死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第四十五話ッ 働けよ、我らは社会の歯車ッ!!※ゾスッ!!

 

 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ。

 

「…………」

 

 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ。

 

「…………マイケル」

 

「む、なんだ。オーフィア殿」

 

「後ろ見て…………わたしたち、結構、頑張ったよね」

 

「おう……そうだな。かなり広いもんな」

 

「違う……違うよッ……!!」

 

 ぽん、とオーフィア殿が持つ鍬が手を離れ着地。地面から砂埃が舞う。

 

「わたしたち、なんでまだ畑、鋤き込まなきゃいけないのッ……!」

 

「そりゃ、まだ残ってるから──」

 

「──終った、じゃん! 1週間くらい掛けて、終わったじゃん!! なのに、なのにぃ!」

 

 ああああああああ………………。と、珍しく声を荒げて発狂したオーフィア殿。黒い瞳はいつもより淀んでいるような気がしなくもない。む、なんかこの前もこの絵面見たことがあるぞ。

 

 ……それも無理はない。なにせ今まで作業していた畑がようやく終わり、長きに渡る重労働が終わったかと思いきや、なんと同じサイズの畑をもう1枚担当することになってしまったのだ。流石の俺も目眩がしたね。

 

「絶対……殺す。地獄の果まで……追い詰めてやるッ……!」

 

 何故ここまでオーフィア殿が怒っているのか。その理由は酷く不愉快な事件があったのだ。

 

 今俺達が担当している畑は元々、旧革命派レジスタンスのメンバーが作業を任されていた所だった。しかし昨日進捗状況を確認した所、全くの手付かず出会ったことが判明。なんと旧革命派レジスタンスのメンバーらはサボっていたのだ。

 

 今の時刻は昼頃。つい数時間前に俺達は作業を終えて報告をした時。運が悪くその情報が関所内で知れ渡ってしまい、手持ち無沙汰になってしまった俺達が担当することになったのだ。

 

「なんで奴らにお咎め無しで……真面目に働いてたわたしたちが、こんな罰みたいなことを…………っ」

 

 ザクッ! ザクッ! と力強く鍬が土に打ち込まれる。オーフィア殿の気持ちが痛いほど伝わってくる。

 

「そうだな…………」

 

 鍬を持つ手に力が入る。口を動かしながら手を動かすことを止めてはいけない。作業は始めなければ終わらない。逆に言えば作業は続ける限りいつか終わるということだ。

 

「マイケルは、怒ってないの?」

 

「まあ、仕方ないさ。軍なんて頭が腐った連中ばかり────おっと。失礼」

 

「……ふふ。マイケルも、やっぱり怒ってたんだ」

 

「……何で笑うんだ」

 

「ん……マイケルと一緒でよかった、って思って」

 

 む……いい笑顔だな。こんな状況でもなく、オーフィア殿が百合でもなければ惚れていた。こりゃ騙される男多いぞ。……ま、オーフィア殿の男への態度、めちゃめちゃに悪いからな。そんな心配もないか。

 

「ね、なんか話そ…………暇で死んじゃう」

 

「ふむ、なら……オーフィア殿。そなたが、その女性を好きだと自覚したのはいつなのだ」

 

「おお……よくぞ、聞いてくれました……!」

 

「お、おう……?」

 

 鍬を投げ捨てたかと思うと腕を組んで意気揚々と話し始めるオーフィア殿。興奮してもいいけど、取り敢えず作業だけはしてくれないか? 

 

「女の子の体はね、夢があるの。まずおっぱいの大きさが人それぞれ違う。くびれも、腰も、お尻も、足も。全部が違ってそれぞれの個性を形成しているの。いっつあわんだふるわーるど!」

 

 ……む。俺が聞いたことと違うこと言ってないか? でも面白いから聞いちゃお。

 

「でもそれはあくまでも先天的な話。そこに本人の努力と洗脳が加われば、正に、無限の可能性が広がるの。いふぃにてぃ……ぽっすぃびりてぃ」

 

「…………洗脳?」

 

「例えば……おっぱいは小さいけれど、凄く綺麗な乳首を持っていて、腹筋も鍛えられ、足は細いけれどしなやかで、腰が大きくくびれが目立つ女性。例えば、おっぱいは大きく、乳首は陥没。けれど肉厚な、けれど引き締まった無駄のないお腹と、しっかりとした張りのある太もも。……この2人は元々双子だったの」

 

「なんと!」

 

「ふふ……凄いでしょ。わたしが調教したの」

 

 …………調教。

 

「確か出合ったのは2人が10歳くらいのときかな。その時のふたりは瓜二つで、唯一の違いは乳首くらいだった。……姉妹丼、美味しかったですっ……!」

 

「姉妹……丼……」

 

「妹には今のままの自分を愛することを。姉には、彼女が抱えていた『今の自分から変わりたい』って気持ちを後押ししたの。そうしたら……2人は別人になって、それぞれ『自分らしさ』を手に入れたの」

 

「なるほどな…………」

 

 ふむ……不穏なワードがいくつも出てきたな。うむ、闇だ。これは闇だよ。絶対に突くべきではないな、俺如きに。そういうのはテレジーにやらせよう。もちろんいい意味で。

 

「そう。女性の体は心理的要素が大きく影響し、それがよりエロい身体を作るの……ところでマイケルはどんな女性が好きなの?」

 

