───月──日
あっれれぇ~?おっかしいぞぉぉ~?(某名探偵風)。もうすでに【伽藍の堂】が始まっているのに、なぜかコクトーの姿が見えない。橙子に聞いても、そんなやつは知らない、とのこと。
見たら分かる、あかんやつやこれ。
おそらく、もうすでに【空の境界】は破綻してしまったと思っていいだろう。おそらく、分岐点は『彼女』と出会ってしまったところだ。病室から出た後、夜になって病院の周りを彷徨いてみたが、コクトーらしき人影はなかった。正直、コクトーがいないと何がまずいって、空の境界が終わらないことだ。原作において、式とコクトーが両思いかつ、白純里緒という壁を二人で乗り越えたためにハッピーエンドとなり、空の境界が終わるのだ。通常ならば、現時点で式が多少なりともコクトーのことが気になっていないといけない。が、残念なことに現在、式に気になっている相手は存在しないのだ。それもこれも全部俺が最初に『彼女』に出会ったせいである。
さすがに
とりあえず、【伽藍の堂】に関しては原作の橙子のポジションに俺が入ることにする。橙子自体がかなり性格が変わっているため、下手に橙子を関わらせればさらにまずいことになるからだ。
よし、これでとりあえずは【痛覚残留】まではなんとかなるだろう。あとはもう知らん。寝る。
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どうやら、俺はかなり疲れているらしい。日課の式への訪問を終えた後、なぜか伽藍の堂に帰らず、ぼんやりとしたままよくわからないところに来てしまった。
「(えぇ・・・どこだよここ)」
ここからどうやって帰るかを考えていた時だった。
「(ん?あ、あれは・・・)」
目の前には『浅上藤乃』が一人、行く当てなさそうに歩いていた。学校からの帰り道だろうか。
「(よし、ふじのんを見て癒されよう)」
そう思い、ふじのんを目で追っていたときのことだった。
ふじのんが茶髪かつ青色のタンクトップを着た男に腕を捕まれ、そのまま路地裏の方に連れ去られた。
「(あーね、なるほど)」
そのまま気づかないふりをして去ろうとしたが、腕を捕まれる直前、ふじのんがこちらを見た気がした。
「(チッ)」
内心舌打ちをしながら、その場所から走り出す。なにせ、『無痛病』であるはずの彼女がこちらをみた時、瞳がほんの僅かに揺れたのだ。つまり、彼女は──『助けを求めた』。
路地裏を抜けると、目の前に扉があった。その扉を蹴破ると、中では想像通りの事が行われていた。制服がはだけた彼女、ズボンをおろした啓太と数人。様子からして、本番はまだ行っていないようだった。
「あぁ、なんだぁてめぇ」
啓太の仲間の一人であろう男がこちらに近づく。その手にはナイフが握られており、こちらを刺そうとしているのが一目でわかった。
男がナイフを付き出した瞬間、それよりも早く男の顎を殴りあげる。男の手からこぼれたナイフをつかみ、別の男の
「ひ、ひぃ、も、もうやんないですから、ゆ、やるしてください」
そんな風に呟く啓太に近づき、「アンサズ」と告げた。
ふじのんは恐怖に震えているらしく、その場から動けそうになかった。俺がその場から去ろうとすると、ふじのんの手が俺のズボンをを掴んでいることに気付いた。床に倒されていたふじのんを担ぎ上げた俺は、今度こそその場から立ち去った。
次回、ふじのん目線書きます。
主人公は魔術師よりは優しいというだけで、人は平気で○せます。