死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第四十六話ッ 出会いは突然にッ!!※らぶそーすいーと

 

 畑作業を中断した俺達はまず日陰に移動した。その後、テレジーがラルクから受けた依頼についての話を聞いていた。

 

「『黒ローブの女』の追跡、確保か」

 

 テレジーは神妙な顔で頷くと、手に持った水筒を一口。

 

「とは言っても、神出鬼没でどこに現れるか分かんないんだけどね……」

 

「今までは……どこに現れたことあるの?」

 

「そうね、確か私とマイケル、ガリッパが私の元拠点に居たときと、オーフィアの審問会のときの2回よ」

 

 黒ローブの女が最初に現れたときは、ガリッパを執拗に狙っていたように思える。2回目はリンウェルだった。黒ローブの女は突如として現れたかと思えば、分け目も振らずガリッパ、リンウェルを真っ先に狙っていた。共通点は2人共『クロードの作戦に加担』していたこと。

 

「生前シド殿が言っていた『通り魔殺人事件』の犯人は、もしかしたら黒ローブの女なのでは?」

 

「んー……そうかもね、その可能性が高いわ。殺された人間の共通点は元革命派で、クロードに近しい人間だったから」

 

「なら、次に狙われるのは……わたし?」

 

「候補の1人であることは間違いないわ」

 

「黒ローブの女の狙いは『クロードと関わった証拠の隠滅』と考えて良さそうだな」

 

 黒ローブの女は貴族街からやってきているのは間違いない。前回の最後、彼女が見せた転移魔法は特定の魔法師にしか成し得ない技だとテレジーは言っていた。貴族街に住まうものが、クロードの作戦を警戒して事前に止めようとしたのか、それとも別の思惑があってそれの火消しに追われているのか。

 

 何にせよ現状では答えは出せないだろう。そもそも黒ローブの女の単独犯なのかも分からない。そういった部分をこれから探っていけばいい。時間は少しはある。

 

「イザベラと戦うのか……わくわく」

 

「わくわくすんな」

 

 イザベラ……確かテレジーが黒ローブの女のフードが捲れ顔が見えた際に口にした名前だった。

 

「忙しくて聞けなかったのだが、そのイザベラというのは2人の知り合いなのか?」

 

「ええ……まあ、一応」

 

「わたしと血統が同じ、アドロフの者」

 

「仲は良かったのなら、話し合いができそうなのだが」

 

「仲は……良くはなかった、かな。その……いつも突っかかってきて、悪口言われてたから」

 

「なるほど……」

 

「あ、気にしないで。別にどうってこと無かったわ。エリナがいつも追い返してたから」

 

「イザベラ、ただのかませ犬じゃん……」

 

「事あるごとに話しかけてきて、好きなだけ騒いで帰っていく女だった」

 

「ん……そうそう」

 

「いっつも大声で喋ってたよね。『おぉーほっほっほっ!!』……って感じで」

 

 イザベラ……殿の真似なのだろう。だがテレジーがお嬢様口調で大口開けて笑う、というのが新鮮でなんか面白いな。

 

「お嬢様に憧れてるの、あの子」

 

「その割にはやや口が悪すぎたけど」

 

「なんでああなっちゃったのか……」

 

 ふむ、なるほど。何となく関係がわかったぞ。

 

「でもあの時のイザベラ……様子がおかしかった」

 

「うむ、そうだな。まるで幽鬼さながら正気を失っているようだった。普通ではないことは明らかだ」

 

「それに、イザベラは人を殺せるような質じゃない……何があったの」

 

「誰かによって魔術を仕掛けられた…………操り人形、説」

 

「…………そう、かもね。魔術によって洗脳されている可能性は高いわ」

 

 再びテレジーが顔を顰め、場に沈黙が伝わる。やはり、テレジーほなにかに気付いている。それを言わないのは彼女なりに考えがあってのことなのか。

 

 黒ローブの女……ガリッパが見たという人物と、俺が見た人物の特徴は合致している。ただ、あの正気を失っている女……イザベラ殿の姿を見るに、ガリッパが見たという黒ローブの女はイザベラ殿ではないと思う。態々黒幕として動いていた人物が、危険の伴う刺客の役をやりたがるとは思わない。

 

