【ブルアカ×サタスペ】キヴォトスより愛をこめて 作:ディム
まあ大体シロコみたいなのが山のようにいるのがサタスペだと思ってもらえれば大丈夫です。
エレベータにて辿り着いた、連邦生徒会本部上層……レセプションルームにて。
彼をここまで案内した七神リンと、その前に立つ幾人かの女子生徒との言い争いを、彼はぼけっとした、間の抜けた顔で眺めていた。
彼の人生において、女性との交流がない……という事実は存在しない。しかし彼の人生において、ここまで『女子』に囲まれたことがないというのも、事実だった。
(おーおー、どいつもこいつも元気のいいこって。しかし、それにしても――自動拳銃、SMG、
彼が目を遣るのは、彼女たちの手にこれ見よがしに握られている銃。
彼のいたところ――ソドム、ゴモラと並び称される悪徳の都オオサカにおいても、もちろん武器の流通はあった。それこそ、爆弾からミサイルまで。
しかし、所詮オオサカのそれらは大量生産品で、かつ粗悪なコピー品が殆ど。壊れれば即座に使い捨てて、使い捨てた次の瞬間には目の前に転がっている死体からスペアを回収する。彼らの武器は、その程度の
その数少ない例外が、彼の愛銃でもあった訳だが……彼がそれを好んでいたのも、彼自身の趣味でしかなく。
つまるところ、『少女たちの趣味によってカスタムされた銃』などというものは、彼にとっても珍しい物であった。
(……ふむ)
職業柄、と言うべきか。彼は目を細めて、三人を俯瞰した。
銃を持つ相手を警戒するのは、オオサカ人としては当然のことだ。ともすればキヴォトス以上に引き金が軽く、それ以上に命の軽い犯罪都市の出身としては、やはり警戒せざるを得ず――
(決めた。左から順に
おおよそ考えられる限り最低のネーミングであった。
なお、当人は知らぬことだが、それぞれの特徴に当て嵌まる生徒はキヴォトスにまだまだ存在する。キヴォトスはまさしく、オオサカとは別枠の魔境である。
さて、マトモな神経をしている大人であれば呼ぶどころか名付けすら躊躇う渾名を脳内で目の前の女子に振り分けていながら顔だけは神妙にしている
「――ちょっと待って? そういえばこの先生は一体どなた? どうしてここにいるの? あとなんで派手に殴られたみたいな顔をしてるの?」
「派手に転んだんだよ悪いか。……七神、頼む。詳しいことは
初手で七神リンにセクハラ発言をかまして制裁された、などとは口が裂けても言えない彼はそう誤魔化すと、リンに話を向ける。
リンはそれに応えて頷くと――彼が連邦生徒会長に指名された『先生』であり、そして連邦捜査部『シャーレ』の顧問である、と述べた。
「ま、そういうことだ。とりあえず、俺のことは『先生』って呼んでくれればいい。易々と信頼は出来ねえだろうが……そりゃ仕方ないだろうな。俺だって向いてねえと思うが……なるたけ、先生らしくはふるまうつもりだ。で、それはともかく」
「……?」
「そっちの早瀬は名前を聞いたが、残りは聞いてないだろ。後で名簿か何かは貰えるだろうが……自己紹介、頼んでいいか?」
ちら、と先生は視線を左へ向ける。その先にいるのは、眼鏡をかけた、黒いリボンの特徴的な、可憐な少女。彼の好みのタイプである。
「はい。ゲヘナ学園一年生、風紀委員会の火宮チナツです。先生は、ゲヘナ学園については何か?」
「いや、寡聞にしてな。だが、すぐに覚える。……しかし、風紀委員会、か」
「……? それが何か?」
「いや、『らしい』感じがするな、ってだけだ。……で? そっちの……羽根が白い方は?」
彼は脳内で彼女の名前を巨乳エルフから火宮チナツに修正し、白い方――スズミに話を向けた。彼女はチナツと同じように、軽く会釈をする。なお、スズミも彼の好みのタイプである。
「トリニティ総合学園所属、自警団の守月スズミです。これからよろしくお願いします、先生」
「ああ、よろしく。……自警団、自警団ね。活動とかはまた教えてもらうとして……えー、最後」
「ああ、はい。同じくトリニティ総合学園、正義実現委員会……副委員長の羽川ハスミです。何かありましたら、私にお任せください」
