来たとき、あいつお前を敵視するようなこと言ってたろ。『裸になれ』みたいな。あの場でお前の仲間入りを反対してたのは俺だけだった。だから、エレノアは俺に気を遣ってそういう風に言ったんだと思ってる」

 

「そんなこともあったな……」

 

 大鎌に付着した血を洗い流していく。水では流せない油汚れは持ち合わせの布で適当に拭っておく。

 

「口も性格も悪いが……頭が回って、人をよく見てる。優しくて……いい女だった」

 

「……そうだな」

 

 手持ちの爆弾は閃光炸裂弾が1個と手榴弾が1個。その他武器には異常が見られない。戦闘は可能だ。しかし、魔力量は残り1割程度十分とは言えない。それに、噛みつかれた左腕と右肩がズキズキと痛む。包帯は巻いて応急処置はしているが、どうせこれから激しく動かすから傷口が開くことが容易に想像できる。治ることはないだろう。

 

「もう十分だ。待たせたな」

 

「気にするな……休めるときは、休んでおいた方がいい」

 

 なぜ私が今更になって己の現状を見直しているのか。単純にこれからの成り行きに備えて、というのもあるが少し違う。

 

 ガイの告白に、なんて反応を返せばいいのか……分からなかったからだ。

 

「ボマー……お前は強いな」

 

「私は……そう在りたいとは思ってるよ」

 

 誰しもが強く在れるわけではない。私もそうだし、ガイだってそう。エレノアの死が、彼の心に押しかかった呵責。その結果、彼の本心に似た何かが露呈したとしても、おかしくはない……と思う。

 

 ……これ以上マイケルが稼いでいる時間を無駄にはできない。

 

「これ、お前が持っててくれないか」

 

 そう言ってガイは腰につけたポーチを探ると、中から白い封筒を取り出した。もちろん中身は、この作戦の最重要物たる書簡だ。

 

 何も言わず私はそれを受け取る。書簡を大事にコート内にしまうと、私達はそれ以上は何も語らず前に進み出す。

 

「なんかあったときは頼むぜ。ちゃんと届けてくれよな……テレジー」

 

 ☆ ☆ ☆

 

 地下水路からなる、貴族街ヘ侵入口。その手前に広がる、広大な地下空間への侵入を阻む大扉の前へと私達はたどり着いた。

 

 私達は大扉を体全体を押し付けるように開いていく。物々しい音を立てながら大扉は開いていき、そしてこの地下水路の合流地点たる広いホールへと足を踏み入れた。相変わらず壁に掛けられた魔力供給型の灯火が、空間全体を怪しく光らせている不気味な空間だ。

 

 私を先頭に、ガイを後方に私達はゆっくりと進んでいく。そして中央付近に差し掛かったとき、正面の貴族外へと続く大扉の前に佇む人物へと焦点が当たる。

 

「遅かったな、テレジー」

 

「っ……クロード」

 

 やはりというべきか、当然のように、そこには全身を包み込む幅広いマントを纏い、伸びた黒髪を後ろで結った黒目の男。革命派のリーダー、クロードが壁にもたれ掛かって腕を組んでいた。

 

「てめぇがクロードか……!」

 

 目にかかる程度の黒髪を左右に手を振って分けると、クロードはこちらを上から下へ睥睨する。

 

「死んだのは2人か。それも残ったのは知らん男の方とは。何が起こるか分からない人生というものは少々不愉快だ……そう思わんか?」

 

「どうでもいい。……お前たちがしたこと、高く付くぞ」

 

「ほう、なら一体どうする?」

 

 決まっている。私は背中にある大鎌に手を伸ばし、腰だめに構える。ガイは大剣を低く構えると、いつでも踏み込めるよう姿勢を低くした。

 

「分かりきったことを……!」

 

「この私に盾突こうというのか? 私の過去は知っているだろうに」

 

 クロードは依然として強気な態度を崩す様子は見られない。それもそのはず。奴はこの国が正常に機能していた──灰の嵐が発生する前。今は廃れた嘗てのアスキア帝国軍。数いる将校の中でも指折りの実力者であり、普段はマントで隠された軍服には、若くして得た多くの勲章がぶら下げてある。奴のその剣筋は40を過ぎた今も衰えることなく、遺憾なく発揮されるだろう。

 

「はっ、何だその無様な構えは。無理をして立っているのが丸わかりだ。よくもまぁ恥ずかしげもなく吠えたものだ」

 

