死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第五十四話 起こるべきインタラクト

 

「もう、訓練に行きたくないです…………人と会いたく、ないです」

 

 私が10歳になった頃。とうとう限界を悟った。

 

 10歳になると、今までは同期の間でしか無かった交流が変わり、他期の魔法師らと合流することになる。部屋も生活する場所も変わり、ちょっと豪華になる。移動できる場所も増え、自由時間も与えられ、ご飯も美味しくなる。悪いことなんかひとつもない。

 

 しかし、厄介なことに人が増える。圧倒的に増える……。

 

 私の噂は良くも悪くも、良いも悪いも関係なく広がり、既に私の行き場をなくしていた。何かが変わると思い、今日まで我慢して過ごしてきた。だが、その希望がいともたやすく、私に関係のないところで燻った悪意によって、破られ。結局何変わらなかった現状に。私は全てに嫌気が差した。

 

 私が『何か』を変えようとしたのではない。『何か』が、『誰か』が。周囲を変えてくれると望んでいた……そんな私の弱い心を知ったからだ。

 

「なら、休むと良いさ。僕は一向に構わないよ」

 

「でも、それじゃ……」

 

 でも。なんだかそれでは、自分が、まるで。惨めで情けない自分を肯定しているようで嫌だった。ただ自分の思い通りにならないことから目を背け、楽な道に逃げようとしているだけなのではないか。本当にそれは、自分のためになるのか。

 

「君の魔力量は随一だ。訓練の余地が無いとは言わないが、ある文献には魔力……魔法に関する事柄には、精神的構造及び心理的作用による影響が認められている」

 

「…………」

 

「つまりだね……」

 

「……ストレスによって、訓練を重ねても魔力量上昇が見込めない場合がある……ってことですよね」

 

「そういうことだ。よく勉強しているね」

 

 先生の難解な説明も、普段の勉強のお陰で幾分かは分かるようになってきた。魔法の勉強は楽しい。魔法は好きだ。打ち込めば打ち込む分新たな疑問が生まれる。組み合わせ次第で元は同じ魔法でも全く違う色を見せる。

 

 だが。先生の言っていることはもっともだが違う。私が言いたいのはそう言うことではない。

 

「僕も人付き合いは苦手でね。具体的な助言は出来そうにない…………そうだ、1つ。テレジーに頼まれてほしいことがあるんだ」

 

「なんですか?」

 

「ゴーレムの作成さ。灰の嵐の兆候から、今後魔獣の発生が予想される。下にいる彼らは武力に頼りないからね、迎え撃つ用心棒が欲しい」

 

「私、手伝う余地ありますか? それ」

 

「もちろんだとも。丁度今、着手しているのがその新型ゴーレムでね。君にはゴーレムの戦闘データ採取に付き合って欲しい」

 

 つまり戦闘試験。先生が作ったゴーレムと戦い、研究の一助となること。

 

「む、無理ですよ。私戦えないし……それに」

 

 先生は高名な魔術師であると同時に、腕の立つ魔法師でもある。戦うのなら貴方のほうが適任なのではないか。

 

「──いや、君は出来る。僕が言うんだ、間違いない。そうだろう?」

 

 先生が自身に満ちた表情で私に問う。告げる。

 

 そうだ……私には出来る。先生が言うんだ、間違いない。

 

「──分かりました」

 

「うん。差し当たって君には戦闘指南用ゴーレムを貸与するよ」

 

 先生は席を立ち部屋の奥の書物を乱雑に捌けると、今までは見えていなかった扉が現れる。

 

 ギギギ、と鈍い動きで扉が開きホコリが舞う。その中から出てきたのは重々しい雰囲気とは打って変わって軽佻な存在が出できた。

 

「よろしくー」

 

「え、あ、あ、あ、あ、あ……うん」

 

「ヨピちゃんって呼んでねー。よろぴー」

 

「よろ、ぴー……?」

 

「僕の姪を真似たゴーレムだ。若者特有の、少々難解な言い回しをするが……役割は果たしてくれる。気兼ねなく接すると良い」

 

「ローちゃん、かびくさー」

 

「ろーちゃん?」

 

「僕のことらしい。全く可愛らしい名前だね。はっはっはっ」

 

 青色の瞳に青髪、緑のメッシュを入れた、カラフルなワンピースを纏う、派手好きな少女にしか見えない。背は同じくらいで童顔なゴーレム、ヨピちゃん。やや棒読みが目立つが、軽い調子で踏み込んでくるので、ちょっと押され気味。正直苦手だ。

 

「部屋汚なーい。ローちゃん。掃除しないとか、まじやばたにえんー」

 

「時間がなくてね。頼めるかい、ヨルフェルコ」

 

「りー。任しときー」

 

「わ、私もやります!」

 

「テレちょんはよきよき。ヨピちゃんに任せときー」

 

「て、テレちょん……ヨルフェルコさんの方こそ」

 

「ヨピちゃんで、よろー」

 