黒いロングヘアに黒い制服、おまけに黒い翼。スズミとは対照的に、真っ黒な印象を受けるハスミに対してひとつ、満足げに――あくまでもそう見えるように――頷いた。当然、話の内容に満足したからではなく、ハスミが彼の好みだからだ。
彼は一つの信念として、『胸はデカい方がいい』という信仰を持っている*1。
「正義実現委員会か。あんまり聞いたことのない名前だが……あー、名前通りの活動を?」
「はい。トリニティ総合学園の治安維持と、学園内外での違法活動の取り締まり、そして自治を行なっています」
「……なるほど。そっちの……守月の自警団とは何か棲み分けが? それとも、下部組織とか?」
「あちらは非公認でこちらは公認です」
「もう良いよーく分かったからな畜生」
彼は溜息をついた。
それは、
振り返って――風紀委員会、自警団、そして『正義実現』ときた。それらがどれもこれも秩序と正義を重んじる側。決して現時点の彼と相性が良いとは思えない……つまり、亜侠としての本性を律する必要がある、ということだ。
加えて彼女らからは、我らが偉大なる『大阪市警』*2の慣れ親しんだ匂いがしない。即ち、汚職と賄賂の腐った匂いである。即ち、
(セミナーって何かの隠語だったりしねえかな。『銀行強盗同好会』とか『合法的に他学校を失脚させる革命的正義の同志団』とかだったら喜んで協力できるんだが)
彼が考えていたのは、そのようなことであった。もしも仮にその考えがユウカ本人にバレた場合、真っ赤になって叱責されるであろう。
そしてもしも、セミナーがそのような反社会的団体だった場合――キヴォトスは今頃、地獄の紛争状態に突入していただろう。
「……はあ」
「……? どうかされましたか、先生?」
「いや、何でもねえ。セミナーってのもこの分だと、立派な部活動なんだろうな、ってな」
彼はちらり、と早瀬ユウカを見遣り、ユウカは小首を傾げつつ、満更でもない――少し誇らしげな表情をしている。
「さて、七神。話の腰を折ったが、もう大丈夫だ。続けてくれ」
「はい、分かりました。では――」
七神リンの話し出す内容と、その思惑。七神リンに苦情を持ってきた彼女らの思惑。それらは総合するに、同じゴール地点を目指しているものであり。
結果的に、彼――先生は、彼女ら四人を率いて「シャーレ」の部室へと向かうことになった。
先生としての、そしてキヴォトスにおいての、初陣である。
◆
連邦生徒会のガレージに停めてあった車を合法的*3に借用し、D.U.メインストリートまで出動した彼……先生と、生徒四人。そこで目にしたものは、爆炎と銃声、怒号の飛び交う無法地帯であった。
『違法JHP弾』なる銃弾が平然と出回る都市と、それを疑問に思うどころか単語が平然と口から出るような少女たち。ライフルを構える不良生徒に対峙する、四人の少女のうち一人――早瀬ユウカが、はたと振り返る。
「先生! 先生は戦場に出ないでください! 私たちが戦ってる間は、この安全な――あれ?」
振り返ったユウカがそこにいる彼に声を掛け――ようとしたものの。連邦生徒会製の特殊装甲車の影に、彼の姿はない。
「あれっ!? え、先生!? ええっ!?」
「ユウカ、どうしましたか?」
「先生がいないの、この短時間で一体どこに……!」
「あ、あの……皆さん。先生なら……」
不測の事態に慌てるユウカと、それを見て顔を強張らせるハスミ、スズミ。そして三者に対し、何とも言えない表情でとある方向を指差すチナツ。果たして、三者がそちらを向くと――
「――チッ、シケてやがんな! これでも警察車両か!?」
ラフに着崩したシャーレ制服のスラックス、そのポケットに手を突っ込んだまま、やけに堂に入った動きで横転したヴァルキューレ警察学校の武器輸送バン、その背面トランクのドアを蹴り上げる、先生の姿があった。
「せ……先生ェェ!? 何やってるんですか――やめっ、トランクを漁るのやめて下さいって!!」
「
「
そのままトランクの中に身体を突っ込み、あれでもない、これでもない、と不躾に物色を繰り返す先生。どこからどう見ても、もはやシャーレの先生というよりは不良生徒の元締め、あるいはインテリヤクザのようにしか見えない。
