ジョジョの奇妙な学園 ~stardust stratos~   作:エア_

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GS美神って面白いっすね。おきぬちゃんマジ巫女可愛い。


第十二話~決戦前、陰謀渦巻くタッグマッチ

タッグマッチトーナメント前日、シャルロットは承太郎を部屋に招き入れた。勿論一夏は同じ部屋な為、彼もまたそこにいた。

 

「一夏、ジョジョ。僕、このタッグマッチトーナメントが終わったら、みんなに正直に話すよ」

 

「え、いいのか?」

 

シャルロットの暴露に、位置かは動揺を隠せないでいた。いくらSPW財団に所属を移したからといって、みなが受け入れるか分からないからだ。だが、彼女の目は真っ直ぐで何故か大丈夫だと信じてしまう。

 

「てめぇの事だ。てめぇ自身で決めな」

 

「うん、ジョジョには本当、助けてもらった。ありがとう」

 

承太郎への感謝の言葉。そこには裏など一切ない、本物の彼女の笑顔があった。彼もその笑顔を見て吹っ切れたことを理解し、軽く笑い返す。

 

「僕は今まで逃げてきた。だから今度こそ逃げないよ」

 

「おう! その意気だぜ!」

 

「うん、ありがとう一夏♪」

 

一夏の激励にシャルロットは嬉しそうにこたえる。その顔はまさしく恋を自覚した顔。承太郎は密かに応援を心の内ですると、表情を変える。眉間に再びしわがより、如何にもこれから真面目に話す。と言いたげで、二人もそれを理解したのか、彼のほうに体ごと向けた。

 

「ラウラに関してだ。あいつの事は俺がよく知っている。自慢じゃあないが、あいつは俺の最高のパートナーだ。戦闘スキルは千冬が叩き込んでいて、勘というものも冴えている。所謂一対多があいつの本場だ。てめぇらには悪いが、俺を真っ先に潰そうなんざ思うなよ? 勿論逆も然りだ。そして奴の最大の武器がある」

 

「最大の・・・・・・武器?」

 

「あぁ、俺のスター・プラチナさえもあれの前じゃあ上手く立ち回れん。そんな武器をあいつは持っている」

 

人差し指を立てながら、承太郎は恐ろしいことを言った。あのスター・プラチナが立ち回れない武器。そんな物がこの世にあるのだろうか。そうとまで考えた武器が相手には存在する。つまりは自分達を圧倒する武器でもあると言うわけだ。

 

「そ、その武器って」

 

「・・・・・・AICってぇ言葉は聞いたことがあるか? デュノア」

 

同じ代表候補生である彼女なら知っていると考えた承太郎は一夏ではなくシャルロットに聴いた。彼女は少し考えるような素振りをみせ、そして答えた。

 

「アクティブ、イナーシャル、キャンセラーだっけ? 確かその武器は・・・・・・まさか」

 

彼女は気がついたらしい。そう、AICと言う武器がどれほどの物なのかを。そしてそれがどれほど恐ろしいのかも。

 

「そうだ、AICはあらゆる物の行動を制止させる。機動力とパワーが持ち味のスター・プラチナを真っ向から止める事の出来るトンデモ兵器だ」

 

「はぁ!? 物を静止させるって、ずるくないか!?」

 

一夏も理解したのだろう。その顔は驚愕の一言。まさに無敵のスター・プラチナをも黙らせる武器に、彼自身理解したくなかったのだろう。

 

「試作品だ。あの武器はあいつしか持ってねぇ。まぁ本来は俺のスター・プラチナが暴走した時に止めるよう設計されたもんだ。並のISじゃあ歯がたたねぇのは確かだ」

 

AICはもともと、ISの行動を阻害する程度の兵器だった。しかし、承太郎のスター・プラチナという規格外ISの出現により、その出力は大幅に上がっていた。つまりは、彼と言う存在が、皮肉にもAICに大きく貢献したのだ。

 

「じゃ、じゃあ。どうすりゃあ」

 

「だが、弱点はある」

 

立てた指を左右に揺らす。慌てるな。そんなジェスチャーを承太郎はした。二人は食い入る様に彼の話を聞く。もはやラウラを倒すには彼の言うことを聞かなければ攻略できないからだ。

