死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第二章
第四十話ッ マイケル見参ッ!!※相変わらずの男


 

「ん、はぁ……ん……」

 

「はっ……はぁっ……!」

 

「ん、あ……はっ、あぁ……んぐっ……」

 

「はぁ……はぁ……オーフィア、殿……」

 

「なに……マイ、ケル……?」

 

「大丈夫か……? 辛かったら、いつでも──」

 

「大、丈夫……大丈夫、だから……ぁ!」

 

「でも、そんな辛そうな顔して……」

 

「いい、の……この痛みが、わたしの宝物なの……」

 

「オーフィア殿……」

 

「マイ、ケル…………んっ」

 

「オーフィア殿ッ!!」

 

 地面に倒れ込むオーフィア殿を支え、なんとか地面とキスするのだけは防ぐ。乙女の唇が濫りに汚されていい道理はない。今日のオーフィア殿は黒のワンピースではなく薄手の白ワンピースだ。髪を一纏めにしていつもより爽やかな印象を受ける。そんなオーフィア殿が薄手の恰好をしているのには理由がある。

 

「暑い……暑すぎぃ……」

 

「そうだな……」

 

 厚い灰色の雲に囲まれつつも、強く差し込む光が確かな太陽の存在を示す。これでも今日は太陽が出ている方だ。もし鎧を着ていたら蒸し焼きになっていたな。それくらい気温が高い。

 

 額から流れる玉のような汗を拭う。砂漠の奥から届く僅かに吹く熱風が頬に当たる。流石のオーフィアも随分と疲れた様子。水筒を手渡すとぐびぐびと飲んでいき、一気に空になった。

 

 俺たちが今いる場所は、アスキア城下町の北城門にある北栽培区画。その一角の畑にて農作業に従事していた。

 

 あの大規模な作戦から数週間。旧レジスタンスの崩壊と、分派したレジスタンスの統合によるアスキア街の混乱は、様々な影響を及ぼした。まずは治安の悪化。今まで革命派レジスタンスが統治、管理していた荒くれ者たちが一斉にのに放たれた。そのおかげで各地で暴力、窃盗、その他多くの事件が多発。暫くは俺たちもその対処に追われ東奔西走していた。

 

 また、レジスタンスに不信感を持っていた人達が挙って押しかけ、レジスタンスの拠点が多数の市民によって襲われた事もあった。軍出身者も多かったことから人数差を戦力でカバーし、なんとか耐え忍ぶことが出来た。

 

 そしてもう1つ。栽培区画の従事者の減少。暴動によって怪我人や死人が続出。その結果働き手が減少したことによって国内の食料配布が滞った。このままでは餓死者すら出かねると危惧したラルクは、なるべく多くの人員を集めて栽培区画へと送り出した。それはレジスタンスのメンバーはもちろん、俺らも例に溺れなかった。そのため、俺とオーフィア殿はこうして収穫後の畑を鋤き込みをしていたのだ。

 

 いやぁ、異世界に来て鍬を持つことになるとは。人生何があるか分かったものじゃないな。はははっ。

 

「う、ぅう……ひっ、ぐ……」

 

「テレジー……元気、出た?」

 

「出るわけぇ……無いでしょうがっ……!! うわあああああん!!」

 

「流石に、やり過ぎた……『ヤリ過ぎ』るのは、ベットだけにしなくちゃ」

 

「うわああああああああん!! 皆が私をいじめるんだぁあああ!!!」

 

 手に持った三角ホーを捨て、地面に蹲って泣き叫ぶテレジー。いつもの黒コートは着ておらず、晒しとホットパンツだけというセクシーな格好をしている。髪を後ろで結ってポニーテールを作り涼しげだ。

 

「おー、それにしても大分雑草取れたな」

 

「うぅ……私は、雑草を取ることしか出来ないゴミ女です……雑草が雑草を、取ってます……」

 

