死中に活ッ!笑えよドラゴンッ!!※転生先が絶望的なんだが 作:ストロング西岡
「オレの名前はバーナード、歳は16。バーニィとか、まぁ好きに呼んでくれて構わないぜ」
「じゃあガリッパで」
「もちろん構いませんよ姉貴! 何でそうなったかはわかりませんが!!」
あの騒ぎから数分後私達は冷静さを取り戻し、まずは自己紹介をする運びとなった。
私が蹴りを放ったあと、ガリッパの態度が急に軟化。犬のように謙って接してくるのが凄く気持ちが悪かった。ほんと、気持ち悪かった。何とか言って聞かせ、まだマシになったところで落ち着いた。それでも依然として気持ちが悪いため、せめて切っ掛けとなった出来事と、前までの彼だけでも忘れようと決めた。仕方無いよね、人間って嫌な記憶ばかり覚えてしまうから、意図的に消していかないと。
折角仲良くなったのだ、自己紹介といこうじゃないか──というマイケルの一言でまずはガリッパから始めることになったのだが、そもそも前提がおかしい。仲良くなってないけどね? 今は尻を蹴って蹴られての仲だから。いやキモいな。
「なにっ、嘘だと言ってよバーニィ!!」
「自分の名前に嘘はついてねーよ……」
マイケルには軟化したはいいものの、私に接するような態度ではない。何故だろう、私よりマイケルのほうがお前をボコボコにしたというのに。やっぱお前あれだろ、ドMだろ。……待てよ、それを認めてしまえば、私の『魅惑の足技』とやらを認めてしまうことになるのか? 嫌だなぁ……それ。
ガリッパは軽く自己紹介を済ませると、彼の身の上話を始めた。
「オレの両親は過労で死んだ。残った3歳下の妹を養うために人から切手を奪ったり、殺したりもしてた」
「なんてこった……」
「……でも元々体が弱い妹は灰の病にかかっちまった。暫くは隠れて過ごしてたけど、隣人に見つかって結局焼かれちまった」
灰の病というのは、灰の嵐から撒き散らされる灰を短期間に大量に吸い込んだ場合に発生する病のことだ。灰の病に罹ると体中に斑紋ができ腫れる。その腫瘍から発生する高熱に数ヵ月間魘されやがて動くこともままならなくなり、最終的にそこが破裂して出血死する。回復方法がない罹れば死ぬしかない流行病だ。
質が悪いのは出血した血に触れると、自分にも感染するリスクがあることだ。そのため斑紋を発見した場合は、すぐさま焼却処分をする。そのため灰の病は主に子供や老人など体が弱い人が感染しやすいと言われている。
放っておけば自分にも罹患するリスクのある病。他人だろうと関係なく見つけ次第殺すのが一番。ガリッパの妹も例に溺れず始末されたのだろう。
正義気取りの連中が、泣き喚く遺族や友人、恋人を押し退け病人を焼き殺す様を、何度か見たことがある。流石に見ていて心地の良いものではなかった。必要犠牲と知りながら、それでも堪えるものはある。彼の場合それが何歳の時に起こったのかは分からないが、よくぞ耐えたものだ。
「オレがレジスタンスに入ったのは飯に困ってたからだ。もう守るものもなかったからな。今は革命派に入ってるが、正直革命なんかに興味がなかった。今レジスタンスに入ってるやつの大半はそんな感じだぜ」
レジスタンスにいれば世直しという大義名分のもと、かき集められた食糧にありつける。その日を生きるために必死なやつの寄せ集めがレジスタンスの実態。実際それで効率よく人員を集めることに成功しているのだから、クロードの組織運営における手腕には驚かされる。
「ガリッパ、お前大変だったなぁ……!」
「別にオレは大変じゃねぇよ……こんなの普通だ」
「普通なんかじゃないでしょ。この街で過ごしていれば隣人や大切な人であろうと簡単に死ぬし、皆苦労してる。けれどそれを普通と言ってしまうのは、この環境に麻痺しているからよ」
「でも姉貴はもっと────」
「──うるさい」
言葉に被せ、ガリッパの発言を止める。察したのかガリッパ閉口し、そのことに私は余計イライラしてしまう。全く面倒な女だよ、私は。
「う、うぅ……」
「お、おい……男が泣くなよ……ほらこれで涙拭けよ」
気を遣ったガリッパは手持ちのハンカチを渡した……使い古されているが、大切に使われているのが分かる。親か、それとも妹からのプレゼントなのだろう。貧民街ではあのような上等な生地は大変珍しい。ガリッパは比較的恵まれた環境だったことが伺える。
「ううっ……お前いいやつだなぁ……」
マイケルはありがたい様子でハンカチを受け取ると、バケツのような鉄兜外し、くりくりお目々をゴシゴシ擦った。
あ、かわいい。やっぱりいい顔。すきぃ…………違うッ!