「お、俺か?」

 

「やっぱりでかいのが好きなの?」

 

 オーフィア殿は自慢の胸をぷるんと揺らし、此れ見よがしに強調してくる。

 

「それともテレジーみたいな……ぷぷぷ、ま、まな板が?」

 

 あとで通報するからな。覚えとけ。

 

「あんまり考えたこと無いな」

 

「そんな……嘘でしょ」

 

「あくまでも胸というのは女性の体の一部。そこだけを見て女性を判断するなど愚行だ」

 

「……確かに」

 

「胸の貧富なんて些細な問題だ。その人が自分に自信を持ち、自分の全てを確たる『アイデンティティ』として認識していれば。どんな女性も美しいのだ」

 

「…………師匠と呼んでも?」

 

「構わんッ」

 

 手に持っていた鍬を捨てると、跪いて地に頭をつけるオーフィア殿。うむ、ノリが良いのは認めるが、手は動かしてくれ。じゃなきゃ本当に終わらん。

 

「でも、なんか……納得。マイケルって、おっぱいに視線向けてこないよね」

 

「む、そうか?」

 

「……うん。本当に男なの? って疑うくらい」

 

 うーむ。これは平時であれば褒め言葉と受け取ってはいけないやつだな。だがオーフィア殿の場合は少し違う気がする。多分褒めてる。

 

 まぁ、あれだよ。あんまり見てはな……テレジーの視線が、な。何とは言わないが、オーフィア殿の何かが揺れる度にテレジーの目つきが鋭くなるんだ。そして必ず俺の視線を確認するんだ。まるで『見たな?』と鬼の形相で。いや、無表情ではあるが、それがまた怖いだろ? ああ、怖いさ。

 

「昔……胸が大きいのが嫌、だったの」

 

「ほう」

 

「で、ある時……後ろから知らない男に背中から鷲掴みされて」

 

「oh……」

 

「それから、男が嫌いに……なったの。男って変な視線、向けてくるから……」

 

「なるほどな。自分が気にしていた時にそんなことあったら、そりゃあ嫌いになるよな」

 

 そんな事があったとは。それは災難だった。もしかしたら俺の質問も、彼女の地雷を踏みかねん内容だったな。反省しなくては。

 

「時にオーフィア殿。俺はどうなのだ?」

 

「ん……変な視線向けてこないから大丈夫。安心してる。だから男扱いしてない」

 

「な、なるほど」

 

 うーむ。それはそれで傷付くな……。ま、オーフィア殿がそう言うのであれば良しとしよう。この女性は面白い。もっと話してみたいしな。

 

「ちょっとあんた達ー! こんな所にいたのーっ!?」

 

 む、テレジーか。地面から目を逸らし後ろを振り返る。手を振ってこちらに早足で近付いてくるテレジー。うむ、可愛いな。太陽の輝く下であれば絵のような素敵な一枚になるだろう。そして後ろから続くのは懐かしい顔のガリッパだ。

 

「探したぞ。家にも居ないしで」

 

「これ、貴方達のご飯と水筒。お腹すいたでしょ」

 

「おう、すまない」

 

「あれ……女の子は?」

 

「こんな時まで性欲を持ち込むなッ!」

 

 昨日もお楽しみだったろうに。まだ求めるのか。性欲魔獣か。

 

「で、なんでここに居るんだよ。ここ、持ち場じゃねぇだろ」

 

「ああ、それなんだが──」

 

 ──俺は2人にここまでの経緯を説明した。

 

「はぁあ!? あり得ないでしょ!」

 

「そっすね……ちょっとラルクんとこ、言ってきます」

 

「ええ、お願い」

 

 俺がことのあらましを説明すると、2人は怒り心頭と言った様子で事を進めていく。

 

「ラルク殿にも報告が言っているものだと思っていたが、そうではないのか?」

 

「そんな訳無いでしょ! ラルクがそんなの許すわけ無いわ」

 

 む、そうなのか。こう言っては失礼だが、事を起こしたのは元革命派。ラルク殿は彼らの勢いに負けて承諾したのかと思っていた。

 

「……今のラルクには、誰にも逆らえないわよ」

 

「そうなのか?」

 

「ええ……本当に、変わったわ」

 

 ふむ……。そうか。あれからラルク殿の様子は見ていないが、俺が知っている頃よりも頼り甲斐のある男になったらしい。成長と呼ぶべきか異変と呼ぶべきかは分からない。しかし、どの道変化した要因が目に見えている分、手放しでは喜べないな。時間があるときにラルク殿に訪問しよう。放っておくのは嫌な予感がする。

 

「……まずい。これはまずいよ、マイケル」

 

「む、何がまずいのだ?」

 

「絶対、寝取られたよ……テレジー」

 

「寝取られてないし、寝てないわッ!!」

 

「『逆らえない』とか……なんて歪な信頼関係……!」

 

「私達はそんな関係じゃないッ!!」

 

「寝取られだけはダメ。お願いテレジー……正気に戻って!」

 

「だからなんも無いわッ!!」

 

「ああ、だめだ…………催眠術に掛かってナニをされたのかも分からないやつだっ……!」

 

「もうこれ以上話を広げるなッ、私の話を聞けッ!!」

 

 本当にオーフィア殿は下ネタが好きだなぁ。

 

 

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