 

「あいつはAICを発動すると、他の行動が出来なくなる。他の行動をするには、AICを止めなくちゃあならねぇ」

 

「そこは、以前のAICと同じなんだね?」

 

シャルロットもAIC自体は知っていたらしく、彼の言葉に続けるように質問をした。一夏はまだ理解が追いついてはいないが、ようはAICを発動したときは二人でかかれと言う意味だと考え付いた。そこ等へんは冴えているらしく。そんなに深くは理解しようとはしなかった。

 

「だからてめぇらにはコンビネーションを訓練してもらう・・・・・・ってもまぁ、イメージトレーニングって奴だ」

 

「うん、わかったよ」

 

「でもさ、何で今なんだ? もっと前に話してくれたら」

 

「わからねぇか? そんなもん前からしてればばれるだろうが。こういうのは突発的にした方が相手の隙を突きやすいんだよ」

 

承太郎の説明に納得をする一夏。彼の説得力には合理性というか、こちらが肯定せざるをえない様な何かがあると感じながらも、間違いではないため頷く。シャルロットも異論はないらしく、彼女も頷いていた。

 

「じゃあ、てめぇら自身で後はやりな。俺は帰るぜ」

 

「あぁ、ありがとうな! 承太郎」

 

「・・・・・・あぁ」

 

一夏の言葉を耳にしながら承太郎は彼らの部屋から去った。その後、シャルロット達の訓練が始まるのだが、それはここでは明かさないでおこう。何故ならこれは秘密の特訓なのだから。

 

 

シャルロット達の部屋から抜け出し、己の部屋への帰路を進む。目的は睡眠やら明日の試合でのシミュレーションやらをするためだ。その帰路の途中、承太郎は意外な人物とであった。

 

「あ、タロタロ~」

 

「た、タロタロだとぉ~?」

 

「ほ、本音。タロタロって」

 

布仏本音と以前見かけた楯無のような水色の髪が特徴のメガネをかけた少女の姿があった。あろうことか自分の部屋の前でだ。突然の渾名に戸惑いを見せた承太郎だが、彼女達を眺め、何かあると感じた。

 

「それで? 何しにきやがったんだ? てめぇらは」

 

「えっとね~。かんちゃんがタロタロにお礼が言いたいんだって」

 

かんちゃんと呼ばれたのは推測ながらこの水色のメガネの少女なのだろう。本音の後ろから隠れて承太郎を見るその姿は少し彼をイライラさせた。確かに他の男なら、その姿から護ってやりたいだの小動物のようで可愛いだの言ってお近づきになりたくなる。しかし相手はあの空条承太郎。その“隠れながら様子を伺う”なんて行動を彼が良い風に捉える訳がなかった。

 

「・・・・・・」

 

「えっと、あの」

 

無言の圧力に、唯でさえさっきからあまり喋らない簪にとっては声を発することが難しくなるのは事実。だがそれは余計に承太郎の神経を逆なでした。

 

「かんちゃん大丈夫だよ~。タロタロは短気だけど良い人だし」

 

「う、うん」

 

そんな中、この重たい空気を読んだのか、本音がすかさず簪にフォローをする。承太郎も彼女の豪胆さに少し感心した。

 

「えっと、あの時の、お礼、したくて」

 

「・・・・・・興味ねぇな」

 

あの時と言うことを思い出した承太郎だったが、彼自身そんな事に対して思い入れなど全くない。素っ気無く返され簪は少し涙目だ。

 

「・・・・・・一応聞いておくがそれだけか?」

 

「ん~ん~。他のこともあるのじゃ~」

 

何故か古風なもの言いになる本音に怪訝そうな顔をする。何か面倒なことに巻き込まれるんじゃあないかと。本能がそう叫んでいた。

 

「えっと、その、す、スター・プラチナを、見せて、ほしくて」

 

「かんちゃんは今自分専用のISを作ってるの~。そのために見せてほしいんだって~」

 

簪のフォローとして本音が付け足す。ISを一人で作るなんて事をしでかしている目の前の少女に承太郎はあきれを覚えるが、同じくらいに関心を持った。若干15歳の小娘が今、世界の科学者達が試行錯誤して作っているISを一人で作っているのだ。

