死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第三十九話ッ 終わりよければ全てよしッ!とにかくぶっ放せッ!!※丸く収まると思うな

 

「えーっ、と…………これ、何」

 

「職質だッ」

 

「裁判じゃねぇのかよ」

 

「拷問って聞いてたけど」

 

「どれも、不穏……けど、わたしは全て受け入れる義務がある……」

 

 何か見たことある構図と展開だな。ネタねぇのかよ。

 

 私の隠れ家。その真ん中に設置された椅子に縛られて座らされたオーフィア。『縛られて』というのは椅子に、ではなく。オーフィアをただ縛っただけ。動こうと思えば動ける。なんならオーフィアには魔法石を持たせているので、身体強化で縄を破って拘束を抜けることもできる。

 

 つまりただのプレイ。そういう体を取っているだけ。変態かよ。……いや私がやったわけじゃないけどね? 

 

「というか、何でまたこの縛り方なの……きっこうしばり? だっけ」

 

「わたしが、マイケルに教えたやつ……実践してくれた」

 

「お前が元凶か」

 

 敵に塩を送りやがって。送り返されてるじゃねぇか。あと、ちょっとにやけるな。口角動いたのバレてるぞ。

 

「こうなった理由は……言わなくても分かるな?」

 

 マイケルは一歩前に詰めるとオーフィアと目線を合わせる。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……いや誰か喋れ」

 

「……こうなった理由が、本当はちょっと、分からない……」

 

「……俺も」

 

「何なんだよ、お前ら!?」

 

 誰も言葉を発しない空間で、1人ぽつんと縛られて座ってるオーフィアが流石に可哀想だろ!? 

 

「ねぇ、オーフィアの件はもう終わったでしょ。これ以上聞き出しても意味はないと思うけど」

 

「少しだけ、聞きたいことがあってな」

 

「なんでも……答えるわ」

 

 マイケルの発言に前のめりに返答をするオーフィア。

 

 聞きたいこと、か。気になるとすれば、結果としてクロードを裏切る形になっているが、それに対して彼女が思うことはないのだろうか。……思えばあの時、異形と化したオーフィアは真っ先にクロードを処分していた。もしかしたら、個人的な恨みがあった、ということなのか? 

 

「あの戦いの時、魔獣化したオーフィア殿は……意識があったのか?」

 

「……うん。あった」

 

 やはり。思い当たる節はある。まずは先も述べたがクロードを執拗に甚振って殺したこと。彼女らしい慎重で時に豪快な立ち回り。そして私に見せた超反応や的確な黒炎による攻撃。そのどれもが魔獣如きにできる代物ではない。

 

 ということは当然、1つの疑問が湧き上がる。

 

「ならば何故、テレジーを襲った? 最初から意思疎通が取れることが分かれば、もっと早くオーフィア殿を救えたはずだ」

 

「…………」

 

「……最初に言っておくが、オーフィア殿。俺はオーフィア殿を責めたいわけじゃないんだ……ただ理解したいのだ。良き友人として、君に寄り添いたいんだ」

 

「……うん」

 

「ゆっくりでいいから、教えてほしい」

 

 マイケルの言葉をゆっくりと咀嚼するように頷くと、俯いていた顔を上げ喋りだす。

 

「……殺されたかった。テレジーに、殺してほしかった」

 

「『殺されたかった』? ……それはクロードに命令されたからか?」

 

「違う……彼はわたしに何も望まなかった」

 

 どういうことだ。オーフィアの真意がわからない。私に殺されたい? クロードはそこには関係がない? 何故そんな歪な感情を持ち合わせている。

 

「オーフィアさんはクロードに脅されてた、ってわけでは無さそうだよな。こう言っちゃなんだけど、脅されてた人の態度じゃない」

 

 ガリッパの思わぬ角度からの発言。それには私も賛同する。平時の彼女の言動はあまりにも伸び伸びとしていて、後ろ暗い過去があってのものとはあまり思えない。……というのはあくまでも見かけ上の話であって、ただの偏見だ。

 

「脅されてない……ただ『ついて来い』って言われただけ」

 

「ならクロードがオーフィア殿を従わせた理由は?」

 

「わたしに、死に場所をくれた……わたしは、魔力に変換されて、魔法石に取り込まれる定めだった」

 

「それが何故テレジーに『殺されたい』、という願いに変わるんだ」

 

 クロードに関係がないのならば、あとはオーフィアの問題ということになる。あれだけ人にしつこいと思わせる程迫ってきたのに、『友達だと思ってる』と言っていたのに。矛盾している。

 

「思えばオーフィア殿は随分とテレジーに、言葉が悪いが、執着しているようだった。クロードの意思が関係がないなら、それはオーフィア殿が望んだしたことなのか?」

 

「……どっちも。クロードはわたしに穏健派の諜報員としての役割を与えた。そして追加で『テレジーの監視』と『テレジーに命を捧げる』ことを望んだ。……けど、それはわたしにとって願ったり、叶ったり……だった」

 

