死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第四十一話ッ 君だけの勇気ッ、必ず探し出せるさッ!!※目線を逸らすな

 

「ごめんなさい……持ってもらっちゃって」

 

 テレジーの大鎌を背に、俺は玄関を潜ってドアに施錠する。この家は前までのボロ屋敷の地下室ではなく、ガリッパに見繕ってもらった新居だ。広さは前の地下室とは大きく変わらないが、やはり地上にあるという分、人間らしい生活ができるのが素晴らしい。

 

 新居についてからまず俺は家屋をいっぱい運んでインテリアも充実させた。これから長く住む家なのだから、愛着が湧くよう工夫はしなければな。テレジーには『要らない』と何度も言われたが、飾りつけが終わった部屋を見たテレジーの嬉しそうにはにかむ顔を見れただけで、俺としては儲けものだ。

 

「なに、これくらい構わないさッ」

 

「…………う、うん。お願い、するわ」

 

「ふむ、さっきから様子がおかしいな……緊張でもしてるのか?」

 

「き、きききき緊張感なんてぇ……ま、まっひゃ、まっく、全くしてない」

 

「緊張、してるね……」

 

 オーフィア殿は小首をかしげ、前を歩くテレジーの挙動不審ぶりを不思議そうに見つめる。

 

「せめて……せめて槍の穂先だけでも残ってれば……今からでも取りに戻ろうかな……。この大鎌だって……なんでこんな所壊れるのよ……聞いてないわよ……!」

 

 槍の穂先……というのは俺が折ってしまった大槍のことだろう。大鎌については恐らく、刃と柄の連結部が破損してまったことを言っているのだろう。

 

「もしかして、壊してしまったことをアリシア殿に言うのが怖いのか?」

 

「いいえッ!? 全ッ然ッ、怖くないですけど!? 年下のチビに誰がビビるかっての!!」

 

 む、これはビビってるな。

 

 まぁとはいえ、槍に関しては俺が悪いから、テレジーが怒られる心配はないと思う。その時になれば口添えしよう。

 

「手、震えてるよ……」

 

「わざとよッ! 演出よッ!!」

 

 要らなくないか、その演出。

 

「あんたたちは知らないだろうけど、あの女は自分の作ったものへのこだわりが凄いの」

 

「確か大鎌が大好きなんだっけか」

 

「いえ違うわ。崇拝してるの。あの子にとっては神であり親であり友人であり彼氏なの」

 

「え、なにそれ怖い……大鎌って男だったんだ。……あの曲がってるところを、男根に見立ててるのかな……痛そう」

 

 オーフィア殿。ツッコミ入れる場所、そこじゃないと思うが。あとさり気なく下ネタ混ぜるのやめような。

 

「大鎌はもちろんのこと、他の練習用で作った武器でさえ謎のこだわりがあるの……絶対に壊れないって自信が」

 

「それは鍛冶師として悪いこととは思えないが」

 

「違うの! あの子の武器すぐ壊れるのよ!!」

 

「ううん、違うよ……テレジーの扱いが雑なだけ」

 

「そんな事無いわ。だって初めてもらった剣だって2、3回使った程度で折れたのよ?」

 

「どうせ剣先を地面に押し付けたり……剣の腹で打ち合いしたり……投げたりしてたんでしょ」

 

「…………」

 

「ほら」

 

「し、信用してるのよ、武器を! 『その程度で壊れないでしょ?』って、信じてたの!!」

 

 凄いな……テレジーを口だけでここまで追い詰めるとは。オーフィア殿、やるな。それに先程の口ぶり、テレジーの戦闘の観察と実際に打ち合った傾向から、テレジーの武器への扱いを見抜いた故の発言なのだろう。凄まじい観察眼だ。

 

「武器は大事にしなきゃ……のんのん」

 

「そうだな。日頃の整備が大事なんだ」

 

「整備? そんなの要らないでしょ」

 

「え……」

 

「oh……」

 

「何か間違えたこと言ってる? 私」

 

「えーっと……怒られたほうがいいと思う。作った人に」

 

「嫌よッ! ……あ、店にはオーフィアから入ってね。そしてまずはオーフィアの武器の相談からしましょ! あとマイケルの話もね! ね!?」

 

 この女。ずるいな。

 

