そのラスボスである『ダラサンテン』の物語。
※この小説はゲーム『誓いノ淵』製作者である上級騎士なるにぃ様のゲーム内容紹介動画を物語風にまとめたものです。
物語という形に整えるため、幾つか捏造設定がございます。ご注意ください。
処女作ですのでかなりの稚作です、ご了承下さい。
これを機に誓いノ淵に興味を持っていただけたら幸いです。
またもしあなたがなるにぃさんの動画視聴者なら、あなたもぜひ誓いノ淵小説を書いてみませんか。
私も誓いノ淵小説を読みたいです(強欲)
ある大国。そこの酒場の一角のテーブルで、声を上げる者がいた。
「さあさあ皆さんお聴きあれ。旅芸人の吟遊詩人、今宵語るは最後の魔女、その父についての物語。かの者の名はダラサンテン、かつては偉大な大英雄。しかし後には処刑人。数奇に過ぎる運命は、涙無しには語れない。長い夜とはなりますが、酒を片手に是非お付き合い願います。」
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時は大昔。とある大国に、一つの知らせが舞い込んだ。
高名な探検家の口から飛び出たその言葉は、甘い響きを帯びていた。
彼は言った。「我、呪われた地の奥深くにて、人の願いを叶える野人を発見せり」と。
国は数多の冒険家を雇い、呪われた地の調査を命じた。呪われた地の名に恥じぬ過酷な環境を前に、調査隊は屍の山を築き上げた。だがその山は足場となり、遂に調査団は件の野人の集落を発見した。
野人たちの力は目を見張るものだった。人の願いをほんのひと時、この世界に顕現させる、それが野人たちの力であった。その力は力を持つ者自身の願いを叶えず、他人の願いをのみ叶えた。
喜んだのは国の上層部。いや、正確には国中が喜んだが、統治者である上層部の喜びはその中でもひとしおだった。何せ、自分たちの国にこの世の楽園が生まれ出でるのである。喜ばないわけがない。
そんな彼らが次に考えることは、いかにして野人たちの力を最大限引き出すかという事だった。人々が別々のことをそれぞれ願っていては、その願いの顕現はきっと小さなものとなるだろう。いや、時には相反して対消滅を起こすかもしれない。誰も考えたこともない力だ、懸念事項は山ほどあった。
そして彼らは考えついた。野人の力を神の慈悲とし、神の名の下に楽園を求める。そういう宗教を作ろうというアイデアだ。さらにこの宗教を、民衆と同じように野人たちにも広げよう。そうすれば楽園を信じた野人たちが、人々の悲願に感応し、本当に地上に楽園を生み出すに違いない。そう考えた。
そして野人たちは魔女の名を与えられ、野人の力は魔女の救済となった。
魔女全盛期。世界は神の慈悲を信じ、その恩寵たる魔女たちを信じ、彼女らから救済を賜っていた。
全ての絶望は希望へ転じ、あらゆる苦難は快楽となる。
魔女と神とを讃える世界は、だが不完全でもあった。
—魔女の力は完璧ではない。願いに応え続けた力はいずれ暴走し、多くの人を傷付ける—
その事実を知る上層部は魔女を恐れた。恐れ、忌避し、しかし一度味わった甘い奇跡は、手放すことなど出来ようはずもないものだった。
故に彼等は、魔女が暴走する前に、殺してしまうことに決めた。そして魔女を信奉する民たちへ、こう嘯いたのだ。
「魔女は蛮地の野人を祖に持つ、原初の罪背負う者たちである。他者を救うことでその罪は雪がれ、彼女らは天国へ昇る権利を得る。故に我々は多くの人を救った魔女たちを殺し、天国へ送り出すべきである」と。
その言葉は偽りであった。しかし時が経つにつれ、その真偽は問題ではなくなった。
民は死にゆく魔女を祝福し、魔女たちは自らの死に歓喜する。それが真の救いであると信じて。
そうして生まれたのが『魔女の処刑人』。魔女を殺し、天国へ送る。しかし魔女を殺す罪により、処刑人本人は地獄へ落ちるという忌み仕事。
こうして体制は確立された。多くの犠牲があるとは言えど、確かに人は救われていた、そんな体制だった。
しかし、人は完全ではない。人の作った体制もまた、完全などではなかった。
