転生したら蒼崎だった件   作:山空裏表(元かくよ)

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シービーが出ないので初投稿です。


9話

 

    ──月───日

 

 新しい妹ができた。そう、昨日出会ったシエル先輩にそっくりのエレイシアちゃんである。寮につくと、橙子や青子はこちらを見つめて今にもぶちギレそうだったが、わしが担いでいたエレイシアを見た時の今にもエレイシアを殺しそうな目にはさすがに空いた口が塞がらなかった。

あのさ、言いつけを守らなくてキレるのは分かるよ、でもさ、本気で魔術を撃ってくるのは違うと思うんだ。

 俺が青子と橙子をなだめていると、エレイシアが目を覚まし、俺の足に引っ付いてきた。その瞬間、二人の魔力が倍増し、周りにあった紙が吹き飛んだ。俺は日本で培われた最強の魔術である『土下座』をし、エレイシアは捨て子で拾ってきたということで納得してもらえた。ふぅ、危ない危ない。あともう少しであのクソ女神のところに逆戻りするところだった。

 

 翌日、俺は橙子達に《女たらし》という称号を与えられたのだが、俺が何をしたというのだ・・・・

 

   

    ───月───日

 

 魔術たのちい。

時計塔の環境が良いのか、俺の体に魔術に対する才能があるのか分からないが、レジエレキの素早さ種族値ぐらいのスピードで魔術を習得することができている。昔から天才は1を聞いて10を知ると言われるが、わしの場合は1を聞いて1000を知るレベルだ。しかし、ここで下手に魔術を極めると協会から「お前すごいからサンプル行きね」と封印指定を受ける可能性がある。なので、できるだけ普通の学生をよそおうために時計塔に在籍している一般家庭の魔術師と同等の魔術しか使っていない。ちなみに、俺は現在学部番号13の法政科に在籍している。そう、みんな大好きバルトメロイネキが受け持つ学部だ。最初ロンドンに来たときは橙子が日本で暮らすと思っていたため、空の境界をハッピーエンドに導くために創造科に行こうとしていた。が、結局橙子がこっちに来たために俺が創造科に行く意味が消えた。そもそもが橙子の代わりに時計塔に来たため、本人がいるのなら俺が時計塔にいる必要はない。なのでとっとと退学しようと思っていたのだが、突然バルトメロイネキが現れて勧誘された。

貴族主義のために空気が合わず、辞退しようとしたが、なぜかバルトメロイネキが必死に勧誘してきたため、その誘いに了承した。最初は貴族ではないわしにクラスメイトは疑わしい目線を向けていたが、ある程度時間がたつと普通に接してくれるようになった。あれ?法政科って時計塔のなかでもトップクラスに良い学部なのでは?

青子は現代魔術科に在籍し、ドクターハートレスの元で魔術を学んでいるらしい。エレイシアも青子と一緒に学んでいるらしく、日々成長中だとか。

 

よっしゃ、これで一応は空の境界を安心してこの目で見ることができる。魔法使いの夜?なんすかそれ?知らない子ですね・・・。

 

    ───月───日

 

 今日はあらかじめバルトメロイネキに休むことを伝え、

了承を得たので時計塔内を歩き回ることした。ん?なんで休めるのかって?正直、俺も驚いている。授業中に明日休みたい、と小声で呟いてしまい、さすがにやらかしたと思ったのだが、なぜかそれが許されてしまった。なんでや?

 

 時計塔内を歩いていると、様々な学部から教鞭をとる声が聞こえた。中には少し怒っている声もあり、魔術師と言えども普通の高校生と変わらないんだな、とほっこりしている最中、子供の泣き声が聞こえた。その声は子供ながらにして声が大きくなるのを我慢しているように聞こえ、言ってみると一人の少女が廊下の真ん中でうずくまっていた。

 

 「どうしたんだい、お嬢ちゃん」

 

 できるだけ声をやわらげ、その少女に話しかけた。その子が振り向き、こちらをみると涙を我慢しながらこう言った。

 

 「おとうさんがね、どこかにいっちゃったの」

 

 どうやらその子は父親とはぐれたらしい。時計塔内ではぐれるということは、この子の父親はおそらく君主(ロード)の一人なのだろう。たしか、この時間帯はどの学部も講義があり、終わるのはかなり遅い時間だったはずだ。

 どうしようか悩んでいると、その少女の目元にはまた涙が浮かび始めた。

 

 「ほら、お嬢ちゃん。これでも食べて元気だしな」

 

 ポケットの中に入っていたいちご味の飴玉を取り出し、少女に渡した。少女はその飴玉を口にいれるとすぐに涙がとまり、いちご味が気に入ったのか、口のなかでコロコロとならひながら笑顔を浮かべた。

 

 「ありがとう、おにいさん。わたしね、おるがまりーっていうの!」

 

 あかん、やらかした。




 あの、その、ほんとうにすいませんでした。

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