死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが 作:ストロング西岡
「つ、つい、つい、つつつつつ──」
「着いたよ、マイケル」
「おうッ」
クレイトン、アリシア兄妹の店にはこれで二度目の来訪になるな。外見の不気味さからは想像ができない綺麗な店内のギャップにやられたのも記憶に懐かしい。うむうむ。良い店だ。
オーフィア殿はアリシア殿と魔道具の作成のため何度か訪れたいるはずだ。慣れた様子でドアノブに手を掛けている。頼もしい限りだ。
「では入ろうか!」
「ちょっ、ちょっと待って心の準備が──」
「──い、いらっしゃい! 皆さん!」
「ぎゃああああ!!!」
「きゃあああああ!?!?」
「いっ、たぁ…………っ」
オーフィア殿がドアを開けようとした瞬間に扉は開きアリシア殿が出てきたかと思うと、テレジーは驚いて絶叫しそれに驚いたアリシア殿も絶叫。突然の開扉によって頭を強打し痛みで悶えているオーフィア殿。それを眺めるフルアーマー男の俺。
何だこれ。あと、何だこれ。
「ア、アリシア……さん……お、お久しぶりです、わ……?」
「テ、テレジー、も…………?」
アリシア殿は腰まで伸びる灰褐色の髪を一本に纏め、動きやすさを重視した綺麗な作業着を着ている。心なしか真紅の瞳も輝きを増し、袖を捲って露出した肌の血色は良く健康そうに見える。前見たときは髪もボサボサで、格好もパジャマで汚く不健康そうな見た目だったと思うが。
あとテレジー。動揺しすぎだ。イザベラ殿みたくなってるぞ。
「わたしもいるよ」
「俺もいるぞっッ!」
「オーフィアさんは2日ぶりだよね。マイケルさんはお久しぶりです」
「今日もかわいいね。アリシア」
「はいはい……オーフィアさんも綺麗ですねー」
「頬に汚れ付いてる……もしかして一昨日からずっと頑張ってくれてたの?」
「……うん! もう少しで試作品ができそうなのっ!!」
「そっか……わたしのために、ありがとう」
「あの……手は、あっ……んぅ、くすぐ、ったぃ、からぁ……!」
「ふふ……最近、アリシアの弱いとこ、分かってきた……ほら、こことか」
「んっ、あ……だ、だめえ……ぁ、ん……!」
バシンッ!
「痛ぁ!?」
「いかがわしいことすんなッ! この色欲魔ッ!!」
凄いな……腕を撫でただけで一瞬にして虜にするとは。オーフィア殿の力量は本物だ。俺も見習わなければ。
……いやどこで使うかと聞かれたら、そりゃ、なぁ? 言わせんなよお。
「おーいアリシア! お客さんを店先で待たせるなよ──って、オーフィア! お前、また妹を誑かしに来たのか!?」
「に、兄さん!!」
「おぉ、妹よ……俺が絶対に守ってやるからな!」
「誑かすなんて……失礼な」
「お前が先に失礼してんだよ」
アリシア殿はクレイトン殿の胸に飛び込みぎゅっと抱きつく。相変わらず仲いいな。
「武器の受け取りだろ? さっさと入ってくれ。人が集まっては敵わん」
クレイトン殿に先導され店内へと入っていく。フロントを通り横の部屋に通されると、そこはソファーが2つとテーブル1つおいてある小部屋だった。思ったよりも広いんだな。この店は。彼らの住む部屋や鍛冶場も含めるとなると、かなり豪華な家なのではないか?