魔女の処刑が当然の日常と成り果てたある時、魔女を憐れみ、その刃を振り下ろさなかった処刑人がいたのだ。
魔女の死は、魔女を救済する事である。その常識が染み付いた時代に、何故魔女に憐れみを抱いたのかは分からない。その真実を知るは、当の処刑人のみである。
だが一つだけ確かに言えることがあるとすれば、その処刑人の優しさは、何者も救わなかったという事だ。一人の魔女は死による救済を失い、そしてその力は暴走した。
その災いは地を覆い、街は不吉で満たされた。
多くの人が狂い死に、悲しみの帷が訪れた。
そしてその帷は、英雄ダラサンテンの最愛の妻にも、他と等しく下りたのである。
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ダラサンテンは怒った。彼の臓腑は激情の炎で煮え繰り返り、彼の大斧は妻の仇の血を求めて妖しく輝いていた。
心の猛りそのままに、ダラサンテンは突き進んだ。魔女を守るために立ちはだかった特異な処刑人など、英雄と呼ばれた彼の敵ではなかった。
そしてその大斧でもって、暴走する魔女の命を絶ったのだ。
怒れる英雄の手によって、悪しき魔女は打ち倒され、街に平和が訪れた。
一目瞭然な大団円。誰もが思うハッピーエンド。英雄ダラサンテンの伝説に、また一つ偉業が刻まれた瞬間であった。
だがしかし、伝説には一つだけ瑕疵があった。それは倒された魔女が、根本的には悪ではなかったという事実。本質的には救いをもたらす存在である彼女は、死の間際、暴走する力を抑えて、ダラサンテンの為に祈ったのだ。
「どうか私を殺す彼が、私を止めてくれる彼が、苦しむことが無いように。彼が成し遂げてくれた殺しが、彼を苛まぬように。心を止めて無くしてしまい、二度と蘇らぬように。いつかみんなと、再会できるその日まで。」
その祈りは、きっと的外れだったのだろう。ダラサンテンは戦争の英雄であった。人殺しなど慣れたもの、苛まれるなどありはしない。ましてや彼は妻を殺された憤怒のままに、その魔女を殺したのである。自らの所業を誇りこそすれ、苦しむことはきっと無かった。
だが奇跡の力は振るわれた。魔女の最期の救済は、呪いに近いナニカとなって、ダラサンテンの心を失わせた。それが彼の救いになると、心から信じて。
救われない話である。
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心を失うその間際、ダラサンテンは強く思った。もうこのような悲劇が生み出されてはいけないと。魔女を憐れむ処刑人は、絶対にあってはならないと。胸を焦がすその想いは、心と共に失われ、だが彼の魂の奥底に、しっかと刻みつけられた。
こうして心を失った英雄ダラサンテンは、自らの魂の叫びに従い、自分が殺した者の職務を継いで、魔女の処刑人となった。
その執行に一切の躊躇をも持たず、その貌に一切の憐憫をも宿さない、心を持たぬ絶対の処刑人に。
処刑人とは魔女殺しの業を背負い、いずれ地獄へ落ちる者。処刑人になったダラサンテンは、人々からこう呼ばれた。
「魔女を殺した罪により、すでに魂が地獄へ落ちた、罪深き者ダラサンテン」。
心を持たぬ彼の様は、何も知らない者からすれば、魂を持たぬように見えたのだろう。
しかしそんな彼の救済を、強く望む者が一人いた。
彼女の名はルーニャ。ダラサンテンとその妻との間に生まれた一人娘、その人である。
ルーニャは父の失った心を何とか取り戻したいと考えていた。が、何をしても無駄。何度話しかけようと、何度笑いかけようと、ダラサンテンの心は戻っては来なかった。
彼女の周りにいる者たちは、彼女に対して語りかけた。
君の父は、ダラサンテンは、魂が無くなってしまったのだ。処刑人としての宿命が、早くもその身に降りかかったのだ。だからもう諦めなさい。そう言った。
君の父親は、もう戻ってこないのだと。
だがルーニャは諦めなかった。お父さんが地獄にいるならば、その罪をわたしが引き受けよう。わたしが魔女となり、お父さんの罪を背負おう。そう考えた。