「あんた結構歳いってんだな」
「む? ガリッパと10歳しか変わらんぞ」
「マジか、老け顔だな」
「髭が生えているからだろうな。剃れば年齢相応になるぞ」
「髭なんか無くて良いだろ。剃ればいいんじゃねぇか?」
「ふーむ。髭を伸ばしてから大分経つからな……そろそろ剃っても──」
「だめっ、剃っちゃだめっ!!」
「え? 姉貴?」
「絶対だめっ!!」
「お、おう……そのつもりはないから安心してくれ!!」
ほっ。良かった。もうまろやかキューティーフェイスが見れないのかと……一安心ね。
──違うッ!! 私はさっきから何を考えているッ!?
☆ ☆ ☆
「しかし、ガリッパの話を聞いて、何もしないわけには行かないな」
「はぁ? 何するってんだよ」
「今すぐレジスタンスとやらにカチコミだッ!!」
何やら興奮した様子のマイケルは、素っ頓狂なことを言い出す。
カチコミだと? 革命派に手を出すどころか弓引こうとしてんじゃねぇか。
革命派は20年程前に存在していた、アスキア帝国軍の出身者が多く在籍している。言わば武闘派。そんな連中にたった3人で……ガリッパは戦力にはならなそう。実質2人でどうにかなる訳が無い。
「お、おい! それはやべぇって! いくらオレがいるからってどうにでもならないことはあるぜ!?」
「貴方に期待してない。自分をなんだと思ってんのよ」
下っ端のくせに、自分に価値があると思うな。慎ましく生きろ。せめて組織に一言言える立場になってから発言しろ。
「ん? ガリッパが居れば顔パスでボスのところまで行けるだろ?」
「行けねぇーよ! オレ下っ端なんだよ!!」
「さっきの自信はどうした。貴方自分で言ってて恥ずかしくないの?」
「あぁん♡恥ずかしいですぅ♡♡」
「キモいわッ!!」
「武者震い……気合いバッチリだな! それではレッツゴーだッ!!」
「どう考えても違うだろッ悪寒だわッ!!」
早速カチコミだ──と意気込むマイケル。元気だな……私は少々疲れた。お前らが来てからツッコミばっか。こんなに喋るのも久しぶりだし、今日は戦闘のあとに魔獣と遭遇するしで大変な目にあった。また今度にしてほしい……。
マイケルは私の方をチラッと見ると、少し悩まし気に腕を組むと唸り声を上げる。
「うーむ……テレジー。魔力、とやらはどの程度で回復する?」
「……? そうね、3日くらい経てば元通りになるけど……」
「ではその後行くとしようッ」
「いや、私は行くとは言ってないんだけど!」
……今の私を縛り付けるものに決着を付ける必要がある。その一つが革命派との契約だ。逃げずに戦うことの第一歩を、いつか踏み出さなければならない。
せっかく逃げたくないと思えた機会を、マイケルが与えてくれたのだ。機に乗じて事を起こすのも悪くはないのか。
あー、なんか考えるの面倒くさくなってきた。いっちょやったるか。
「じゃあ……魔力が回復次第行きましょうか」
「姉貴が言うならどこまでも付いていきます!!」
ガリッパはそう言うとヘコヘコしながら私の足を舐めてくる。気持ちが悪かったので鼻っ面を鉄心入りブーツでぶち抜いておいた。そういうのやめろって言ってんだよ。
というわけで後日革命派レジスタンスのアジトに行くことになった。