タイトル通りです。
シャーレに届いた手紙の話

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ヒマリの遺書

 

 

 

 親愛なる先生へ

 

 

 

 

 最初に先生がこのお手紙をご覧になられた時、きっと、とびきり驚いた事と思います。

 この高度情報化社会であるキヴォトスならば、連絡を取りたければ、手元のパッドを操作してモモトークを使えばいいだけの事。まして、ミレニアムが誇る超天才病弱美少女ハッカーにして、電子の海を優雅に舞う神秘のヴィーナスであるこの明星ヒマリが、まさか古風にも手紙で連絡を取ってくるなんて。きっと天変地異のような驚きを感じたに違いありません。

 あるいは、この清廉なる高嶺の花であるヒマリからの特別な連絡に、既に胸を高鳴らせている最中でしょうか。その高揚は大変ありがたい限りなのですが、残念ながら今は、その気持ちは少し鎮めて頂けますようお願いいたします。

 

 

 手紙の形で連絡をした事には、もちろんちゃんと理由があります。

 一つ、今から告げる情報を、外部に流出する危険を一切排除して、先生だけに伝えたかったから。エイミなど信頼の置ける人からの手渡しか、ドローンで直接シャーレの先生の部屋まで届けられるか、それとも敢えて一般の郵便物に紛れ込ませるか。どのような形であれ、この手紙は、その時の私が取り得る最も確実な手段で先生の元に届けられた筈です。

 二つ、先生がこれを受け取る時と場所を、ある程度操作したかったから。この高度情報化社会は、天才清楚系ハッカーたる私にとっては、世界の全てを自宅の庭のように自在に操れる花園のようなものですが、ゆっくり時間をかける事だけは想定していません。手紙を出してから先生に届くまで、二日くらいは空けたかったのです。

 そして三つ──ここに綴った私の言葉が、先生の心の奥深くまでを、抉り抜いて欲しかったから。

 

 

 察しのいい先生の事です。この後に続く文章がただならぬ内容である事を、恐らく既に察している事でしょう。

 ですが、まずは落ち着いて、深呼吸をしてください。

 どうぞコーヒーでも飲みながら、ソファにゆったりと腰を沈めてから読んでください。

 人がいない静かな場所に行き、邪魔が入らない事を確認してください。

 溜まっている仕事があれば、それを片付けてからでも構いません。

 きっと、長くなると思いますから。

 どうせ今から焦った所で、とっくに手遅れなのですから。

 

 

 

 

 

 

 先生がこの手紙を読んでいる時。

 私、明星ヒマリは、もうこの世界にはおりません。

 月の綺麗な夜に、百合の花弁が音もなくそっと地に落ちるように。ひとりきり、静かに、自分の人生を終わらせた事でしょう。

 この手紙は、先生に私の死をお伝えするための、遺書になります。

 

 

 まずは先生にお願いがあります。

 決して、私を探さないでください。

 誰かに私について聞くことをしないでください。

 私についてを尋ねられても、知らぬ存ぜぬを貫いてください。

 

 

 誰にも私の死を知らせないでください。

 私の死を知るのは、キヴォトスでただ一人、先生だけ。

 そうあってほしいからこそ、私はこうして手紙をしたためたのです。

 

 

 先生は、私の事をよく存じているものと思います。

 ミレニアム創設以来、屈指の天才病弱美少女。

 歴史上ただ三人しか至れなかった最高位『全知』の学位を持つ、眉目秀麗な清楚系全能ハッカー

 ミレニアムの頭脳の粋ヴェリタスを統べる部長であり、一般学生であれば目にすることも叶わない高貴崇高にして儚き可憐な高嶺の花。

 総じて先生が抱く印象は──謎多き不思議ちゃん系天才病弱美少女、でしょうか?