そしてルーニャにはその資格があった。何の因果か、彼女はなんと人と魔女のハーフだったのだ。奇跡を起こし、人を救う魔女。救済たる資格が、彼女には与えられていた。
周りの制止の声も聞かず、ルーニャは自ら魔女になると手を挙げた。
処刑人が救われぬ定めだというのなら、せめて自分だけが処刑人のための魔女になろうと決めたのだ。
全ては父の心を救う、その為に。
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魔女となったルーニャは、何とかして父の罪を清算しようと考えていた。
自分はいつか必ず、処刑人たる父の手で死に至る。だから何とかそれまでに、自分に許された命の時間を使い切ってしまう前に、父を救いたいと願っていた。
そしてそんな日々の中、ある事件が起きた。
クーデターか国家改造か、その内情は分からないが、何らかの政治的な争いにより、神の正体が明らかになったのだ。
神の正体とはただの虚構。過去の国家上層部が考えた、魔女の力を効率よく利用するための幻想。この世界に神などおらず、魔女の救いは幻にすぎない。それが真実だった。
そう、魔女の力とは幻だった。願いを一時的に成就させると言うその能力は、相手に幸せな幻を見せることで成っていたのだ。
当然、国は荒れに荒れた。これまでに信じていた神の慈悲は、魔女の救いは、ただの幻に過ぎなかった。この真実は民たちの怒りに火をつけ、魔女の力は悪魔の力と呼ばれ始めた。
神と魔女を前提としていた国家はひっくり返り、全ての魔女は処分されることが決まった。
だが民衆は気付いていた。神の話が嘘であったと言うのなら、魔女の処刑にまつわる話もまた嘘である。
すなわち魔女もまた、被害者である。それを知りつつも魔女を糾弾していったのは、魔女を放置していてもリスクしか産まず、後の時代のためにもここで何とかするしか無いと思っていたからだろう。
とはいえダラサンテンとは違い、彼らには心がある。
魔女を殺すこと。かつて地獄に落ちる大罪だと思われていたそれは、全て嘘だと知ってなお、心が痛むものだった。
故に彼らは願った。せめて今から殺す魔女たちが、本物の悪魔であることを。殺されるべき、悪の権化であることを。
そして、人々に願われた魔女たちは、怪物となった。
魔女狩りの時代、その始まりである。
神も、楽園も、全てが偽りだと知った魔女たちは絶望し、全てを攻撃し始めた。人々の願いによって怪物となった身体は、それに適していた。
魔女が人を殺し、人が魔女を殺す。偽りとはいえ、救済を与え合っていた魔女全盛期とは真逆の光景が出現した。
だが、一人だけ、誰とも戦わず、また怪物にもならず、逃げ延びた魔女がいた。
魔女の処刑人ダラサンテンの娘にして処刑人唯一の救済、ルーニャである。
処刑人の救済となったルーニャは、処刑人の願いを叶える。しかし心を持たぬダラサンテンが何かを願うわけもなく、ルーニャの姿は何も変わらなかった。
またルーニャは、誰もが捨てた信仰を未だに信じていた。父の心を救うには、もはやこの道しかないと考えていたからだ。
今更偽りだったと梯子を外されても、もうどうすることもできない。ルーニャにはもう、ひたすらにその道を邁進し続けるしかなかった。
ルーニャは逃げ延びた。母の故郷、自分たち魔女のルーツ。
呪われた地の奥深く、野人たちの集落へ。
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魔女狩りの炎から逃れることができたルーニャ。
しかし彼女の顔が晴れることはなかった。
彼女が最も大切にしている人、父ダラサンテンを国に置いてきてしまったのだ。
自分がいなくなってしまったら、父を救ってくれる者は誰もいない。ルーニャは何とか、父を救う方法を考えだそうとした。
そして一つだけ思いついた。神への奉仕により、父の罪を赦してもらおうと考えたのだ。
ルーニャは野人たちの集落、自分の母の故郷にて、神の話を広め始めた。