 椅子に無理やり座らされると、目にも止まらぬ速さでヨルフェルコ……ヨピちゃんは掃除を始めた。大事な書類が集まる箇所は手で、大まかなところは魔法で掃除し、あっという間に終わってしまった。

 

 戦闘以外にも掃除もできるのか。凄いな、私も出来るようになりたい。ヨピちゃんに後で教えてもらおう。

 

 ☆ ☆ ☆

 

「ごめん、ヨピちゃんって、何者……? 本当にゴーレム?」

 

「さぁ……説明された事以上のことは分からないわ。けれどいい子よ。気が利くし、優しいし」

 

「なんか……時代を先取りした言葉回しだよね……? ちょっと憧れるなぁ……」

 

「最近の若者は分からん。言葉は正しく扱わないとだな……」

 

「うーむ。どこか聞き覚えもあるんだよな……」

 

 ☆ ☆ ☆

 

「じゃ、今日はとりま終了って感じで、あとは好きにしてねー。ヨピちゃんはタピってくるねー」

 

「うん、またね。ヨピちゃん!」

 

 本日の鍛錬は終了。ヨピちゃんに稽古をつけてもらってから数ヶ月経った。最初は体を動かすのがやっとで何度も心が折れそうになったが、ヨピちゃんと献身的な指導と応援、支援によってなんとか今日までやってこれた。どんなに辛い稽古内容でも、ヨピちゃんがいたから乗り越えることができた。

 

 先生は私ならできると言ってくれたが、恐らくヨピちゃんの指導が無ければ私は途中で投げ出していたと思う。それくらい私はヨピちゃんに感謝している。

 

 ちなみにヨピちゃんの『タピってくる』というのは、魔力を充填してくるという意味だ。タピオカミルクティーのことではないという。

 

 まぁ、そもそも私はタピオカミルクティーを知らないのだが。

 

 いつものように私は図書館に足を運ぶ。嘗ての王アスキアが各国から研究者を募り研究を支援し、その研究資料が全て収まった図書館。恐らく世界で一番魔法について詳しく学ぶことができる場所だ。もちろんそれ以外にも生物学、物理学、数学、歴史、地理、考古学、天文学、文学小説、絵本等様々な書物が保管されているという。

 

 ……オーフィアにもよると、エロ本もあるという。特に百合本の蔵書数は……ってそんなことはどうでもいい。代々百合本の位置を伝える一派が存在している事実もどうでもいい。

 

 最近ハマっていることは、自分オリジナルの魔法を作ることだ。魔力というのは所有者によってその性質を変えるという。そのことから、ある程度物理法則に則っていれば、その上位に位置するという『理力法則』が作用するとのこと。『理力法則』が作用することで、通常の魔法では起こせない奇跡を発現できるという。

 

 つまり……現実的な範囲でなら魔力でなんとかなるかも。ということ。

 

「…………はぁっ!!」

 

 すぽん、という空を柔く破裂する音。図書館から持ち出した本を確認し、自分用のメモ用紙に書き留めていく。ここは図書館から少し歩いたところにある、元は兵士たちの修練所。今は魔法師達の訓練に使われている。そこの一室を借りて私は研究を始めていた。

 

「…………はあぁっ!!」

 

 ばんっ、と先程よりも大きな破裂音。だが求める威力には達していない。何かが足りない。理論は合っているはずなのに。

 

「……気合? …………気合が足りないのか」

 

 もっと言えば瞬間的に伝播させる魔力量が足りない。且つ腕から発生する運動エネルギー量も足りない。エネルギーに関する2つの力が私の構築した式に求められる水準に達しておらず、十分な効果が現れていないということ。

 

「…………そうだ」

 

 名前……名前を付けよう。ある書物によれば、ペットという愛玩動物に名前を付けることで、より一層深い愛情を注ぐ事ができるという論文があった。なんて下らない研究だと思ったが、もしこれで私の魔法が完成してしまい証明できてしまったら、もう馬鹿にできないな。

 

「手のひらアタック……とっつき。魔力掌底とっつき……」

 

 イマイチだ。もっと可愛く、チャーミングで……親しみやすくて覚えやすい名前がいい。

 

「……どっぷりお腹爆発ッ!!」

 

 バンッ! ……今のは良かった。求める威力に近い一撃だった。特に『どっぷり』の思わず言いたくなってしまう語感から『お腹』の流れが素晴らしい。この路線なら行ける! 言葉の意味を繋げそれすら力にするのだっ! 

 

「爆発的メタモルフォーゼッ!! ……安楽死製造攻撃ッ!! さよならグッバイデイズッ!!」

 

「…………あんた何してんの」

 

「あ、ばはばば、だだ、だただ、ただ、だれぇええ!?!?」

 

 突然の来訪者に驚き情けなくしどろもどろに返答してしまう。その時の、半開きの扉から覗くエリナの呆れ顔が妙に記憶に残った。

 

 

 

 

 

 

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