ジョジョの奇妙な学園 ~stardust stratos~ 作:エア_
エアです。
すっごく悩みましたね。この回は本当に。
でも出来が悪くて辛いです。
「承太郎。病み上がりで悪いが、今回戦闘を行ったDIOと言う男について何か知らないか?」
既に日は沈み、生徒達が自分の布団にもぐり寝ている時間。承太郎はコーヒーを飲む千冬と何故かその千冬によってボロ雑巾のようになった束を前に、目を覚ました。目覚めたときの命に別状はないが、気だるさだけが異常に残っていた。
DIOと自らを呼称していた謎の男。
全身に黄色と黒を身に纏い、灰色の何かを操っていた存在。
これまで無敗を誇っていた承太郎に唯一膝をつかせた存在。
それも圧倒的な力で彼を殺す一歩手前まで追いやった存在。
そんな奴が存在するなら承太郎が知らないわけがない。報道で取り上げられておかしくないはずだ。だが、
「俺はあいつを知らねぇ・・・・・・だが最初あいつと対面した時、咄嗟にDIOという文字が頭の中に浮かんだ。それ以外は何も知らねぇ」
彼は知らなかった。DIOという存在の名前すらも。何故自分がDIOの名を咄嗟に言えたかすら理解できてはいなかった。無意識のうちに出されたあの単語自体を認識してはいなかったのだから。
「そうか・・・・・・ではもう一つ聞きたい。そのDIOが使っていたIS・・・・・・肉眼では確認できないとそこに転がっている馬鹿は言った。だが承太郎、お前はハイパーセンサーを起動せずにそのISを目視していた・・・・・・違うか?」
「あぁ、俺の目にはハッキリ見えていたぜ。だが、ハイパーセンサーを起動してそれをみりゃあ灰色に塗りつぶされた黒い輪郭の
「残念だが、私もこいつもあのISを全く認知していないし、作りそうな奴も見当がついてない。何処で開発されたのかも知らない。唯一の手懸かりと言えば、[ISのセンサーでさえも追いつけないほどの高速移動を生身で行った]ということ。自分自身の事を、[太陽を克服した存在]、[吸血鬼]と言ったことだ。お前の祖父、ジョセフ=ジョースター殿が以前戦ったと言う[柱の男]。もしかするとそれに類似する存在かも知れない。学園に戻った際、一度連絡を取ろう」
今のところ、対策の術がない。その事実が三人のモチベーションを下げた。千冬と同程度の力を持つ承太郎が圧倒的な力の前に敗北した。即ちそれは今のIS界にDIOを単騎で相手取ることの出来る存在がいない事を証明しているのも同じだからだ。千冬はその事実を目の当たりにした二人に何も言う言葉が浮かばなかった。
束は束で、対等に戦えるはずだった場面を自分の所為で一方的にやられ敗北した事について酷く落ち込んでいた。千冬に承太郎が無敗のヨーロッパを背負った存在だと言うことを聞かされて余計にその落ち込みようは凄かった。あの人間不信の束でさえも、彼への後悔は物凄いことになっていた。もしかすると過去の自分と重ねられるものが存在したのかもしれない。
「・・・・・・やれやれだぜ」
すると、そんな彼女の顔が気に食わなかったのか、承太郎はいつもの口癖を呟く。大きなため息を吐きながら、彼は未だぼろ雑巾と化している彼女に対し、
「篠ノ乃束。テメェが自分の所為で俺が負けたと思っているのなら勘違いも甚だしいってもんだぜ? 俺は本気だった。テメェが居ようが居まいが変わらねぇ。だがよ。俺は確かに本気だったが、全力じゃあない。俺のスター・プラチナを甘く見てもらっちゃあ困る」
そう言ったのだ。何処からそんな自身が沸いて出てくるのだろうか。彼を知らない束からすれば根拠のない虚勢、口から出まかせの妄言でしかない。しかし何故だろうか。根拠はないのに、裏づけも、証拠も、理屈も、筋も全くないというのに。何故かこの男ならやってのける、そんな不思議と心を引き寄せる何かを持っていると束は無意識に感じていた。
この男、空条承太郎は「やる時はやる」。そんな凄みがある。
そう感じ取ったのだ。
ふらつく体を無理やり起こし、部屋を出ようと承太郎は立ち上がった。未だ失血による貧血を起こしており、立ち上がると体が傾く。千冬が咄嗟にその体を支えようと椅子から立ち上がるが、承太郎がそれを手で制す。
