ミホークの潜在能力が恐ろしい!!
ついにブシン祭予選が終了し、僕は無事に本戦に出場することが決定した。
ここに至るまで僕の真の実力は一部の人間以外にはバレてはいない。誰もが僕のことを運だけで勝ち上がっている謎の男という認識だ。
「でもま、あの遠くで見物していたミホークって人には完全にバレてるんだろうけどもな~」
試合中にふと感じた視線の先を辿っていくと、そこには鋭い目で僕の試合を見物していたミホークさんが立っていた。
あの様子からして僕の動きを完璧に見切ってただろうな。
本選でのトーナメント表では僕の一回戦の相手はあの時のお姉さん、アンネローゼって人みたいだ。そんで、ミホークさんの相手はアイリス王女様か……。
僕的には決勝戦で当たりたかったのだが、これじゃあ2回戦で戦うことになりそうだ。
僕の見立てではミホークさんが100だとするなら、アイリス王女は精々が10か20といったところだろうか? この予想は結構当たっていると僕は自負している。
世間からはアイリス王女は成長すればミホークさんとも肩を並べる魔剣士に至ると評判だが、あいにくと魔力や才能はどうかは知らないが、剣技や体捌きなどはこのまま成長していては一生手の届かない所のまま終わるだろう。それが今の僕の見解だ。
「さて、そろそろ試合の時間だ。アンネローゼさんには是非とも頑張ってもらわないとね♪」
その後は僕はアンネローゼを相手に圧倒してみせた。あれは実にいい試合だった。
観客達からのどよめきの声が僕に心地よい優越感を与えてくれた。
このままどこか高めのレストランでワインでも一杯堪能したいところだけど、この後に続く試合こそが今日のメインディッシュといっても過言ではない。
世界最強の魔剣士ミホークVS前回のブシン祭優勝者アイリス王女の一戦。オッズは圧倒的にミホークさんが上だが、王都ブシン流の門下生たちはアイリス王女に賭けているようで、中々に悪くない塩梅となっている。
僕は勿論、ミホークさんの勝利に手持ちのお金を全額ベットした。ヒョロではないけれども、僕だって陰の実力者を演じる為に軍資金が入用なのだ。
ブシン祭で今回ぶっちぎりに注目されているミホークVSアイリスの試合は観客、魔剣士問わず試合会場に詰め寄っていた。
「…………」
大歓声の聞こえるなか、闘技場内で俺は静かに目を閉じて試合が始まる時を待つ。
この試合に対して俺は一切興味も関心も抱いていない。この背中に背負う我が愛刀どころか、腰に下げた予備の短剣すら抜く必要性すら感じない試合となるだろう。
「お待たせして申し訳ございません。ミホーク様」
今回の俺の対戦相手となるアイリス王女がようやく闘技場内に姿を現した。
それと同時に、周りの観客共の歓声がより一層騒がしくなる。煩わしさはあるが、剣の腕によってこの場に立てているという事実は少しだけ俺に満足感を与えてくれる。
あとは、俺が全力を振るえる強者に出会いさえすれば……。
私の名はアイリス・ミドガル。王国最強の魔剣士である。
今回の私の対戦相手は歴代ブシン祭優勝者のなかで1番の強さを誇る。まさに最強の称号を持つにふさわしい男、ジュラキュール・ミホーク。
今までの私の人生のなかで間違いなく1番の強敵になるであろう相手を前に私は慣れない緊張をしてしまっている。
これまでの試合で感じたことの無いほどに心臓がバクバクと鼓動を鳴らしている。
けれども、私は負ける訳にはいかないのだ! ここ最近、とある事件の為に王都ブシン流に対する風当たりが強い為、なんとしてでもここで私が優勝してイメージを少しでも回復させなければいけない。
それに……、私は1人で戦う訳じゃない。
「アイリス様! 期待しております!!」「アイリス様ならば、かの大剣豪にもかならずや!!」「アイリス様! 頑張ってください!!」「アイリス様!!! ご武運を!!!」
この歓声こそが私の力であり、私の使命なのだ。
いかに相手が世界最強であろうとも、我が剣は一歩も劣らないのだと、この会場にいる皆に見せつけなければならない。
このアイリス・ミドガルがいる限り、王国は安泰なのであると示すのだ。
闘技場内に続く階段を登るにつれ、外の歓声が段々と鮮明に聞こえてくる。その中の多くはミホーク殿の剣に期待、あるいは興味を示すものばかり。
しかし、よく聞けばこの私を応援する者の声もチラホラと聞こえてくる。きっと王都ブシン流の門下生達の者の声だろう。
その声を耳にして私の緊張はようやくほぐされていく。手に震えはないし、心臓も平常運転へと戻る。
これならば全力を出せる。そう確信し、先に闘技場内で待っていたミホーク様に声をかける。
「お待たせして申し訳ございません。ミホーク様」
「…………」
こちらからの挨拶に返事はなし。噂通り寡黙な人物のようだ。
無礼であると感じられなくもないが、相手はあの世界最強の魔剣士ジュラキュール・ミホークだ。あるいは、それくらいの態度でなければ最強は務まらないのかもしれない。
返事が返ってこなかったことにより、会場内に気まずい雰囲気が漂ってしまう。
