転生したら轟焦凍くんの幼馴染みだった。   作:室賀小史郎

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ご都合主義のバーゲンセール!


色々踏まえて進路を決めよう。

 

 あれから俺は平和な日々を(しょうくん、被身子ちゃん、黒刃に揉みくちゃにされながら)過ごしてきた。

 

 今は6月で、俺としょうくん、被身子ちゃんは中学3年生になって、俺は晴れて15歳になった。

 

 なので一旦状況を整理しようと思う。

 

 まずようやく分かったのが、俺が転生したヒロアカ世界が、俺が原作で知ってたヒロアカ世界と全くの別ルートにあるということ。

 

 そもそも原作ではヒーローが飽和状態になっていて、活躍の場を取り合うという本末転倒なことが解消されている。

 大きいのはオールマイトがオールフォーワンを本当の意味で倒し、それによりオールフォーワン側に寝返っていたヒーローたちがごっそりと逮捕されたことが大きい。

 また公安がお抱えの直属ヒーローの数を大幅に増やし、今後そんな邪な思いで動くヒーローを監視することになったので公安のスカウトに応じたヒーローも多かった。給料がいいらしい。

 

 これによってオールマイトたちのようなヒーローたちの数が激減して治安悪化が懸念されたものの、代わりに警察が人員を全国各地に派遣。

 警察官たちも常日頃から敵に対しての捕縛術や対策アイテムの適切な使い方を訓練していたので、往生際悪く暴れる敵を無力化することに成功したのだ。

 また地域ごとに自警団も設立し、警察と連携し、訓練してその練度を上げたことで人々は安心した。

 因みに自警団はこれまで警察や公安と敵対していた指定暴力団とされる組織が名を変えたもの。

 政府も国の危機を乗り越えるため、思い切って過去のことは水に流し、現段階で違法行為をしていない暴力団限定で手を結んだそうだ。

 暴力団の方も暴力団員というだけで肩身の狭い思いをしながら続けるのにも限界があったし、国が動けない時に陰ながら地域住民たちを手助けしたのもあって国と手を結ぶことにしたみたい。

 手を結んだばかりの頃は互いに歪み合ってしまっていたが、日本がめちゃくちゃになれば自分たちも生きてはいけないと考えを改めて少しずつ連携をしていった。

 

 今のように互いを尊重し、歪み合うことなく事がスムーズに運べるようになったのは、闇組織を大きくまとめていた死穢八斎會が先頭に立って国と足並みを揃えたのが大きい。

 原作では主人公たちの障害として登場したのだが、原作で寝たきりだった組長を俺の父さんと母さんが治療したことで組は一大勢力を維持し続けることが出来たそうだ。父さんや母さんにとって、ヤクザであれ誰であれ患者を救うのが医者なのだ。

 オーバーホールこと治崎廻は組長を助けてくれた恩を返すため、父さんの児童保護施設を真似て育児放棄された子どもたちを保護する活動を始めたそう。

 相変わらず潔癖症ではあるが原作ほど酷いものではなく、組長の影響を受けて仁義を重んじる青年になっているのだとか。

 

 よってヒーローは減ったものの、日本は平和で様々な組織が新たに手を組んでその平和をオールマイトたちヒーローと一緒に守っているのだ。

 オールマイトもオールフォーワンとの闘いで怪我はしたが、原作にあったような致命的な怪我をしていないから元気そのもの。入院こそしたが、入院中も元気にインタビューを受けている場面がテレビで何度も放送されていた。

 ただワンフォーオールがどうなっているのかは分からない。こればかりは確認のしようがないから。

 

 次に俺の周りの状況。

 まず渡我被身子ちゃんは俺たちの冬休みが終わったと同時に、父さんが運営する児童保護施設に入った。

 でも小学校の授業をほぼ受けていなかったので、俺や焦凍が中学生になるまでは施設で初等部教育を受け、俺たちと同じ学年で同じ中学校へ通うようになった。

 

 被身子ちゃんを施設に入れるかどうかの前に、一緒に施設のクリスマスパーティーに参加したんだけど、その時にみんな被身子ちゃんが変わった趣味趣向を持ってても引かなかったし、普通に接してくれたのが大きかったみたい。

 

 被身子ちゃんのことはそれで良かったんだけど、その時一番驚いたのはヒーロー殺しステインである赤黒血染と敵連合のトップになる死柄木弔こと志村転弧や原作で連合に入っていた重要キャラたちがいたことである。

 

 赤黒血染は『ヒーロー観の根本的腐敗』で絶望し、私立のヒーロー科高校を中退。

 そのあとに『英雄回帰』を訴えているところに、俺の父さんが「子どもたちのヒーローになってみないか?」と声をかけたことで、心理カウンセラーになったんだって。

 

