死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが   作:ストロング西岡

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第八話ッ 女王様ッ!不出来な私にお仕置きをッ!!※世界観変わったか?

 

「Oh my gosh!!」

 

 背後から蹴りを受けたマイケルは、そのまま吹っ飛んで壁に激突した。ずるずると滑るように落ちて地面で蹲る。しかし横顔から見えるその表情には、恍惚としたものを浮かべていた。気持ち悪っ。

 

「て、てめぇ……よくもやってくれたなぁ!? 不意打ちとか卑怯だぞ!!」

 

 天井から少しやつれた様子のガリッパが降ってくると、威勢よくマイケルに言い放つ。

 

 ……よく生きてたな。背骨ガッツリやられてたろ。だって変な音してたよ? 鳴っちゃいけないタイプの音が。

 

「ふむ、まだ懲りぬか……よもやドMか?」

 

 マイケルがそう言うと、ガリッパは怒り心頭といった様子でずかずかと近付いてくる。

 

 あとマイケル。帰ってきた理由はお前に殴られたいからではないと思うぞ。単純に私の体目当てだと思うぞ。

 

「誰がドMだとッ!? オレはドSだ!!」

 

「いや、ツッコミどころそこじゃないだろ」

 

 お前がドMだろうが、ドSだろうがどっちだっていいんだよ。マイケルも本当にお前がドMだと思って言ってないんだよ。もっと他に怒る事があるだろ。

 

「その口ぶり……いつまで持つかな?」

 

「な、何を……お、おい、やめろ離せッ!!」

 

 意味深に呟くマイケルに素早く組み伏せられるガリッパ。先程やられた事を思い出し、マイケルの腕の中で激しく暴れ出すも一向に拘束が解かれる兆しが見えない。

 

 全く振れないその驚くべき体幹と筋肉を持つマイケル。やはり筋肉は大事だ。この世で必要なのは力、つまり筋肉。この弱肉強食のご時世、もやしのような手足では生き残れない。体も心も鍛えて、硬い装甲で身を包み新たなる時代のため精進するのだ。これに懲りたら、お前も鍛えるんだぞ。ガリッパ。

 

 ──違うッ! 

 

「……それ、どうするつもりなの?」

 

 ガリッパの腹を腕と一緒に抱え、完全に拘束状態となった彼。依然として何をしでかそうとしているのかが分からず、疑問を口にする。

 

「俺に1つ、考えが有ってだな……是非テレジーに協力をお願いしたい」

 

「……はぁ、それで?」

 

「ほら、よくあるだろ? とある組織に潜入した、ピチピチのスーツ着た女スパイが囚われて、男たちにいいようにされちゃうやつ」

 

「いやそんなの知らないわよ」

 

「『私に拷問は効かない。痛みに屈しないぞ』って言うけど、どんどん快楽に負けちゃうやつ」

 

「いや、そんなの知らないって」

 

「『くっ、殺せ!』とか、『悔しい……! でも、感じちゃう……!』とか、大体そんな感じだ」

 

「だめだ、例え話が1つも分かんないッ!?」

 

「つまり、痛みには耐えれても快楽には負ける。それが悲しき人間の本質だッ!!」

 

「…………」

 

「……じゃあ、頼むッ!!」

 

「何で『説明しました!』見たいな面してんの? 私1つも理解してないんだけど!?」

 

「離せっつってんだよ! オレは女に蹴られて喜ぶ趣味はねェ!!」

 

「ちょっと待て何で私が蹴ることになってるの!? そして何でお前理解できてるんだよッ!!」

 

「安心しろ! お前の仲間皆まとめてテレジーにケツをしばいてもらう! 一人ぼっちにはしない!!」

 

「オレはぼっちじゃねえ!!」

 

「いや蹴らないしッ!! あとお前はいつもツッコミどころが違うんだよッ!!」

 

「さぁテレジー、一思いにこいつのケツにぶちかましてくれ!! 強烈な一撃をッ!」

 

 マイケルは必死にそう懇願してくる。いや必死ってなんだよ!? 

 

「前提がおかしい! 私が蹴って何になるのよ!!」

 

「テレジーの蹴りを浴びた時……俺は天啓を得た」

 

「は?」

 

 マイケルは穴の空いた天井から曇天を見上げる。なぜか神妙そうに言葉を紡ぐ。……あとで塞げよ、お前。

 

「数あるSM物を見てきた……。しかしそのどれもが俺を満足させるもの足り得なかった……」

 

「……?」

 

「だが今日、もっと言えば数分前。テレジーに足蹴にされたとき、俺は今まで足りなかった啓蒙が補填される感覚に酔いしれた……それは有頂天そのもの、いや絶頂。そう、俺は正に『絶頂』したのだッ!!」

 

 マイケルは大声で宣言すると、体をくねくねと身じろぎし快感に震えた。

 

「キモッ!?」

 

「テレジーの魅惑の足技で、こいつを手籠めにするんだッ!!」

 

「嫌よッ!!」

 

 嫌、嫌ッ!! 絶対にやらないッ!! 

 

 マイケルから遠ざかるように後ずさると、壁によしかかる。震えを誤魔化すため体を擦る。キモッ、マジキモッ。

 

 ふざけんなッ。そんなことで手籠めにできる訳無いだろっ。鎧着たマッチョが男捕まえてそこに私が蹴りを放つ、とか構図が異常過ぎるッ。変態かッ!! 

 

「テレジーはこいつらに良いように弄ばれて満足なのか!? 悔しくないのか!?」

 

「っ……それは……仕方が無いことよ」

 

「それは違うぞテレジーッ! 対等な契約というのは互いが助け合い、双方に同じ利益が有って成立するものだ。君のはただの契約とは名ばかりの、奴らの奴隷だッ!!」

 

「……それでも、生きるためには必要なことでしょッ! 私が悪いっていうの? 必死に生きて、何かに縋ることで生き延びて、それの何が悪いの!?」

 

「それも違う! 今まで好き勝手された分、こっちも好きにさせてもらうだけだッ!! それこそが『対等』な契約だ!! そんな自由も保証してくれないなら、そんな契約捨ててしまえッ!!」

 

「そんなこと、言われても……いや待て私は別に人の尻を蹴るのは好きじゃないッ!!」

 

 しかし、革命派の存在がなければ私は今日まで生きてこられなかったのも事実。だから簡単に出せる結論はない。でも私はもうなにからも逃げたくない。それは革命派の連中であったって同じだ。私が今やるべきことは……ここから、挑むことなのではないか。

 

 だから……そう……ああ、でもどうすれば……。えー……蹴らなきゃいけないのか? それしか無いのか? 

 

「考えるより先に行動だ! それに何があっても俺が守る!!」

 

 マイケルがその言葉を発したとき、頭の中のピースがはまった音がした。逃げないためには進むこと。挑み続ける覚悟が必要だ……そう彼は言っているのだ。

 

 言っているのだ……そうだよな!? 

 

「さぁ、もっとケツを突き出せッ! テレジー、今だッ!!」

 

 多分手段は間違えてるし、もっと考えるべきことがある筈だ。

 

「……あっー、もうッ!!」

 

 ま、もう始まってしまったし。どうにでもなれー。責任は全てマイケルへ、ゴー!! 

 

 ──私は、思考を放棄した。

 

「ああぁぁああんん♡♡♡」

 

 ガリッパの歓喜に震える嬌声が、世界を支配した。

 

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