「実力差があろうとも関係ない。お前を殺すのには十分だ……!」

 

「私が用意した刺客と随分お楽しみ頂けたようだ。今のお前には碌な魔法すら扱うこともできないだろう?」

 

 口を醜く歪めさせると、心底愉快そうに笑みをこぼす。その不愉快極まる様に吐き気を催す。

 

「今回だけではないだろ……あのときの熊型の魔獣。あれもお前の仕業か」

 

「──ああ、その通りだとも」

 

「てめぇ、このクソ野郎! あの魔獣のせいでどれだけの人が死んだと思ってんだっ!!」

 

 不敵に笑って余裕を見せ、こちらを挑発してくるクロードに乗せられ、ガイは激昂した様子で口汚く詰る。

 

「あれは魔獣を用いた実験の1つだ。本来は貴族街へ仕向ける予定だったが、実験の間もない頃で奴らの扱いに手間取った……」

 

「そんなことはどうでもいい。あの魔獣はどこから来た? そして、お前たち革命派はどうやって使役している? ……何が目的だ!!」

 

「ふっ、そう焦るな若人。1つ目の答えは簡単だよ、灰の嵐さ」

 

 灰の嵐だと、それが一体何になるというんだ。クロードの答えにピンと来ず、却って疑問は深まるばかり。頭を捻らせる私に満足したのか、クロードは調子よく語りだす。

 

「灰の嵐の正体。それは魔力と似て異なる性質を持ったエネルギー体によって構成されている。渦巻く灰色の物質は人を切り裂くように『分解』し、その灰色のエネルギー体に吸収しているのだ」

 

「それが何だってんだ……!」

 

「……灰の嵐はジンによって生み出されたのは既知の通り。灰の嵐とは詰まるところジンが魔力を吸収するために作り出した、言わば『魔力回収装置』だ。そして魔力を効率よく吸収するため、魔力を多く持つ存在へと襲撃し、魔力へと分解するための駒……それが魔獣だ」

 

 クロードの荒唐無稽に思えるその言葉は、すんなりと私の中で融解していく。クロードの言を仮説とする場合、いくつか新たな疑問が生じる……が、一旦それは後で考えるとしよう。

 

「お前たちは……魔力石を使って魔獣をここまで誘導したのか?」

 

 魔力石。名前の通り、魔力吸収率の高い特定の鉱石に魔力を込めた石のことだ。とはいえ魔力石にも種類があり、単純に魔力だけを蓄積させたものや、魔術を仕込めるもの。魔力以外のものを封じることができるものなど、様々だ。何やらその鉱石に含まれる物質の純度によって使用用途が変わるらしいが、それ以上はよく分からない。

 

「2つ目の答えがこれだ──」

 

 懐を弄り、クロードは手元に手のひらサイズの丸い水晶のような魔力石を取り出す。魔力石は鮮やかな緑光に溢れ、その中に大量の魔力が保存されていることがわかる。あの時クロードが見せてきた魔法石と同じだ。

 

「この石はかつてこの国で鉱夫たちが血と汗を流し、文字通り命がけで採掘した鉱物資源だ。軍が所持していた、だが今はその大半が貴族に簒奪された……その生き残りの一つだよ」

 

 大事そうに水晶を抱えると、クロードは言葉尻を強くしながら更に続ける。

 

「貴族は理不尽だ。この国が繁栄し時の王者となった礎は、あの忌々しいくも雄々しい鉱山だ。今は亡き鉱夫たちにこそ貴族の誉れがあって然るべきだ。だが、今の貴族共は20年前から城に引きこもってばかりの、脳までカビまみれのクソッタレ共だ! 私たちアスキアの民を見捨てたクズどもの脳天に、正義の鉄槌を下すのだ……!」

 

「っ……!」

 

 平時の彼とはかけ離れた、憤怒に身を焦がすクロードの覇気に私は怖じけ、緩んだ大鎌を握る手を再度掴み直す。

 

「……3つ目の答えだったな。簡単だ、お前たち貴族共を魔力へ変換して魔力石に封じ込める。そして灰の嵐を消し去り、この国を復興させることだ。ジンはある一定の魔力量が供給されればこの国から手を引くと予想されている。だから、今度はお前たち貴族が我らの礎になれ」

 

