あの人が吸血鬼に襲われたと聞いたとき、私の心には耐え難い怒りとどうしようもないほどの殺意が湧いた。
なぜ、あいつらはいつも私の大切なものを壊すのだろう。
私はただ、あの人と暮らしているだけで幸せなのに。
最初にあの人に出会ったとき、あの人はカレーをくれた。特別美味しかったわけではない、ただの屋台のカレー。しかし、私はそれを食べた時に泣いていた。私はその時からカレーが大好きになった。食べていると、あの人との出会いを思い出すからだ。
あの人は次に、家族をくれた。橙子姉さんと、青子姉さん。初めて会った時は今にも私を殺しそうな目線をしていたが、すぐに仲良くなれた。学校にも通わせてくれた。分からないところがあれば教えてくれた。寮から出た時、帰った時に「いってらっしゃい」「おかえり」の言葉をかけてくれた。私は初めて、自分の存在を実感することができた。「エレイシア」という人間が、この世界に確か存在するのだと。
あの人は人間ではなかった私に、人として生きる事を許してくれた。命をくれた。温もりをくれた。感情を思い出させてくれた。傷を癒してくれた。私に、愛を注いでくれた。
あの人が回復したと聞き、私はすぐにあの人の元まで走った。あの人に抱きつくと、私の好きな温度を感じられた。
私の好きな声を聞く事ができた。私の好きな色を見ることができた。鼓動を聞き、私は初めて安心のあまり涙を流した。
あの人は私に全てを与えてくれた。ならば、私はあの人に血を、骨を、眼球を、命を、私の全てを捧げて尽くそう。それが、私にできる恩返しであるから。
だから、私は努力を怠らない。少しでもあの人の役に立てるように。
何も心配しなくていいのです。貴方の邪魔になる物があるのなら、何をしてでも排除しましょう。貴方が川を渡りたいというのなら、私は喜んで橋になります。貴方が望むのなら、私はどんな願いも叶えましょう。貴方に頼っていただける事が、何よりの幸せなのです。貴方のために、私の全てを捧げることを許してください。貴方のために祈ることを赦してください。そして、もし叶うのならば、貴方の隣に、私は立ちたいのです。
夜の病院のとある一室にて、少女は眠る思い人の頬に口づけを落とす。彼女の姉達は講義のため、今日はこの場所にくることはない。少女と青年の二人きりの空間の中、少女はただ青年に寄り添う。ただ、それだけのことで、少女は歓喜に震えていた。
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──月──日
病院で寝てたらなぜかエレイシアがベッドの中に潜り込んでいた件について。
お、俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!
蒼﨑紅のヒミツ②
実は、最近体から薔薇の匂いを感じる。