転生したら轟焦凍くんの幼馴染みだった。   作:室賀小史郎

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さーいーしんーわをー投稿だ!
ご都合主義を添えて!


ヒーローって難しい。

 

 仮のヒーロースーツを身にまとい、グラウンドβの前に集まった俺たち。

 ゲート前には既にミッドナイト先生が待ち構えていて、モニタリングが出来る場所まで案内してくれた。

 

「ここが待機所よ。指定しない限りは基本的に授業開始時はここに集まるように」

 

『はい!』

 

「それでお待ちかねの演習なんだけど、今回は救助活動訓練よ」

 

 原作みたいにヒーローと敵に別れてやる実技演習じゃないのか。

 でも人を救うのがヒーローなんだから、救助活動から教えるのが大切だよな。

 

「普段、グラウンドβは雑居ビルの街並みをイメージしているけど、見ての通り今はボロボロでしょう?」

 

 ミッドナイト先生が言うように、確かにボロボロだ。

 崩れてるビルなんかもあるし、本当に災害があったあとみたいに見える。

 

「いつもならさっさと直してしまうんだけど、今回のためにそのままにしておいてもらったの。それでこのビル群の中に救助者を模したダミー人形が紛れてるから、それを探し出し、仮設救護スペースまで搬送すること」

 

「救助者は何名なのでしょうか!」

 

 飯田くんの質問にミッドナイト先生は不敵な笑みを浮かべた。

 

「今回は災害が起こった際の救助活動を想定しているから、救助者が何名なのかは敢えて明かさないわ。多いのか、それとも少ないのか……あなたたち次第ね」

 

 これ結構ハードだな。

 それにどうせ、

 

「はい、では始め!」

 

 やっぱ即始まりますよねー。

 災害が起こる時に『今から災害起きますね』なんて予告されないもんな。

 

 急なことで慌てる子たちもいるけど、冷静な子たちもいる。俺も予想はしていたのでどちらかといえば落ち着いていられた。

 

「みんな、まずは複数のチームになってくまなく救助者を探していこう。グラウンドβを縦に三等分して3チーム……いや、中央は大きな建物が多いから2チームを割いて、計4チームになって行動しよう」

「何勝手に仕切ってんだ、毒野郎」

「今授業中。そしてリアルな災害現場なら言い争ってる暇はないし、既に駆けつけてるヒーローと協力することになるから、んなこと言ってられないぞ。爆豪、何人か連れて左側を頼む」

「チッ……行くぞ、デク! あとクソ髪とアホ面、しょうゆ顔! それと丸顔もさっさと来い」

「クソ髪って俺かよ!?」

「アホ面!? なぁ、俺アホ面なの!?」

「しょうゆって! 俺どっちかと言えば塩じゃね!?」

「丸顔って私ぃ!?」

「黙ってついて来いや、クソモブ共が!」

「かっちゃん、そんな言い方ダメだよ! ごめんね、みんな! かっちゃん、言葉が荒いだけで心は優しいから! 捨て猫を放っておけなくて拾ってきちゃうヤンキータイプだから!」

「てめぇは黙ってついて来いや、クソナード!」

 

 舌打ちはされたけど、爆豪くんは俺の言葉に従って緑谷くん、切島くん、上鳴くん、瀬呂くん、麗日ちゃんを連れて行動を開始してくれた。何気に24人を4で割った人数を連れてってくれるとこが爆豪くんの頭の良さを感じる。

 

「八百万ちゃんと飯田くんも、何名か連れて中央の探索をお願いしてもいい?」

「分かりましたわ!」

「分かった!」

「あ、なら俺は八百万のとこに……」

「峰田くんは俺のとこね」

「何ぃ!?」

 

 峰田くん、ごめんね。でもエロとヒーローは授業中くらいは切り離してほしいのさ。

 八百万ちゃんは青山くん、蛙水ちゃん、芦戸ちゃん、常闇くん、葉隠ちゃんを、飯田くんは尾白くん、砂糖くん、障子くん、口田くん、夜嵐くんとそれぞれ連れて行動を開始。

 

「んじゃ、残りの俺たちで右側な。行こう!」

「ああ」

「行きましょう行きましょう! 白刃様♡」

 