「これは俺の問題だ」
やはり彼は相当な頑固者であった。己の信念を1mmたりとも曲げる気はないらしい。だが、それこそが彼の良さでもある。【必ずする】と約束したも同然だ。
「・・・・・・そうか。だが、もしもの時は私を頼れ。何せ私は
「あぁ、頼むぜ・・・・・・・・・・・・おい、テメェらもいい加減学習しろ!」
扉を開くと雪崩れ込むように降ってきた一夏を含めたいつものメンバー。一番下に敷かれた一夏に若干哀れみの視線を送ると、承太郎はその場を去った。
「あ、承太郎殿ッ!」
一番上にいたラウラが身を乗り出しその後を追った。他の皆もそれに続こうとしたが、残念なことに目の前の修羅を見落としていた。
「さて貴様ら、弁解を聞いてやろう」
朝まで説教をくらう破目になるとは思っても見なかっただろう。
☆
夜風が気持ちの良い浜辺の夜。白い制服が風に吹かれ、パタパタと音を立てる。
「承太郎殿、お怪我のほうは如何でしょうか」
「・・・・・・安心しな。大した事じゃあねぇ」
本人はそういうが、普通だと緊急入院しても可笑しくないほどの大怪我なのだ。SPW財団の医療技術の高さと彼自身の生命力があったからこそこうやって数時間で身体を動かせているのだ。良い子は絶対にまねをしては駄目。
それをわかっているのか、ラウラは心底心配そうに彼を見つめていた。
「しかし」
「俺からすれば、お前のほうが心配だがな」
承太郎の言い分も間違いではない。VTS事件以降の異常なほどの過保護、そして唐突な意識の消失。肉体的には確かに承太郎のほうが大事だろうが、精神的にはラウラのほうが重症だった。
「ですが、私は承太郎殿のパートナーです。承太郎殿のサポートをするのが私の務め。いや、私の今ここに存在する意味です」
水平線から上には数多くの星々が散りばめられていた。既にこの地上から太陽が姿を消し、月が優しく照らす夜となっている。欠けたところなど見当たらない今宵の月が二人に光を差し込む。彼女の決意した表情を、彼の網膜に焼き付けた。
「学園へ来た当初は、己が未熟であり慣れない生活だったからこそ迷惑をかけてしまいました。しかし、今は大丈夫です。お願いします! 私を見捨てないでください」
今宵の月に照らされ映し出された彼女の表情を承太郎は忘れたりしないだろう。これから来る先の見えない恐怖に畏れ、藁にも縋る様な、絶望の中に見えた一つのくもの糸を見つけたような。離れたくないという感情の流れを、しかしそれでいて決意を曲げないと言うのがわかる目が、直接彼に語りかけていた。
そんな彼女に、承太郎はまたいつもの口癖を呟いたのだ。
「やれやれだぜ・・・・・・。俺がいつ迷惑だって言ったんだ? ラウラ。飛行場でも言っただろうが[他の奴だったら無視して一人で日本に帰ってた]ってぇよ。あの言葉に嘘偽りはねぇし、お前を迷惑だと思ったことは一度もねぇ」
己の斜め後ろで控える彼女を横目で見据えると、彼は夜の水平線を眺める。
浜辺の波が優しい音を奏でる。夏が近いからなのだろうか。海辺だと言うのに近くの林から鈴虫の音色が波の音と相まって、自然の小夜曲へと姿を変えていった。
心地の良い風がその音色を二人の耳へと運ぶ。今、彼らを包んだのは自然のオーケストラ。二人の為だけのセレナーデ。
銀色の子猫は夜空を見上げる。綺麗な星に恋焦がれ、しかしその気持ちを理解せず。
白く輝く星は子猫を見下ろす。その小さく儚い刹那を眺め、共に夜の合唱に耳を傾ける。
「月・・・・・・綺麗ですねぇ」
「・・・・・・あぁ」
ラウラがその意味を知っているかは定かではあるが、承太郎も感嘆の声を上げるほど今宵の月は心底美しかった。絵画、それも風景画などを趣味に持つものがいれば一目散に描くのではないだろうか。カメラマンならそのフィルムに納めようとするのではないだろうか。
今宵の月はとても美しかった。
「・・・・・・ラウラ、テメェは俺の相棒だ。相棒を迷惑がったりするほど、俺の心はそんなに狭かねぇ。だから迷惑かけたって良いんだぜ?」
「・・・・・・ですが」
「ですがもかすがもねぇんだよ」