偽りの神話として、本国ではすでに誰一人として信じる者の居なくなった神話。これを広めることが、今の自分にできる何よりの神への奉仕だと、彼女は信じ込んでいた。
当然のことながら、応える神はいない。彼女の奉仕はただ、無意味なものであった。
そしてその果てに、ルーニャの力は暴走した。
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処刑人の救済たるルーニャは、怪物となることはない。しかし、魔女生来の制限に打ち勝つことは出来なかった。
暴走したルーニャの力は強大であった。
魔女の力は幻を見せるもの、しかしそれだけとは言うなかれ。
魔女の力の暴走とは、見境のない暴力的なまでの救済。
人に幸せな幻を見せ、廃人状態にしてしまうのだ。
ダラサンテンの妻を殺した力と同じ、人を狂わせる幻覚が、あらゆるものに襲いかかった。
この魔女の噂は瞬く間に国中に広まった。
大いなる災厄。人を廃人にさせ、狂い死なせる。
そんな災いを放っておくわけにはいかない。ルーニャは悪魔と認定され、討伐隊が派遣された。
討伐隊を率いるのは、魔女の処刑人ダラサンテン。
魔女を処刑せよと言う魂の声に従い、魔女狩りに命を賭けてきた男。
黒騎士としての彼の経験は、忌み仕事に就いていたはずのダラサンテンを、悪魔討伐隊の指揮官にまで押し上げていた。
呪われた地の奥までもやってきた彼に、野人たちは言う。
「彼女の力は暴走したが、しかしそれでも、我々の仲間なのだ」と。
国の人々と違い、野人たちは、例え暴走したとて、ルーニャを見捨てはしなかったのだ。
だが今回ばかりは相手が悪かった。心優しき野人たちに相対するは、魔女の処刑人ダラサンテン。
その心は既に無く、ただ魔女を処刑せよという魂の声だけが、彼を突き動かしている。
ダラサンテンは野人たちの抵抗を跳ね除け、悪魔討伐へと挑んだ。
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次々と入れ替わる光景。暖かな温もり。心地よい笑い声。
全てまやかし。悪魔の見せる幻覚。そうわかっていたとしても、その偽の救済に心奪われる者は多かった。
討伐隊は次々と廃人になっていき、発狂していく。そんな中で、ダラサンテンはいまだに正気を保っていた。
彼は元より救済など求めていない。ただ魔女を処刑する、それだけを求めているからして。
ダラサンテンは幻を払いのけ、先へと進み、そして古い一つの野人の家の中にルーニャを見つけた。
実の娘だったとしても、心無きダラサンテンが感じる事は何もない。
振り下ろされた大斧は、普段通り、とても軽いものだった。
確かな手応えに、吹き出す鮮血。ルーニャの命は、確かにダラサンテンの手で絶たれていた。
魔女は死んだ。ダラサンテンはまた、使命を成した。
そうして去ろうとするダラサンテンの目の前で、奇跡は起こった。
死んだはずのルーニャが蘇ったのである。
ダラサンテンの頭は疑問の嵐に襲われた。ダラサンテンだけではない。この場にいる全ての正気である討伐隊が、頭上に疑問符を抱いていた。
『何故この魔女は蘇った?』
答える者はいなかった。しかしやるべき事は分かっていた。
理由は分からぬが、死ぬべき者が生きている。ならば、もう一度殺さねばならない。
討伐隊は一斉に、ルーニャへ向かって斬りかかった。
ダラサンテンもまた、その先鋒としてルーニャへと向かっていった…はずだった。
ガキン!と、金属音が響く。ダラサンテンの大斧が、討伐隊員の獲物を受け止めた音だ。
ダラサンテンはそのまま柄を回転させて武器を押さえつけ、流れるように彼らを斬りつけた。
そう、ダラサンテンはルーニャを背に、討伐隊と戦っていた。
何故そのような行為に及んだのか。
ダラサンテンははっきりとした答えを出す事は出来なかった。だがただ一つだけこう思っていた。
『この子を、守らねば』と。
•••そう、思っていた。ダラサンテンは、思うことが出来ていた。
心を失ったはずの、何も感じないはずのダラサンテンが、はっきりと思っていたのだ。
