おめでとう!悪役令嬢は悪のカリスマに進化した!   作:ギブソン・ガール

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資料:一般魔術教養

◯はじめに

一般魔術教養とは、現代において我々に必要不可欠な魔術についての教養を深める為の知識並びに知見であり、これらを習熟することで普段の生活をより豊かにするものである。

これらを深く学ぶことで、学生として模範的な魔術の研究に役立つ事があれば、先人たちが研究に捧げた過去に報いることが出来るであろう。

 

1章:術式

魔術とは、様々な術式と魔素を用いることで引き起こす事が出来る現象である。

一般的な魔術体系は、詠唱術、錬金術、霊薬術、紋章術がある。

更にその中でも、邪術、妖術、呪術、化術、念動術、属性術、錬丹術、水薬術、丸薬術、粉薬術、印形紋章術、壁画紋章術、紙面紋章術など、数多くの派生魔術体系がある。

これら全てを含めた術式(発音、書式、調合法、印形)は、中央魔法院に届出されたものだけで、約16000程であり、更にそこに届出されていない違法術式(禁術)も含めると推定で約20000にも上ると発表されている。(1979年の際の資料を参考)

 

◯魔素

魔素とは、体内で生成される体液内に混和する魔術による干渉現象を引き起こすための源泉である。

主に術式を発動する際に消費されたり、錬金術や霊薬術の素材として利用される。

公暦1721年にユナニ・ピポテラスが発表した論文『四体液説』でも書かれている通り、体液中に含まれている魔素は、各種体液によって性質が異なり、詠唱の際に消費される『血中魔素』や、錬金術の際に金属粉末と魔力性液剤の混和を誘発する『黄胆汁魔素』などがある。

また、過剰な詠唱によって体内から魔素が欠乏した際は『魔素欠乏症』が発症する場合がある。

これは人体の恒常性(ホメオスタシス)を保つ為に脳や臓器から魔素を分泌する作用が通常よりも早急に発生し、その体内環境の急激な変化によって身体に様々な悪影響(目眩、動悸、嘔吐反射など)を与える症状である。

 

●補足

ユナニ・ピポテラスは、多血質(最も血液に魔素が含有されている比率が高い体質)の人間の気質や性格がある程度同一だった事を発見し、どの体液に魔素が多く含有しているかで、個々人の気質や性格に影響を及ぼしているという、『四気質論』を公暦1723年に発表した。

論文によれば、『多血質』『黄胆汁質』『黒胆汁質』『粘液質』には典型的な気質の類型がある。

なお、これらの体質は遺伝によって先天的に生まれ持つが、長年の食生活の変更や生活習慣の変化によって、稀に後天的に体質が変わる場合がある。

 

・多血質

比較的社交的で、図々しいが気前もいい。

第二次性徴の発現が早く、性欲が旺盛である事が多い。

体質は筋肉質で、脈は規則的で皮膚はぬくもりと弾力があり、胃は丈夫だが太りやすい。

血中魔素は詠唱術との親和性が高い。

 

・黄胆汁質

短気で行動的、野心も強い。気前がいいが傲慢で、社交性が低く気難しい面もある。消化力が高く大食だが、やつれて見える。脈が速く心臓に負担がかかる気質で、肝臓や腎疾患に陥りやすい。

黄色味がかかった乾燥した肌をしており、硬くて水気に乏しい筋肉をしている。

黄胆汁中魔素は錬金術との親和性が高い。

 

・黒胆汁質

寡黙で頑固、孤独癖があり、運動も休養も社交も好まない。強欲で倹約家、利己的で根に持ちやすい。神経質で自殺傾向がある。注意深く明敏、勤勉で、一人で思索に耽ってばかりいる。黒胆汁は主に狂気・精神錯乱と関連する体液といわれたが、天才を生み出す体液だとも考えられた。土気色で乾燥した冷たい皮膚をして、たいてい痩せている。脈は遅く耳は遠い。欠尿症や便秘や下痢になりやすい。

黒胆汁中魔素はほぼ全ての術式との親和性が高い。

 

・粘液質

精神的に鈍く優柔不断で臆病だが、おだやかで公平、人を騙したりしない。背は高くなく極端に太っているか痩せている事が多い。血の気のない皮膚の色で、肉質はやわらかく肌は湿っている。脈は遅く弱く胃弱で下痢や末端冷え症になりやすい。貧血や腺病、風邪に罹りやすく、耳鳴りや難聴になりやすい。

粘液中魔素は霊薬術との親和性が高く、特に水薬との相性は非常に良好で、実験や調合の為に粘液を買い求める霊薬術師相手に、唾などの粘液を売買する業者も存在する。

 

◯詠唱術

詠唱術とは、口頭による発音(発音詠唱)、文面に書き起こした詠唱文(書体詠唱)、思考による詠唱(無言詠唱)、または動作による表現(動作詠唱)によって魔術的効果を発動する術式である。

最も一般的である発音詠唱は、術式を直喩または比喩する文言の羅列を発音することで、体内にある魔素が含まれる体液(主に血液)が消費され、発音された文言を再現するために空間または人体に干渉が発生する。

詠唱の際には脳内に強い想像で、魔術的に干渉された状況を正確に予想する必要があり、魔術に対する信頼感と具体的な効果が再現される為の知識が必要となる。

 

つまり、詠唱術とは想像を現実に干渉させる術式である。

 