 

彼は、少しだけ興味を抱いた。

 

だが、

 

「悪ぃがそれはできねぇ」

 

「・・・・・・え?」

 

「も~ぅ、タロタロのケチ~」

 

ケチ、それは合っている様で全然合っていない言葉。

 

もし、承太郎が簪にISを見せることになれば少なからずコアを見せることになる。つまり、彼の体内から摘出しなくてはならないのだ。体内に存在するISのコアは特別な施設でやっと内容を知れるような存在。プログラムを送り、武装を転送することは可能だが、生憎とコアの点検などSPW財団でしか精密な作業と莫大な知識を持った医療関係者の下でしか行えないほどの高度な技術と知識が必要だった。

 

「俺の体とISコアは同化している。取り出せる訳がねぇ」

 

「ど、同化?」

 

「あぁ、とある事があってな。訳は聴くな」

 

そう言って、承太郎は自分の部屋へと戻っていった。勿論二人は後を追おうとしたが、すぐに扉は閉じられたため、それ以上の進入は出来なかった。

 

暫く承太郎は彼女達が居なくなるまで、ベッドに横になる。考えることは一つ。翌日のタッグマッチトーナメントのこと。千冬経由でパートナーになったことは互いに知っているが、はたして彼女はどうするのだろうか。

 

(ラウラ・・・・・・てめぇは)

 

顔を歪め、怒りを表す。憤怒とまではいかないものの、彼は怒っていた。彼女の性格から承太郎はいくつかの疑問を持っていたのだ。急激な性格の変貌。それは承太郎自身嫌な予感と言うものが働く。明日行われるタッグマッチトーナメントが恐ろしく不安になる。

 

(・・・・・・何も、起こらなきゃあ良いんだがな)

 

この言葉がフラグであることを、承太郎が知るのは、当日まで気がつかなかった。

 

 

 

 

当日の空は快晴。雲はいくつかしか存在しておらず、絶好の日向ぼっこ日和なのは間違いないだろう。しかし、今日はそのようなのんびりする日ではなかった。

 

IS学園では、2対2のIS競技。タッグマッチトーナメントが開催されていたのだ。

 

当然承太郎は参加をしており、相方はラウラ=ボーデヴィッヒである。

 

「承太郎殿。承太郎殿は後ろでお控えくださイ。眼前の敵は私が排除しまス」

 

「・・・・・・あぁ、考えておいてやる」

 

勿論、承太郎は端から自分が闘わないなどという思考は捨てていた。彼女は一対多に優れており、その強さは鈴とセシリア相手に無傷でいたことが何よりも証拠だった。彼は一回戦を一夏達と当たることを切に願った。何故なら彼女への打開策を教えたのはその人グループしか存在しないからだ。

 

もっとも、もし過剰に攻撃をするなら自分が叩きのめす算段であるが、なるべくなら周りに被害を蒙らない事を祈るのは当たり前だ。

 

そして、公共モニターに自分達の名前が浮かび上がる。一回戦第三試合。そこに彼らの名前はあった。

 

織斑一夏&シャルル=デュノアVS空条承太郎&ラウラ=ボーデヴィッヒと現れたその文字を見て、承太郎は安堵した。千冬の采配なのだろうかと思ったが、純粋な運だろうと簡潔に思考を切り捨て、今はどう対処するかを考えていた。

 

(負けるのは癪だが、こいつを抑えるならしかたねぇ)

 

自分の勝利よりも、パートナーに元に戻ってほしい。承太郎の彼女に対しての気持ちはまさに絆から生まれたものだろう。

 

その視線に気がついたのか、ラウラが満面の笑みっで返す。

 

「安心してくださイ。このラウラ=ボーデヴィッヒ。必ずや承太郎殿に勝利を捧げますヨ」

 

「・・・・・・そうか」

 

その笑顔に承太郎に不安を覚える。以前の彼女を知っているからこそ、彼はその笑顔が絶望に変わるのを恐れた。

 

常に仏頂面で唯我独尊。己の道をなりふり構わず進むその豪傑さ、不良であることをなんとも思わずこの女尊男卑の風潮を跳ね除けるほどの彼でも、ラウラのその顔から笑顔が消えるのを恐れていた。

