死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第四十七話 俺達、危機一髪ッ!!※自業自得では?

 

「…………ウ、ウゥ……」

 

「えー! もう終わりー!?」

 

「……カ……エッ、テ…………」

 

「次俺の番だよ! ねーちゃん!!」

 

「アブ、ナ、イ……デス、ワ……アアアァァ!!!」

 

 突如イザベラの周囲に雷が走る。恐らくあれが、彼女の魔力なのだろう。

 

「うわー!! びりびりだー、おねぇちゃんすごーいっ!」

 

「くそ、おいお前達、早く逃げろ!!」

 

 子どもたちを心配したテレジーの叫び。それを聞いた彼らは一様に顔を見合うと……。

 

「うわー! 貴族だ! 逃げろ!!」

 

「…………あ、うん……早く逃げなさい……」

 

 そっちか……。イザベラ殿の雷じゃなくてテレジー見て逃げるのか……不憫だ。

 

「ウウ、ア、アアアアアアア!!!!」

 

 叫び声を上げたイザベラ殿は虚空に手を伸ばす。すると魔法陣めいた幾何学模様が浮かび、その中から紫雷を纏った直剣が出てくる。いかん、憐れむ暇はないな。

 

「早速のお出ましね……準備はいい? 2人共」

 

「いや、待ってくれテレジー。だから俺たち、何も武器を持っていないぞ」

 

「素手……だよ?」

 

「なによ、拳があれば…………あ。私、戦えないんだった」

 

「アガアアアアアア!!!! コロ、ス……コロスゥウウウウ!!!」

 

「きゃああああああ!!!!」

 

 女性陣の悲鳴とともに紫雷の斬撃波が襲い掛かる。反射的に屈んだことで躱せたが、次からはこうは行かないだろう。目視で確認してからの回避じゃ間に合わない。勘で避けるしか無い。

 

「……っ、マイケル! 三角ホー、貸して……!」

 

「お、おう。分かった──ほらッ!」

 

 背中に背負っていた、農家には欠かせない片腕的存在。だがこの場においては非力以外の何物でもない存在に、俺たちの命運は預けられた。

 

「やってみせろよ、オーフィア殿ッ!!」

 

「ふふ……どうとでも、なるはず!!」

 

「さ、三角ホーでッ!?」

 

「──はぁっ!!」

 

 低く地面に這うように三角ホーを構え、勢いよく突撃するオーフィア殿。

 

 バキィン。

 

「──折れたぁ……!?」

 

「ジャ、マ……デスワアアアアアアア!!」

 

「うわぁ……!?」

 

 正面から雷の剣がぶつかり抵抗する間もなく折れた三角ホー。

 

 そして、オーフィア殿は呆気なく倒された。

 

「流石オーフィア殿。こんなときでもエンタメ心を忘れていないとは……俺も負けていられないか」

 

「いや待て待て!? 今めっちゃピンチだからッ!! 思考を止めないで戦ってッ!!」

 

 む、それもそうか。…………はははは。

 

「アア、アアアァァァア!!」

 

 鋭い踏み込み、そして急接近からの雷を纏う一閃。飛び込むように横へ体を投げて回避する。続けざまに放とうとするイザベラ殿に今度はこちらから接近。近接戦を仕掛ける。

 

「シュ、シュッ!!」

 

 振るう拳は虚しく剣の峰で全てはたき落とされ、クロスレンジすら優位を保たせてはくれない。この前の時とは動きのキレが違う。魔法による身体強化、だったか、それを使用しているのだろう。

 

 こりゃ参ったな。

 

「テレジーッ、無理だッ!! 俺、死んだッ!!」

 

「お願いだから諦めないで今から支援するからッ!!」

 

 爆ぜろ──テレジーが手を前に勢いよくかざすと、小さな火球が豪速球でイザベラ殿に向かう。

 

「うぉっ!?」

 

「っ、マイケルっ!!」

 

 直撃の直前、剣の柄頭で肩を引っ掛けられ体の位置が入れ替わる。

 

 戦い方がうまいな……だが。それだけだ。

 

「おらッ、これでも喰らえッ!!」

 

 背中から襲う焼けるような痛みと、激しい爆風。飛ばされる体の勢いを体に乗せ、イザベラ殿の胸骨目掛け膝蹴りを放つ。

 

「……はさみ撃ち……!」

 

「ガ、アアアアアアア!?!?」

 

 ダウンから復帰したオーフィア殿による背中への飛び蹴り。アドリブの効く人だ、咄嗟に合わせてくれるとは思わなかった。

 

 だがイザベラ殿は僅かに狼狽えたもののすぐに体制を戻し、直剣を地面に突き刺し紫電を周囲に張り巡らせる。危なげなく退避した俺達は再び距離を置くことになった。流石に分が悪いな。俺達の攻撃手段は近接戦闘しか無い。遠距離はイザベラ殿のレンジだ。テレジーの魔法頼みにするわけにもいかん。どうにかして近づかなければ。

 

「マイケル」

 

「む、なんだ?」

 

「わたしたち……相性、ぴったり。体の相性も──」

 

「うむ、息ぴったり、だったなッ!!」

 

「死ねッ、死ねぇえええッ!!!」

 

 オーフィア殿の挑発にまんまと乗った、怒りに燃えるテレジーの魔法が炸裂。バスケットボール大の火球が次々とイザベラ殿に飛翔する。

 

「ナメ、ルナァアアアア!! デス、ワァアアァァァアアアア!!」

 

 直剣を引き抜いたイザベラ殿は、剣に手を這わせ刀身を撫でる。

 

「ちょっ、それは反則でしょっ!?」

 

「まずい……マイケル、下がって……!」

 

「お、おう!」

 

 一歩下がり、代わりに2人が前に出て見たことのある防御障壁を展開する。イザベラ殿な事を知ってるいる2人だ、彼女が何をしようとしているのか分かったのだろう。一体何が起きるというのだ。

 

「シ、ネェェエエ!!!」

 

 直剣に纏う紫電はいつの間にか青に変化していた。剣を上段に高く構えると、目にも止まらぬ速度で振り抜いた。

 

 ドォオオオン!!! 