「……オーフィア」

 

「全部話すから……安心して、テレジー」

 

「ええ……」

 

 それから、オーフィアが語った内容は以下の通りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ──オーフィアは、昔から私の存在を知っていた。

 

 それ自体に違和感は全く無い。自分で言うのはあれだが、私の名前は容姿と共に『子供たち』全体に広く知れ渡っていた。理由は1つ、私の魔力量の多さから。

 

 だが、オーフィア曰く私を知ったきっかけは、そんな誰でも知っているような情報ではなかった。

 

「中庭で、魔法の訓練をしてたテレジーを見て……わたしは、自由な生き方だと思って、憧れた」

 

 オーフィアは所謂落ちこぼれで、先天的にも後天的にも魔力量の成長が見られない、言わば『廃棄』……魔力へと変換される事が確実視されていた。避けられない運命の死。それを知った彼女は魔力の訓練にも生きることにも、何もかも全てに意味をなくしていた。そんな時に、私の姿を見たらしい。

 

「何にもない、何も残せないわたしにも、自由に生きていいんだって思って……」

 

「オーフィア……」

 

「欲望に忠実に……女の子を食い荒らすことにしたの」

 

「……ん?」

 

「わたしのことを忘れないよう、じっくりとその体に──」

 

「待ってオーフィア。その話飛ばして。また今度聞くからっ」

 

 ……そうして日々を浪費していた時、ついに魔力試験の日が訪れる。予定調和に試験に落ちたオーフィアは、ある部屋に連れられ『貧民街』へと追放する旨を伝えられた。

 

 それはある意味、オーフィアにとっては死の宣告よりも辛い現実だった。

 

 悔いが残らないよう、やることはやった。やりたいことは全部終わらせた。だから、『まだ生きていていい』と言われたオーフィアは酷く困惑した。目標もなく夢もなく。生きる意味を失ったオーフィアはただ無気力にアスキア街を歩いた。

 

「ある時……クロードに拾われた。『お前の死に場所を用意してやる』って。丁度いいや、って思ってわたしは従うことにした」

 

「それがどうして私に……殺されたいって思うの」

 

「戦うことは、好きだったの……昔から。戦いの中で死ねるなら、憧れだったテレジーに殺されたいって、思ったの」

 

「身勝手よ……それは」

 

「うん……そうだね。わたしが、間違ってた」

 

「貴方は言ったわよね。私に『友達にしてくれる?』……って。なのに、どうして友達にしてくれないの? ……そんな事言うくらいなら、ちゃんと責任を取ってほしかった」

 

「そう、だね……ごめん。ほんとうに、ごめんなさい」

 

 眼の前に居るオーフィアを抱きしめ、おでこを合わせる。

 

「オーフィアは……色々間違えたよ。償い切れないくらい、いっぱい」

 

「うん」

 

「でも、それは私も同じ……一緒に、償っていこう。それが、貴方の生きる意味。一生懸けて、償うの」

 

「うん……」

 

「だから、死なないで」

 

 腕の中のオーフィアを強く抱き寄せる。あの時と同じ。ただ今度は奪わせない。

 

 誰かと関わる以上、人間関係という鎖に縛られる以上、自分の言動に責任がある。私はオーフィアとただの知り合いでは無くなった。勿論それはマイケルもそうだし、ガリッパともそうだ。だから私は彼ら彼女らに一個人として責任をもって接する。それはつまり私の決意。今を守るために、私の夢を叶えるための決意。

 

「ありがとう。テレジー、マイケル。わたしを、助けてくれて」

 

 私が皆を、守るんだ。それが、私にとって『逃げない』ということ。大切なものを失いたくないから。

 

 守りたいって思える何かを、確かにこの手で掴んでいたいのだ。

 

「これにて一件落着、だなッ!!」

 

 本当はもっと問いただして、聞かなければならないことがある。オーフィアを救えた安堵の外側に渦巻く、どうしょうもない蟠りが私を苛む。けれど今は置いておきたい。ただ今を噛み締めたいのだ。

 

 ──この2年、色々あった。嫌なことしか無いと思ったけれど、壁を乗り越えた先にこの光景が待っていた。たとえ死にたくなるような世界も、笑い飛ばして生きていく。それを教えてくれたのは……。

 

 マイケル。ありがとう。そして、これからもよろしく。

 

 まだまだ逃げない旅は始まったばかり。次の旅路に備え、私は立ち上がるのだ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだだ、まだ終わってないッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──は? 

 

「確かにぃ!? オーフィア殿の真意は分かった……だが! それはそれとしてまだやるべきことがあるのだッ!!」

 

「何言ってんの?」

 

「流石にこのまま『はいそうですか』と許すのは腹の虫が収まらんッ!」

 

「いやさっき『これにて一件落着』とか言ってたくせに!」

 

「そこでだ……これよりッ! オーフィア殿の『禊』を行うッ!!」

 

 禊……? 何でそんな事する必要あるの? 