 

 

[私は・・・・・・本来生まれるべき存在じゃない。貴方とのこの出会いも、全部]

 

 

彼の脳裏を過ぎたのは、まだ彼がドイツにいた頃、千冬と出会っていない頃のことだ。

 

~~

ラウラ=ボーデヴィッヒは体外受精によって生まれた存在。ゆえに母親や父親などの存在は居らず、彼女は一人ぼっちだった。孤独というのは例え誰であろうと耐えられるものではない。彼女にも例外はなく、孤独というものが彼女を押しつぶそうとした。

 

それを吹っ切るように軍人として彼女は生きた。白兵戦。奇襲戦。狙撃戦。ありとあらゆる闘い方を身につけ、いつしか彼女は所属していた部隊で最も強い存在となった。

 

彼女は優越感を覚え、そして尊敬というものを受け、孤独を拭い去ろうとした。

 

しかし、ISが現れて、彼女の生活は一変した。

 

その左目に人工的な手術を受ける。多くの部隊の人間がその後遺症でトラウマがよみがえったり廃人になったりと、恐ろしいものを無理矢理植えつけられた。

 

それでもラウラは必死に耐えた。これを耐えれば自分はまた孤独にならなくても良い。

 

彼女は孤独というものを深く嫌い、孤独を拒むためにこの手術を無理矢理クリアした。

 

しかし問題があった。これをクリアしたものは少なからずいたのだが、その中でも彼女はおちこぼれの烙印をつけられてしまったのだ。

 

その左目が戦うたびに疼き、彼女を苦しめた。そして彼女は部隊から外され、孤独に戻った。

 

嫌だ。孤独は嫌だ。どう叫ぼうが上官達は彼女のことなどお構いなしだった。

 

しかし、そこへ一つの変化を齎したのが、癪にも彼、空条承太郎の祖父である。ジョセフ=ジョースターであった。

 

彼の親友であるシュトロハイム経由で知り合ったジョセフは、大の女好き。そんな彼女を元気付けようとちょうどドイツへ観光に来た承太郎に相手をさせようと考え、そこで彼らは初めてであった。

 

右目は紅く、左目はオレンジがかった黄色。しかしその両目に光はなく、絶望が彼女の視界を閉ざしていた。

 

「・・・・・・こんにちは。俺の名は空条承太郎。よろしく」

 

彼女の瞳に光を与えたのは紛れもなく彼だった。初めはただの挨拶から、彼の躊躇いのない努力の結果、彼女に笑顔は戻った。軍の事など分からない彼にとっては彼女を笑顔に戻すことが先決だと考え、彼女の希望となったのだ。

 

[承太郎殿・・・・・・私は、生きていいのでしょうか]

 

[人っていうのは、生まれながらに意味なんて持ってない。でも、その意味を見つけ出すことが出来るのは人だけだ。ラウラ、君は人なんだ。その意味を見つけることは君自身しか出来ない。生きていて悪いかって? そんな訳がない。むしろ死んだら俺が怒るよ]

 

[でも、意味なんて]

 

[なら俺のために生きてみるか? その意味を見つけるまで、死ぬことは許さない。それが俺のためだ。どうだ?]

 

それは今考えればプロポーズにも聞こえないこともない発言だが、彼女に生を渇望させるには十分な一言だった。彼女は自分の意味を見つけるまで、彼の、空条承太郎のために生きる。自分に希望を与えてくれた人の願いを無碍になんか出来ない。ラウラはその彼の大きな手を取り、はい。と小さく答えたのだった。

 

~~

 

(ラウラの為にも、あいつらには勝ってもらなねぇとな)

 

彼女を見据えながら、承太郎はそんなことを思考する。両腕を組み、試合での動きを推測し、結果を導く。シミュレーションはすでに数十回繰り返されている。

 

しかし、それのほとんどがラウラの勝利で終わっていた。

 

先に一夏を潰してじわじわと弄り伏せる結末。シャルロットを潰して切り刻む結末。酷いと両方を叩きのめす結末がある。

 

(唯一、俺が関わること(・・・・・・・)なく無事に終わる結末には、何が必要だ?)