 因みに俺のところはいつもの二人に加えて、響香ちゃん、心操くん、峰田くんだ。

 

 ―――――――――

 

「自分で言うのもアレだけど、救助者は人形だからウチの探知には引っ掛からないと思う。ごめん」

「大丈夫大丈夫。あんまりそうなってほしくないけど、実際の災害時には響香ちゃんの個性はかなり必要とされるから」

「そうだよ。私なんて変身することしか出来ないんだから!」

「俺もどっちかと言うと救助活動には向かない個性だからな」

 

 謝る響香ちゃんに俺やしょうくん、被身子ちゃんが声をかけると、ちょっと自信を持てたのか笑顔を見せた。

 

「こういう場合は峰田くんの個性が活きるだろ。そのもぎもぎって何でもくっつくんだよね?」

「おうよ!」

「なら仮に倒壊しそうな場所でもそれで繋ぎ止められるし、それを使って救助者を固定することも可能だよね」

「おお! んなこと考えたことなかったぜ!」

 

「あと心操くんの個性も救助者を落ち着かせるのに良さそうだよね」

「……そんなこと初めて言われたよ」

「そう?」

「ああ、どっちかって言えば敵向きだろ、俺は」

「それはその個性を使う人によるよ。俺だって個性だけ見れば敵向きだ。でも心操くんはヒーロー科にいるんだから、敵になることなんてないでしょ。それに言い方は悪いけど救助者を洗脳して強制的に黙らせることも可能でしょ?」

「……まあ、そうだな」

「ほら。特に災害時は救助する側もされる側も冷静になってほしい場面ってあるだろ? そんな時に言うこと聞いてもらえなかったら心操くんがいれば万事解決な訳よ」

「……そっか」

 

 あ、心操くん照れてる? そっぽ向いちゃって、かわいいんだからぁ♪

 

「響香ちゃん、念の為片っ端から探知してってくれない? ダミー人形がどんなのか分からないし、もしかしたら本当に救助を求めてる人みたいに何かしらアクション起こす仕様だったりするかもだから」

「分かった」

 

「あ、おい、あのビルの窓にダミー人形あるぜ!」

「おお、よく見つけたね峰田くん。じゃあもぎもぎ使ってよじ登って確保してきて」

「それは出来っけど、確保したらどうすんだよ?」

「しょうくんが氷で滑り台作るから、一緒に滑っておいで。俺と心操くんでキャッチするから」

「楽しそう!」

「いや、頼むから楽しまないで。これ訓練だから」

 

「白刃、なんかこっちのビル内から発信器っぽい音する」

「了解。発信器の音はどんな感じ?」

「ピーピーピーって平坦な感じ」

「切羽詰まってる感はないから、取り敢えず先に見つけたダミー人形を優先しようか」

 

 こんな感じで俺たちはダミー人形を一体ずつ丁寧に確保していき、計17体を救護スペースに搬送した。

 因みに搬送の際はしょうくんの作った氷の道を使って、俺に変身した被身子ちゃんがスケートするみたいに素早く運んでくれた。被身子ちゃんって身軽だからこういうの得意なんだよね。

 

 ―――――――――

 

「はい、みんなお疲れ様! 最初にしてはいいチームワークだったわよ! 明日には私や他の先生たちで訓練の様子を見た総評を渡すからしっかりと目を通すこと!」

 

『はい!』

 

「それじゃあ着替えてきなさい。あ、緑谷くんはリカバリーガールのところに行って怪我を治してもらいなさいね」

 

「は、はい!」

 

 あれ、緑谷くんどうしたんだ?