 きっと先生は、私が『なんだか良く分からない人』であることを、とてもよく分かっているものと思います。捉えどころがなさ過ぎて、先生を拗ねさせてしまった事もあるでしょうか。

 

 

 もちろん、こうして自称をコロコロと変えてミステリアスな薄幸美少女を演じていた事にも、ちゃんとした理由があります。

 古来より、木を隠すなら森の中という言葉があるように。

 私の『病弱』という最も重い真実は、他の沢山の真実に覆われ、陳腐化し、ほとんど意識されなかった事でしょう。

 私の病気が相当に深刻化し、余命幾ばくもなかった事には、先生を含め、誰も気がつかなかったに違いありません。

 

 

 先生は私に、中々人前に姿を見せないミステリアスヒロインという印象を持たれていたでしょうが、その実私は、大半の時間を病院で過ごしていたのです。

 身体の内側はもうずたぼろで、免疫系はおろか、循環器官も満足に機能しておりません。本来なら適切に分解される毒素が体内に溜まり、定期的に透析を行わなければ日々を生きる事もままなりませんでした。

 通っていた病院はキヴォトスでも極秘の場所です。チヒロの頭脳を用いても、糸口すら掴めない事でしょう。そんな場所で私は、誰も知らない、死なない努力を、健気にせっせと続けていたという訳です。

 実は、初めて先生にあったあの時から既に、私は三日に半日動ければ良い方の生活だったのです。

 これを伝えて、先生は驚かれましたでしょうか。驚いてくれたのなら、これ以上の幸せはありません。この白金にきらめく薄幸美少女の涙ぐましい努力が、百パーセントの成功を収めていたという事ですから。

 

 

 先生の前で『明星ヒマリ』を保ち続ける事は、とても、とても、とても苦労しました。

 笑顔を向ける度に、青ざめた顔を隠す化粧が崩れていないか、緊張で喉を引きつらせていました。

 大量の痛み止めを服用しても尚も突き抜けてくる激痛に、涙と呻き声を抑えるのに必死でした。

 私が時折うつらうつらとしていた、薬の副反応による譫妄状態を、先生は「乙女が可愛らしく船を漕いでいただけ」と、都合よく誤解してくださいましたね。

 そんな風にして、私は先生に会う度に、文字通りに命を削るような思いをしたものです。

 

 

 

 

 

 

 病に犯された身を挺してまで、私は何故、先生に会い続けたのか?

 なぜ自らの病を隠して、先生を傷つけるような真似をしたのか?

 これまでの日々を思い返して頂ければ、その答えは自ずと分かるものと存じます。

 

 

 孤高は孤独の同意語です。

 ミレニアム最高の頭脳にして至高の存在である私は、並び立つ者のいない聡明なる女神。

 そして、優れた叡智には、それ相応の責任も伴います。

 先生と共にデカグラマトンに立ち向かったように。私はミレニアムを代表する影の参謀系美少女として、キヴォトスそのものを守る使命を果たさなければいけませんでした。

 私は崇高なる高嶺の花。その在りようはもはや普通の生徒ではない。誰にも理解されないし、理解されるような矮小さでは務まらない役割でした。

 まあ、超天才であることは誇張のない事実ですし。世界が自分の裁量で動く事は存外に悪い気持ちはなかったので、それに不満は一切なかったのですが……私もやはり、乙女ですから。時折どうしても、寄り添える人が欲しくなるのです。

 一人静かに、大義のために智慧と頭脳を捧げる──そんな在り方は、まるで故障するまで稼働し続ける機械のようで、あまりにも味気ないではありませんか。

 

 

 先生と私。

 数多の少女を導く人と、他とは一線を画する超越系生徒。

 両者は決定的に違っていながら、その実、もっとも対等に近い存在でした。

 先生は、ミレニアムという一つの世界の頂点に座す私を、一人の少女として扱い、褒めてくれる、たった一人の存在だったのです。

 

 

 先生は、最早自明の理と化している私の頭脳を、すごいすごいと褒めてくださりましたね。

 私のお茶目な悪戯に、真剣に怒ってくださいましたね。

 どんなに忙しくても、私がお誘いすると、すぐに駆けつけてくださり、悩みを聞いて頂きました。

 ああ、お分かりになりますでしょうか。

 先生のそのひたむきな姿勢が、私に──もうじき病に倒れると突きつけられた、余命幾ばくもない私に──どれほどの喜びを与えてくれたか。

 絶望の迫り来る私に、どれほど生きる理由を与えてくださったか。

 痛みと苦しみに引き裂かれそうな私の心を、つなぎ止めて下さったか。

 

 

 いつしか私は、先生の虜になっていました。

 例えそこに籠められたのがどのような感情だとしても。先生に「ヒマリ」と呼ばれるだけで、胸に喜びが一杯になるのです。

 あの二人だけの秘密の教室の扉が開けられ、あなたが顔を覗かせ。私を見つけて、ふっと唇を綻ばせて浮かべる笑顔に、涙が出るほど嬉しくなるのです。

 

 