ダラサンテンの心は戻ってきていた。いや、と言うより、最初からどこへも行っていなかった。
魔女の力は幻の力。つまりダラサンテンは、今の今まで、『心を感じない』という幻を見ていたのだ。
その力は、自らの手で娘を斬り殺した時に消えていた。
強すぎる感情の起伏に、幻が対応しきれなくなったからだ。
そしてその深層心理に生まれた強い願いを、死の間際のルーニャは読み取った。
そしてルーニャは、幻を生み出した。救済たるを誓った父の願いに呼応して、父が求めていたモノ、即ち『ルーニャ』を顕現させたのだ。
これこそがダラサンテンの心が戻った理由。ルーニャが蘇った理由。
全てはダラサンテンの、ルーニャを想う気持ちが生んだ奇跡だったのだ。
ダラサンテンは朧げながらそう理解した。
そうしている間にも、身体は自然に戦いの流れを感じ取り、戦場にて染み付いた型を繰り出していた。
無骨にして重厚な操斧術は、討伐隊を歯牙にも掛けず斬り刻んでいった。
その後すぐ、ダラサンテンは討伐隊を全滅させた。
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娘への愛を知り、全てを裏切って討伐隊を全滅させたダラサンテン。
残ったのは屍の山と、返り血を浴び過ぎて真っ黒に染まったダラサンテン、そしてルーニャだけだった。
ダラサンテンに微笑みかけるルーニャ。その笑みは、ダラサンテンが心から思い描き、欲していたものである。
守り切ったルーニャを見て、汚れの一つもないその姿を見たダラサンテンは、大斧にこびり付いた返り血も落とさず。
ルーニャを一撃のもと、再び切って捨てた。
地に倒れるルーニャ。それを見たダラサンテンの心に、鋭く重い痛みが走る。
それを合図としたかのように、再び蘇るルーニャ。大斧の刃が閃き、ルーニャの体が再び切り裂かれる。
無限に蘇り続けるルーニャを、一撃、また一撃と、無限に屠り続けるダラサンテン。
胸の痛みはどんどん鋭く、どんどん重くなっていくが、それでも止まる事はない。
何故なら分かっているからだ。このルーニャはただの幻だと。
自分の心が生み出した、紛い物に過ぎないと。なぜなら本物のルーニャは、さっき自分で斬り捨ててしまったのだから。
幻を受け入れてしまえば、数少ないルーニャとの過去の思い出まで穢してしまう事になる。それだけは許容できなかった。
討伐隊を全滅させてまで守った娘の幻を、今度は自分で殺し続ける。
矛盾と狂気に満ちたように見えるこの行動は、しかしダラサンテンにとっては正常なものだった。
娘の幻を守るのは、自分が娘を愛していたことの証明。
娘の幻を殺すのは、自分が娘を覚えていることの証明。
ダラサンテンにとって、それはどちらも大切であり、相反しないものであったのだ。
こうしてダラサンテンは、その場所で、蘇り続けるルーニャの幻を永遠に殺し続ける道を選んだ。
蘇るたびに斬り捨て、討伐隊が来るたびに返り討ちにする。
それはダラサンテンの思い出を守るための戦いであり、同時に第二のダラサンテンを産まないための戦いでもあった。
ダラサンテンは魔女の力が、二度と誰にも利用されることが無いよう、永遠に呪われた地を守り続けた。
自分の過去と、未来の誰かを守るため、苦しみ続ける事を己が道として選んだのだ。
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「•••かくしてダラサンテンは、今も呪われた地の奥深くにて、自らの娘の幻を殺し続けているのでございます。故あって彼の地へと赴かれるのでしたら、彼にはよく気をつける事です。何せ彼は生ける伝説、これは物語であって物語でない、警告の昔話なのですから…。
旅の吟遊詩人、ヌァルヌウィーが唄わせていただきました。」
酒場の夜は更けていく。一つの物語を肴に酒を飲み込む荒くれ者は、次の日の朝も早くに出発するだろう。
彼らは装備を求める者。より良い装備を求めて、明日も敵を殺し続ける。
ダラサンテンの戦いと等しく、理論値への挑戦もまた、永遠に終わらぬ闘いなのである。