飛ばした理由としては、魔術協会編で出したいキャラクター(オルガマリー、バルトメロイ、リタ)を出しきったからです。
今回から型月作品の本編に入っていきますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。
1995年2月28日
今日で時計塔を卒業する。よくある感想になるが、長かったようで短かった。まぁ、在籍期間の半分以上はバルトメロイネキに気に入られてクロンの大隊に所属し、吸血種やら聖堂教会相手に戦っていたため、あまり学生らしいことはしていないのだが。
というか、あいつら強すぎるんだよなぁ。なぁんでわしが密かにイノライさんに教えてもらったルーン魔術ぶちこんで傷一つつかないですかねぇ。あほくさ、やめるわこのゲーム。
とにかく、明日から一に鍛練、二に鍛練、三四が飛んで、五に死合を地でいく連中からようやくおさらばできるのだ。あばよ~とっつぁぁん!
そして、待ちに待ちわびた《空の境界》が始まる。橙子が原作通り観布子市に事務所である『伽藍の堂』を開くらしいので、橙子に頼んで住まわせてもらうことにする。青子、エレイシアもついてくるらしく、なんにせよ原作崩壊は避けられないだろう。が、既に《魔法使いの夜》が消えているんだ。もう何も怖くない(確信)。
さて、明日に備えて今日はもう寝るとしよう。
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「久し振りの日本は寒いな」
現在時刻、3月1日の夜7時。飛行機に揺られて日本に帰ってきた俺は久々の日本の空気を吸うのとコクトーと『彼女』の馴れ初めをこの目で拝むために散歩に出ていた。差した傘には雪が積もっており、3月に見合った季節と言えるだろう。
観布子市の大通りに沿って歩いていると、とうとう『彼女』を見つけた。咄嗟に近くの電柱に隠れ、『彼女』の姿を見る。
「(ほんとうに、どうしようもないほど綺麗だ)」
そんな感想しかでないほど、『彼女』に魅了される。原作では【男から見たら美女に見え、女から見ると美男に見える】顔立ちと表現されていたが、実際にその容姿を見ると、まるで芸術作品かと錯覚するほどの美しさだった。
「(それにしても、コクトーがいない)」
原作通りにいけば、既に二人は出会っているはずだ。日付を間違えたかと思ったが、天気予報によると降雪は今日で終わると言っていたため、間違えてはいない。辺りを見回すも、こちらに近づいてくる人影はない。
「(おかしい、なぜコクトーがこないんだ。このままじゃ《空の境界》がはじまらない)」
心が焦燥に駆られる。自身を中心に魔力を円形に飛ばし、半径10m程を精査するも、人はいなかった。
「だれ?」
『彼女』が呟いた。すぐにその場から立ち去ろうとするも、足元にあった小枝を踏みつけてしまい、ポキリ、と乾いた音が静寂の空間に響いた。
「そこにいるのは分かっているわ」
『彼女』が自身の隠れている電柱を見つめる。これ以上隠れたままでいれば、『彼女』に殺されてしまうだろう。
「あぁ、すまない。貴女のような人がどうしてこんな夜に外にでているのか気になってね」
電柱から姿を出し、『彼女』に答えた。
「あら、そうだったの。少し、考え事をしていたのよ」
少し遠い目をしながら『彼女』が答えた。この場から立ち去ろうにも、彼女に魅入られて、体が言うことを聞かなかった。
『彼女』に近づき、差していた傘を渡す。
「あら、ありがとう。貴方、とても優しいのね」
すると、『彼女』はまるで花のように笑った。
作者の初恋は『彼女』です。