 つまり、ガリッパが見たという黒ローブの女は、イザベラ殿に指示を出し暗殺及び要人の殺害を命令したのだろう。

 

 だが、ここで気になるのはリンウェルが死に際に言った黒ローブの女の特徴である『赤髪』。これはガリッパが見た黒ローブの女にも、イザベラ殿にも当てはまらない特徴だ。ということは同時期に黒ローブの女が2人潜伏していた、ということになるのか。

 

 ガリッパが見た黒ローブの女、イザベラ殿、リンウェルが見た黒ローブの女。カモフラージュにしてはやや杜撰だ。複数犯での犯行であるとわざと示しているようだ。特にイザベラ殿の存在が異質。オーフィア殿の言が正しければ、正気を失った人間を自らの影武者になぞしない。もっと扱いやすい人物を用いるはずだ。

 

「ま、何はともあれ……仕事をもらったのだから、やるだけやるやりましょ」

 

「そうだね」

 

「そうだな……」

 

 ……ガリッパが見た黒ローブの女、リンウェルが見た黒ローブの女が同一人物である場合。全ての辻褄が合う。そもそも、複数人で1人の人物に指示を出す理由がどこにあるのか。

 

「……マイケル? その、大丈夫?」

 

 いや、考え過ぎか。テレジーに微笑み返すと勢いよく立ち上がる。先入観でものを言っても仕方がないよな。

 

「なんでも無い。さあ、探しに行くとしようかッ!」

 

 ガリッパが見たのは黒髪。リンウェルが見たのは赤髪。髪色が違うのであればそもそも別人だ。髪でも染めてなければ、の話だがな。

 

 遠くからガリッパの声が聞こえる。もう帰ってきたのか。テレジーは一足先にガリッパの下へ走って向かっていき、ラルクからの返答を尋ねた。丁度いい機会だ、オーフィア殿に効いておきたい事がある。

 

「ところでオーフィア殿。貴族街に髪を染めるような人に心当たりは?」

 

「ん、いないと思うよ……というか、染め粉がないよ。……急にどうしたの」

 

「うむ、そうだよなッ。すまん忘れてくれッ!」

 

「ちょっと2人共ー! 早く来なさいっ!」

 

「今行く、待って…………早漏だなあ、テレジーは」

 

「せっかちって言いなさいよッ!!」

 

 兜をバンバンと叩いて意識を切り替える。取り敢えず今はイザベラ殿の捜索だ。『後で出来るのことは後で』が俺の信条だッ! 

 

 ☆ ☆ ☆

 

「そういう訳で、ラルクからの任務ちゃんと伝えたっすから。よろしくお願いするっす、3人とも」

 

「ええ、任せて」

 

「ぶい!」

 

「おうッ!」

 

「うっす、気を付けるっすよー!」

 

 ラルクの下から帰ってきたガリッパの報告を聞き、見事畑作業の任を解かれた俺達は、その足で城下町へと戻って黒ローブの女の捜索を始めていた。

 

 うむ、黒ローブの女だと長いし分かりにくいから、今度からイザベラ殿と呼ぶことにしようか。

 

「探すって言っても……あてはあるの?」

 

「無いわ。街を歩くしか無いわね」

 

「……この脳無し、考え無し、甲斐性なし…………胸無し」

 

「畑作業に戻りたい? それとも土に戻りたい?」

 

「ごめんなさい探します」

 

「うーむ、テレジー、オーフィア殿よ。イザベラ殿はどういうものが好きだったとかあるか? 性格が分かれば、居場所が分かるかもしれないぞッ」

 

 それに何だか面白そうな人だからな、イザベラ殿は。任務云々よりも気になるぞ。

 

「いやいや……操られてるのよ? その辺でぶらぶらと遊んでる可能性は低いでしょ」

 

「まあ、ものは試しだ。思いつくものを言ってみてくれッ!」

 

「んー、私はイザベラのことあんまり知らないからなあ……」

 

「イザベラは……本が好き。あと、子ども、とか?」

 

「え、あの性格で本読むの? ……まあ、子ども好き、はなんか分かる気がするけど」

 

「歳下の子たちと良く遊んでた……気がする」

 

「あ、確かにそうかも。よくちびっ子達の訓練に付き合ってあげてたし」

 

「ふむ、なるほど……なら、公園に行ってみようかッ。案内頼むッ!」

 