 あちこちハッキングして先生を困らせてしまい、すみませんでした。

 お菓子と紅茶を一緒に楽しもう、なんて下らない理由で呼び寄せてしまい、すみませんでした。

 先生に怒って欲しかったのです。先生に構って欲しかったのです。

 許される時間の限りを、先生と共に過ごしたかった。

 先生の声で「ヒマリ」と呼んで欲しかった。

 私の胸を、喜びで満たして欲しかった。

 そんな私の願いを、先生はいつも、いつも、叶えて下さりました。

 先生が居てくださったから、私は残りの人生の時間を、とても楽しく、満ち足りたまま過ごす事ができました。

 本当に、本当に、ありがとうございます。

 私はここに断言いたします。

 たとえどんな苦しみが押し寄せようとも。たとえ死の恐怖が、想像を絶する凄まじいものだったとしても。

 先生がくれた沢山の思い出のおかげで、明星ヒマリは最期のその瞬間まで、幸せを胸に宿しておりました。

 

 

 

 

 

 

 優しい先生の事です。

 きっと、己を激しく責められる事でしょう。

 どうして言ってくれなかったんだと、私に怒りを抱く事でしょう。

 病を告げて貰えなかった自分の事を、情けなくお思いになられるかもしれません。

 もっと助けたかった、守ってあげたかったと、嬉しい事を思って貰えるかもしれません。

 先生に病を告げようかと、悩まなかったと言えば嘘になります。

 最期の瞬間に、先生に手を握っていて欲しいと、心の底から願う自分もいました。

 しかし私は、一重に自らの信念から、ただ一人この世界から消え去る事を選びます。

 

 

 私は、誰にも哀れまれたくなかった。

 誰にも、かわいそうなどと思われたくなかった。

 それが、生まれつき身体が弱く普通の日々を何一つ送れなかった、明星ヒマリの胸に宿る信念でした。

 私がミレニアム至宝の生きる芸術となる前には、当然幼き少女時代があるのですが、これは必ずしも華やかではありません。

 当然いじめがありました。沢山「かわいそう」と言われるのはまるで洗脳のようでした。全ての人が、私を下に見て、哀れんでいました。

 その世界全てから踏み躙られるような屈辱の中で、私は決めたのです。

 普通になれないなら、いっそ特別であれ。

 理解されないのなら、いっそ崇高であれ。

 誰にも寄り添って貰えないなら、いっそ決して届かない高嶺の花であれ。

 私はそうして智慧を磨き、研鑽を重ね、努力して方々に手を回し、今の地位を築き上げたのです。

 私は誰にも理解されず、哀れまれず。

 自分の死すらも秘匿して、特別な存在として消え失せるのです。

 

 

 

 

 

 

 謎多き清楚系病弱美少女ハッカー。

 ミレニアム至上最高の賢人であり、女神の如き美貌を持つミステリアス乙女。

 世界を影から支える叡智の守護者。

 それが、明星ヒマリという存在。

 私の用意した棺桶です。

 

 

 キヴォトスの人々は、私の死を知ることは未来永劫ないでしょう。

 元から私の挙動を知る人間が限られる事に加え、私の行動を模したボットが駆動し続けるからです。

 ボットは生前の私の行動を模倣します。ヴェリタスの人々と会話し、依頼を受けてセミナーのセキュリティを修繕し、ときおり校内放送で演歌を流すなどのささやかないたずらをするでしょう。

 必要ならば、キヴォトスの暴動の鎮圧も行います。実は先日、先生のお手伝いにお力を貸したのは私ではなく、私の行動を模したボットだったのです。本当の私は、もう自分の腕を上げる事も満足にできない状態でしたから。

 キヴォトスの人々にとって、明星ヒマリは永遠に『どこかで生きている謎めいた美少女』として残り続けるのです。

 誰にも哀れまれる事なく。心配すらされず。

 (あの人の事だから、きっと元気に何か企んでいるんだろう)と世間話程度に噂される。

 明星ヒマリという存在は、とうとう人の枠組みすらも越えるのです。ただ文章を書くだけで血反吐の滲む思いをしなければならない惰弱な身体からは考えも付かないほどの、特別な存在へと昇華を果たすのです。

 

 

 

 

 

 