 

「ごめんね、デクくん。私がどんくさいせいで……」

「いやいや、気にしないでよ、麗日さん。ちょっとかっちゃんが張り切り過ぎただけだから」

「聞こえてんぞ、デク?」

「あ、いや、かっちゃんのせいじゃないから!」

「当たり前だ! あれくらいてめぇなら丸顔抱えて避けられただろうが!」

「で、でも女の子に、ふふふ、触れるのはははは……」

「災害時にんなこと考えてヒーローやってられっかクソが!」

「いやー、かっちゃん怒らないでー!」

「デクくん、そんな女の子扱いされたら……私まで恥ずかしくなってまう……」

 

 ほほーん? 爆豪くんが張り切った結果、爆発に巻き込まれそうになった麗日ちゃんを緑谷くんが身を呈して守った、と。

 女の子扱いされて麗日ちゃんもまんざらでもなさそうだし、甘酸っぱいねぇ。

 ミッドナイト先生なんて「これはアオハルの予感!」って怪しい笑いしてる。

 

「白、更衣室行こう」

「おお、行くか」

「私も行くー♪」

「いや、被身子ちゃん、もう変身解いてよ」

「えー」

「えーじゃありません」

 

 ナチュラルに男子更衣室にまでついてきそうな被身子ちゃんを注意して、響香ちゃんに預け、俺はしょうくんや他の男子たちと着替えに行った。

 

 それからは普通に帰りのホームルームで香山先生から明日の連絡事項を聞いて解散となったが、みんなでそのまま教室に残って今回の救助活動の反省会。

 主に次からこうしたらいいんじゃないか、こういう時は誰の個性がいいとか、そういうのを話しあった。

 一番役に立ったのは緑谷くんのヒーローノート(爆豪くん曰くナードノート)で、早速みんなの個性の活かし方や既存ヒーローの使うサポートアイテムでその子に合いそうなアイテムの考察とかがみっちり書かれてて、みんな緑谷くんを絶賛してたね。

 緑谷くんはお顔真っ赤にして照れてたけど。爆豪くんに至ってはキレ散らかすのかと思ったら、幼馴染みがみんなから褒められて小さく笑ってた。

 んもぉ、何さこのデク勝! 尊みが深いんだけど!

 

 てことで俺はほくほくして過ごしましたとさ。

 

 人使サイド

 

 夢だった雄英のヒーロー科に入れたまではいいけど、正直ついていけねぇだろって思ってた。

 なんたって俺の個性は『洗脳』。

 自他共に認める敵向きの個性だし、身体能力も下から数えた方が早い。

 

 今日は初めてヒーロー科の授業。

 ミッドナイト先生のリアルな話で余計に俺はヒーローに向いてないと思った。

 そんでもって救助活動訓練とくれば、俺に出来ることは何もない。

 

 クラスの中心的人物らが行動を開始する中、俺は最後まで残ってた。

 当然だよな。お荷物なんていらねぇだろ。

 

 俺を連れてくことになった地毒たちには悪いと思った。役立たずだから。

 

 すると地毒と親しいっぽい耳郎って子が地毒に謝り出した。

 そいつも今回の授業で自分の個性は意味ないって思ったみたいだ。

 でも地毒は気にしてないらしい。寧ろ実際の時にこそ活きる個性だって励ましてた。

 

 地毒白刃。

 第一印象はいいとこのお坊っちゃんでお人好し。

 ほしいものは全部持ってる勝ち組。

 俺とは雲泥の差だ。

 

 そんなこと考えてたら地毒に俺の個性も災害時に使えるなんて言い出した。

 正直驚いた。確かに自己紹介の時に個性のことは伝えたが、俺以上に地毒は俺の個性の使い方をいい方に考えてくれてる。

 自分の個性なのに、地毒に言われるまでそんな使い方があるのなんて考えもしなかった。

 

 そういえば、地毒は自己紹介で『敵向きの個性だけど、両親を見倣っていいことに使えるように生きてきた』なんて言ってたな。

 個性の使い方次第。なんで今までそれに気が付かなかったんだろう。

 

 地毒白刃。お前のお陰で、少し自分の個性の可能性ってのが見えてきたよ―――

 

 ありがとう、ヒーロー

 

 ―――お前みたいになれるように、絶対ヒーロー科に残ってやる。

 

 勝己サイド

 

 俺がライバルとして認めてる人間は二人いる。

 一人はデクだ。ガキの頃から俺の隣で、この俺様についてこれたヤツ。

 

 そしてもう一人は毒野郎こと地毒白刃だ。

 見た感じはフツー。んでもって別に頭がいいタイプでもねぇ。

 ただどんな時でも冷静で頭がキレる。

 要領がいいタイプの人種だ。

 