 初めてテレジーに対してマイナスな感情を抱いたかもしれん。確かにオーフィアのあたらしい武器を見繕う話をすれば、鍛冶師としては何より嬉しい話だろうし、今後炎上するだろう話題を前にいい鎮火材になるだろう。

 

 だが忘れるな。最後には火山が噴火する。火砕流に巻き込まれないようにしなくてはな。

 

「今更だが、この武器は俺がもらっていいんだよな?」

 

 オーフィア殿の元愛剣、刀身を潰した刃渡り1.5メートルの黒塗りの特大剣を手に取り眺める。オーフィア殿の髪と瞳を写したような綺麗な黒。オニキスを彷彿とさせる輝きは、太く分厚い刀身の暴力的な見た目とは裏腹に、見る者に芸術性を見出させる。

 

「うん。もうわたしには……持てない」

 

「別に魔力があるのだから、持てないってことはないでしょ」

 

「その武器は……棺と一緒になって初めて効力が発揮される……だから、イチモッツ君単体じゃ、不完全な魔道具なの」

 

「は、はぁ……」

 

「つまり……イチモツとたまたまの関係性と同じ、ってこと」

 

「いや説明は求めてないわよッ!!」

 

 いまいち卑猥な武器を携えることに若干の抵抗はあるが、現状これ以上に頑丈で扱いやすく、俺に見合う武器はないだろう。貰えるのであればありがたく貰っておこう。それに今はエレノア殿の遺品のリボルバーもある。武装が充実しているな。

 

 アリシア殿に俺からはこのリボルバーの改造と銃弾の作成を依頼してみるつもりだ。この街の数少ない優秀な鍛冶師と聞いた。なら、駄目元でも頼んでみるのが吉だろう。もし駄目でもいざとなれば銃弾は俺が作るから問題はない。

 

 世間話もそこそこに、俺たちはアスキア城下町の地下商店街に辿り着く。ここは元々地下水路の一部であったが古くなって老朽化し、使われなくなって廃棄されていた場所。そこを利用して集まった人々が闇市を形成し、今ではアスキア最大の商店街を築いている──らしい。

 

「──まぁ、ここ以外に碌な店は無いんだけど」

 

 例に溺れず街の地理と歴史に詳しいテレジーによる解説を聞きながら、俺たちは闇市を進んでいく。この情報はどこから仕入れてきたんだろうな。大したもんだ。

 

「……ここ、って」

 

「ああ……そこは、行かないほうがいいわ」

 

 オーフィア殿が眉を顰めテレジーの方に視線を送る。テレジーの視線の先には何らかのお店が存在していて、看板には文字が書いてあるが俺には分からない。

 

「あの城から捨てられた貴族が集められた場所よ……それ以上は察して」

 

「なるほどな……早く移動するとしようか」

 

「そうだね……」

 

 嫌な感覚だ。

 

 仕方がない、とは思う。未だ『貴族』と呼ばれる魔法師たちと、『貧民』と揶揄されるアスキア市民たちの間には深い確執がある。テレジーの話であれば、とある試験に落ちた者の中から数名がアスキア城下町に追放されるとか。恐らくそれはある程度の魔法師達をアスキア市民に与えることで、増えすぎた憎悪の捌け口を用意する意図なのだろう。

 

 ……胸糞悪い話だ。本来なら一も二も無く救いに行きたい。しかし、俺には出来ない。『陽気パワー』というものの本質に気付いてしまった今では、そんなことすら俺には出来ないと悟らせた。それに、今は陽気パワーが枯渇している。先の作戦の最後、魔獣化の魔法石によって異形化したオーフィア殿を救うため陽気パワーを惜しみなく使ったためだ。だからどの道俺には何も出来ない。

 

 テレジーとオーフィア殿を守るのが今の俺の精一杯。欲張るな。人間の腕は2つしか無い。なら守れる数も限られる。それだけの話だ。……全く、嫌になる話だ。

 

「こ、ここ、こ、こ、こここここ──」

 

「着いたって……マイケル」

 

「ほう、ここか」

 

「じゃあ……開けるね」

 

「ま、待って、心の準備がぁ!?」

 

 そんな俺のくだらない話は置いておいて。一層慌ただしくなるテレジーを無視したオーフィア殿の非情にも思える開扉。俺たちは件の鍛冶師、クレイトン殿及びアリシア殿の経営する店へと踏み入れた。

 

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