 

「ああ、そういう……オーフィアさん。取り敢えず立って。縄解くから」

 

 え? 何でガリッパはもう把握できたの? 全く訳分かんないんだけど。

 

「さあ、テレジー……一思いに頼む」

 

「『分かってんだろ?』みたいな顔で頼まれても分かんないわよッ!?」

 

「あ、オーフィアさん。そこで机に手をついて。で、もっと腰を突き出して」

 

「ん……こう?」

 

「そうそう」

 

「『そうそう』じゃないわよ! あんたたちさっきから何を──」

 

 見たことのある構図。それは封印されし忌々しき記憶を呼び起こす。

 

『ほら、もっとケツを突き出せッ!! よしテレジー、今だッ!!』

 

『……あーっ、もうッ!!』 

 

『──ああぁぁぁんッ/////♡♡♡』

 

「ああああああああ!? 誰がやるかぁああああああ!?!?!?」

 

「あの時みたいに、渾身の足技でオーフィア殿の尻をしばくんだッ!!」

 

「嫌よッ、絶対に嫌ッ!!」

 

「くっ、わたしは……痛みには屈しないっ……」

 

「それ絶対に屈するやつのセリフぅ!? ノリノリだなお前!!」

 

「いいなあ……あとでオレにもお願いします!」

 

「この流れでしてもらえるとよく思えたなッ!?」

 

「いいかテレジー。よく聞け……」

 

「な、何よ」

 

「──地球は回ってるんだ……俺たちの意思に関わらず」

 

「……はぁ?」

 

「つまり、オーフィア殿の尻をしばいても、地球は回り続けるッ!!」

 

「それが自転とどんな関係があんのよッ!!」

 

「公転の話だったが……」

 

「どっちでもいいわッ!?」

 

「姉貴ッ!! いい加減にするッスっ!!」

 

「何で怒られなきゃならないんだぁあああ!?!? 悪いのは私じゃないでしょッ!!」

 

「……オーフィア殿は罪を犯した。ならばそれに見合う罰がなければならない」

 

「そういう考えも分からなくはないけど、でも尻をしばくことが罪を許すことにはならないでしょ!!」

 

「違うんだ……禊というのは、罪を洗い流し自らを綺麗にする行為なんだ」

 

「だからそれって水を浴びるとかそういったことで、尻をしばくのは関係ないでしょ」

 

「大事なのは行為ではなく、心なんだよ。オーフィア殿の穢を落とすことが大事なんだ……テレジーは、オーフィア殿をこのまま許せるのか?」

 

「それは……」

 

 確かにオーフィアは許されないことをした。けれど私が咎められる問題ではない。これからも背負っていかなければならない罪だ。禊程度で取り除いていい代物ではない。

 

「オーフィア殿を裁きたい訳じゃない。ただ、これを機に心を入れ替え、新たに人生を始めようって、思ってもらいたいんだ」

 

「マイケル……」

 

「さぁ、頼むよ。テレジー」

 

「…………はぁ」

 

 机に手を付きこちらを横目で眺めるオーフィアの背後にとぼとぼと回る。

 

 別にやる気になった訳じゃない。ただ、マイケルの言外に言わんとすることに気付いたから。仕方なく彼の思惑に従ってやろうと思っただけ。だからもう二度とこんなことはしない。

 

「お願い、します……」

 

「……なんでちょっと期待してるのよ」

 

「わたし……Sだと思ってたけど……意外にこの展開……どきどきしてる……!」

 

「……変態が」

 

 これ本当に禊になるの? 新たな悟、開いちゃうんじゃない。性的な方の。……いやそれじゃあ私が原因みたいになるじゃん。それだけは認めたくない。禊。これはただの禊。禊だぞそれ以外にないぞ。

 

「……行くわよ」

 

「うん……きて」

 

 全く……どうしてこうなった。マイケルが来てから、騒がしい毎日だ。なんでここまで来て女の尻をしばがなければならないのだ。

 

 まぁ、でも。しんみり終わるくらいなら、このほうが私達らしいのかな。こんな騒々しい日常も悪くはないのかも。

 

 最近、久しぶりに笑えてる気がする。まるでアスキア城にいたときのような、エリナと過ごしていたあの時のような居心地の良さ。……エリナは今、何を考えているのだろうか。

 

 いや、今はいい。今は、この時間を守っていこう。これも、求めていたものの1つなのだから。

 

「……はッ!!!」

 

「──ん、んっんん゛ん゛あ゛ぁ……♡♡」

 

 オーフィアの快感に震えるくぐもった矯正が、世界を埋め尽くした──。

 

 ……違うッ!! こんなの求めてないわッ!? 

 

 ──私は思考を取り戻した。

 




ここまで読了頂きありがとうございます!予定よりも遅くなりましたが、これにて第一章の終わりです!

これからも続けていく所存ですので、どうぞよろしくお願いします!

第一章で登場したキャラクターの中で、一番好きな人物を選んでください。

  • テレジー
  • マイケル
  • ガリッパ
  • オーフィア
  • その他※コメント欄で教えて下さい!
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