夜景を充分に観た承太郎は、部屋へと向かって歩き出す。その途中、ラウラの隣まで行き、その頭を思い切り撫でた。勢いのある撫で方で、少し痛みはあるがその中にあるかすかな優しさに彼女は気がつく。
「心配するんじゃあねぇ。俺はそんなに弱くねぇし、テメェも弱くねぇよ。俺が保障する」
そう言って彼はその場を離れた。ただ一人残されたラウラは彼が見つめていた夜景へ目を向けた。一面に広がる海からまるで生まれたように昇っている月。その光景が彼女の目に飛び込んできた。感嘆の声が漏れる。まさに絶景と言って差し支えない光景だった。
「こんな光景・・・・・・前にも見たような」
何時観たのだろうか。思い出そうにも思い出せないラウラは、先ほどの承太郎の言った言葉を思い出しながらその月を見つめた。それは何処となく赤み掛かった月で、自分の目を見ているようだった。
しかし、結局思い出されない記憶にすこし疑問を持ちながらも、ラウラは承太郎の後を追い、自分の部屋へと向かった。
美しく、そして怪しく光る赤に染まった月は、そんな彼女を今もなお照らし続けていた。
☆
次の日、臨海学校も今日で終わり、皆はバスで帰宅するために乗り込んでいた。相変わらず一組だけのバスだからか、鈴音が煩かった。まぁそこら辺は一夏が如何にかするだろうと承太郎は軽く無視をしてバスに乗り込んだ。国際機関に携わる学校だからか行きも思っていたが帰りのバスも豪華だった。普通のバスと違い若干大きめに席を取っており、しかも冷暖房完備している。その上何故かカラオケだったりテレビだったりと観光バスに付きそうなものが設置されていた。勿論承太郎がそれらを使うことはないが、それでも普通のバスにとっては充分過ぎるものだと思われる。
「・・・・・・ふぅ」
一つため息をつき、彼は身体を背もたれに預ける。疲れは取れたと思われていたが、やはり充分ではなかったらしい。気だるさが彼を襲い。このまますぐにでも夢の中へと意識を飛ばしそうになる。
「お隣失礼します」
「・・・・・・? あぁ、ラウラか。いいぜ」
律儀に挨拶をして隣に座る彼女に、席は既に決まっていたのだから普通に座ればいいものをと思いながらも、真面目な奴だなと内心笑みを浮かべていた。それも彼女の良い所だと理解しているため、彼もちゃんと返事をするのだ。
「・・・・・・承太郎殿、お一つ、お伝えしたいことがあります」
「ん? 何だ?」
「はい、先日仰っていたDIOという存在です。我ら黒兎隊の尽力をしましたところ、驚くべきことが分りました」
[わかった。ならプライベートチャンネルを使え。流石に回りの人間に知られるのはまずい]
[了解しました]
プライベートチャンネルとはISを起動して行うそれこそ個人チャットのような事を会話でするものだ。これをすると周りの人間には何を会話しているのか分らなくなるらしく、試しに話しかけたとしても触れでもしない限りプライベートチャンネル外の人間は一切気づかない。如何いった構造なのか分らないがとりあえずこういった内緒話には持って来いという訳だ。
[DIO・・・・・・この名前に該当する人間はこの数百年間に一人しかいません。それもその筈です。ディオという意味はこちらの言葉では神を表しているのです]
[つまり、そんな大層な名前は中々いないってぇ訳だな?]
[はい。遥か昔、古代ローマの歴史家で知られるカッシウス・ディオ、アメリカのロックバンドのリーダー、ロニー・ジェイムス・ディオと、苗字に使われる事が多く。その中にそのDIOは居ませんでした。しかし、そのDIOという名前でしたら一つ、たった一つだけ該当しました]
[該当した? ・・・・・・いったいそれは誰だ?]
苗字で使われる事はあるが、名前では一つだけしか該当がなかった。いったい如何いうことだろうか。そんな大層な名前をつけられた自称吸血鬼とその一つは同じであるのだろうか。承太郎は疑問に思いながらも、彼女の言葉を聴いた。
[はい。名はディオ・ブランドー。おおよそ一世紀以上前、イギリスに実在した人物であり・・・・・・ジョースター家に養子として存在しています]
[な、何ィッ!?]
