とあるポケモンの、歩き続けた先の未来と回想。

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いつか見た日々

 

 

 

 

 

『…………。』

 

 

 

土砂降りの中を歩く。

 

 

 

宛も無いまま、ただひたすらに。

 

 

 

既に体力は尽き、得意の念力は使えない。手足の感覚はもう無く、歩けているのが不思議だった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ーーーー

 

 

ーー

 

 

 

 

 

 

 

『……!』

 

 

気絶していたようだ。

一体どれぐらい歩いただろうか。気づけばもう自分の身体は地面に伏していた。

 

 

身体を動かそうとするも、ピクリともしない。視界もボヤけすぎて、景色の区別がつかない。

 

 

 

『あはは…もう、ここまで…かな…』

 

 

 

そう思うと不意に、今までの出来事が頭の中で駆け巡る。

 

 

 

 

1人目に出会ったのは快活な少女。

駆け出しトレーナーで、他のポケモン達も希望に満ち溢れていた。

…いつからだったろうか。

現実に打ちのめされ、みるみる冷徹に、無機質に手持ちのポケモン達を厳選し始めたのは。

 

 

2人目は無愛想な青年。

捨てられた失意に塗れてたまたま道端をフラフラしてた所を見つかりあっさり捕まえられた。

手癖も気性も荒く、バトルに負けると何度も怒鳴られたり殴られたりした。

それが嫌で必死に強くなろうとしたけど、一向に進化しないからってまた捨てられたんだっけ。

 

 

それからは人間を見るのが嫌になって、森へと逃げた。

 

 

しかし、そこはナワバリ争いが激しくいつ死ぬかも分からない森だった。誰も居ない場所を見つけては休み、見つかってはナワバリ争いに巻き込まれながらも必死に逃げ続けた。

 

 

 

今までトレーナーやポケモン達から受けた自身への扱い。

 

逃げ続け、苦しんだ先に見つけた唯一の居場所。安息の地。

 

…そしてつい数日前、それも崩れ去った。

 

 

 

 

《きっと…君の居場所がある筈だ…》

 

 

 

 

今は亡き声が頭の中で響く。

 

『………。』

 

一滴の涙が、泥に汚れた顔を伝う。

 

 

 

 

 

 

《だから…どうか…生きてくれ。》

 

 

 

 

 

『……居場所、見つけられなかったなぁ…』

 

 

微かに吐き出した言葉は、ポロポロと溢れ出る感情を止められない。

 

 

 

『やっと、あなたのとこに行けるの。やっと、邪魔にならなくなるの。』

 

 

 

『なんでこんなに…悲しいの…悔しいの…』

 

 

 

 

『どうして … ねぇ … 誰か … 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たすけて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え………!オ…!……て!」

 

(…………?)

 

声が聞こえる。知らない声だ。

 

 

(わ…)

 

 

 

直後、抱きかかえられた感触と同時に身体が持ち上がる。

 

 

(あたたかい…)

 

 

辛うじて残った感覚には、温もりをいっぱいに感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーーーーー!』

 

 

目を覚ませば、ベッドの上。

ゆっくり上体を起こした目線の先には窓、外には静かな風が流れて木々を揺らしている。

 

『…あ…。』

 

自身の頬に触れると、水滴が手を濡らした。

 

バタン!!

 

「おはよーーっすシア!!珍しく盛大にねぼすけだな!!今日のお昼ごはんは久々に俺直々の秘伝こくうまカレーライ…す…」

 

おたまと人参を持ったまま硬直する青年。

恐らく今自分の顔は酷いことになっているのだろう。

はっと我に返り急いで涙を拭き取る。

彼は即座に手に持っていた物をその場に置き、駆け寄る。

 

「…どうした?」

 

普段とはあまりにもかけ離れた神妙な険しい顔つきは、ずっと見ていると何処か可笑しく、それでいて…

 

『ーーーーーーぷっ』

「えっ」

 

『ふふっ、あはは!』

 

思わず笑ってしまう。

 

「はっ…?ちょ、なんで笑うの?」

 

ポカンと呆けた顔で聞き返される。

 

『なんだか普段のあんたと違いすぎて、なんだかおかしくなっちゃった…ふふ』

「は!?なんじゃそりゃ!!こっちは本気で心配したんだぞ!!」

 

『大丈夫、ちょっと昔の夢を見ただけよ』

「っ…!それは、大丈夫なのか…?」

 

酷い顔になった理由に彼の表情が再び曇る。

 

『今笑えてるんだもの、それが証拠じゃない?』

「そうか…それもそうだな!…でも、あんまり無理はするんじゃないぞ?」

『当然。誰かさんと違って常に自分の管理は完璧ですから。』

 

「うぐっ、それは何も言えん…ところで、その横にある俺が写ってる写真集はど」

『ッッ!!?』

 

がしゃーーん!!!!

 

「あ"あ"あ"ああああああぁぁぁぁぁ…」

静かな木々をサイコキネシスで吹っ飛ばされた断末魔が駆け巡る。

 

『あれ〜、また飛ばされてるよ』

『今度は何やらかしたんだ?』

『眠い』

『カレーまだ?』

 

 

 

 

 

『…ふう』

 

 

 

ーーねえ、"ーーー"。

 

 

あなたの望んだ通り、自分の居場所を見つけたよ。

 

新しいトレーナーは、その…アホでデリカシーなくて弱虫で万年金欠で、どうしようもない猪突猛進野郎だけど…あなたと同じぐらいとっても頼りになるの!

 

…いつかそこに行く時は必ず、あなたが居なくなった後の色んなお話を持っていくわ。

 

もちろんこいつらも来た時は真っ先に紹介するわ!賑やかになること間違いなしよ!

 

 

 

だから…もう少し待っててね。

 

 

 

 

 

『…あ、窓片付けなきゃ。』

 

 

 

居場所を見つけた彼女は、今日も賑やかに過ごしている。

 

 


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