 長い時間をかけて調整したボットの精度は完璧です。

 きっと先生も、こうして手紙を送らなければ、私がいなくなった事など気づきもしなかった事でしょう。

 その完璧な最期に亀裂を起こしてまで、先生に自分の死を告げたのは何故か……お分かりになって頂けるでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 先生。私の最期のやんちゃを、どうか許してください。

 私は、先生に傷ついて欲しかった。

 私のために、胸を痛めて欲しかった。

 私を哀れみ、悼み、心が壊れるほどの悲しみに打ちひしがれて。私を思って泣きじゃくり、名前を呼んで欲しかったのです。

 

 

 

 

 

 

 だって、私は死んでしまいますもの。

 病に身を犯されて、苦しみ抜いて死ぬんですもの。

 特別な存在になるなんて、本心には違いなくとも、所詮は理想論の綺麗事。

 死ぬのは怖いです。苦しいのは嫌です。

 ヴェリタスの部員達や、エイミや、ミレニアムの皆さんや、先生に会えなくなるのは、とてもとても辛いです。

 誰かに手を握っていて欲しい。抱きしめてほしい。

 私は私の信念のために、そのようなみっともなく人間くさい私を封じ込めます。

 

 

 でも──それでも、やっぱり。

 誰か一人にくらいは、祈って欲しかった。私を想って、泣いて欲しかった。

 ミレニアムの高嶺の花が、実は一人の女の子であった事を、誰かには覚えていて欲しかったのです。

 そのお相手を考えると、やはり先生以外には思いつきませんでした。

 

 

 

 

 

 

 先生はきっと、私の考えを理解してくれるでしょう。

 私の願いを汲んで、誰にも私の死を告げないでしょう。

 そう信じられるからこそ、やはり、先生以外に適任はいないのです。

 

 

 重い重い十字架を背負わせてしまい、本当にごめんなさい。

 だけどどうか、覚えていてください。

 至高の天才が、一人の儚い少女であったこと。

 『全知』の称号を持つ存在が、あなたと過ごす一時を楽しみに、胸をときめかせていたこと。

 病弱美少女が、あなたを頼りに、生きる理由にして、最後まで足掻き続けていたこと。

 明星ヒマリが、心から、先生の事が好きだったこと。

 

 

 私は、先生の事が好きでした。

 だから最後に、先生の心に刻み込んで消えない傷となって、この命を終えようと思います。

 許しても、許さなくても、どうか忘れないで。

 どうか時々私を思い出して、ひとり静かに泣いてください。

 先生のその顔を思い浮かべながら、私は、永遠に覚めない眠りへと落ちていきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この手紙は読み終えたら燃やしてください。

 ミレニアムの全知全能たる明星ヒマリは、皆さんの日々の中へ永遠に残り。儚く可憐な病弱美少女の明星ヒマリは、ただ一人、大好きな先生の胸の中に残る。

 これほど幸せな終わりを迎えられる事を、私は誇りに思っております。

 

 

 それでは、さようなら。

 これからも、皆さんの素敵な先生であり続けてくださいね。

 大好きです。大好きでした。

 全知を魅了した、ただ一人のあなたへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううん、確かにこの辺りに置いた筈なのですが。一体どこに行ってしまったのでしょう」

 

「ふふ……それにしても、なかなかどうして、小説の執筆とは随分と楽しいものではありませんか。先日あまりに暇だったもので、ひとときの道楽と筆をとってみましたが、存外に高揚いたしました」

 

「背徳的なストーリーラインにも関わらず、文章からは私の隠しきれない清楚さが溢れ出て……まさか私に文才までも備わっているとは。全知の天才の万能性に、また拍車がかかってしまいました」

 

「ま、まあ? 中身は夢小説というか、広義のイメージプレイのような、特殊な趣がありましたが……しょせん誰に見せるともない乙女の営みですもの。欲望の赴くままに書いたところで誰も咎めませんよね」

 

「うぅん……先生に私を想って泣いてもらう……あまりにも素晴らしいシチュエーションでゾクゾクしました。溢れ出る自分の才能が恐ろしくなりますね……どうにか、現実の先生にも同じような事ができないでしょうか……」

 

「ん、んん。ともかく。妄想をしたためるのはさておき、興奮しすぎて処分を怠るのは失態でした。内容が内容ですし、誰かに見られる前に回収しなければ……まったく、どこに行ったのでしょうか」

 

「おはよう部長……何か捜し物?」

 

「ああエイミ。ちょうどいいところに来てくれました。この辺りで、ええと……書類を見ませんでしたか?」

 