 そんな血染が心理カウンセラーになって少しした頃に連れてきたのが死柄木弔こと志村転弧だった。

 ヒーローに憧れる転弧に対し、父弧太朗はヒーローを否定し、そんな中自分に個性が発現しない現実。

 そして姉である華からの裏切りというのもあって家から飛び出し、泣いてたところを血染が声をかけた。

 それによって施設に入った転弧は俺の父さんから「無個性でもヒーローになれるさ」と希望をもらい、元ヒーロー科であった血染からの手解きを受けて強靭な身体能力を得て、雄英高校初となる無個性合格者にして主席卒業生となり、無個性初のヒーローとなった。

 因みに元の家族とは決別しているそう。

 

 トゥワイスこと分倍河原仁に至っては両親を敵犯罪で亡くした際にこの施設にきたそうで、高校を卒業してからは施設の職員として働いている。

 話した感じ原作みたいな支離滅裂な感じはなく、個性を使って施設で壊れた玩具や遊具とかを複製してくれているので、いつも子どもたちに頼られていて幸せそうだった。

 

 他にも催し物のひとつであるマジックショーで出て来たのが、敵連合にいるMr.コンプレスだったりして本当に開いた口が塞がらなかった。

 というか、本当に父さんとこの施設、原作で敵堕ちしたキャラ救い過ぎな件。だからこそ俺っていうイレギュラーがあるのかなとも思った。

 

 そして次に轟家。

 あの頃の殺伐とした空気はすっかり消え、家庭円満だ。

 冷母さんは編み物という趣味に目覚めて楽しんでいるし、燈矢兄はエンデヴァーのサイドキックとして活躍中。

 冬姉は大学4年生で小学校教諭になるために頑張ってて来年卒業を控えているし、夏兄に至っては燈矢兄の代わりに轟家の家業を継ぐために今は地元の高校に通って今年大学受験を控えている。志望しているのは東京の経済学部か経営学部なんだって。

 

 という訳で、原作とは全く違う方向へ進んでる。

 

 俺に至ってはしょうくんの稽古に付き合ったりしたし、エンデヴァー事務所にあるトレーニングルームで他のヒーローたちに色々教わったお陰もあって、俺としょうくんは個性の扱い方が大人顔負けの実力を身につけた。これにはエンデヴァーからも太鼓判を押してもらっている。

 被身子ちゃんも施設に移ったとはいっても、定期的に轟家にやってきてエンデヴァーから護身術を教わったりしてた。

 

 そして今俺は、

 

「白、冗談か? いつもの冗談なんだよな?」

「なんでそんな深刻そうなの? そんなの白刃様の自由なんだから、焦凍には関係ないでしょ」

「被身子、黙っててくれ。これは俺と白の問題だ」

 

 お昼休みに学校の屋上でしょうくんに問い詰められています。

 俺らの仲を知らない人がこの状況を見れば、俺が被身子ちゃんをしょうくんから奪ったとか、被身子ちゃんがしょうくんを捨てて俺とくっついたみたいな修羅場に見えるだろう。

 だって俺が座ってる左隣には俺の腕にしがみついてる被身子ちゃんがいて、右隣にはこの世の終わりみたいな顔をしてるしょうくんがいるんだから。

 

 きっかけはほんの少し前のこと―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 給食を食べ終えた俺は、いつものように昼休みは屋上で日光浴をしていた。

 当然、しょうくんと被身子ちゃんも一緒。

 そして話題は今日担任の先生から渡された進路希望書のこと。

 

「白、進路希望の欄に何て書いた? 俺、雄英以外考えてなくて……」

「しょうくんはヒーロー科だよな? なら第二、第三は適当にサポート科とか普通科あたり書いときゃいいんじゃない?」

「お、そうか。ならそうするか」

「うんうん、そうしときな。しょうくんなら推薦とかも簡単に取れるだろうし」

「んな簡単に言うなよ。うちの中学推薦枠1つしかねぇんだぞ? 俺、白に勝てる気しねぇ」

「なんで? 俺雄英行く気ないんだが?」

「…………は?」

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 という訳で今に至る。

 だってそうじゃん。

 被身子ちゃんは敵になってないし、原作で敵になるようなキャラはみんな幸せルート一直線。

 なら別に俺が雄英行かなくてもいいと思うんだよね。

 確かに原作キャラを生で見てみたいとは思うけど、あんな鬼畜カリキュラムがデフォの高校なんて行きたくない。

 俺は平凡な普通科高校に通って、前世ではしようとも思えなかったアルバイトして、両親や黒刃に自分で働いて得た金で何かしてやりたいんだ。

 

「冗談も何も、端から雄英行く気なんて全くないよ、俺」

「じゃあ、なんであんなに父さんの稽古一緒にやってきたんだよ?」

「自分の個性上手く扱えて損はないだろ? 俺の個性は間違えると簡単に人を死なせちまう危ない個性だし。それに俺はおじさんが暴走しないか見張ってたってのもある」

「…………やだ」

「わっつ?」

「白と別々の高校行くとか絶対にやだ」

 

 やだって……駄々っ子かよ!