それに耐えきれなかった審判が、多少試合時間を早めて試合開始の合図を宣言する。
『第二試合! ジュラキュール・ミホーク対アイリス・ミドガル!! 試合開始!!!』
審判の腕が振り下ろされ、試合が始まる。それと同時に私は鞘から剣を抜くが、対するミホーク様はまるで試合開始の合図が聞こえていないかのように、背中に背負う剣を抜く気配を一切見せようとはしない。
「抜かないのですか? それでは私から攻めさせて貰います!!」
「…………はぁ、0点だ」
私が攻めに走り出した途端、ミホーク様はため息を吐いて見下したような目で私を見た。
「っ!!?」
近距離に接近し、振るった私の剣に対しミホーク様は一歩足を下げながら紙一重といえるほどギリギリの距離で避けてみせた。
しまった! 斬られる!? そう思い急遽後ろに下がったのだが、ミホーク様は避けるだけでなおも剣を抜こうとはしてみせなかった。
「っ! 一体どういうおつもりですか?」
「どういうつもりか……。それはこちらの台詞だな」
ここで初めてミホーク様が返事を返した。しかし、今の言葉は一体どういうことなのだろうか?
「貴様は一体どういう考えでここに立っている? この俺に対してまるで胸をかりるようなその態度、まるで気に食わん。魔剣士同士が目の前に立ち塞がったというのなら、いい試合をしようなどという心づもりで挑もうとは笑止千万よ。敵を倒すというのであれば、いかなる状況であろうとも、首を刎ねる心構えでなければならん」
「……っ!?」
そう言うと、ミホーク様は首にぶら下げていた十字架のネックレスを外して手に取る。それはどうやら仕込みナイフのようで、一部を取り外し玩具のようなナイフが現れる。
そんな爪楊枝程度の大きさのナイフで相手をされるのは酷い侮辱である。
だが、ミホークは更に剥きだしの刃の方を指ではさみ、持ち手である柄の方をこちらに向けてきた。
「殺し合いではなく、いい試合がしたいのであろう? ほれ、遠慮なくかかってくるがいい」
「──―っ!! 私を!! 舐めるなぁ!!!」
玩具の刃先さえ向ける必要のない相手だと愚弄する奴に、私は激昂するまま魔力で高めた一撃を振り下ろしにかかった。
観客席で見守る誰もが、この先に起こる凄惨な未来を予感して悲鳴が上がる。
そんな彼らの予想はあっけなく裏切られることになる。
「なんとも単純。そして、酷く退屈な剣技だ」
「──っがは!!?」
あと一歩踏み込めば私の剣が届く間合いに入る。そう確信したと同時に、棒立ちで待っていた奴が電光石火の動きで私よりも早く動いてみせた。
それだけだ。そこから先は何が起こったのかまるで理解出来ない衝撃が私を襲い吹き飛ばされてしまった。
僕は目を疑ってしまった。これでも僕は前世を含めて剣技の修業を疎かにしたことはない。
陰の実力者としてスタイリッシュな剣さばきは必須と考え、様々な剣術に精通していると自負している。
多分、この会場で誰もミホークさんの動きを目で追えた者はいないだろう。対戦相手であるアイリス王女も含めてだ。
今のはレイピアによる突きの一撃に似た動き。それも相手を殺さないために魔力を込めていないものだ。
普通ならば、魔力を使用した魔剣士を相手に魔力無しの剣士は勝てないのが道理。
前に学園を襲ったテロリスト達を相手に僕は魔力無しに身体能力で勝ってみせたが、油断していない魔力全開のアイリス王女を真っ正面から叩き潰すのは流石の僕でも難しいだろう。
しかし、ミホークさんはそれを何でもないかのように
どうやったのか、その種は単純なものだ。僕も予選で金ぴかの人相手にしてみせたカウンターの一撃。
猛突進してくるアイリス王女の攻撃に合わせて、もっとも無防備で相手の動きを止めやすい喉仏を柄で突いてカウンターを決めたのだ。
「言うは易く行うは難し、まさにその通りの動きだ」
ピンチはチャンスという言葉があるように、人がもっとも油断するのは相手にトドメを刺す瞬間だろう。アイリス王女が攻撃が決まると無意識に油断していたところを、彼は攻撃してみせた。
まさに攻撃は最大の防御なりという言葉を実践してみせたのだ。
「それにしても、あの相手を煽る台詞といい、あのお手本のような舐めプといい。彼は非常によく分かっている!!」
うんうんとシドは妙なところで感心して頷き、その後の試合展開を楽しんだ。
「ゲホゲホ! この痛み……、喉をやられたというの?」
まるで目に見えなかった攻撃に、体の痛む箇所から攻撃の食らった部位を特定する。
今の攻防で決定された彼我の戦力さにアイリスは絶望を覚えた。それは先程までの激昂を容易くかき消してしまうほどの絶望を……。
「理解出来たか、弱き者よ? 今の俺と貴様の間にある差は実力の差にあらず。魔剣士としての格の差と知れ……」
「人を馬鹿にするのもたいがいにしてください……!!」
王国最強の魔剣士たる私をこれ以上侮辱するのは許さない! これは私だけの問題ではない。私の後ろに続く王都ブシン流の門下生を侮辱するも同然なのだ。
例えこの剣があなたに届かなくとも、せめて剣は抜かせてみせる!