その衝撃の事実に、承太郎は驚きを隠せず思わず立ち上がってしまった。回りの人間からすれば行き成り承太郎が立ち上がったとビックリしているが、そんな事今の彼には関係なかった。
ジョースター家。それこそ彼が知らないわけがない。そうとも、ジョースター家は自分の祖父、ジョセフ・ジョースターと同じ姓であるのだ。驚かないわけがない。
座りなおし、承太郎は深く思考を巡らせる。いったい何の関係があるのか。自分の知らない場所で起こったそれに疑問を持ったのだ。
[このジョースター家は貴族の家系だったらしく、このディオと呼ばれる存在が現れるまでは相当な大豪邸だったと記録されています]
[だ、だがジジイはそんな事一度も言ってなかったぜ?]
[その事で、一応調べましたところ、ジョセフ殿はイギリス人とアメリカ人のハーフらしいです。しかもジョースター家が突如炎上を起こしその財産も全て燃えてしまった後に生まれたとのことです。つまりは事実上、ジョースター家は没落しています]
ラウラが言うには、ジョースター家は謎の炎上を起こし、当時の当主であるジョージ・ジョースターが死去。その時に関わっていたのがディオ・ブランドーであり、犯人であると記録されているらしい。そしてその数年後、ジョースター家の次期当主であるジョナサン・ジョースターもこのディオと共に死去しているとの事だ。
つまりはその時点で死んでいるはずなのだ。というか、一世紀以上前ならどう考えたってあんなに若くいられる訳がない。もしかすると本当にあの男は吸血鬼であるのだろうか。承太郎は思考を巡らせながら考えをまとめていた。
[仮にそのDIOってぇのが一世紀以上前に死んだはずのディオと同一人物なら、ジョースター家、果てには俺やジジイと因縁があるってことだな?]
[はい。そうなりますね。しかし情報が少ないので、確証はありませんが]
[そこは安心しな。俺達の知り合いにはイギリスの貴族がいただろう?]
[セシリアですね? もしかすれば関わり合いがあったかもしれません。学園に着いた時にでも聴きましょう]
そこでプライベートチャンネルを切り、承太郎は再び思考の渦の中へと飛び込んだ。己の頭の中で繰り広げられたのは一種の葛藤とも思われるシロモノだ。
頭の中を数々のワードが過ぎる。ディオ・ブランドー。ジョージ・ジョースター。ジョナサン・ジョースター。イギリス。貴族。吸血鬼。没落。そして・・・・・・。
「一世紀以上前・・・・・・か」
そう、全ては一世紀以上も前の話であり、自分がそれこそ係わり合いのない頃から、因縁がある。そう考えると大事と言って間違いはない。
全ては、ディオとジョナサンが出会ったことから始まったのだ。吸血鬼なんてものとの戦い。それこそ奇妙な話だ。そして思い出した。ジョセフも確か奇妙な冒険をしていたと言う事を。そう幼い頃自慢するように話していた事を。
波紋と呼ばれる力を兼ね備えていた事により、ISを動かせていたと言う事も。
(いろいろと伏線のようにネタが上がってきやがった。まるで運命のレールを歩かされているようだぜ)
強ち間違いじゃない事を考えている承太郎だったが、思考が途中でストップした。顔は心底嫌そうで、それは楯無に見せていたような顔ではなく。面倒くさくて近づきたくないと言った表情だった。
そう、バスの外から人が手を振っているのだ。ただ人が手を振っているのなら問題はなかった。だが、振っている人間に問題があった。
「おーい! ジョタロー! おりてきなさいよ~!」
「喧しい! 近所迷惑だ!」
バスの窓を開けて声をかけた女性・・・・・・ナターシャ・ファイルスに暴言のような正論を返す。確かに自分の名前を叫ばれたら恥ずかしくて仕方がないのは事実だ。
「やっほ~。久しぶりだね~!」
「こんのアマ。何とも思ってねぇのか」
しかし、当の相手はまるで柳の木のようにしなやかで承太郎の暴言をそのしなやかな精神で避けた。非常に高等テクニックだと言える。
「ほら~ジョタロー。早く降りて来なさいよ~。久しぶりにハグしてあげるよ~」
「された事もねぇし、してもらいたくもねぇよこのタコ。一体何しにきやがった」
「その事もあって話がしたいんだよ~・・・・・・吸血鬼についてね~」
「・・・・・・」
突如無言になった承太郎はラウラにことわりをいれ、バスから降りる。バスを降りるとナターシャの前まで無言で歩み寄り、その胸倉を思い切り掴んだ。女だろうと何だろうと彼には関係ないようだ。