 

「いやいや、大人になったら嫌でも別々の道進むんだから」

「俺は白のサイドキックになるのが夢なのに……」

「え、何それ初耳なんだが?」

「今初めて思いついたからな」

「やめて……だからそもそも俺はヒーローになる気ないって」

「じゃあ俺がサイドキックにスカウトすれば……」

「しょうくん、俺の話聞こえてる?」

 

 そもそもなんでしょうくんにとって俺と離れるっていう事が頭にないのさ。君頭いいはずよ?

 

「私は白刃様がいるところに行くから心配しなくていいよー♡」

「被身子ちゃんはそうだろうね……」

「うん♡」

 

 犬みたいに俺の胸板に顔を押しつけてすーはーしてる被身子ちゃん。

 被身子ちゃんも被身子ちゃんで大分まともになったけど、俺がいる前提なんだよな。

 血以外の趣味が料理になったらしく、中学では調理部入って何を作っても必ず俺のとこに持ってくるし……。

 

「白の夢ってなんだ?」

「俺の夢?」

「ああ。いつも白は俺のヒーローになりたいっていう夢を応援してくれる。でも今更気がついた。俺、ずっと白と一緒にいたのに、白の夢知らねぇって……だから教えてくれ」

「俺の夢、ね……」

 

 言われてみれば自分の夢なんて全く考えてなかった。

 前世でもこれと言って何か夢があったとかじゃない。

 今の夢を強いて言えば―――

 

「みんなの幸せな姿を見ること、かな」

 

 ―――だな。クサいというか、キザというか……むず痒くなる台詞だけど、これは俺の本心に変わりない。

 両親が隠居する際には両親が安心して隠居出来るような人間になりたいし、黒刃も(めっちゃ嫌だけど)素敵な花嫁さんになってほしいし、しょうくんや被身子ちゃん、関わってる人たちが笑顔でいられるように見守ることが一番の夢だ。

 

「白……」

「白刃様……♡」

「え、ちょ、何? 何何何? 急に二人して抱きついてこないでくれよ」

「やっぱ、白はヒーローになるべきだ」

「私、もう既に幸せだけど、もっともっと白刃様と一緒にいてもっともっとも〜っと幸せになるね♡」

「いっぺんに言われても困るっつーの!」

 

 二人の肩を少々強めに押す。しょうくんは「悪ぃ」と退いてくれたが、被身子ちゃんは相変わらずだ。

 

「白、俺とヒーローになろう」

「どして?」

「じゃなきゃ白の夢、叶わねぇ」

「いや、そんな間近で見ていたい訳じゃ……」

「俺が見ていてほしいんだ」

「しょうくん……」

「俺は昔から白からもらってばっかだ。恩返ししたいのに、次から次へと白は俺を救ってくれるヒーローなんだ」

「…………」

「俺が幸せになるとこ、その目でちゃんと見てくれ」

「……分かった」

「っ! 本当だな!? じゃあ絶対ヒーロー科だからな! 俺は推薦なんて受けない! 一緒に一般入試受けに行って、一緒に合格しような! 約束だ!」

「え」

「なら私もヒーロー科行くぅ♡ ずっと一緒だよ、白刃様ぁ♡」

「えー!?」

 

 こうして俺は半ば絆された感じで進路が決まった。

 でもしょうくんや被身子ちゃんの幸せな姿を見るなら、俺も努力しないといけない。

 ヒーローになりたいって気持ちが俺にはまだまだ足りないけど、ヒーロー科に行くなら覚悟を決めよう。

 

 焦凍サイド

 

 白からヒーローになる気がないって言われた時、俺はショックだった。

 それと同時になんでだよって思った。

 

 子どもの頃からいつも白はヒーローだったのに、俺が今まで見てきて一番ヒーローになってほしい人間なのに。

 

 今まで一緒に父さんの厳しい稽古をしてきて、父さんだって白がヒーローになるのを期待してるんだ。母さんだって、燈矢兄も冬姉も夏兄も。

 白はそれだけ多くの人を救ってきたヒーローなんだ。

 なってくれなきゃ困る。

 

 俺らが別々の道を行く?

 有り得ねぇ。

 

 物心ついた頃から、白は俺のヒーローで、俺たち家族のヒーローで、被身子にとってもヒーロー。

 ほら、どう考えたってヒーローになるしかねぇじゃねぇか。

 

 ただ、白はどこまでも周りを優先する。

 初めて聞いた白の夢。

 なんだよ、『俺たちの幸せな姿を見ること』って。

 これ以上俺たちを幸せにしてどうすんだよ。

 

 だったら責任取ってもらわねぇと割に合わねぇ。

 俺たちが幸せなら、白も幸せなんだ。

 見せてやるよ。

 一緒に雄英通って、一緒にヒーローになって、一緒に闘って、俺のすぐ隣で、俺が幸せに笑ってるとこ。

 

 そうすれば俺だって白の本当のヒーローになれるから。




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