Persona3 Temperance   作:人ちゅら

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※唐突に始まってなんのこっちゃ分からん、という方は先に https://syosetu.org/novel/113000/1.html を読んでいただくと、分かるかもしれませんし、更に分からなくなるかもしれません(無責任)

二年近く、まともに執筆できない環境にいたせいで、いざ書こうと思っても手が動かない体たらく。

あちこち書きかけのものがとっ散らかっていますが、ひとまず執筆を習慣化するために思いついたネタを書き殴っているだけだったりします。(なのであんまり説明しません)



#001 死んだ街

 間薙(かんなぎ)シン・23歳・私立月光館学園/養護教諭。

 

 大学で情報工学、機械学習を学んでいたあなたが何故「保健の先生」になったのかといえば、それは自分の時間が欲しかったから――有り体に言えば「面倒くさかったから」だ。

 二十一世紀初頭の日本の若者としては珍しく、生死を賭けた修羅場をくぐり抜けてきたあなたはしかし、就職氷河期を迎えたこの時代のあり方に、少々疲れていた。

 だからとある事業家の、職を斡旋しようという言葉に二つ返事で応え、この職に就いた。

 

 だがそれが正しい選択だったのかどうか。

 大学の友人らと夜遅くまで飲み食いした挙げ句、本数の少ないローカル線に駆け込み乗車をしたあなたが、新しい生活の場となる巌戸台(いわとだい)駅に降り立ったのは、同日23時58分のことだった。

 

 

――これはどういうことか。

 

 

 駅の改札を出た刹那、周囲の空気が一変する。

 かつての戦いの日々を送った、ボルテクス界のごとく。

 これは()を失った世界の空気だ。

 

 道々には、いかにも西洋風の――映画なら吸血鬼でも出てきそうな――黒い棺桶が立ち並んでいる。

 

 見上げれば満月にわずかばかり足らない月が、薄緑の空に黄色く輝いている。

 

 なんというところに招かれたものか。

 

 あなたは若ハゲの事業家を思い出し、思わず舌打ちをした。

 

 

*   *   *

 

 

 立ち並ぶ棺桶。

 静まり返った街。

 その中を、黒い粘液のような影が這いずり回っては、棺桶を取り囲んで撫で回している。

 

 物質界から切り離されたような光景だが、あなたにとっては然程の驚異でもない。

 この世界でたった五人しか覚えていない戦いの日々により、あなたの精神を金剛不壊へと鍛え上げられていた。隙あらば顔を見せる、かつての仲()たちの悪ふざけの方が、よほど酷いかもしれない。

 

 そんな余裕によるものか、あなたは街を散策することにした。

 これからここらで生活するのだ。街並みを知っておいて損はない。

 

 あるいは春先にしては冷ややかな空気に、心地よさを感じたからだろうか。

 ちょっとした驚きは、酔い醒ましにもちょうど良かろう。

 

 

 巌戸台駅の駅ビルは、いくつかのファストフード店。

 ファストフードの代名詞、ワイルダッグバーガー。

 鍋島ラーメン・はがくれ。

 定食屋・わかつ。

 なんとなく利用者層が想像できそうなラインナップだ。

 

 流石にこの時間ではどこも開いてはいないわけだが。

 

――そういえば〆のラーメン食ってないなあ。

 

 などと益体もないことを考えながら、携帯電話(ケータイ)を片手に死んだ街を歩いてゆく。

 黒い粘液のようなものたちは、あなたから逃げるように建物や自販機、消火栓、ガードレールや道路標識といったものの影へと退いていった。

 

 

 どういった生態のものなのか。

 悪魔(アクマ)ほど確固たるものでもなく、さりとてスペクターのような霧状の存在でもない。

 強いて言うなら映画『ブロブ』のような、粘体のモンスターだろうか?

 

 【アナライズ】をしてみても、ただ〈影〉(シャドウ)としか分からない。

 あるいは悪魔とは異なる、未知の生物(UMA)なのかもしれない。

 

 とはいえ敵対するでもなく、害があるわけでもない。

 世界中を見渡せば、あなたが見たことのない生物など山ほどいる。

 ()()もそうしたものの一種だろう。

 

 必要になれば、また調べれば良い。

 

 

 火照った身体には心地よかった冷ややかな空気も、身体が冷えればただの寒さだ。

 あなたはひとまず新居となるマンションを目指すことにした。

 




巌戸台分寮のモデルになったクレッセント(フランス料理店)、2021年にコロナ禍のあおりを受けて閉店してたんですね。
素敵な建物だったんだけどなあ。
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