「テメェ・・・・・・何を知ってやがる」
「久しぶりに会ったのに酷いわね。とりあえず首絞まりそうだから止めて欲しいんだけど」
「・・・・・・チッ」
承太郎は舌打ちをするとその手を離す。ハァっと深くため息をつき、ナターシャの話を聞くことにした。とても不本意な顔をしているが。
「まぁ聴いてよジョタロー。例の吸血鬼の話はブリュンヒルデから教えてもらったから。その事で貴方と貴方の祖父であるジョセフ・ジョースターにアメリカ政府からの情報を提示するわ」
ナターシャはそう言うと、USB型の端末を承太郎に渡した。何が入っているのかはパソコンを開かない限り分らないが、もし彼女が言ったことが本当ならばまた一歩DIOに近づけるのは間違いない。
「しかし、何でまた・・・・・・あぁ、ジジイがか」
「えぇ、ジョセフ准将はアメリカとドイツを繋いだ人間ですから。我がアメリカも全力でサポートするわ」
「二国から全力サポート・・・・・・一体若い頃何してやがったんだ」
「そこら辺は上層部しか知らないらしいけど、私はあの人のこと尊敬しているのよ? ナンパ癖が酷いけど」
「それが全部台無しにしてんだよ。あのジジイは」
既に何度目になるか分らないため息をつきながら、承太郎はUSBをポケットに入れた。すると用は済んだと言いたげに踵を返そうとした。
「ちょちょちょ、待った待った~。折角会えたんだしジョタロー、私に何か言いたい事は?」
「失せな。お呼びじゃあない」
「辛辣!? 貴方それ楯無ちゃんにも言ってないでしょうね!」
いつまでも終わらない辛辣な彼の言葉に流石に心配を覚えたナターシャが怒鳴る。しかし、やはり彼は喧しいと一蹴した。流石は承太郎、男だろうが女だろうが怒鳴りあげる。そこにびびる、逃げたくなる。
「喧しい! テメェに指図される筋合いはねぇ!」
「ほんっとうに女心分ってないわねぇ! そんなじゃ楯無ちゃんに嫌われちゃうわよ!」
「・・・・・・それは俺の問題だ。テメェには関係ねぇだろうが」
「全く。だから貴方は不良やれやれ系男子なのよ! この唐変木!」
「知るかッ!」
先ほどの真面目な雰囲気は何処へ行ったのやら。気がつけば性格を否定される始末。というか、唐変木が自分のことを唐変木だと自覚があるわけがないので言っても無駄である。
「唐変木なんてアニメとか漫画とかで充分よ。あんなの現実にいたらうざったいだけでしょうが!」
「意味が分らん!」
「お前ら、いい加減バスを出したいのだが」
そこで助け舟と言わんばかりに現れたのは、ナターシャも言っていたブリュンヒルデこと承太郎の担任である千冬であった。
「ちょっと千冬。この子のこれ全く治ってないじゃない! 如何言う事よ!」
「自分の弟が治らんのにこいつが治るわけがないだろ」
「おい、まるで俺が一夏よりも鈍いみてぇな言い方じゃあねぇか!」
「唐変木って奴は自覚がないから困る。空条、いいから戻るぞ。すまないが時間が押していてな。こちらは失礼する」
まるで教職員のような丁寧な誘導で二人の言い合いを止め、承太郎と千冬はバスへと向かった。互いに言い足りなかったが時間がないのは事実。仕方がないと口論を止めたのだ。
「あ、ジョタロー。それの解除コードは」
「
「勿論。ちゃんと英語表記だからね~」
「わかってる」
今度こそそこで会話は終わり、彼はバスの中へと乗り込んだ。ナターシャもそれを見送ると自身の部隊へと踵を返し、歩き始めた。
件の【銀の福音事件】によって凍結される彼女のISについての話は一切される事はなく。承太郎が知ったのはIS学園についてから数日後のジョセフとの電話にて耳にしたのだった。
人物紹介
ナターシャ・ファイルス
アメリカのISパイロットでヴァルキリーの称号を持つ軍人。階級は大尉でアメリカ代表
承太郎とは千冬を介して知り合った仲。
五カ国共同開発の時にゲストとして招かれており、その時にロシア代表の楯無と知り合う。その時お互い息があったのかどうなのか分らないが、気がつけば仲良しになっていた。その時楯無の承太郎への好意にも気がつき、それの応援をしている。
今回の事件で搭乗機である銀の福音を凍結され、一時的任務を解かれる。
今は承太郎の追っている吸血鬼騒動の情報を集める手伝いをしながら暴走を起こした犯人を突き止める事に躍起になっている。
ナターシャは全力で楯無を応援してます。
やっぱり、人を絡めないと文ってのは作れないね。うん、習ったよ。