「うおぉあぁぁぁぁ!!!」
「なんと獰猛で凶暴な剣か……。まるで理性のない獣だな。それ故に容易い……」
まるで幼い子供を相手するかのごとく、私の連撃を玩具のナイフの柄で捌いてみせる。
本来ならばできる筈の無い不可能な芸当。しかし、目の前の奴は自身に当たる寸前の剣の側面を横から柄で叩いて自分に当たらないように逸らしていっている。
ありえない! ありえない!! ありえなぁいぃぃ!!!
「こんなにも……、こんなにも私の剣が頂点よりも遠いなんてぇ!!」
「自身の剣が頂きの麓まで辿り着いていると過信していたか? 愚かな……」
ふっと目の前から奴の姿が消える。それと同時に首の後ろを殴られたような痛みが走り、前傾姿勢になっていた私はあっけなく前へつんのめってしまう。
そしてそのまま私は無様に地面に転がり倒れてしまう。
「これで2回だ。貴様が舐めるなといったあの言葉、訂正するのなら今のうちだぞ?」
ミホークがいった2回の意味。それは刃先を向けていれば私が死んでいた回数のこと。
ここにきてふと脳裏にあの事件のあった日の事を思い出す。
『観客は観客らしく、舞台を眺めているだけで満足していなさい』
あのシャドウガーデンのアルファと名乗る女が吐き捨てた台詞を急に思い出したのだ。
この男もあの女も、今の私を見下す圧倒的な強者だ。
だがそれが何だというのか、私の中に今まで感じたことのない強い怒りが込み上げてきた。
弱者だと侮蔑されたこと、全力を出すまでもない取るに足らない存在だと見くびられていること、そしてそれが全て事実であることが認められ無いほどに腹立たしい。
「あああああああぁぁぁぁ!!!!」
私の中の怒りに呼応して魔力がどんどんと昂っていく。それは天井知らずのように沸き上がり、周囲に可視化できるほどの密度の魔力が纏わりつく。
もはや並みの魔剣士ならば近づくことさえ困難な今の私に対して、奴はそれでもなお刃先を私に向けてこなかった。
「あなたが言いましたよね? 敵を倒すというのであれば、いかなる状況であろうとも、首を刎ねる心構えでなければならないと……」
「勿論、一言一句違わぬな」
「なら、私の剣で自身の首が刎ね飛ばされる覚悟もおありですわねぇ!!!」
魔力で極限まで強化されたその脚力は、地面を陥没するほどの威力で蹴飛ばし、ロケットのような速度でミホークの首を狙って飛んでいく。
「ようやく殺気を見せたか。しかし、全てが遅い……」
アイリスの突進を前に、ミホークは避けるどころか前へと飛び出す。
だがもうアイリスは驚かない。この男が剣の勝負で逃げることは無いのだと体で覚え込まされたのだ。
あとはこの男よりも速く剣を振り下ろすだけ、それだけなのだ!