一応ではあるがトランクのドアに身を隠している――生徒に気遣っているのと、目を回しているヴァルキューレの生徒を物陰に避難させているという点がなければ、この場で逮捕されてもおかしくない振る舞いであった。
「
「
やがて、先生はトランクの中から二挺の銃を拾い上げる。それは大きく形が変わってはいるものの、かつて彼がオオサカで初めて握った銃――
「よし。……おっと、済まんなユウカ。要件は済んだ、安心してくれ」
「まず心配させないでください!! ……何に使うんですか、そんなもの」
「護身用さ。さて、諸君――」
ハスミ、スズミ、チナツの元に戻った先生が、徐に両手を広げて声を掛ける。大きな声ではなかったが、それは銃声と爆音の中でも、四人によく届いた。
「――姿勢を正せ」
瞬間、四人の背筋に奇妙な感覚が走った。
それは一等の鉄火場を前にした時の高揚にも似ていた。背骨を起点に四肢に力が行き渡り、頭の冴えてゆく感覚。全能感、と言い換えてもいい。
彼女らはそれを、先生の言葉を聞いた瞬間に感じ、そして言われた通りに背筋を正した瞬間、さらに強く感じた。
彼の
「ハスミ、お前は少し前の……そう、そこで狙撃だ。前の連中は狙わんでいい、どうせすぐに蹴散らせる。時間の無駄だ――そら、向こうのほうに第二陣が見えるだろ? あいつらを狙え」
「はい、先生」
「よし。ユウカ、スズミ、お前らは突っ込め。連中の攻撃は単調だ、俺の指示通りに隠れて、そんで撃ちゃいい。で、それとは別にお前ら、出来ることは?」
いつの間にか、苗字から名前に呼び方が変わっていることすら受け入れてしまい。それが正であるかのように疑わず、狙撃ポイントへ身を隠すハスミを横目に彼女らは順に得手を述べる。
「わ、私は……シールドを張れます。たぶん、スズミより前に出るのがいいと思います」
「私の方は、閃光弾を所持しています。オーダーメイドですので威力も高いですし、撹乱に使えるかと」
「上等だ。遮蔽を上手く使えよ。で、チナツ――」
最後に話を向けられたチナツはぴくり、と肩を震わせる。
荒事に適性がない、訳ではない。しかしどちらかと言えば、前に出るタイプでもなく、所持している銃の火力もまた、高くはない。
ならば果たして、自分はこの戦場で役に立てるのか――そう思考が巡りそうになった彼女に、しかし先生は感嘆したように声を溢す。
「――へえ、驚いた。お前、参謀適性があるのか」
「……え?」
「冷静に全体を俯瞰して、必要な味方に必要なだけのサポートを出す。前に出てドンパチやるよりよっぽど貴重ってことさ」
チナツに
本来の『先生』のそれとは違えど……彼のそれもまた、『先生』としての振る舞いであることに、違いはなかった。
「それ、照準器付きか……つくづく悪くねえ。……よし。チナツ、お前は俺の横で指示出してみろ。なに、どこを見りゃいいかは教えてやる」
「……は、はい!」
「大丈夫だ。何かあったら俺がきっちり
彼はそう言って、先生らしくにっ、と微笑んで。
いつものように――亜侠として、背中を預ける仲間たちのリーダーとして。彼ら、彼女らを奮い立たせる決まり文句を言い放った。
「――さァ諸君、仕事の時間だ派手に行こう! Rock’n Rollに決めようぜ、
そしてスズミが爆速で振り返った。
「ベイビー!? 先生もオスティンを聴くんですね!?!?」
「オスティンはロックじゃねーだろ。まあ聴くけど」
つまりは、そういうことであった。
どういうことだよ。
Tips:宿業(カルマ)
様々なTRPGと同様に、「サタスペ 」にもPCやNPCの「ジョブ」や「スキル」に該当するものがある。それがカルマである。
「リーダー」や「参謀」はそのうちの「ベーシックカルマ」といい、PC作成時に決定する生まれ、ジョブのようなものである。
ベーシックカルマには「リーダー」「参謀」「技術屋」「荒事屋」「マネージャー」「道化師」の六種類が存在する。
ブルアカのキャラでいうと、
リーダー:ホシノ、アル、ヒナ
参謀:アヤネ、カヨコ、チナツ
技術屋:ヴェリタスとエンジニア部のゆかいななかまたち
荒事屋:シロコを始めとした大凡のキヴォトス人
マネージャー:ノノミ、先生
道化師:先生(イオリのメモロビ)
こんな感じかと。