 今回の授業でも一瞬固まっちまった俺より先にアイツが動いた。

 仕切りやがったのはムカつくが、アイツみたいなタイプは司令塔にちょうどいい。

 何より一番倒壊してる左側に俺を向かわせるくらいだ。

 お人好しに見えて周りの人間をよく見てやがる、底が知れねぇ。

 

 アイツがヒーローになるなら、俺のサイドキックに雇ってやってもいい。

 それになにより―――

 

 おにぎりが美味い

 

 ―――こういうヤツに悪いヤツはいねぇ。

 久々にババアの次に美味いと思えた。

 あとで強引にでも連絡先交換させてやる。

 

 ミッドナイトサイド

 

 今年のヒーロー科1年A組は、担任としての贔屓目ではなく、黄金世代と言っても過言じゃない。

 特に地毒くんなんかは本当に。

 彼が動くことでどこの子も冷静さを取り戻すし、彼の言葉で己の個性の可能性をより深めていく。

 それに加えて緑谷くんなんかもいい着眼点を持ってるから、そういう子が二人もいるだなんて最高以外の何ものでもないわ。

 

 ああ、頑張って根津校長にA組の担任やりたいアピールしてよかったわ!

 あのつまらな……んんっ! 有り難くて長ーいお話に何時間も、累計数十時間も耐え忍んだ甲斐があるってもんよ!

 

「失礼します。1のA、地毒白刃です。香山先生はいますか?」

「同じく心操人使です」

 

 あら、珍しい組み合わせね。

 でも何か青臭いアオハルのかほりがするわ!

 

「はーい、先生はこっちよー」

 

 手をあげれば、二人は他の先生たちにも挨拶をしながら私のところへやってくる。

 

「要件は何かしら?」

「はい。心操くんのサポートアイテムについてです」

「サポートアイテム?」

「はい。心操くんの個性をより有効にするために必要なので、緑谷くんと話し合って案を出したので、先生に検討してもらいたくて」

「なるほど。で、その案っていうのは?」

 

 私が促すと心操くんが「これです」と言って案が書かれたルーズリーフを渡してくる。

 ザッと目を通したけど、

 

「……面白いわね」

 

 本当に何なの今年の1年A組は。

 

 簡単に言えば、どこぞの小さくなった名探偵が使ってるような変声器ね。精度の良い物を作ればそれだけ心操くんの個性に掛かりやすい。

 

「こういうのがあれば、心操くんの返事をされないと洗脳出来ないっていうデメリットを少しでも軽減出来ると思うんです」

「可能性が広がるなら試してみたいんです。なのでこういうサポートアイテムを得意とするメーカーか、興味を持ってくれそうなメーカーを教えてください」

 

 うわぁ、なんて情熱的な眼差し! いいわ! すっごくいい! 青臭くて、貪欲で!

 

「なら私がパワーローダー先生に掛け合ってみるわ。これだけいい案だもの。試さないのはもったいないものね!」

 

 私が言えば二人は大きな声で『ありがとうございます!』なんて言ってくる。

 くぅ、これよ! これ! 私が求めていたアオハル! こういうのが見たくて教師になったんだもの!

 

 二人が職員室から去っていくのを見送ったあとで、

 

「ねぇ、今の見た? 見てたわよね!? 最高じゃない!? まだ入学ホヤホヤのくせに、もう己の個性を高めようとしてるガキ共の青臭さ!」

 

 前のデスクにいるセメントスに興奮気味に言っちゃったわ!

 

「え、ええ、ああいう向上心はいいことですよね……」

「でしょう!? ああ、ほんっとに教師になってよかったわ!」

「ミッドナイト先生、分かりましたから早くパワーローダー先生のところにそれを持って行った方がいいのでは?」

「はっ! そうね! それじゃ行ってくるわ!」

 

 パワーローダー先生だってこれを見れば興味が湧くはずだから、上手くいけば数日後には勝手に自作した試作品を持ってきてくれるはずだもの!

 待っていなさい心操くん! あなたの青臭いアオハルを先生がもっと輝かせてあげるから!

 

 ああ、もう! 本当に今年の1年A組は黄金世代よ!




読んで頂き本当にありがとうございました!

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