「公園ねえ…………広場とかでもいいかしら。どうせ見当もつかないし、行ってみましょうか」

 

 テレジーを先頭に俺達はアスキア街を歩いていく。こうして3人で並んで街を歩くことになるとは思わなかったな。うんうん、幸せ幸せ。2人が仲良く過ごしてくれる日々が続いてくれればいいな。

 

「イザベラ殿は向こうではどんな人だったんだ?」

 

「うるさい。口が悪くてすぐ調子に乗る。負け犬の遠吠えが得意技」

 

「……ふむ?」

 

「お嬢様口調で……威張り散らしてた……頭が悪い子」

 

「……ほう?」

 

「バカ」

 

「目立ち、たがり」

 

「派手好き」

 

「おっぱいが、でかい。めっちゃ、すこぶる、はんぱなく、でかい。ぷぷっ、よ、横の人と比べて──がはッ!?」

 

「……おう、なるほど」

 

 碌な人じゃないことは良くわかった。件の人も、オーフィア殿も。

 

「けど魔力量は私に次いで多かった。雷系の魔法が得意だったわね。魔力の性質も雷寄りだった」

 

「確か、最初に現れた時に雷を出していたな」

 

「そう、あれがイザベラの得意技。『瞬雷』……だったかしら」

 

「かっこいい名前……テレジーの『魔力小爆発』とか、『悪霊退散斬り』とは大違い」

 

 む、何だそれ。ダサすぎだろ。魔力小爆発、悪霊退散斬り? そのまま過ぎないか。流石だなテレジー。フォローができないぞ。

 

「は? 馬鹿にしてんの?」

 

「してるよ」

 

「あー怒った。怒りましたッ! 私のネーミングセンス馬鹿にするやつ許せませんッ!!」

 

「いやまぁ、百歩譲って、その名前でもいいと思うよ……けど」

 

「けど、なによ!」

 

「戦闘中に技名叫ぶのは、止めたほうがいい、と思う……。ちょっとカッコつけすぎ、というか。聞いてて恥ずかしい……から」

 

「…………え?」

 

「……自覚なし?」

 

「技名って叫ぶものじゃないの? 小説でそう書いてたんだけど」

 

「それはフィクションの話……そもそも技名言ったら、相手に警戒される……非合理的」

 

「そ、そんなこと……マイケルは、どう思う!?」

 

「うーむ、かっこいいとは思うけど……テレジーが恥ずかしくないのなら、別に良いのでは? 周りの目なんて──」

 

「うわあああああああ!!!!」

 

「マイケルは……鬼畜……」

 

 ありゃ、褒めたつもりだったが。余計なことを言ってテレジーに恥を自覚させてしまったか。

 

「…………ちょっと待って」

 

 オーフィア殿の震え声が耳に入り自然と足が止まる。手をワナワナと震わせ落ち着き無い様子だ。なにか深刻なことでも起きたのだろうか。

 

「わたしたち、武器、ない。これじゃあ、イザベラと戦えないよ……?」

 

 …………あ、気づいていなかったんだ。てっきり拳で解決するのかと思ってたぜ。君はパワーファイターだからさ、俺よりも。

 

「三角ホーならあるぞ?」

 

「それで、どう戦えと……?」

 

 アホなの? みたいな目と顔をされてもな……武器のこと忘れる君に言われたくないよ。

 

「大丈夫よ。どうせ現れないから。いざとなれば拳で──」

 

「──あ」

 

「……どうしたオーフィア殿」

 

 気付けば俺たちは開けた場所に到達していた。突然横で一点を見つめたまま停止したオーフィア殿に釣られ止まる。オーフィア殿が見つめる視線の先を追う。

 

「わぁーいっ!」

 

「おねぇちゃん! もっかいやって!!」

 

「きゃはははは!!!」

 

 そこには、3人の子どもが1人の女性を囲んで微笑ましく遊んでいた。

 

「…………」

 

 フードを外し顔を晒して自慢の縦ロールを披露するイザベラ殿が、2人の子どもを同時に胴上げしていた。

 

「……イザベラは、結構、力持ちだったかも」

 

「なんで本当にいるのよ……」

 

 ふむ。

 

 ピンチだ。不思議なこともあるもんだなぁ。

 

 ──俺は思考を放棄した。

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