※アンケートの結果、タグに「ちょっとだけギャグ」を追加しました。アンケートに答えていただいた方、ご協力ありございました。
「アンサズ!」
リタの顔が露になった瞬間、ルーン魔術を発動させ彼女を燃やす。が、死徒二十七祖相手に半端なルーン魔術など通用するわけがない。
「あら?交渉決裂かしら?それじゃあ、それ!」
自身の真下の地面に魔力の反応を感知し、後方に飛び退く。立っていた場所には大量の茨が発生しており、もしその場に留まっていれば怪我ではすまないだろう。
リタが少しずつ近づいてくる。ルーン魔術が直撃したはずだが、彼女には火傷一つおっていなかった。ダメージはあるはずだが、死徒の再生力によって負った瞬間から回復しているのだ。自己流で学んだルーン魔術なんて、彼女からしたら蚊に刺されたに等しい。最悪なことに、現在自分が扱える魔術はルーン魔術、身体強化魔術しかない。おそらく、身体強化魔術で近接戦に持ち込んでも、死徒の身体能力相手に殴り勝てるわけがない。それに、下手に近づけば『薔薇の魔眼』で精神ごと彼女の夢の中で殺されて終わりだ。
あまりにも勝ち筋がなさすぎる。肉体のスペックからして、差がありすぎるのだ。
「もうおしまいなの?それじゃあ、お眠りなさいな」
リタの眼が薔薇色に発光する。『薔薇の魔眼』が発動したのだ。その瞬間、目を閉じて俺の体に残っている魔力を全て使い、『薔薇の魔眼』相手に出力勝負を挑んだ。
目を開けると、リタの顔が目前にあった。
「貴方、今、私の『魔眼』に打ち勝ったというの?そんなの、─────最高じゃないの!ますます気に入ったわ!私は今、貴方が欲しくて、欲しくてたまらないの!」
自身の頬に手を当て、まるで恋する乙女のような表情を浮かべるリタ。最悪な相手に気に入られてしまった。彼女に好かれるぐらいなら、いっそのこと殺された方が良かったかもしれない。
興奮した表情で俺の顔に手を近づけると、彼女は爪で俺の頬を浅く切りつけた。抵抗しようにも『薔薇の魔眼』に対抗する際に魔力を全て消失したため、体が鉛のように重く、指一本でさえ動かすことができない。
彼女は切りつけた爪に伝わる血を飲んだ。
「あぁ、さいこぉぉ。やっぱり、私が思った通りね」
歓喜のあまり、彼女が震えた。どうやら俺の血の味がお気に召したらしく、頬に直接口を付けて血をすすり始める。
「はぁ、はぁ、もう我慢できないわ」
そう呟くと彼女が俺が来ていた魔術協会の制服に手をかけると、その細い腕に見合わない剛力で破り取った。露になった俺の体を見て、彼女の息がさらに荒くなる。
首筋に顔を近づけ、吸血鬼特有の尖った犬歯で肌を突き破り、血を飲み始めた。
「あぁ、美味しいわ。ほんとうに、ほんとうに」
彼女が血を飲み始めてから10分程経った時のことだった。
「その人から離れなさい!」
突如、かなりの強風が発生し、辺りのものを吹き飛ばす。
「あらあら、もう来ちゃったのね。名残惜しいけど、またいつか会いましょう」
リタは俺に口付けると、その場から消えるように去っていった。
「貴方達はあれを追いなさい。大丈夫ですか?紅」
現れた人影が部下らしき人に指令を下し、抱きかかえられる。その人影がバルトメロイと分かった時、俺は安心の余り気を失った。
ファインモーション強すぎ