・例文

【我が内なる火よ、目前の木を燃やせ】

これは火炎術の一般的な口頭詠唱の術式であり、これを具体的に想像しながら、正しい調音と抑揚で一定の速さで発音することで、体内の魔素が消費され、この術式は完成され、現実に干渉し火炎が発生する。

 

なお、【】内に書かれた文字は術字であり、一般的には書式詠唱に使われる。

術字は主に資産購入契約や後払い決算契約の際に使われる。

 

無言詠唱は、脳内で術式の文言などを思考し、発音せずに発動する詠唱術である。

この際、他の詠唱と比べて非常に強い想像を働かせる必要があり、また公暦1880年にウェスパー・ヴォルフ・ラスペニア・パーシルが発表した論文『各種詠唱による魔素消費率の比較』によると、無言詠唱による魔素の消費率は各種詠唱の中で最も消費率が高い詠唱方法であった。

 

動作詠唱は、身体、杖、魔導書、武具、文房具、掃除用品、食器などの術式媒体を用いてある一定の動作や、舞踏、演武などによって詠唱される術式である。

これらの動作詠唱は、一般的には発音詠唱と組み合わされる事が多く、身体を自身の想像のままに動かすことで、より具体的な魔術的効果を脳内で想像し易くなる為である。

 

・詠唱の短縮および改変

術式の文言に描写する必要がない不必要な文言があったり、文言や動作によって発動する現象に合点がいかなかったりした場合は自由に術式を短縮したり改変したりすることが出来る。

これは一般的な風潮や風聞によって左右される事が多く、例として火炎術は老若男女誰でも使っているので、自分にも出来るという確信や火は魔術で起こすものという常識によって、容易に想像や予想がし易く、また数多くの魔術師が術式を改変した、短縮したと発表したり、様々な場面で披露しているので、術式の短縮および改変の難易度はかなり低いと思われる。

 

◯錬金術

最も狭義には魔術的手段を用いて卑金属から貴金属(特に金)を精錬しようとする試みのこと。広義では、金属に限らず様々な物質や人間の肉体をも対象として、それらを錬成する試みを指す。

なお、公暦1613年からは人体の錬成は永久禁術指定となっており、仮に人体錬成を試みて逮捕された場合は、終身刑または死刑である。

 

・蒸留精錬法

卑金属を溶液化したり気化させるなどして他種類の金属粉末と魔力性液剤と体液を混和し、再度凝縮または凝結することで、目的の金属や物質を混和物全体の質量と同じ量で精製する方法である。

金属粉末の調合割合や使用する体液、卑金属の性質、加熱時間、攪拌時間などを綿密に考慮する必要がある為、設備や用具が整った研究室や実験環境が必要不可欠である。

なお、貴金属の錬成には事前に中央魔法院へ届出する必要があり、また、公務錬金術師資格と錬金監督員が必要である。

届出にない貴金属の錬成は違法であり、逮捕された場合は10年以下の収監および実験用具の押収、研究室の差押え、資格の失効である。

 

●補足

大東亜華国や日出国では錬金術に似た『錬丹術』という魔術体系が存在する。

こちらが卑金属から貴金属の変換を主目的としているのに対し、あちらは丹薬を精製する事が主目的となっている。

そのため錬丹術はこちらの錬金術と霊薬術が合わさった様な術式と言える。

 

 

 

 

深夜、女子寮談話室。

カリカリ、と硬筆が帳面を滑る。

べアトリックス・セネルは勤勉だ。

普段から色々とリーゼに授業内容の予習や復習を手伝ってもらっている。

だが、中間考査を目前にすると、リーゼは少しだけ付き合いが悪くなった。

セネルは、流石のリーゼも考査前に人の面倒を見る余裕は無いのだろうと思い、こうして自主的に勉強をする事にした。

現在勉強している『一般魔術教養』は必須科目だ。

万が一にでも赤点を取ってしまえば、態々自分に時間を割いてまで教えてくれていたリーゼに申し訳が立たないと思い、彼女は今復習している。

 

ふと、ゆらゆらと湯気を燻らす紅茶を見て、何となく硬筆を置き、一啜りして、ほう、と一息ついた。

 

そういえば、リゼさんは今どうしているのだろう。

 

ここで彼女は、ただただ自分が勉強を見てもらって世話になっているばかりで、ロクに彼女のことについて知らない事に気がついた。

中間考査が終わったら、一緒に喫茶店に行って、少し新鮮な環境と気持ちで他愛もない話でもしよう、と思い立った。

思い立って、彼女は地図を自室に取りに帰り、学院に近い喫茶店なり何なりを探したり、財布と睨めっこしたりしている内に、結構眠くなってしまったので、さっさと硬筆と帳面を仕舞って、少し冷めた紅茶を一気にグビっと飲み干して、覚えたての洗浄の術を唱えた。

 

ピカピカに綺麗になった陶器の紅茶碗(ティーカップ)を見て、気分が良くなったので、自室の引き出しに隠した秘密の帳面に詩を書いた。

 

これは誰にも明かしていない秘密の趣味、もしいつか明かすなら、この学院に入って最初にできた友だちである、リーゼに話そうと思った。

 

あの、いつも無表情で氷の様な顔貌がどう変化するか、少し気になってきたので、いつかとても気分が良い日が来たら、彼女に打ち明けてみて、詩の出来を評価してもらおう、と思いながら、枕を抱きしめて眠った。

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