 

「こんな、街中でやることじゃないってッ!! 分かんないのかなあの馬鹿はッ!!」

 

「城で、放つくらいだよ……! やるに決まってるよっ!!」

 

 凄まじい衝撃と光の嵐が荒れ狂う。障壁によって防がれているはずなのに、優秀な魔法師2人で守られているのに、今にも破られかねないプレッシャーが襲い掛かる。まるで攻撃型ゴーレムに魔力の奔流を放たれたときのようだ。

 

 青電の爆流が収まる。その直後青電を纏う直剣を携えたイザベラ殿が2人に肉薄した。

 

「魔穿っ……孔…………」

 

 テレジーの必殺技。掌底を腹に吸い込ませ相手を吹き飛ばす奥義。やって来るのが分かっていたとばかりに振るってみせ、見事命中させる、が途中で掌底は失速し『へにゃ』っと緩く当たる。

 

「グハアアッ!!」

 

 だがイザベラ殿は勢いよく吹き飛ばされ家屋の壁に激突。握りが甘くなった手元から直剣が離れ、それをすぐさま拾うオーフィア殿。

 

「テレジー! 無茶するなッ!」

 

 ふらっと崩れ落ちそうになるテレジーを支えようと駆け出す。だが持ち直し自らの足で踏ん張るテレジーは、不思議そうに俺を見つめる。

 

「え? あ、うん……ありがと……?」

 

「……む、どうした?」

 

「いや、さっきオーフィアに『技名叫ぶの恥ずかしい』って言われて……」

 

 あぁ……そういう? それで威力半減したってこと? 可愛いやつかよ。

 

 ぐったりとした表情で力なく壁に背を預けるイザベラ殿。俺達はイザベラ殿を囲み警戒しながら近付いていく。これで何とか立場は対等になった……のか? 

 

「……終わり、だよ」

 

「色々聞きたいこと、聞かせてもらうわよ。イザベラ」

 

 恐る恐る声を掛ける2人。しかし返事はない。身体強化をしていたはずだから、この程度で息絶えるとは思えない。気を失っている訳でもない。無視されているのか。

 

「コロ、ス……ヨロイノ、オト、コ……マイ、ケル……コロス……!」

 

「残念だけど、貴方には無理よ」

 

「ドコ、ダ……ドコダアアアアアア!!」

 

 イザベラ殿は頭を抱えて絶叫したかと思うと、喉を抑えながら蹲る。蹲る直前イザベラ殿の喉元に……黒いチョーカーが見えた。あれがイザベラ殿に影響を与えているのか? 

 

「ゥグ、グゥァウアアアア!!」

 

「イザベラ!!」

 

「ヨル、ナァアアアア!!」

 

 助け起こそうと近付いたテレジーを跳ね飛ばすと、上体を起こしてからふらふらと立ち上がる。

 

「オマエモ……オマエラモ……コロス、コロスコロスコロスコロスコロススゥウウウ!!」

 

「っ!!」

 

 戦闘で忙しく、その顔を間近で見たのは初めてだった。

 

 やや垂れ目だが線の細い印象を受ける顔つき。髪の色とは違い青い色をした瞳。平時であれば美しい大人の女性といった感想を浮かべるだろう。

 

 だが、その目つきの鋭さ。殺意以外の感情を持たない純粋な視線は刃以上の凶器を作り出し、最早その様は狂気と表する他無い。

 

 再び悶えながら黒いチョーカーを押さえると、見覚えのある灰の粒子へと姿を変え消えていった。

 

「捕まえられなかったね……」

 

 しばらくの沈黙の後、オーフィア殿がてこてこと歩いてきてなんとはなしに会話を投げかける。

 

「そうね……けど、今の装備じゃ難しいわよ。死ななかっただけマシ、って思っておきましょう」

 

「そうだなッ!! また今度頑張ればいいのさッ!」

 

 うむ。仕方がない。そもそも無出で戦闘になりかねん任務を続けたのが間違い。そして、それは誰のせいでもないのだ。

 

 灰の粒子は、リンウェルの時と同じく城の方へと消えていった。あの城に黒幕がいるのは間違いない。イザベラ殿のような強力な『駒』を簡単に派遣できる存在だ。これからはより一層の警戒をしなければならない。

 

 迫りくる強敵。強大なな黒幕の存在。俺達の戦いはまだ、始まったばかりだと思い知ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ていうか、ここに、マイケルいるよね……?」

 

「鎧の姿しか知らなかったんでしょ……馬鹿だから、あの子」

 

 そして、イザベラ殿がどんな人物であるかを思い知ったのだった。

 

 

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