せっかくファンタジー世界に転生したのだから、楽しく生きたい 作:オルトって美味しいのかな?
プロット作れって話なんですけどね。
穴があったら入りたいと言うのは正にこの事。
あれだけ、大見得を切って、自分の考えていたカッコイイ必殺技をぶっ放したのにそれが決め技にならないとか……
締まらなすぎる……
まぁ、くよくよしても仕方ない。
むしろ感謝しなくてはならない。
自分が、あらゆる面で足りないという事が理解できた。
こんな事では竜殺しなぞ、夢のまた夢。
修練あるのみ、幸いまだ成長期は終わっていない、まだまだ先はあるはずだ。
なんとか巨大魔猪から槍を引っこ抜き、改めてそれを観察する。
色々言いたい事はあるが、どうしてコイツの牙は金属なの?
牙なんて当たるとアウトなのはわかりきっていたから、躱す事しか考えていなかったけど、マジマジと観察していなかった。
が、手触りといい槍で突いた感触といい、絶対金属だ、何を食べたらそうなるんだ。
せっかくだから、一部をお持ち帰りして何かしらの素材にしよう。
自分の故郷の成れの果てを見る。
先日まで活気のあった町も、今では見る影も無い。
帰路の最中に想像していた事だ、衝撃は無い、自分と戦った魔猪は満身創痍には程遠くても全身に傷を負っていた、何よりも自分が帰る路から現れたのだ、そりゃそうだと言う感想だ。
あの魔猪は町を襲ったのだ、そして町の戦士や魔術師と戦ったのは間違いない、でもだとしたらあの魔猪のダメージ量が少なすぎるし、町の人口から考えると遺体の数が少なすぎる。
成程、非戦闘員を町から逃がしたのか、そう考えると納得できる、護衛もそれなりに要るだろうし、そう考えると納得ができる。
自宅への帰路の最中に、戦いの跡を何となく観察すると、武器が無いという事実に気が付く。
正確には、槍や剣で言う所の穂先や刀身のみが無くなっていた事から、前世の常識では考えられない事を考え付いた、あの魔猪にとって金属が餌だったのだろう、だとしたら、あの硬い身体と牙にも理解が及ぶ。
前世の常識が通用しない世界に来たなと、常々思っていたけど、こういう発見をすると、自分がまだまだ前世の常識に囚われていることを痛感する。転生して十数年も経って、この世界に馴染んだなと思っていたが、まだまだだったようだ。何かしらの方法で殻を破らないと、この世界で名を残すなんて夢のまた夢だ。
そんな事を考えていると、あっという間に自宅に到着した。
半ば覚悟していた事だけど、当然のように父と母の出迎えは無い。
「すぅーはぁー」
深呼吸を一度。
覚悟はしていた、あの人達の事は十数年だが毎日接していたから、どういう人達なのかは理解している。
父は戦士であり、母は魔術師、両者とも違いはあれど、普段から死を覚悟している点では同一だ。
父はその職務を果たし、母は魔術刻印を自分に継承した時点である種の役割を終えていたから、父と共に逝く事を選ぶのは容易に想像できた。
自分が帰宅するのは、分かっているはずなのに、出迎えが無い時点で、どういう事なのかを察する。
色々な事がこみ上げてくるのに、不思議な事に涙は流れない。
町中の形を残している遺体を集め、埋葬する。
残念ながら両親の遺体は見つからなかった、代わりに見つけた父の剣と母の杖を埋めた。
それから、再び実家に戻って、地下室の魔術工房に入って価値のある魔術礼装と貴金属や金銭的価値のある物品を持ち出す。
自分はここに留まらない。
自分はこの町を復興しない。
ここに留まってしまえば、自分は停滞してしまう。
それは、父と母、そして自分が望むべきものでは無いと思う。
考え方を反転させる、決して今日この日は忌むべき日では無い。
今日この日は、自分がこの町から旅立つ祝日となる日なのだ。
そう考えた方がきっと素敵。
両親を亡くした日と思うより、生まれた町から自分が旅立つ日なのだと記念するべき日。
これはきっかけなのだ、悲しむべき日では無い。
新たな門出。
そう夢想する事で、両親の死を悲しむという傷むべき日から、新たな自分への門出とする日にへと変換する。
まずは小人が居るとされる、北部へ。
採取した魔猪の金属の如き牙の精密加工は自分では不可能、加工技術に秀でた小人の技能が要る。
そして、その最中にあると噂される、人界の世界樹と言わる大樹の観察が目的だ。
流石に、本物の世界樹であるはずは無い。
本物の世界樹はこの北欧世界の要、あるいは北欧世界を内包する宇宙そのもの。
そんな物が、人界に有るはずが無い。
だがそんな事は、北欧世界に居る人には周知の事実。
そうでありながら、そう称されるのには理由があるはず。
自分は魔術の徒にして、槍を持つ者、北欧にて最大の魔術神を模倣する者。
そんな自分にとって、世界樹という存在の重要性は語る必要は無いだろう。
オーディンは嘗て、世界樹に首を吊り、槍で串刺しにして、魔術の神である自分自身に自身を生贄とする事でルーンの秘密、ルーンの深奥、すなわち原初のルーンを知った。
これもまた北欧世界では周知の事実だ、だが何故、そうなったのかを考察する人や神は居ない。
オーディンは、北欧世界では最大の魔術師の名であり神の名、すなわち魔術神である。そんな存在が、自分を生贄にする事でしか得られれない知識とは、そもそも、そんな苦行をしなくても最初から知っているのでは……と考察を続けて、ある一つの仮説を思い浮かべる。
そして、実際に人界の世界樹と言われる大樹を見て、その仮説を検証しようと決心した。
確かに、この大樹は人界の世界樹と称される事はあるだけはある、それ程の大きさのトリネコ木だ。
これを見て、自分の内側からインスピレーションが沸々と湧きだしてくる。衝動的に、そうしろと命じてくるかのように、その衝動に自分は抗う事をせずに準備を始めた。
「人払い、獣払い、魔物払いの結界良し!縄の魔術措置良し!槍の魔術措置良し!自分自身への蘇生・回復魔術の予約措置良し!ふぅ、失敗したら母に叱られるな」
大樹の枝の上で、縄を首にかけて、槍を手にして準備完了。
ぴょい!と枝から飛び降り、降りきった瞬間に、槍を自分に突き刺す。
その瞬間、この儀式は成り立った。
その儀式を遠くから見ていた隻眼の老魔術師は、口角を上げて笑う。
「ふむ、まさかあの儀式を真似する大バカ者が現れるとはな。問わねばなるまい、何を見て、何を得たのかを」
今まで、主人公の名前出てこない事に気が付いた。
次回に出てくるけど、古ノルド語は私にはさっぱり理解出来そうに無い。
だから、適当に付ける事になるけど許してね主人公。