「書類なんて、積んでたり散らばってたり、あちこちにあるけれど。何か重要なもの?」

 

「ええ、極めて機密性が高く、とても重要なものなのです。コピー用紙数枚の束なのですが、記載された情報がミレニアム全体を揺るがすほどの凄まじいものでして──」

 

「もしかして、昨日ここに置いてあった奴の事かな」

 

「まさしくそれです! ああ、思い出しました。ちょうどテーブルのこの辺りの、書類の山の上に置いたのでした。エイミ、ここにあった書類をどこにやったのですか?」

 

 

 

 

 

 

「それなら、先生の所に送っておいたよ」

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」

 

 

 

 

 

 

「そこ、外部へ送る書類用のメールボックスだもん。『親愛なる先生へ』って書いた書類があったから、ちゃんと封筒に入れて、シャーレに送っておいたよ」

 

「……、……………………………………」

 

「それにしても、郵送する書類はちゃんと封筒に入れて宛名を書いてって言ってるでしょ。重要な書類ならなおさら、サボらずに自分で郵送までやってほしいな……それで、結局どんな内容だったの?」

 

 

 ──ジリリリリリリリリリリリリリリィィィ!!!

 

 

「わ、びっくりした……ミレニアム全校への緊急連絡? 何か事件かな」

 

「………………」

 

「部長? 汗が凄いよ? 暑いならエアコンの温度下げようか?」

 

 

 

 

『ミレニアム全生徒へ緊急連絡! こちらはセミナーの早瀬ユウカです!』

 

『この放送を聞いている全生徒へお願いです──今すぐ特異現象捜査部の部長、明星ヒマリを探してください!』

 

 

 

 

「……部長?」

「………………………………………………ひん」

 

 

 

 

『これはシャーレの先生から直々のお願いです! ミレニアムサイエンススクールの全てを賭して、明星ヒマリを探してください!』

 

『ヴェリタスの皆さんは総力をあげて痕跡を辿って! エンジニア部は必要なら新たな機材の開発を急ピッチで進めてください! その他の部活も、取りうる手は全て使って! ヒマリさんを捜索するための費用ならば、後で幾らでも特別控除を出す事を、セミナーがここに約束します!』

 

『お願いします! 先生を、ヒマリさんに会わせてあげてください! っう、ぐす……せ、先生に……ッこれ以上、先生に悲しい思いをさせないであげて! どうかお願いします! どうか!』

 

「………………………………………………………………」

 

 

 

 

「部長。モモトークの通知が凄い事になってるよ。トリニティやゲヘナ、連邦生徒会からも連絡が来てるみたい」

 

「……、…………」

 

「部長? 急に紙とペンなんて取り出して、どうしたの」

 

「いえ。もう何もかも手遅れのようなので、正式に遺書をしたためておこうかと思いまして」

 

「……よく分からないけど、始末書の印刷もしておくよ。十枚くらいでいいかな」

 

「どうでしょう。二〇〇枚くらいは必要かもしれませんね……くすん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はじまった先生の説教は、観測史上最長の四時間三二分を記録した。

明星ヒマリは、セミナー会長の調月リオを抑え、ミレニアムで最も先生を怒らせた問題児として、だいぶ長い間学園中で噂される事となるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




一年ぶりくらいの投稿になります。
ブルーアーカイブ履修記念に、個人的にとても惹かれているヴェリタスいちおもしれー女でサクッと書きました。

ヒマリの最高に頭がいいくせにお茶目で基本おとぼけキャラで、そんな彼女が病弱なのは本当の事なのが最高にエモくていいな……と思っていたらこんな話を思いついたので書きました。
苦手な人がいたらごめんなさい。


それにしてもエデン条約編がいい……とてもよかったですね……
ブルーアーカイブはシナリオ全体の質もさることながら、先生と生徒という関係だからこそ成立する関係性のエモがとても濃く、ブルーアーカイブでしか得られない良さがあり、めちゃめちゃ良いなと思いました。ミカよりはサオリ派、その他ストーリーのわちゃわちゃ楽しい感じも実に好きなオリスケです。


メインストーリーを読み終えたばかりの新人先生なので、キャラや設定に間違いがありましたらごめんなさい。
今後も軽いのから重いのまで、ネタを思いついたらポンと投下していきたいですね。




感想・評価を貰えたらとても喜びます。
また次の作品でお会いしましょう。
読んで頂きありがとうございました。

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