 

シャルロットの特技である高速で武器を入れ替える高速切替(ラピッド・スイッチ)。69口径のパイルバンカー、灰色の鱗殻(グレー・スケール)が装備させているシールド。近接射撃と近接格闘を上手く利用した戦術。

 

どれも代表候補生の枠を留めていない素晴らしいものだ。

 

相棒の一夏はどうだろうか。

 

彼の武器はブレード一振りだけ。特技は瞬時加速(イグニッションブースト)のみ、少し剣道をかじっていたとは聞いたが、承太郎の見た限りむしろその所為で戦い方が偏っているようにしか見えていない。

 

これは完全に一夏がシャルロットの足を引っ張っていた。

 

(何故か、非常に嫌な予感(・・・・・・・)がしやがる。何か・・・・・・どうしたもんか)

 

己も戦い方に文句を言える立場ではない。承太郎はそう思いながらも彼の弱さから目をそらすことは出来なかった。弱いからこそ擁護すべきものではない。彼女を止めるためにも、彼の力は少なからず必要なのだ。

 

(どうする、一体どうすりゃあいい?)

 

彼の思考は、試合直前まで続いた。

 

 

 

 

「DIO様、こちらです」

 

「ほぅ、なかなか広い場所じゃないか」

 

観客席に一際目立つ黄色が二つ存在した。

 

ブランド物の黄色いレディースーツに身を包む女性と、黒のインナーに黄色い羽織の男性。

 

男は、その場には完全に不釣合いではあるが、何故かその妖艶さに人々は批判の目など見はしない。

 

女性はそれを理解したからか、男に寄り添い歩く。男もそれをよしとしているのか彼女のペースに合わせて歩く。

 

それは今の風潮を否定しているような存在だった。

 

男はまるで君臨者だ。勝利を手に入れたようなその瞳と全てを支配しているかのような堂々とした構え、とても男卑の世の中を生きた人間とは思えない。

 

女性もその傍を離れず、まるで小鳥のように寄り添い。時には猫のように甘え、主人に愛を注いでもらっているペットのようにも見受けられた。

 

「ククッ、スコール。そんなにくっ付いては動くときに動けんぞ?」

 

「あらあら、私がDIO様に手を煩わせるわけ御座いませんわ。私に全てお任せください」

 

スコールと呼ばれた女性は耳元でそう囁く。甘美なその声に男は聞き惚れる。それはまるで小鳥の囀りを聞いているようで、それでいて猫の強請り声にも聞こえる。そんな己の感覚を狂わせるような甘い囁きに男は虜になっていた。

 

「今日はあの小娘を見に来たのだぞ? このパーティを楽しもうじゃあないか」

 

「クスクス。流石はDIO様ですわ」

 

スコールはDIOに夢中のようで、周りの目などいざ知らず。目の前の甘い汁に漬かるように溺れていた。その魅了のチャームが掛かっているかのような視線に彼女は釘付けだった。

 

二人は視線を下ろす。ちょうど試合が始まるようだ。

 

二人のペアがそれぞれの射出口から飛び立ち。構え、勢い翼相手に切りかかる。

 

「・・・・・・10秒、か」

 

「いいえ、二人で5秒ですわ」

 

その言葉の意味を周囲の人間は知る由もない。彼らのその言葉よりも眼前の生徒達の試合に集中しているからだ。

 

「所詮は日本。戦う術を持たず防衛だけに全てを捧げてきたこの国に攻撃手段があるはずがない。彼らがしていることはただのチャンバラごっこ。玩具の銃を初めて手にした子供と変わらない。このDIOにとって、何の脅威でもない」

 

「えぇ、全てにおいて、貴方様を超える存在などいませんわ」

 

男は見下ろす。全ての人間を見下す。彼女は見上げる。そんな彼に恋を懐きながら。腕を組み、彼は彼女の言葉を深く考えた。己を超える存在などいない。はたして本当にそうなのだろうか。

 

「・・・・・・ジョースター家。空条承太郎ただ一人。奴だけがこのDIOを越えるやも知れぬ存在だ。奴が死ぬ姿を確認しなくては私の安寧は確立しえん」

 