 荒唐無稽だ。砂嵐のようにざらついている思考の中、私はそう感じた。例え今この国から貴族が去り、灰の嵐が消滅したところで、この国は何も変わらない。それどころか、目の敵である貴族を失えば、貧民はその怒りを何処にぶつけようというのか。人は愚かで、常に『仮想敵』でも用意しなければ団結することはできない。現実的な思考を持つクロードが、その結論に至らないはずがない。

 

 確かにこの国の惨状を招いたのはアフマド帝国だ。しかし、その現状を知る貧民の殆どは、強制労働によってその命を呆気なく散らしていることだろう。数少ない生き残りのクロードがむしろ珍しいくらい。大抵の人間は30を越えた辺りで死ぬ。今生き残ってるものでも、20年前ともなればものの通りも弁えぬ小童だ。アフマド帝国に対する敵愾心なぞ持ち合わせていないだろう。

 

「簡単、か……私はそう思わない。それにクロード。お前が今手に持っているその魔力石。悪いことは言わない、今すぐ手元から捨てろ……魔力が持たないものがどうなるか、分かっているのか」

 

「ふっ、知っているさ。だが問題はない。この魔力が満ちるとき、それは私の計画が成就したときだ」

 

 クロードは再び懐に魔力石を入れると、腰に帯びている鞘から剣をおもむろに抜刀。その剣は嘗てのアスキア帝国軍の一般的に普及していた片手剣、それよりも上等な将校が持つ片手剣だ。だが元々使われていたのか、経年劣化か柄や鞘に汚れや傷が目立つ。しかしその分刀身の銀光が際立って、その愛玩工合が見て取れる。

 

「魔力がないといったな。それは些か語弊を生む言い方だ。アスキアの民……ああ、済まない。お前らで言うところの『貧民』だったか? 不愉快な呼び名だ。言葉というのは発現者本人がどう思おうと、言葉が持つ力に侵食され新たな解釈を生む。他の誰でもないお前たち『貴族』が、率先して俺たちを差別し20年もの間甘い蜜を吸い続けた証拠だ」

 

「…………」

 

「20年前……貴族が引きこもる前だ。アスキアの民は全て、ローレンスとかいう男の指示の下とある検査を受けた。そして数日後、数は少ないが民の幾人かは街の魔法師の名家とともに勅令を受け、マグナ・アスキア城に消えていった。……俺は検査には受からず、私の妻とまだ幼かった娘が城に連れて行かれた」

 

 地上であれば常に薄暗くとも眩しく輝くだろうが、暗闇ゆえ鈍く光る刀身を眺めるクロードは、尚もぽつぽつと語り続ける。反射して映る自らの顔は、何を示しているのか。

 

「私は、私から大事なものを奪ったお前たちを許さない。その報いを、悲しみを、怒りを……まずはテレジー。貴様から味わってもらおう……!」

 

「全てがくだらない妄想話だ。過去に囚われて大事な今を見失っている哀れな道化に、掛けてやる言葉なんてありはしない。お前の企みは叶わない。……お前ではこの国を救えない」

 

 クロードに敢えて挑発的な言葉をぶつける。それは言葉通りの挑発でもあるし、何より自らへの鼓舞である。私が、私のしたいことを叶えるために、夢を叶えるために。お前の望みを叩き斬る……! 

 

「──お喋りが過ぎた……くっくっくっ、失念していたよ。俺も歳だからな、気を抜くとすぐに喋りすぎてしまう」

 

 クロードが私達を見据える。いや、違う私だ。そこにガイは含まれていない。もっと言えば私の後ろ。私達ですらない何かをその虚ろな目に映した。

 

「さぁ、始めようか──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──やれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズドンッ。

 

 

 視界の横から突如として刃が潰された、肉厚の特大剣が飛び出してくる。それに伴って私の前方に首があらぬ方向に曲がり、その命を儚く散らしたガイが飛んでいくのが映り込む。

 

「え……?」

 

 人が、また死んだ……何より今度は、見覚えのある武器によって殺された。

 

 ブンッ!! 