「考え過ぎ……テレジーは雑草を取れる凄い人。つまり……根気強い人」

 

「オ、オーフィアぁ!!」

 

「ま、わたしは……畑を起こせるけど」

 

「うわああああああん!!! 私は力仕事も出来ないクソ雑魚ナメクジですぅうう!!」

 

 ああ、また泣いてしまった。子どものように泣きじゃくるテレジーの背中を擦って慰める。いやはや、どうにか泣き止まないものか。

 

「いやいやこれだけの広さの畑の雑草を1つ残らず取るのは偉業だぞ」

 

 俺たちが任されたこの畑の広さは大体10aくらい。大体10m×100m程度の広さだと思ってくれればいい。到底3人でこなせる範囲じゃない。それが如実に作業者の少なさを示している。俺とオーフィア殿による地道な畑の鋤き込み。回復魔法を使いながら体力を回復させていたから、常人よりは遥かに早い作業速度だったと思う。正に魔法様々、といったところだ。

 

 一方テレジーは、先の戦いでのマインドショック……ではなかった、魔力障害による後遺症がまだ残っていた。大分自由に体を動かせるようにはなったらしいが、それでも長時間の作業は病み上がりの彼女には堪えるものがある。だから、テレジーには畑の雑草取りを頼んでいたのだ。雑草はある程度取っておかねば、鋤き込んだとしてもすぐに生えてきてしまう。地味だが大事な作業なんだ。

 

「はは……どうせ私に出来ることなんて……はは……陰険引き籠もり魔法オタの私らしいや……隅っこでちまちまちまちま……楽しいなぁ……」

 

 むう、テレジーがネガティブな考えに染まってしまった。これはいかんな。天を仰ぎながら暗い瞳で譫言を言い出し始めたぞ。

 

「テレジー、喉は乾いてないか。水はまだあるか?」

 

「えぇ、大丈夫よ……貴方たちと違って、私は『ほぼ』動かないから……」

 

「……疲れたなら、休んでいいんだからな」

 

「ふふ、問題ないわ……ゆっくり、それは『ゆっくり』とやっているから」

 

「……うわぁ、ネガティブ・ヒステリック女だ……きつぅ〜」

 

 オーフィア殿。それは言い過ぎでは? 

 

「そんなに気落ちすること無いと思うぞ。体が不調なのは皆分かってるんだ」

 

「わたしと、マイケルを頼って」

 

「えぇ……分かってる。ありがとう、2人とも。けど……けど……そうじゃなくて……」

 

 地面に転がった三角ホーを取ると杖のようにして立ち上がり、雑草取り作業を再開する。

 

「──あんなに言うこと無いじゃないッ!!」

 

 叫び声を上げながら三角ホーを地面に叩きつけると、今度は地面を踏み荒らしながら泣き叫ぶ。おお、なんと可哀想な三角ホー。取り敢えず、地面を踏みつけるのやめてくれ。固くなっちゃうから。

 

「私が悪いのかなぁ!? だって武器が壊れるのって仕方ないじゃん!? 使ってたらいつかは壊れるよね!? 壊したくないなら部屋に飾って埃被しとけッ! というかそんな簡単に壊れる武器なんか作ってんじゃないわよこのヘボ鍛冶屋がッ!! 前世は詐欺師でもやってたんじゃないのッ!? あの白髮引き籠もり大鎌オタクが、私より年下のくせに調子乗ってんじゃないわよッ!!」

 

 この、この、このッ!! っと怒りを込めて放たれる足蹴りによって三角ホーは地面へと埋まっていく。

 

「ああ……また爆発、しちゃったね……」

 

「うーむ、こればっかりは俺にも責任があるからなぁ……」

 

 暴れ狂うテレジーを傍目に、俺達は遠い目で未だ作業が終わらない畑を見渡す。……こりゃ大変だ。

 

 ──何故テレジーがこんなにも情緒が不安定なのか。それは今よりも数日前の出来事に起因する。

 

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