「そのように深く考える相手なのでしょうか? その空条という存在は」

 

「なに、見くびるんじゃあない。このDIOを唯一死に至らしめる存在がその血筋というだけであり、この空条承太郎が脅威になるかは分からない。だからこそ今日、彼奴を調べるのだ」

 

一つ目の試合が終わった。どうやらすぐに終わったらしく、周りのざわめきは少なからず起こった。そこまで早かったのだろうか。彼らにとって速さと、周囲にいる人間の速さの単位は少し違うようにも感じられる。

 

「古くからある言葉だ。【敵を知り、己を知れば百選危うからず】このDIO。勝つためには手段など選びはせん」

 

「・・・・・・その最期まで、私は貴方と共に」

 

二グループ目の試合が始まる。現れたのは篠ノ乃箒とパートナーである相川という例の承太郎に練習のときに突っ掛かっていた少女だった。二人とも打鉄を纏い。地面を併走する。承太郎のおかげなのか、相川の動きは三人の中で一番よかった。

 

「・・・・・・ほう」

 

「あら、ひな鳥にしては上手く飛びますわ」

 

「・・・・・・まわりはフォアグラ・・・・・・とでも言っておこうか」

 

「フフフッ、御上手ですこと」

 

相手はラファール二機らしく、これは打鉄の性能とラファールの性能をそれぞれ知れるチャンスといったところだろう。使い手によって、その力は代表候補生にも匹敵するその性能。スコールと男は見据える。しかし、やはり彼らのいう脅威ではないらしい。

 

彼らに焦りなど一切ない。

 

あるのは優越感唯一つ。

 

目の前のことなどただの余興とばかりに、冷めた瞳は第二試合を見つめていた。

 

「・・・・・・ん、あいつは」

 

「えぇ、あの篠ノ乃束の妹ですわ」

 

「ほぅ、あの(・・)篠ノ乃束の・・・・・・か」

 

二人の視線が一つを見抜く。そこにいるのはブレードを振り下ろす箒の姿があった。

 

「あの小娘も、良い闇を持っている。篠ノ乃束を屈服させるのに持って来いじゃあないか」

 

「しかしDIO様。貴方様のお力の前ではあの篠ノ乃束でも」

 

「何を言うか、全ては“念のため”・・・・・・だ。全てにおいて懸念すべき不安要素は全て取り除く。それが、この俺、DIOが人類を越えることへの一番の道だ」

 

スコールの肩を抱き、男は箒を視線で追った。彼女は眉間にしわを寄せながら睨むように見ていたが、そんな表情が嬉しかったのか男は己の顔元まで近づける。

 

「嫉妬をするな。このDIO。お前以外の存在など駒に過ぎん」

 

「・・・・・・はい、DIO様」

 

寄り添うスコールに男は満足すると、試合が終わるまでゆっくりと鑑賞をしていた。

 

二試合目は箒のペアが勝利をした。次の試合こそが、彼らの望んでいる試合。彼らにとっての、いや、周りのお偉方にとってもメインイベント。

 

「さぁ、出て来るぞ。空条承太郎と、ラウラ=ボーデヴィッヒが」

 

「・・・・・・えぇ、楽しみですわ」

 

勝敗など彼らの前では関係ない。そう、彼らにとってどれほどの事が起ころうが所詮は視察なのだから。

 

承太郎が死ねば万々歳。怪我を負わせれば充分。男が放った刺客がいつ彼の心臓を貫くかが楽しみでしょうがないのだ。

 

男は見下ろす。これから起こるであろう惨事をその目に焼き付けるために。

 

男はあざ笑う。己の信じた者から裏切られた時の、あの絶望した時の顔を拝むために。

 

さぁ、星の導きの元、闘いの火蓋は気って落とされた。

 

勝つのは運命取り巻く星の男か。

 

はたまた世界に魅入られた捨て駒か。

 

それとも運命に導かれた若き白い戦士か。

 

絶望を知った偽る女神か。

 

男、DIOの目に映るはどのような結末だろうか。

 

その瞬間を、彼は見たくて人知れずウズウズしているのだった。

 

 

 




さて、次は承太郎達ですよ。

他の人が雑? HAHAHAなんのことやらさっぱりですわ
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