 

「くっ……!!」

 

 感傷に浸っている暇はない! 大鎌を横で構えて、続けざまに飛来する特大剣によるフルスイングを咄嗟に受け止める──受け止めてしまう。

 

「がっ!?!?」

 

 私の細腕、それも身体強化もされていない状態で、しかも不意打ちで人一人簡単に殺せるような、そんな特大剣による一振りを受けたらどうなるかは明白だ。

 

 ──子どもの頃、中庭で見つけた軽石で壁に落書きをしたり、投げつけて遊んでいたのを思い出す。貴族街の中庭にある砂利は全てこの国のものではなく、装飾のためにわざわざ他国から輸入し、それを敷き詰めたものだ。他の砂利と同じ大きさなのに重さが違う軽石を見つけたとき、なんだか不思議とワクワクした気持ちになってよく集めていたりもしたものだ──。

 

 そんな投げられた軽石のように、面白いくらいに私は地面を激しくバウンドしていた。

 

「──がはっ!? ごほっ、ごほっ……っ、かっ、あっ!?」

 

 勢いそのまま壁に背中から激突。広いホール内の中央から最端までふっ飛ばされた。40mくらいは飛んだだろうか。全身は隈なく打撲を重ね、頭はぐわんぐわんと視界が揺れて首の位置が定まらない。受け身を取ったとはいえ、腕や足、肋骨や鼻、その他の骨も何本か折れている気がする。最早どこが折れているのか、傷ができたのか分からないくらい痛い。

 

「か、かはっ……っなお、さな……きゃ……!」

 

 呼吸がまともにできない。視界がぐらぐら揺れて気持ち悪い。マインドダウンぎりぎりのラインで魔力を使って肋骨と足と腕などの骨折を治す。肋骨は完治したが、その他の部分は魔力が足りず罅が残る程度だろうか。それでも何もしないよりかはマシなはずだ。

 

「…………」

 

 まるで産まれたての子鹿のように震える自分の足に思わず嘲笑ってしまう。痛み続ける足を無視して私は気力だけで立ち上がると、刃が潰れた特大剣の主を睨みつける。

 

「オー……フィアぁああああっ!!!!」

 

 黒い棺のような盾に、同じく黒い肉厚で所持者の身長を超える特大剣。黒のワンピースにを見を包んだ華蓮で華奢で、時折突飛な発言が目立つ女の子。そして、私を……『友達』と言ってくれた、女の子。

 

「これ、上で手に入れたものです」

 

 クロードの側に移動していたオーフィアはそう言うと、棺をひっくり返して地面に何かを落とす。オーフィアが捨てるように棺から吐き出したものは、地上で彼女と囮部隊を担っているはずの大勢の穏健派の人たちの首だ。棺の中に雑に詰め込まれたのか、皆一様にその顔を血化粧で彩られいる。

 

「──確認した。次の命令だ。オーフィア、そいつを無力化しろ。無理なら殺せ」

 

「……分かりました」

 

 クロードの命に従い、オーフィアは真っ直ぐこちらに正対し、盾を正面に構える。

 

「何で、オーフィアがっ!! ──っ、まさか……やっぱりあんたも」

 

 色々疑ってはいた。私の推察が正しければ、例えここまで大掛かりで、しかも用心深いクロードを出し抜いて奴自らの計画を遂行させることは不可能だ。だから、何かしら奴以外の……スパイが穏健派に潜んでいると思っていた。私の推理では、『ガリッパ』だ。……だった。しかしその推論はガリッパ自らの言で崩壊し、何もかも振り出しに戻ることとなった。

 

 盲点……とは言わない。確かに彼女は怪しく、端から疑ってはいた。しかし、革命派に属しているとなると少し違和感が生じたのだ。理由は、クロードの大の貴族嫌いが起因していた。例え有益な人物であっても、彼なら死んでも貴族の手など握らないと思っていた。その先入観が真実から遠ざけた。だから私はオーフィアを大人たちや、ローレンス先生が仕向けた諜報員か何かかと勘違いしたのだ。

 

 全てが遅い。初動が遅れた時点でこうなることは予想されていた。もっと早く黒幕の正体に気が付いていれば、こんなことにはならなかった。全ては、私のせいだ。

 

 なんで、こんなことに。

 

 幸いにも手元に大鎌はある。だが震える手が力いっぱい武器を振らせてくれるような気がしない。肋骨を治したというのに、呼吸は未だ荒い。酸素が頭に回らない。思考が働かない。 

 

「さ、武器を構えて。テレジー……わたしは本気だよ」

 

「っ、オーフィアっ!!」

 

 オーフィアは腰を低めに構えると、私が返事を考える間もなくこちらへと突進してきた。

 

 ──最悪の展開になった。

 




コメディが書きてぇ。でもシリアスも書きてぇ……その一心で始めた今作ですが、シリアス一辺倒なのはなぜでしょう。

※私が悪いです。そろそろプロット書け。
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