ソファに座ると、横にテレジーとオーフィア殿が座る。向かいにはクレイトン殿が俺の正面に座る。む、アリシア殿は……いないな。どこに行ったのだ。
「ほれ、改造したブツだ」
クレイトン殿は部屋の角に置いてあった銃を手に取り、それがこちらへと差し出される。ふむ、要望通りだ。これなら俺が手を加える必要もないだろう。
「弾は受注生産にしたい。素材があまり無くてな」
「それで構わない」
「ひと通り試してるから問題はないはずだ。何かあったら言ってくれ。……で、これがテレジーの大鎌何だが」
「は、はひっ!」
「……おーい、アリシア。早く持って来い」
「……うん」
小部屋の外でひとりもじもじしていたアリシア殿がゆっくりと歩いてくる。なるほど、テレジーの大鎌を取りに行っていたのか。
「これ……連結部は補強してある。だから、前みたいなことには起きないと思う。連結したまま剣槍みたいにも扱えるようにもしておいたよ」
「う、うん……」
「……その、テレジー!」
「は、はいっ!?」
いきなり声を上げたアリシア殿に驚き手に持った大鎌を抱きかかえて震えるテレジー。アリシア殿も挙動不審で目が泳ぎまくってる。
なんかあれだな。小動物と小動物の小競り合いみたいだな。
「ごめんなさいっ!!」
「……え…………」
「私の設計ミスだった……アダマンタイトで作られた曲剣と棍棒部の強度に対して、変形機構の強度が足りていなかった。そこまで配慮が足りてなかった」
俯くアリシア殿の表情は見えないが、声音からどんな顔しているのかは想像がつく。
「鍛冶師としてやってはいけないことをした……あんな武器じゃ、信頼してくれるテレジーを裏切るだけ」
「……そんなことないわ。あなたの武器はいつだって私を助けくれたもの」
「違う……違うの。もしかしたら、私のせいでテレジーが……!」
「あのね、アリシア」
両手でアリシア殿の顔を包むと、ぐいっと顔を上げさせる。
「私はそんなので死ぬほど弱くないわ」
「で、でも……」
「いつも自信はどうしたの。貴方の大鎌への愛は嘘だったの?」
「それだけは絶対にない!! 大鎌は神!!」
「ならもっと自信を持ちなさい。私は貴方を頼りにしてるの。その程度で失われる程度じゃないくらい」
「……テレジー…………怒って、ないの……?」
「……怒るわけないじゃない。むしろ…………」
「……え?」
「……その、だから、これからも私の武器を作って欲しい」
……できれば大鎌以外の、と小声で付け足すとテレジーはアリシア殿に微笑みかける。うむ、やはりテレジーは笑顔が素敵だ。
「うん! 分かった! これからも凄い大鎌作るね!!」
「あ……うん。よろ、しく…………」
「よろしくねっ!!」
最早死刑宣言だな。がっくりと肩を落としたテレジーの背中から愛週が漂ってる。性能自体は悪くないんだけどな、アリシア殿の大鎌。
慣れだよ慣れ。……俺は使わないけど。
まあでも。アリシア殿もさっきまで暗い顔から変わって明るくなってくれて嬉しい。あの時から随分と気にしていたみたいだったから、また活気あるアリシア殿を見れてよかった。
「あ、オーフィアさん! 魔道具の事で聞きたいことがあるの。ちょっといい!?」
「うん。いいよ──ちょ、まっ……引っ張らないで……!」
オーフィア殿が立ち上がるや否や腕を鷲掴んで部屋から出ていく。そうそう、あの勢いの良さがアリシア殿だよな。オーフィア殿が狼狽えるくらいの創作意欲だ。さぞ素晴らしい武器が出来上がるのだろう。それは、もう。
「しっかしあれだな……テレジー。まさかお前が友達連れてくるなんてよ。前までのあんたからは想像ができないぜ」
しばらくの沈黙の後、クレイトンはソファに深く座りなおすと懐かしむような声で思いに耽る。ふむ、確かに最初であった頃のテレジーはツンツンしていたからな。今はツンデレデレになってるぞ。
テレジーはチョロいなって最近は思ってる。
「まあ、昔は……昔。色々あったのよ」
「はじめてであった頃なんてぶっきらぼうで、口も利かねぇ、目も合わせねぇで酷かったよな」
「そんなときもあったわね」
良く考えれば俺と出会う前から2人は出会っているのだ。俺が知らないテレジーをクレイトン殿とアリシア殿は知っているのか。後で聞こう。
「む、テレジーは出会った時から魅力たっぷりだったぞ!」
「そ、そういう事聞いてんじゃないからっ!」
「お、こりゃ友達越えてボーイフレンドの方か? ませやがって、この〜」
「ませてないわッ! 年相応──というか、そういう関係でもないからッ!!」
「はっはっはっ」
「お前ぇは笑ってんじゃねぇよッ!!」
「ouch!?」
「……ん? なんだ、反応が…………気の所為か」
テレジーの放つ綺麗な回し蹴りが俺の尻を叩く。おほ〜、テレジーの蹴りは効くなぁ……。世界獲れるぞ。
『すんげぇえええええ!?!?!? 魔法、最ッ高ォオォオオオオ!!! 私、天才ぃいいいいいぁあああぁぁあ!!!』
『ふわぁああ……揺らさないでぇええええ…………!!』
興奮の雄叫びと小さな悲鳴が木霊する。全員が声のする方を一見し、視線を戻した。このときだけは俺達3人の意思が合わさった瞬間だと思った。
──無視しよう、と。