「うおぉぉぉぉ!!!!」
「…………未熟」
「────っ?!!」
勝負はあっさりと決まった。
魔力有と魔力無ならば身体能力を魔力で強化しているアイリスの一撃の方が速かった。
しかし、ミホークはただ冷静に自身に迫る刃の動きを見極め、ほんの少し魔力を込めた左手の指で優しく自身の首を狙う刃を摘まみ取った。
それだけ、たったそれだけの動作でアイリスの剣はミホークの指の中に納まって動きを止めてしまう。
そして、その次の動作で無防備となったアイリスの額にミホークのナイフの柄がゴン! と鈍い音をたてて当たった。
その衝撃で脳が揺れて意識が一瞬飛んだのだろう。決して離したりはしないといった意思が籠った両手の握力が消えてゆき、ミホークの指に納まったまま剣はアイリスの手から離れ、ドサっとアイリスは背中から地面に倒れ落ちてしまい、大の字で寝転がる姿勢になった。
そして、倒れた衝撃で失った意識を取り戻したアイリスが自身の今の現状を判断するのに数秒の時を要した。
「負けた……私が……? 相手に剣すら使わせることなく……?」
ぼやけた思考のまま、自身が負けたのだという事実を認識していく。
背中に感じる地面の感触がこれは夢ではない現実だと酷く冷酷に教えてくる。
「貴様はまだまだ未熟だ。剣の腕も、技の冴えも、肉体の練度も、……そして何より、その精神性こそが弱者たる貴様の最大の欠点だ」
「…………」
先程から聞こえてくる言葉の棘が私の胸を抉りとっていく。
彼の言う言葉は全て正しい。それ故に、今まで一度たりとも敗北したことのない私にとって、これほどまでに堪えることはない。
「…………っ」
駄目だ。泣くな私! ここで涙を流せば、今までの私は……私は……!
「うっ……、うわぁぁぁぁん!!!」
もう自分の理性では止められないほどに感情が溢れ出し、大粒の涙を流しながら私は泣き叫んだ。
悔しい。悔しくて仕方がない。この私がこんなにも無様に負けてしまうなんて……。
『しょ……勝者! ジュラキュール・ミホークぅぅぅ!!!!』
慌ててアイリス王女の泣き声を観客に聞こえさせまいと審判が大声で何度もミホークの勝利を宣言する。
しかし、それがアイリスにとって自分は負けたのだと強く突きつけられているようで余計に悲しくなってきてしまう。そして同時に自分が情けなく思えて仕方がなかった。
私は一体何をしているんだ? こんなところで泣いている場合じゃないだろう!? そう思っていても、一度流れ出した涙を止めることができない。
「時間の無駄だったな」
手にしていたナイフを仕舞い込み、再びネックレスとして首にかけて自身の控室に戻る。
「…………流石ね、ミホーク」
「ベアトリクスか、久しいな……」
どうやって忍び込んだのか、剣聖ベアトリクスが控室前でマグロナルドのハンバーガーを口にしながら、ミホークの帰還を待っていた。
「あの子、もう魔剣士として立ち直れないんじゃない?」
「それならば、奴はそれだけの器であったということだろう。真の強者は敗北者の中から生まれる。たった1度の敗北すらも糧に出来ずに終わるというのならば、奴は真実、ただの弱者であったというだけのこと……」
「相変わらず厳しいのね」
コテンと可愛らしく首を傾げながらベアトリクスは袋に入っていたハンバーガーの1つを差し出してきた。
「なんのつもりだ……?」
「……? お腹が減ってるかなと思って」
「……いただこう」
相変わらずの天然な対応に呆れつつも、差し出されたハンバーガーを手に取って腹を満たす。
「それで、何故今更になってあなたがブシン祭に出場する気になったの?」
「ただの暇つぶしだ。それと、俺の勘がこの大会で俺を満足させる奴に出会えると言った気がしたからだ」
なんとも適当な理由であったが、ミホークがそう言うのならばそうなのだろうと納得したベアトリクスはそれ以上は追求しなかった。
けれど、今のミホークが満足出来る相手が本当に存在するのだろうかと疑問を覚え、その相手は見つかったのかと問うてみる。
「ああ、1人だけ良さそうな奴を見つけた。もしお前も気になるのなら明日の俺の試合を見に来るがいい。退屈凌ぎにはなるやもしれんぞ?」
「ん……、なら楽しみに待ってる」
そう言ってベアトリクスは去っていった。
「やれやれ、自分勝手な奴め……」
なんともマイペースな奴だと思いながら、ミホークも自身が泊まる宿屋へと帰っていく。
これで格付けチェックは終了。
原作の「あいにくこれ以下の刃物は持ちあわせていないのだ」以上の煽りを見せた今作のミホークさんでした。
感想と評価お願いしゃっす!ランキングで1位取れたらますます頑張れるんで!!
ミホークが異世界(別タイトル)に行くなら?
-
鋼の錬金術師
-
銀魂
-
ダンまち
-
異世界おじさん
-
異世界サムライ
-
FGO 英霊剣豪七番勝負:下総国